レンズのF値とは?
F値と露出の関係
F値が1段暗くなるとは
絞りの仕組み
F値による被写界深度の変化
F値が明るいレンズのメリット・デメリット
F値に頼らなずにボケを大きくする方法
センサーサイズによる明るいレンズのメリット
マクロ撮影時のF値の注意点
絞り込む事で発生する光芒について
F2.8でも暗い?星空の撮影
明るいF値のおすすめ単焦点レンズ
Canon RF85mm F1.2 L USM
SONY FE 50mm F1.2 GM
SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
Voigtlander SUPER NOKTON 29mm F0.8 Micro Four Thirds
明るいF値のおすすめズームレンズ
Canon RF28-70mm F2 L USM
Nikon NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
TAMRON 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD
リーズナブルで明るいF値のおすすめレンズ
Canon RF50mm F1.8 STM
Panasonic LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH.
銘匠光学 TTArtisan 23mm f/1.4 C
まとめ
レンズのF値は写真では光がセンサーにあたる量を意味します。F値が明るい(Fの値が小さい)とレンズを通る光の量は多く、F値が暗い(Fの値が大きい)とレンズを通る光は少なくなります。
実際には、F値はレンズの有効口径と焦点距離の比なのですが、写真を撮るうえで重要なのはF値が変化する事でレンズを通る光が多くなったり少なくなったりするという点なので、先ずはそれを覚えておけば良いでしょう。
ちなみに「明るいレンズ」と言ったら通常は開放F値の明るいレンズを指しますが、写真の明暗のコントロールは露出という別の操作なので単純にF値の明るいレンズを使えば明るい写真が撮れるわけではありません。
写真を明るく撮ったり暗く撮ったりする「露出」を決める要素は主に「F値(絞り)」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つで、F値はレンズを通る光の量を、シャッタースピードは光をセンサーやフィルムにあてる時間を、ISO感度は光に反応する感度を調整するのに使います。
例えば、明るい写真を撮ろうと思った場合「F値を明るくする」以外にも「シャッタースピードを遅くする」「ISO感度を上げる」といった方法もあるのです。
なんだかちょっと難しそうですが、デジタルカメラには露出を全て又は一部自動で行う機能が付いているのが普通なので、意味を正しく理解するのは写真を撮るのに慣れてからでも大丈夫です。
上の図はSONY α7RVの絞り表示を、1段、1/2段、1/3段ごとにF1.4からF22まで表にしたものです。
露出の「1段」とは光が半分(又は二倍)になる事で、例えばF値をF4からF5.6に1段暗くした場合、同じ明るさで撮るには光があたる時間(シャッタースピード)を2倍にする(例:1/60を1/30にする)か、感度を1段高くする(例:ISO100をISO200にする)必要があります。
最近のカメラでは1段よりも細かく露出をコントロールできるので、図ではより細かい1/3と1/2のF値も記載しました。
絞りは光が通る穴を任意の大きさに可変させる事で光が通る量(F値)をコントロールしています。
上の写真のように、Fの値が小さくなる(明るくなる)と絞りの穴が大きくなって光が通る量が多くなりますが、値が大きくなる(暗くなる)と絞りの穴が小さくなって光が通る量が少くなるといった具合です。Fの値と絞りの穴の大きさが反比例するのが少しややこしいかもしれません。
ちなみに、レンズ名に記載される開放F値は一切絞らない(Fの値が最も小さくなる)値の事で、上の写真でもこのレンズの開放となるF1.4では絞りが出ていない事がわかります。又、開放F値が特に明るいレンズの事を「明るいレンズ」や「大口径レンズ」と言ったりするので覚えて置くとレンズ選びの際に便利です。
F値を変える事で、光の量をコントロースする以外にピントの合う範囲をコントロールする事ができます。ピントの合う範囲はF値を明るくする事で狭く、F値を暗くする(この事を「絞り込む」と言ったりします)事で広くする事ができるのです。
つまり、F値を明るくするとボケが大きくなり、F値を暗くすると全体にピントの合ったパンフォーカスで撮る事ができるわけで、F値を変える事で同じフレーミングでも印象の違う写真が撮れます。
ボケは写真の美しさを決める大切な要素のひとつなので、F値のコントロールは写真表現の中でも重要なテクニックと言えるでしょう。
開放F値が明るいレンズは大きなボケを楽しんだりシャッタースピードを速くできたりと、写真を撮る上で有利になる点が多いのですが欠点が無いわけではありません。
そのひとつが重さで、光を多く取り込む為に使われるレンズが大きくなるのでどうしても大きく重いレンズになってしまいますし、その分高額なレンズになってしまうのがデメリットです。
又、一般的に開放F値が明るければ明るいほど設計が難しく、開放では少しクセのあるレンズとなってしまいます。しかしレンズのクセを活かすのも写真の楽しみのひとつなので、これは欠点とは言えないかもしれませんね。
ボケは写真ならではの表現ですし、F値を変えてボケをコントロールする事は初心者脱出の第一歩かもしれません。
ボケを大きくする方法には、F値の明るいレンズを使う以外に「焦点距離が長いレンズ(望遠レンズ)を使う」「被写体までの距離を短くする」といった方法もあるので、F値に頼らずにボケを大きくする事もできます。
例えばキットで付いてきた暗い標準ズームしか持っていなくても、ズームの望遠端を使って、開放F値で、できるだけ被写体に近づいて撮ると、ビックリするほどボケを大きくできるので試してみて下さい。
例えばマイクロフォーサーズのような小さなセンサーのカメラの場合、開放F値が明るいレンズのメリットは非常に大きくなります。
小さなセンサーのカメラはフルサイズよりもボケが小さくなってしまう短所がありますが、明るいレンズを使う事で補う事ができますし、F値を1段明るくすれば同じシャッタースピードならISO感度を1段おとす事ができるので、結果的に画質が良くなるというメリットがあるからです。
又、明るいレンズを使ってフルサイズ機で撮るとピントの合う範囲が狭すぎるという事がありますが、マイクロフォーサーズならもともとレンズの焦点距離が短くピントの合う範囲が広いので、思い切って明るいレンズを使えるメリットもあります。
マクロ撮影、ではレンズの開放F値が実質暗くなってしまいます(露出倍数と言ったりします)。F値は有効口径と焦点距離の比ですが、近接撮影ではレンズが大きく繰り出されるので、焦点距離がのびたのと同じ事になってしまうからです。
多くのカメラがマクロ撮影時でもスペック上の開放F値を表示させますが、Nikonのカメラはレンズが繰り出される事で変化した開放F値を表示させるようになっています。写真はNikon Z用の50mmマクロレンズですが、最短撮影距離で撮影すると開放F値はF5.6と表示されました。
マクロ撮影では上記のような理由からシャッタースピードが遅くなりがちなので、手ぶれにはいつも以上に注意するようにしましょう。
太陽などの強い点光源が写った写真で、光源のまわりに漫画のような筋が放射状にひろがった写真をご覧になった事がないでしょうか?
これは「光芒」と言って、F値を絞り込む事で発生させる事ができます。簡単に写真の雰囲気を変えられる手法なので是非使ってみて下さい。
ちなみに、多くのレンズが最小絞りまで絞った時には光芒が発生しますが、レンズによっては1絞りだけ開けないと光芒が発生しないものもあるので、自分のレンズがどのF値で光芒を発生させやすいか、事前に実験しておくと良いと思います。
どんな世界でも極端な機材や撮影方が必要な事があります。極端に明るいF値のレンズが必要なのが夜の星空を撮る星景や星野写真です。
星は地球の自転によりゆっくりと動いていますが、これをぶらさないで撮れる焦点距離とシャッタースピードの関係に200ルールというのがあります。200を焦点距離で割った値がそのレンズで星を動かさずに撮れる最長のシャッタースピードになるという考え方です。
例えば、20mmの広角レンズならシャッタースピードは10秒まで、ノイズが我慢できるISO感度が3200だったとして開放F2.8で天の川を明るく撮ろうと思ったら少し物足りないかもしれません。星空の撮影では開放F値は明かるければ明るいほど有利になるのです。
Canonの85mm F1.2と言えば、一眼レフ時代から他には無い明るいレンズとしてCanonを代表するレンズのひとつでした。RF85mm F1.2 L USMはそのRFマウント判です。
そうでなくてもボケが大きくなる中望遠レンズで、なおかつ一般的な標準レンズを超える明るさを持っているのですから、そのとろけるような美しく大きなボケに一度は使ってみたいと思っているカメラマンも多いのではないでしょうか。
フルサイズミラーレスカメラ専用設計である事を最大限活かして、極端に明るい開放F値でありながら性能的に高いレベルにある事も特筆すべき点です。
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SONYの高性能レンズシリーズGマスターの標準レンズは、一般的なF1.4ではなく開放F1.2のレンズから登場しました。
一眼レフよりもレンズ設計の自由度が高いミラーレス用レンズの中には驚く程高性能なものがありますが、FE 50mm F1.2 GMもそんなレンズの一つです。
美しいボケ味は勿論、非常にシャープで解像感が高いので、特に4000万画素を超えるような高性能カメラにおすすめの一本となっています。
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高性能レンズを多くラインナップするSIGMAレンズですが、以外にもF1.2を超えるF値の明るいレンズは現在この1本しかありません。
コストや大きさ重さをあまり気にせず高画質である事を優先して設計された「Art」シリーズの中でもひと際目立つ存在となっています。
性能を追及するあまり少し大柄なのが短所ですが、それに見合った素晴らしい描写をみせてくれるレンズです。
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私の知る限り写真用としては最も明るいF値を持った、F1よりもさらに約半段明るい反則級のレンズです。
ボケが小さい、高感度に弱いといったマイクロフォーサーズの短所をレンズ1本で殆ど全て打ち消す事ができます。
マニュアルフォーカスなので使うのに慣れが必要ですが、他のレンズではなかなか撮れない独特の表現が可能で、マイクロフォーサーズカメラで作品撮りをしているカメラマンの方に是非おすすめしたいレンズです。
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一眼レフからミラーレスに移行した際のメリットのひとつが、ショートフランジバック(レンズ後端からセンサーまでの距離を短くできる事)によりレンズ設計の自由度が増した事ではないでしょうか。
そんな中登場したCanon RF28-70mm F2 L USMは、ズームレンズとしては珍しい開放F2通しという、単焦点レンズ並の明るさを持ったレンズでした。
ボケを大きくしたい時や手持ちでの夜景撮影にも有効で、ここまで自由に、軽快にナイトスナップができるレンズは、このレンズをおいて他にないのではないでしょうか。
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F値がF2.8で固定されたズームレンズは、プロ向けのの高性能レンズが多いです。
そんなレンズの中でもNikon NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sは、単焦点レンズと見分けがつかないレベルの非常にシャープで高い解像感を持ったレンズで、プロをはじめとした画質にこだわる多くのユーザーから支持されています。
レンズ表面の反射を抑えるコーティングの中でも最高性能と名高い「ナノクリスタルコート」を使用しており、逆光など難しい光線状態でも画質が落ちないのもNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sが優れた点のひとつです。
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広角側の開放がF2と、特に明るいF値を持ったズームレンズのひとつです。
広角から中望遠までという少し変則的なズーム域とあわせて、まるで画角を変えられる単焦点レンズといった趣の、使っていて楽しいレンズとなっています。
広角端の描写に開放では若干の甘さがありますが、こういった思い切ったコンセプトのレンズを製品化できるのは、レンズメーカーならではではないでしょうか。
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リーズナブルな価格で良く写るレンズの事を「撒き餌レンズ」と言ったりするそうです。
RF50mm F1.8 STMはそんな撒き餌レンズの中でも、明るいF値、高い描写性能、手に入れやすい価格と三拍子そろったおすすめレンズとなっています。
Canonのミラーレスカメラ用マウント「RFマウント」にはAPS-Cサイズセンサーからフルサイズまで幅広い価格帯のカメラが揃っているので、明るいF値の単焦点レンズで本格的なカメラデビューするのにもおすすめです。
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マイクロフォーサーズマウントの標準レンズはカメラ発売当時からモデルチェンジを経ていまだに販売が続けられるベストセラーレンズとなっています。
標準ズームではどうしてもボケが物足りなくなるマイクロフォーサーズですが、F1.7の明るさがあれば幅広い表現が可能となるでしょう。
パンケーキタイプと呼ばれる薄いデザインなので持ち運びやすいというメリットも見逃せません。
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APS-Cサイズセンサー用の明るい単焦点レンズはクラシックでかわいらしいデザインが特徴で、NikonのミラーレスカメラZ fcにピッタリです。
マニュアルフォーカスなので操作には経験と慣れが必要ですが、ゆっくりとピントを合わせて写真を撮るプロセスを楽しむのもいいものです。
TTArtisanはリーズナブルな価格とクラシックなデザインが特徴ですが、オールドレンズのようなちょっと個性的な写りも魅力なので、フィルムライクに写真を楽しみたいユーザーにおすすめの1本となっています。
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Photo & Text by フジヤカメラ 北原