特徴/操作性
まだ少数派のレンズメーカー製RFマウントレンズ
カメラとのマッチングが良いデザイン
二面性を持った個性的な描写性能
実写レビュー
コンパクトで個性的な描写はスナップに最適
美しいボケ味はまるでオールドレンズ
フィルムライクな諧調の豊かさ
日中はNDフィルター必須!ナイトスナップにも最適
描写性能
開放(F1.2)時
F2.8時
フリンジの発生
フレア/ゴースト
APO-LANTHAR 50mm F2 VM Aspherical との描写性能比較
開放時の描写性能の比較
絞った際の描写性能の比較
純正「Canon RF50mm F1.8 STM」との比較
NOKTON 40mm F1.2Asphericalを選択するメリット・デメリットとおすすめユーザー
純正ではなしえない個性的な写り
デメリットは速写性に劣るマニュアルフォーカス
オールドレンズのようにレンズの個性を活かした作品作りをしたいユーザーにおすすめ
作例に使用したカメラ
作例に使用したレンズ
まとめ
Voigtlander NOKTON 40mm F1.2Aspherical RFマウントは、まだ少数派のレンズメーカー製のCanon RFマウントレンズです。
レンズメーカーのレンズには純正に匹敵する高性能なレンズだけでなく、純正レンズには無い個性を重視したレンズも多く、NOKTON 40mm F1.2Asphericalは後者に属するレンズの中でも特に個性の強い製品となっています。
ボケ味や絞りによる描写の変化など、純正では敬遠されがちな味のある写りはレンズメーカーならではと言えるでしょう。
NOKTON 40mm F1.2Asphericalには、既にSONY Eマウントのモデルがラインナップされていますが、RFマウント用にデザインを起こしなおしているところも好感が持てます。
Canonのフルサイズミラーレスカメラに良くマッチするデザインの良さだけでなく、開放F1.2と明るいレンズでありながらコンパクトなのも秀逸です。
今回テスト機に使用したEOS R6 Mark IIとはデザイン的にもサイズ的にもベストマッチと言え、快適に持ち歩いて使う事ができました。
最近のレンズは非常に高性能で、絞りによる描写性能の変化が少ないのが普通ですが、NOKTON 40mm F1.2Asphericalは開放では柔らかく(悪く言えば眠く)周辺光量も大きく落ち込みますが、絞り込む事で描写性能が格段に向上し、まるで2本の違うレンズを使っているような楽しさがあります。
個人的には開放の柔らかい描写が特に好きですが、状況に応じて絞り込み解像感を上げられる安心感はやはりありがたいものです。
今回のテスト撮影ではピントが極端に薄くなる近接開放でも撮ってみましたが、驚く程柔らかい描写で以前テストしたオールドレンズ、ライカノクチルックスを思い出しました。
作例1:F1.2 1/250 ISO100 露出補正+1.7
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コンパクトなサイズと40mmという絶妙な画角、明るい開放F値による幅広い表現力でスナップやお散歩写真を撮るには最適なレンズです。
なんという事もない景色にふとレンズを向けたくなる楽しさがあります。
コンパクトなサイズなのでカバンへの収納が楽な事は勿論、首から下げていてもあまり大袈裟にならない事もポイントです。
作例2:F1.2 1/320 ISO100 露出補正±0
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ピント拡大へ対応している事や滑らかな操作感で、マニュアルフォーカスレンズでありながらスムーズにシャッターが切れるのもNOKTON 40mm F1.2Asphericalをスナップ撮影におすすめする理由のひとつです。
ファインダーを見ながらフォーカスリングを回してピント合わせをしているだけで、レンズの柔らかさが伝わって来ます。
写真機を使って写真を撮っているという感覚をより強く味わいたいなら、やなりマニュアルフォーカスをおいて他にありません。
作例3:F1.2 1/80 ISO100 露出補正-0.3
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好みも多分にあると思いますが、開放でのボケ味の美しさは私がテストしたレンズの中でもトップクラスです。
絞りリングのF1.2にロック機構を付けて欲しいと思うくらい、開放オンリーで撮りたくなる魅力があります。
標準レンズとしては焦点距離がやや短めになりますが、さすが開放F1.2、ボケの大きさについても不満が残るケースは皆無でした。
作例4:F1.2 1/80 ISO125 露出補正-1.0
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特に好きなのが近接開放での光が滲むようなボケ味です。
近接撮影ではピントは殆ど無いといっていい薄さになるのですが、ピントを無視しても美しいボケを味わいたくなります。
3軸のボディ内手ぶれ補正に対応したレンズですが、F1.2では必然的にシャッタースピードが速くなるので、多少暗い条件でもブレずに撮れる点もポイントです。
作例5:F1.2 1/320 ISO100 露出補正+0.3
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レンズが諧調や色のりの良さにどのくらい影響を与えるのかについて個人的には疑問に感じていますが、NOKTON 40mm F1.2Asphericalを使ってみて、そんな考えは改めなければと感じました。
暗部が潰れずらく微妙に諧調が残るちょっとシネマのような表現はCanonというメーカーのイメージには無かった「フィルムライク」な写りを付加してくれているような気がします。
これだからVoigtlanderは面白い、と素直に喜べる個性です。
作例6:F1.2 1/160 ISO100 露出補正+2.7
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Canonが誇る映像エンジン「DIGIC」との相性も良さそうです。
見栄えの良いDIGICの作り出す画が個人的にかなり好きですが、それにプラスしてレンズが作り出すしっとりとした落ち着きが上手くマッチしているように感じました。
Voigtlanderのレンズを使う際に悩まされるフリンジの発生も、皆無では無いものの少なく安心して使えそうです。
作例7:F1.2 1/80 ISO1600 露出補正±0
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明るい開放F値なので、日中の撮影ではNDフィルターを携行する事をおすすめします。
季節にもよりますが、日中は1/8000のシャッタースピードでも開放が使えないケースがありました。
レンズ径は58mと大きくないので、複数枚のフィルターを交換しながら使う際もコスト的にありがたいかもしれません。
作例8:F1.2 1/80 ISO200 露出補正±0
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気軽なナイトスナップが楽しめるのもNOKTON 40mm F1.2Asphericalを選ぶ大きなメリットです。
コンパクトなサイズと明るい開放F値、美しいボケ味はいずれも夜、例えば帰宅する道すがら写真を撮るような使い方にももってこいと言えるでしょう。
今まであまり意識した事が無かったのですが、写真を撮れる時間が長いという事も明るい単焦点レンズのメリットかもしれません。
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開放ではオールドレンズのような柔らかさ、悪く言えば眠さが目立つレンズです。
一般的に言って高性能とは言い難い描写ですが、これが写真全体としては立体感のある描写のもとになったりするので、レンズと言うのは実に奥深い世界だと思います。
最近のフルサイズミラーレスカメラ用レンズはいずれも高性能で、安価なズームレンズでもここまで眠くは無いと思いますが、逆にNOKTON 40mm F1.2Asphericalの唯一無二の個性となり、このレンズを選択する大きな価値となっている事も間違いないでしょう。
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F1.2まで絞っただけで、まるでVoigtlanderの高性能レンズシリーズ「APO-LANTHAR」の画を見ているようなシャープで高解像、高コントラストな画に変貌します。
先にも書きましたが、こういった描写の2面性はNOKTON 40mm F1.2Asphericalの大きな価値であり魅力です。
40mmという画角の好き嫌いはあるものの、写真を表現として捉えるならAPO-LANTHAR以上に魅力的なレンズかもしれません。
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明暗差の大きな状況でフリンジが発生する事がありました。
Voigtlanderのレンズはフリンジが発生しやすいものが多いのですが、NOKTON 40mm F1.2Aspherical RFマウントは比較的発生の少ない方だと思います。
後処理で消せない程激しく発生する訳ではないので、画像処理ソフトでの除去やモノクロモードの使用など上手く付き合いたいところです。
今回のテスト撮影ではフレアやゴーストの発生はほとんどありませんでした。
逆光耐性を声高にうたったレンズではありませんが、比較的シンプルなレンズ構成の単焦点レンズらしい特性を持っているようです。
写りがオールドレンズっぽいので、むしろもう少しフレアが出てくれても良かったかもしれません。
幅広いラインナップを持つVoigtlanderレンズの中でも「APO-LANTHAR 50mm F2」は高性能な標準レンズとして定評があります。
今回テストしたNOKTON 40mm F1.2Asphericalとは対局にあるような写りをするレンズなので、焦点距離も開放F値も違うレンズですが、2本の描写性能を比較してみました。
APO-LANTHAR 50mm F2 作例
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NOKTON 40mm F1.2Aspherical 作例
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上がAPO-LANTHAR 50mm F2、下がNOKTON 40mm F1.2Asphericalの開放での作例です。
F値が違うので一概に比べられないかもしれませんが、明らかにAPO-LANTHAR 50mm F2の方が高解像・高コントラストなのがわかります。
作例は被写界深度の違いが出ないよう遠景の建物を撮影していますので、NOKTON 40mm F1.2Asphericalに単純に眠いという印象を抱く方も多いと思います。しかし、開放の眠さがボケの美しさにつながっているので、一概に眠いレンズ=悪いレンズと言えないあたりがレンズの難しくも面白いところです。
APO-LANTHAR 50mm F2 作例
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NOKTON 40mm F1.2Aspherical 作例
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F2.8まで絞ると、NOKTONの画質は驚く程向上し、2本の性能差が無くなるどころか、わずかにNOKTON 40mm F1.2Asphericalの方がシャープに見える程です。
F2.8まで絞るだけでAPO-LANTHARと同等の性能になる事は、NOKTON 40mm F1.2Asphericalの大きな特徴であり選択する大きなメリットと言えるでしょう。
1本で2通りの写り方が楽しめるのです。
純正の標準レンズCanon RF50mm F1.8 STMは比較的リーズナブルな価格で写りもそこそこな事から人気のレンズです。
加えてコンパクトなサイズのお気軽お散歩レンズとしても使いやすいので、NOKTON 40mm F1.2Asphericalのライバルレンズになりそうです。
気軽さという意味ではオートフォーカスのRF50mm F1.8 STMに分がありますが、開放F1.2という極端に明るいF値、美しいボケ味と個性豊かな描写による楽しさは、まるでオールドレンズと言っていいNOKTON 40mm F1.2Asphericalを選ぶ大きなメリットと言えるでしょう。
NOKTON 40mm F1.2Asphericalはスペック以上にボケの美しさや写りの個性がひかるレンズです。
オールドレンズと言ってもいい個性は純正レンズには無い大きなメリットと言っていいでしょう。
それでいて手ぶれ補正や画像拡大を使った快適な撮影もサポートしており、扱いやすいのも魅力です。
マニュアルフォーカスは当然オートフォーカスよりも速射性に劣り、デメリットとなるポイントです。
特に初心者にはピントを合わせてシャッターを切るまでの時間は、面倒でまどろっこしい時間と感じるかもしれません。
シャッターを切るまでのプロセスを楽しめるのがマニュアルフォーカスレンズの楽しさのひとつなのですが・・・ちなみに今回テストボディに使ったCanon EOS R6 Mark IIのEVFは非常に使いやすいものでした。
Voigtlander NOKTON 40mm F1.2Aspherical RFマウントには、RFマウントに専用設計されたオールどレンズといった印象を持ちました。
高級感のあるデザインもポイントで、操作感が良い事は勿論持っていて楽しいレンズです。
写真を表現の手段として写りに個性を重視するユーザーにおすすめのレンズとなっています。
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Photo & Text by フジヤカメラ 北原