今年も残すところあとわずかとなりました。
今回は、毎年恒例となりました、本日のフジヤ的、今年のベストレンズをお届けしたいと思います。
今年は、コロナ禍もあり、昨年よりもグッと少ない30本弱のテストにとどまりましたが、心に残るレンズも多く、昨年の5本を上回る6本のレンズを選びました。
例年どおり選択基準は「使ってみて凄い!と驚かされた」「コンセプトさに感心した」「撮影が楽しかった」など、実際に撮影してみて心動かされたレンズです。
これも毎年の事ですが、個人的好み、独断、趣味といった完全な主観で選んでいるので、参考程度に考えていただけると幸いです。
※掲載順は順位ではありません
カメラとしても非常に魅力的なFUJIFILM(富士フイルム) X100Vは、モデルチェンジで一新されたレンズも非常に優秀で、カメラの人気を高める一因となっています。
柔らかい味わいのあるレンズです。
デジタルでどこまでフィルムの味わいに迫れるか、を追い求めるFUJIFILM(富士フイルム)の各種機能にマッチした写りで、シャープさだけがレンズの全てでは無い事を、改めて認識させてくれます。
機能だけでなく、デザインや操作性までアナログチックな、カメラにピッタリの写りです。
カメラが持つフィルムシミュレーションやグレインエフェクトなどの機能との相性も良く、レンズ交換出来ないカメラのメリットが出ているのかもしれません。
開放はやや眠く、絞り込むと最高クラスのシャープネスを発揮する、クラシックレンズのような性能変化にもむしろ好感が持てます。
カメラまで含めて、トータルで写真の雰囲気を大切にしているレンズです。
>>> FUJIFILM (富士フイルム) X100V 実写レビュー
一般的な大口径望遠ズームより望遠側を20mm短くする事で、大幅な小型化に成功したTAMRON (タムロン) 70-180mm F/2.8 Di III VXDは、SONY(ソニー)の高画素機にも対応出来る、レベルの高い光学性能を持つレンズです。
フィルター口径は67mm、重量は約810gで、メーカー純正の望遠FE 70-200mm F2.8 GM OSSが1,480gである事を考えると、かなり軽量コンパクトだと言えるでしょう。
フルサイズ用の開放F2.8通しである事を考えると、驚異的と言っていいかもしれません。
タムロンらしい素直なボケ味も魅力で、気軽に持ち歩いて大口径望遠ズームらしい大きなボケを楽しみたいレンズです。
風景写真でよく利用される画角は、無駄なものを排除してフレーミングするのに適しており、街中でも印象的な写真を撮る事が出来ます。
ミラーレス一眼カメラ用レンズらしい、高い光学性能を持っているのも魅力で、細密描写が求められる本格的な風景写真にも十分対応出来るレベルだと思います。
その大きさや重量により、使うのにある程度覚悟が必要だった大口径望遠ズームの世界を、普通に使える大きさ重さにしたこのレンズは、TAMRON(タムロン)らしい、ユーザーの視点に立ったパイオニア的なレンズだと思います。
>>> TAMRON (タムロン) 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)実写レビュー
高性能なレンズ=フルサイズミラーレス一眼カメラ用という最近の構図の中で、一眼レフカメラで勝負を続けるPENTAX(ペンタックス)の超高性能な中望遠レンズです。
新緑の美しい6月にテスト撮影を行ったおかげで、レンズの良さだけでなく、緑色の再現が綺麗なPENTAX(ペンタックス)の良さが存分に堪能出来ました。
絞り込んで撮影するイメージのある風景写真ですが、背景をボカす事で構図を整理し易い中望遠レンズの開放での撮影は、相性のいい被写体です。
HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AWの美しいボケ味が、実物以上に紫陽花の花を切り取ってくれました。
渓谷に咲く小さなユリの花を、上から俯瞰して撮影しました。
中望遠レンズによる背景の圧縮効果で、渓谷の川の流れを印象的に写しとめる事が出来ました。
大きく重いレンズではありますが、最高クラスの性能と美しいボケの雰囲気で、PENTAX(ペンタックス)K-1ユーザーなら是非使って欲しいレンズです。
>>> RICOH IMAGING (リコーイメージング) HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW 実写レビュー
コンパクトで望遠に強いというマイクロフォーサーズの利点を最大限活かせるレンズで、テレコンバーターを使う事で最大35mm判換算1600mmの超望遠撮影がこの大きさのレンズで可能です。
1.4×のテレコンバーターMC-14を使用して、35mm判換算1120mm相当にズームして撮影しました。
AFスピード、画質の低下ともにわずかで、軽量コンパクトさとOLYMPUS(オリンパス)が得意とする強力な手振れ補正のおかげで、手持ちでも十分撮影出来ます。
撮影テストは多摩動物公園で行いましたが、動物園での撮影で、これほどマッチするレンズは無いと感じました。
OM-D E-M1Xのファームアップが行われ、鳥認識AFが搭載された際も同レンズをテストに使いました。
高速なオートフォーカスと、鳥認識AFのおかげで、魔法のように鳥の目に合焦していきます。
シャープなレンズと正確で高速なフォーカスのおかげで、苦手だった超望遠レンズでの撮影を克服出来た気分でした。
>>> 動物園で使う望遠レンズに OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS がベストチョイス!
カメラ側の収差補正を積極的に利用する事で、非常に高い描写性能を持ちながら、コンパクトなデザインを実現したレンズです。
ポートレート向きのレンズという事で、当ブログでは珍しい人物撮影にチャレンジしました。
美しいボケ味は新しいコンセプトになっても変わらずSIGMA(シグマ)らしいものです。
同社の一眼レフ用レンズと比較して、大幅にコンパクトになったデザインのおかげで、被写体に威圧感を与えずに撮影出来ました。
普段なら大型のレンズを敬遠する場面でも持って歩ける大きさなので、思わぬシャッターチャンスに恵まれる事があります。
写真は柔らかいイメージですが、実はシャープネスも最高レベルにあり、驚くべき解像性能を持っています。
今年発売されたSIGMA(シグマ)のレンズはいずれも魅力的な製品で、どのレンズを選ぶか非常に迷いましたが、今回は最高の性能と大きさのバランスがいい85mm F1.4 DG DN | Artを選びました。
>>> コンパクトで高性能 SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art 作例と実写レビュー
2020年のフジヤカメラ的ベストレンズ、最後の一本はF0.8という、現行の写真用レンズでは最も明るいF値を実現したVoigtlander(フォクトレンダー) SUPER NOKTON 29mm F0.8 Asphericalです。
F0.8という極端に明るいF値が、同じ画角なら焦点距離が短くなってしまうマイクロフォーサーズの短所を無効にしてくれます。
大きいだけでなく、とろけるような滑らかなボケ味が、夜間のライトアップされたモミジの葉を、浮世ばなれした美しさで再現してくれました。
マニュアルフォーカスは面倒に感じますが、極端に薄いピント合わせは、拡大表示したモニターの画像を見ながらの方が、結果的に歩留まりが良かったように感じました。
F値が明るい事のもう一つのメリットは、ISO感度を低くして撮影出来る事で、夜間のライトアップを黒の締まったメリハリのある画質で写す事が出来ました。
マイクロフォーサーズはセンサーサイズが小さい為、若干高感度に弱い嫌いがありますが、そういった短所を明るいレンズが補ってくれます。
F2.8と比較しても3段階以上明るいレンズは、製品化に驚くだけでなく、撮影上のメリットも多い、実用的なレンズなのです。
>>> Voigtlander(フォクトレンダー) SUPER NOKTON 29mm F0.8 Aspherical 実写レビュー
今回は毎年恒例となった、フジヤカメラ的ベストレンズを、お届けしました。
レンズは個性で選ぶ時代だと思いますので、単純な性能だけでなく、使って楽しかった、驚いた、感心したといった、私の主観で選びました。
これ以外にも、選びたいレンズは多数ありましたが、一応ベストと言っているので、今年は6本に絞り込みました。
コロナ禍のせいで写真を撮りにくい状況が続いていますが、個性的なちょっといいレンズが1本あれば、近所の散歩でも楽しく写真を撮れるものです。
来年も当ブログは深い深いレンズ沼の中をさまよい続ける予定なので、どうぞよろしくお願いします。
Photo & Text by フジヤカメラ 北原