Voigtlander(フォクトレンダー) SUPER NOKTON 29mm F0.8 Aspherical の実写レビューです。現行の写真用交換レンズとしては最も明るい、開放F0.8のマイクロフォーサーズ用レンズは、柔らかく大きなボケと高い集光力で暗闇に強いのが特徴です。
今回は、極端に明るいF値を利用した夜間撮影の実写レビューを中心に、レンズの特徴を見てみたいと思います。
開放F値0.8という事で、どれ程巨大なレンズかと想像しましたが、マイクロフォーサーズ用という事で、思ったより小型なレンズでした。前玉も一般的な大きさで、フィルターも普通に使えるので、スペックを除けば見た目は普通のレンズです。
テストボディには、操作性に優れたOLYMPUS OM-D E-M1 MarkIIIを選択しました。薄いピントを正確に合わせる為、露出補正ボタンにピントの拡大機能をカスタマイズ、絞りはレンズの絞りリングで、露出補正はコマンドダイヤルで行います。
マニュアルフォーカスのレンズとOM-D E-M1 MarkIIIとの相性は良く、ピントの拡大、フォーカス位置の移動、露出補正、F値の変更などストレスなく行えました。
フォーカスリングの操作感はVoigtlander(フォクトレンダー)らしい滑らかな動きで、精密なピント合わせもしやすい、しかっりしたトルクがあります。
フードはシンプルな金属製の筒タイプで、味気ない感じもしますが、フードの膨らみが無いのでカメラバックへの収まりもよく、実用的なものです。
絞りのクリックキャンセルも装備しています。
F0.8の明るさを利用した夜間撮影という事で、昭和記念公園で開催されている黄葉紅葉まつり&秋の夜散歩2020でテスト撮影を行いました。
日本庭園で開催されているライトアップは見どころで、とても綺麗です。
三脚の使用は制限されているので、一部を除き手持ちで撮る必要がありますが、F0.8のお陰でISO3200でブレずにシャッターが切れました。
紅葉も見どころを迎えていて、ライトアップの光に照らされたモミジの葉が、幻想的な雰囲気でした。夜間の撮影は背景を黒く出来るので、紅葉の赤を鮮烈に表現出来ます。開放F0.8のおかげでISOを低く抑えられ、ノイズの少ない黒のしまった画を撮影する事が出来ました。
木にひっそりと風鈴が下がっていました。園内はちょっとした小物でデコレーションされており、そういったものを探して撮るのも楽しいです。超大口径でありながら、シャープさとボケの柔らかさのバランスも良く、開放でも使い易いレンズだと感じました。
大口径レンズのボケと、ライトアップの光の両方を意識しながら撮影していきます。SUPER NOKTON 29mm F0.8 Asphericalは、マイクロフォーサーズの標準レンズでありながら、被写体との距離をとっても、ボケを表現に活かせる数少ないレンズの一つです。
どこにピントを合わせるかがポイントになりますが、このカットでは一番明るいところにピントを持って行きました。
リッチな風景を撮りたくて、少しオーバーになるように露出を決めました。光源に対して逆光になりますが、薄っすらとフレアがのっている様に見えます。SUPER NOKTON 29mm F0.8 Asphericalの逆光耐性はあまり高くなく、光源に対して頻繁にフレアやゴーストが入りました。
道を示すフットライトにも粋な工夫が。竹を斜めに切って中に電飾が仕込んであるだけですが、間接光が綺麗です。F0.8という事で、開放では口径食が出ますが、レモン型の素直な形なので、扱いやすいと思います。
和傘と照明を使った幻想的なオブジェです。ピントのあった手前のシャープさとボケた背景のコントラストが、綺麗に再現され、大口径レンズのメリットが活きた写真になったと思います。撮影が一方向からしか出来ず、手前に柵があるのでちょっと撮りづらい場所でした。
ススキの穂を、背景に街灯を配して撮影しました。極端に明るいF値と、カメラの補正を利用出来ない電気接点無しのレンズである為か、明暗差の激しい部分にパープルフリンジが発生します。少し気になるので、場合によってはadobe Lightroomなどを使って後処理でパープルフリンジを除去した方がいいか
極端な大口径=眠いという先入観があったのですが、現代のレンズらしく性能とのバランスがいいレンズです。
拡大して、描写性能を見てみます。
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悪い言い方かもしれませんが、超大口径レンズらしくない性能の高さで、柔らかい中にも芯のある良好な描写です。ボケはじめの感じもとても綺麗です。
泣き所のパープルフリンジの状況も見ておきたいと思います。
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背景との明暗差が大きい部分にパープルフリンジが発生しています。せっかくなので、adobe Lightroomを使って修正してみましょう。
自然に、綺麗にパープルフリンジを除去出来ました。デジタルである程度除去出来るパープルフリンジは、致命的な欠点ではありませんが、場合によっては修正が困難な事もあるので、電子接点付きレンズにして適時自動補正してもらえるとありがたいところです。
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Voigtlander(フォクトレンダー) SUPER NOKTON 29mm F0.8 Asphericalは、F0.8という明るさを活かして、色々と試してみたくなるレンズでした。
超大口径レンズに特有の眠さや描写力の低さも無く、性能的に普通に使えるのも特筆すべき点です。残念なのはやはりパープルフリンジの発生で、写真によってはかなり気になります。
ソフトによる後処理で、ある程度修正出来ますが、電子接点付きのEマウントのレンズは格段にパープルフリンジが少ないものが多いので、同様の設計にして欲しかったところです。
色々言ってしまいましたが、今までに無いスペックのレンズは使っていて本当に楽しく、夜間の撮影にもマッチして撮影を満喫出来ました。Voigtlander(フォクトレンダー)の意欲と可能性を感じるレンズだと感じました。