ミラーレス専用設計の大口径中望遠レンズ SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art の作例と実写レビュー です。
一部収差補正をカメラにゆだねる事で、クラス最高峰の性能と軽量コンパクトさを両立したレンズを「人物」「ネイチャー」「フォト散歩」と3つのジャンルで試しました。
フィルター径 | 77mm |
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最短撮影距離/最大撮影倍率 | 85cm/1:8.4 |
最小絞り | F16 |
マウント | SONY Eマウント(35mmフルサイズ)/ライカLマウント |
全長 | 約96.1mm(SONY Eマウント) |
重量 | 約625g(SONY Eマウント) |
その他 | 防塵防滴機構 |
付属品 | キャップ(前後)、ソフトケース、ロック付フード(LH828-02) |
コンパクトなレンズです。
絞りリングやAポジションでのロック機構、滑らかで自然なフォーカスリングの動きなど、単焦点レンズに求められる機能をユーザー目線で詰め込んだデザインです。
SIGMA(シグマ)のArtシリーズのフォーカスリングは、いずれも滑らかな動きで、このレンズもその例に洩れません。
マニュアルの際のフォーカススピードも自然で、大口径の単焦点レンズらしく、手動でピント合わせをする事を前提とした作りです。
1/3段階でクリックする絞りリングが搭載されているのも、開放から絞り込むような動作を、スピーディーかつ直感的に出来ていいと思います。
SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art では、絞りリングをキャンセルするAポジションを固定するロック機構が付きました。
又、動画撮影時、REC中の絞りの変化により輝度が変わってしまう事を避ける為、クリックのキャンセル機能も搭載しています。
レンズフードは脱着が固いと装着に手間取り、撮影のストレスになりますが、SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art のロック付きフードの脱着はスムーズで、ストレス無く操作出来ます。
絞り羽根は11枚で、こういった細かいところまでこだわりを持って作られているのは、流石SIGMA(シグマ)だと言えます。
一眼レフカメラ用の 85mm F1.4 DG HSM | Art は、他のレンズと比べて大柄というのもありますが、DG DNは大幅にコンパクトで、これで同程度以上の性能が出ているのは凄いです。
逆にレンズ性能が今ほどシビアに言われなかった、フィルム時代のレンズと比較するとどうでしょう?
今回は Nikon (ニコン)の Ai AF Nikkor 85mm F1.4D IFと比較してみました。
さすがに、SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art の方が大きくなりますが、6000万画素を超えるカメラに対応した性能とのバランスで考えると、この大きさでも驚異的に小さいと言えます。
冒頭に書いたとおり、ここまでのコンパクトさは、一部収差をカメラのレンズ補正にゆだねた事によります。
後程、カメラ内補正の有無による画質の変化を見てみたいと思います→ボディレンズ補正ON、OFFによる画質の比較
85mm f1.4の被写体と言えば、ポートレートや人物撮影が王道です。
SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art も、スペックだけで言えばポートレート用レンズと言ってもいいレンズですが、以前の経験から意外と風景にも使い易い事、又、コンパクトさを活かしてお散歩写真にも、と考え、今回は「人物」「風景」「フォト散歩」の3つの撮影を選びました。
テストカメラはSONY(ソニー)α7RIVです。
SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art は、高性能、コンパクトをコンセプトとしたレンズなので、巨大という程大きくはなく、変な言い方ですが、常識的な大きさになりました。
あまりに大きいレンズだと、ちょっとした家族との団らんや旅行時に使うには、少し大げさ過ぎました。平たく言えば、目立つ、いかにもな風貌が、少し恥ずかしい。
コンパクトになった事で、撮影者も、被写体も構える事無く写真を撮れるようになったと思います。
弟の手を引く兄の姿を、背後からこっそり撮りました。
中望遠と大口径を活かして背景ボケを大きく、さらに露出をプラスにする事で子供を柔らかく明るく撮りました。
中望遠レンズは被写体との距離をとれるので、こっそり子供の自然な姿を撮るのに丁度いい距離感だと思います。
したたる汗に夏を感じさせる写真が撮れたと思います。実は、真剣にかき氷に向かう姿です。
人物撮影でも、表情だけでなく、象徴的な一部分を切り取る事で何かを伝えるのは、写真の楽しさの一つです。SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art の美しいボケ味、うぶ毛まで写し取る高性能さは、そんな撮影の武器になってくれます。
実家の父に、坂口安吾っぽくしてくれというリクエストをしたら、何故か腕組みをしました(それじゃラーメン屋の店主だって)。
実は、父がライフワークとして書いている、小説を執筆しているシーンを撮影したかったのですが「見られてると書けない」と言われ、ポーズだけとってもらいました。
しかし坂口安吾っぽいのは服装だけですね。
SIGMA(シグマ)と言えば、高性能というイメージがすっかり定着しました。
かつては本格的な風景撮影と言えば、中判、大判カメラが使われるのが普通で、細密描写が求められる世界だったと思います。
単焦点レンズとネイチャーや風景写真というとイメージが合わないと思いますが、高い解像力と85mmの風景を切り取り易い画角、開放f1.4のピントの薄さを利用して背景を整理し易い事などから、ネイチャー撮影にもフィットします。
ボケの中に被写体が浮かんでいるような写真は、大口径中望遠レンズの得意とするところです。
コスモスのピンク色を、少しオーバーにした露出の中で、淡い色合いに表現してみました。
背景を流れる川の緑色が、薄いミントグリーに再現されて、写真全体をパステルカラーの優しい色合いで包んでくれました。
大空に飛び立っていったであろうセミをイメージして、抜け殻と木漏れ日をフレーミングしました。
遠近感を圧縮して画面を整理出来る中望遠レンズはこういった表現も得意とします。
このカットは最短撮影距離に近い撮影です。SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art の最短撮影は0.85m(最大撮影倍率1:8.4)で、もう一寄りしたい事もしばしばでした。
夕方の傾いた光の中、徐々に色を失う川の流れをアンダー露出で狙いました。
長く続いた梅雨のせいか、水が多く少し濁り気味です。
後程拡大した画像をお見せしますが、絞っているとは言え素晴らしい解像力で、風景写真にも最適な画質だと感じました。
スナップやフォト散歩に使うなら、取り回しの良さを考慮してレンズはコンパクトであるに越した事はありません。
しかも大口径で大きなボケが楽しめたら・・・SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art は、フォト散歩用レンズとして理想的かもしれません。
店のウィンドウを撮るのが好きです。
綺麗にディスプレイされた商品が魅力的なのは勿論、ガラスの反射を利用して写真をエフェクトするのが楽しいんだと思います。
このカットでは、オートフォーカスがガラスを拾ってしまい厳しかったのでマニュアルフォーカスを使いました。SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art のフォーカスリングの動きは滑らかで自然なので、ストレス無く撮影出来ます。
暗いビルの隙間をのぞき込むようにしてシャッターを切りました。
写真では、影となってつぶれてしまっている部分も、ほんの少しの光が当たっただけでピントが合っているのかボケているのかわかります。
そんな事を意識しながらシャッターを切りました。
長引くコロナ禍のせいで、屋内で写真を楽しむ方も多いようです。
私も家で栽培しているサボテンを撮ってみました。
ただ撮っただけですが、レンズが良すぎてそこそこな感じに撮れました。サボテンがあると何となくおしゃれな感じになるので、家で写真をおしゃれに撮るならサボテンは必須アイテムです(と思うのは偏見でいしょうか?(笑))
素晴らしく高性能なレンズです。画像を拡大して解像感を見てみます。
枠内を拡大
信じられないレベルの画質です。
岩のディテールが豊かに再現されている事、ここまで拡大して草の葉が分解されている事など、SONY(ソニー) α7RIVの高画素を完全に活かし切っています。
SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art は、収差の補正の一部をカメラのレンズ補正機能にゆだねるという設計思想により、超高性能でありながらコンパクト化に成功したレンズです。
カメラ側の補正を利用している収差は主に、直線が歪んで写る「歪曲収差」、画面周辺に向かって画像が暗くなる「周辺光量」です。
少し意地悪なテストですが、以下に上記2つの収差について、補正をON、OFFしてどれくらいカメラ側のレンズ補正を利用しているか、見てみたいと思います。
直線の多いビルを撮影した写真ですが、この写真から先ず歪曲収差補正をOFFにしてみます。
わかり易いようONとOFF、2つの画像を並べて比較してみます。
分かりやすいよう黄色のラインを引きました。
歪曲収差補正 OFFの画像では、ビルの直線部分が大きく糸巻き型に歪んでいるのがわかります。
次に周辺光量補正です。
黄色い囲みの中を比べると、周辺光量補正OFFでは画面の端が少し暗くなっているのがわかります。
レンズの性能を最大限発揮する為には、各補正はONにして使うのが正解だと思います。
が、歪曲収差補正をOFFにすると、ほんの少しですが画角が広くなる事、周辺光量が低下している方が、レトロな味わいのある写真になる事もあるので、特定の収差が残る事で、表現の幅が広がったと、前向きに捉える事も出来ます。
もし、小さくなった事で性能が落ちたのでは?という心配があるなら無用です。
SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art はクラス最高レベルの画質を持ち、「Art」シリーズの名に恥じないレンズです。
もしかしたら、収差の全てをレンズで補正しないというコンセプトのお陰で、今まで以上の性能が出ているかもしれません(カメラ側のレンズ補正:歪曲収差補正、周辺光量補正をONにして使う事が前提ですが)。
大きさ、性能、操作性など現時点では非の打ち所がない、凄いレンズだと感じました。
Photo & Text by フジヤカメラ 北原
>>> SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art ソニー E マウント用
>>> SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art ソニー L マウント用