シグマから放たれた3本目の矢、28-105mmの標準ズーム
引きの広角端28mmを試す
感動した!望遠側の105mm
ズーム全域で最短撮影距離40cmと寄れる
まとめ
作例に使用したレンズ
作例に使用したカメラ
鹿野貴司(しかの・たかし)
1974年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、さまざまな職業を経て写真家に。広告や雑誌などを手掛けるかたわら、スナップやドキュメンタリーの作品を精力的に発表している。近年の写真展に「#shibuyacrossing」(ソニーイメージングギャラリー)、「煩悩の欠片を燃やして菩提の山へ走れ」(ナインギャラリー)など。昨年9月には『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)を出版。日本写真家協会会員。
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Twitter:@shikanotakashi
今年5月に24-70mmF2.8 DG DN II | Art、さらに6月には28-45mmF1.8 DG DN | Artと明るい標準ズームを立て続けにリリースしたシグマから、怒涛のごとく3本目の矢が放たれた。それが今回紹介する28-105mmF2.8 DG DN | Artだ。28-105mmというレンジのズームレンズは、フィルム時代からキヤノン、ニコン、ペンタックスが発売。ただ正直どれも印象が薄い。
さらにタムロンは同じF2.8通しのレンズを1997年に発売している。しかしこれはわずか3年で製造中止に追い込まれた。僕も今回のシグマの発売で「ああ、そんなのあったなぁ」とその存在を思い出したほどだ。タムロンの敵を討つわけではないだろうが、これまで光が当たることのなかった28-105mmというレンジを、明るい標準ズームをいくつもラインナップするシグマが挑戦してきたことは興味深い。想定しているユーザーはポートレートを撮影する人、だそうだ。
ソニーα7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・28mmで撮影
絞りF8・1/60秒・ISO320・WBオート
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標準ズームといえば広角端は24mmというのが長らく定番化し、さらに最近は20mm以下のレンズも人気を博している。しかし実際のところ、かなり狭い室内であるとか、遠近感を殊更に強調したいというのでなければ、28mmで広さや引きが足りないということは少ないと思う。むしろ望遠側が105mmまで伸びたことで、ポートレートなどボケを生かしたい撮影で無類の強さを発揮する。
ソニーα7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・45mmで撮影
絞りF2.8・1/2500秒・ISO100・WBオート
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今回はポートレートの実写をする時間がなく、街角をスナップしたのだが、普段シグマの28-70mmF2.8 DG DN | Contemporaryを愛用している僕には望遠側が伸びたことは感動的だった。単焦点レンズでは35~50mmを多用するというのもあり、もともと広角端は28mmで足りるのだが、ぐっと被写体を引き付けたいときは、望遠端が70mmでは足りないことが多かったのだ。反対にいざというとき広角端が28mmでは心細いという人は、メインにこのレンズを据えつつ、同じシグマの16-28mm F2.8 DG DN | Contemporaryでカバーするのも一案だ。
ソニーα7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・76mmで撮影
絞りF2.8・1/400秒・ISO400・-0.3補正・WBオート
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ソニーα7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・105mmで撮影
絞りF2.8・1/250秒・ISO250・WBオート
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実写の結果に関しては、美しいボケ味とシャープなキレ味が同居。絞り開放でも気持ちがいい描写だが、絞るとさらに精細感が増していく。また24-70mmF2.8 DG DN II | Artを上回るという高い耐逆光性能と、ズーム全域で最短撮影距離40cmと寄れる点も特徴。望遠端では撮影倍率も1:3.1まで上がり、被写体を大きくクローズアップできる。絞り開放では収差が残って柔らかい描写になるが、1段絞ると引き締まり、2段絞ると被写界深度も影響してシャープに。被写体やイメージに合わせて絞りで描写をコントロールでき、表現の幅が広がってくる。
ソニーα7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・57mmで撮影
絞りF2.8・1/200秒・ISO400・-1.3補正・WBオート
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ソニーα7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・105mmで撮影
絞りF4・1/60秒・ISO400・WBオート
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描写に関しては実にすばらしいのだが、多くの人が迷うのはサイズと重量だろう。全長157.9mm、質量995g(ともにLマウント仕様の数値)は、標準ズームとしてはスーパーヘビー級。しかし今回ソニーa7RIVに装着したが、構えると見た目や数値ほどの重量感はない。デザインも根本から先端に向けて段々で太くなっていく28-45mmF1.8 DG DN | Artと違い、鏡筒の「ツラ」がすっきりと合っている。ここは好みや主観になるが、僕個人はよく写るレンズ特有のオーラを感じた。標準ズームは広角端、望遠端、明るさにそれぞれにユーザーの好みがあるが、このサイズと重量が許容できるなら、ポートレートに限らずどんなジャンルを撮る人でも満足度は高いと思う。
ソニーα7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・44mmで撮影
絞りF9・1/50秒・ISO100・-0.7補正・WBオート
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a7R IV・28-105mmF2.8 DG DN | Art・79mmで撮影
絞りF2.8・1/2000秒・ISO100・WBオート
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Photo & Text by 鹿野貴司(しかの・たかし)