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2024.07.25
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PENTAX 17 レビュー× こばやしかをる|こだわりと楽しさが詰まったハーフサイズのフィルムカメラ

PENTAX 17 レビュー × こばやしかをる|こだわりと楽しさが詰まったハーフサイズのフィルムカメラキービジュアル


ライターこばやしかをるイメージ
■フォトグラファー紹介

こばやしかをる

こばやしかをる
東京都北区出身。写真プリントのデジタルデータ制作を現場で習得。のちに商品・製品企画、フォトギャラリー、写真教室アシスタントなどを経て講師に。撮影・プリント指導を行う他、展示・イベント企画、プロデュース、コンテスト審査員まで、写真に関する幅広い活躍の場を持つ。カメラ・写真雑誌、WEBへの寄稿などライターとしても活動中。日本作例写真家協会(JSPA)会員。主宰するPhotoPlus+にて写真塾、ワークショップも開催している。
https://linktr.ee/kobayashi.kaworu

はじめに

PENTAXブランドとして約20年ぶりとなるフィルムカメラが発売になりました。2022年12月に立ち上げた「フィルムカメラプロジェクト」という、フィルムカメラの文化を残し、継承することを目的とした企画から誕生したカメラです。

しかも、PENTAXブランドのハーフカメラと言うのは本機が初だというから驚きです。

PENTAX 17 本体:正面から見た画像

PENTAX 17は〝ペンタックスイチナナ〟と読みます。一般的な35mm判フィルムの約半分(17×24mm)のサイズに由来し、PENTAX 67へのオマージュ的な呼称なのだそう。

手にとると、見た目の印象よりも断然軽くてサイズ感がとてもよく、グレーの天板と底板はマグネシウム合金製であるにもかかわらず、質量は290g(フィルムとバッテリー除く)と非常に軽量です。

難しい機構はなく、感覚的でありながら、フィルムカメラが初めての人にとっても自分の意志で表現できる撮影体験が得られます。

PENTAX 17 本体:手に持った画像

PENTAX17の特徴

ハーフサイズフォーマットを採用していることで、カメラを通常のポジションで構えるとファインダーをのぞき込んだときに構図が縦になります。これまでスマホカメラでの撮影に慣れ親しんだ人にも親しみやすい構図を意識して作られたとのこと。

また、ハーフサイズフォーマットなので35mm判フィルムで規定の倍の枚数が撮影できます。36枚撮りのフィルムなら72枚、24枚撮りのフィルムなら48枚の撮影ができるという仕組みです。

PENTAX 17 本体:フィルム装填部

裏蓋を開けるとハーフサイズの縦フォーマットであることが構造からもすぐに見てとれます

画質にこだわったという単焦点レンズの焦点距離は25mm(35mm判換算で約37mm相当)。37mm相当のレンズは日常をスナップする醍醐味も、様々な被写体に出合う楽しさも感じられる焦点距離です。

過去に発売され、人気を博したフィルムコンパクトカメラPENTAX ESPIOminiのレンズを参考にして開発され、PENTAXの一眼レフカメラ用レンズで定評のあるHDコーティングを採用することでクリアでシャープな描写を実現しています。

PENTAX 17 本体:レンズ部

逆光耐性の高い現代的なレンズは、フレアやゴーストがほとんどなく、気持ちがいいスッキリとした描写で、フィルムコンパクト用としてなかなか良いバランス

ガイドナンバー6 (ISO100・m)のフラッシュも内蔵。ISO感度100のフィルム、開放F値3.5であれば、約2mの距離までフラッシュが届きます。エモい写真に一役買ってくれそうです。

PENTAX 17 本体:フラッシュ部

フィルムカメラらしい操作と楽しさ

フィルムを巻き上げる手動の巻き上げレバーは、小さいながらも指がかかりやすい形状で、シャッターを押して巻き上げるフィルムカメラならではの感覚と操作を実感できます。フィルムを入れずにただその操作だけを繰り返してしまう、いわゆる〝空シャッター〟の楽しさもあり、何度も試してしまいました。フィルムを装填する前に実際にシャッターを切ってその感触を体験してみてください。

PENTAX 17 本体:巻き上げレバー

巻き上げレバーの感触も軽くシャッター音もとても静か

どんなフィルムを入れて出かけようかなぁ。と、悩むのもフィルムカメラならでは。フィルムにはいろいろな種類とサイズがありますが、もっとも一般的なフィルムは、135フィルムと呼ばれる35mm判のネガカラーフィルムです。写真店での現像も比較的短時間で仕上げてもらえるので初心者にもおススメのフィルムです。

PENTAX 17 本体:フィルムと並べた画像

今回撮影に使用したカラーネガフィルム、FUJIFILM400とKodak ColorPlus 200

ISO感度はフィルムに合わせて手動で設定を行います。背面のメモホルダーにフィルム箱のパッケージを切り取って差し込み、感度を設定します。

PENTAX 17 本体:背面

装填しているフィルムがわかるメモホルダー。装填中のフィルムの種類やISO感度が確認できます

PENTAX 17 本体:上部

ISO感度設定は、小さな黒丸のボタンを押しながら回して設定します

実際にフィルムを装填したら、フィルムカウンターが「0」の位置になるまで巻き上げます。これらのプロセスを手動で行うこと自体がフィルムカメラの楽しみの一つと言えるでしょう。

6つのゾーンフォーカスとファインダーまわりがお気に入り

スマホカメラとは違って、ファインダーをのぞいて撮影する〝カメラらしさ〟を実感できる光学ファインダーは、かつてフィルムコンパクトカメラを愛用してきた人にとってなじみ深い、アルバダ式ブライトフレームファインダーを採用しています。近距離視野補正枠(内側の小さい枠)を備えているのでクローズアップ撮影の構図を決めるときに役立ちます。

レンズの位置はファインダーをのぞいた真下にあるので、カメラを構えて1~2cmほど上位置で撮影するのがポイント

私がこのカメラを初めて操作した時に気に入ったのが、ピントの距離指標となるゾーンフォーカスです。ファインダーをのぞくと、距離指標となるアイコンが目に入ってきます。
一眼レフカメラの交換式レンズであれば、絞り値を設定する部分にあたるのですが、被写体に対して距離を示しているアイコンが分かりやすく、「あまり難しく考えなくてもいいよ」といわれているよう。トイカメラHOLGAでおなじみの感覚で使えるアバウトさがお気に入りです。

ゾーンフォーカスは、クローズアップ・マクロ(0.25m)、クローズアップ・テーブルフォト(0.5m)、 至近距離(1.2m)、近距離(1.7m)、中距離(3m)、遠距離(5.1m~∞)と6つのモードがありますが、レンズ付きフィルムカメラを使ったことのある人なら被写体との距離感覚がつかみやすいはず。被写体が1mより手前か、それ以上離れているかで判断するとピントの合う位置を決めやすいと感じました。

PENTAX 17 本体:ファインダー部

レンズの上部に見えるアイコンがゾーンフォーカス。フィルムカメラを初めて体験する人にもわかりやすい

初心者にもわかりやすい7つの撮影モード

ブルーで刻まれている「AUTO」は、フォーカスは固定、露出は自動で判断し、暗い時にはフラッシュが自動で発光します。フィルムカメラは初心者にとっても一番気軽に撮影しやすいモードです。ただし、フラッシュ撮影が禁止されている場所では要注意。不意にフラッシュが発光しないようにするには「P]モードでの撮影を。

PENTAX 17 本体:上部

<ノンフラッシュ>白い枠で囲まれた撮影モード
P:標準モードは、フォーカスはゾーンフォーカスから自分で選択し、露出は自動。日中の明るい時間帯での撮影にふさわしい。
月:低速シャッターモードはスローシャッターでの撮影で、夕暮れ時などの撮影に適しています。フラッシュは発光しません。
BOKEH:いわゆる絞り優先モード。絞り開放F3.5の撮影が可能になるので、ボケを表現したいときに。
B バルブ撮影モード:フラッシュを発行せず長時間露光(長秒)の撮影ができるモード。ミラーレスカメラなどでは手持ちで撮影できてしまうことも多いですが、フィルムカメラでは、別売りのケーブルスイッチ(CS-205)と三脚を使用しての撮影が必須です。

<フラッシュ撮影>黄色い枠で囲まれたモード
P 日中シンクロモード:露出はカメラ側で自動で判断する。フラッシュが発光するので、逆光や暗いところでの撮影に適しています。
月 低速シンクロモード:夕暮れや夜景をそのままに、手前の被写体を明るく撮影することができます。

基本的に全ての撮影モードにおいて、絞り値とシャッター速度はカメラ任せのオート露出となっています。ゾーンフォーカスで距離を決めることで適切な露出で撮影できるように設定されていますので、私は基本的に「P」モードで撮影しています。

作例|2コマが1つの作品になる面白さ

実は、私自身これまであまり縁がなく、ハーフサイズフォーマットのカメラをほとんど使ったことがありませんでした。今回仕上がった写真を見て、「意図せずハマると面白い」と感じたのが、2コマが1つの作品としてまとまったときです。狙って2コマを1つの作品にすることもできますが、偶発的な写真の方がスナップらしさがあります。

PENTAX 17 作例:ハーフ

PENTAX 17・「P」モード ・ 使用フィルム: FUJIFILM 400

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デザインの面白さが一つにまとまった1枚。快晴の日、屋外・順光での撮影はコントラストの高さが強調される。横の構図で撮影するときはカメラを縦に構えての撮影を

PENTAX 17 作例:ハーフ

PENTAX 17・「P」モード・使用フィルム: FUJIFILM 400

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都電と吊り下げ旗の組み合わせで、共にレトロで昔懐かしい印象の1枚。コマ順が逆だと尚よかったと思いながら、2コマが1つの作品となるタイミングの難しさも実感

作例|ゾーンフォーカスを変更しながら撮影

絞りの代わりとなるゾーンフォーカスを変更しながら撮影することで、撮影者の意図した写真を撮ることができます。

また、ネガフィルムであれば、どの撮影モードでも露出の失敗はほとんどないといっていいほど適正露出が得られる見事な写りです。フィルムカメラが初めての人にとっても安心です。写真は撮影したままの状態でデータ化してもらっています。

PENTAX 17 作例:街並み

PENTAX 17・「P」モード・使用フィルム: FUJIFILM 400

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趣のある場所や建物はシャッターを切りたくなる。初夏の空気とたたずまいの印象を、そのまま写し込むようなパンフォーカスが気持ちいい

PENTAX 17 作例:絵馬

PENTAX 17・「BOKEH」モード・使用フィルム: FUJIFILM 400

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AUTOモードだとパンフォーカスになりそうなシーンで奥行き感を表現するために、BOKEHモードにし、ゾーンフォーカスをテーブルフォト(0.5m)の位置にして撮影した

PENTAX 17 作例:植物

PENTAX 17・「P」モード ・使用フィルム: FUJIFILM 400

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重なり合う緑色のトーンが美しく、葉の肉厚な立体感がよく写っていてフィルムらしさを感じる。ゾーンフォーカスマクロ(0.25m)で、デザイン的に切り取った

PENTAX 17 作例:植物

PENTAX 17・「BOKEH」モード・使用フィルム: FUJIFILM 400

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ゾーンフォーカスをマクロ(0.25m)で撮影。ローアングルで木漏れ日を玉ボケで表現した。シャッターに9枚羽の虹彩絞りを採用したことで、美しい玉ボケを実現できたという

PENTAX 17 作例:マグカップ

PENTAX 17・「P」モード・使用フィルム: FUJIFILM 400

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部屋の一角でお気に入りのマグカップをフラッシュなしで撮影。ゾーンフォーカスをテーブルフォト(0.5m)の位置で撮影してみたところ、ばっちりピントが合った

PENTAX 17 作例:東京駅

PENTAX 17・「P」モード・使用フィルム:KODAK ColorPlus 200

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フラッシュなしで暗い室内から屋外の遠景を狙ってみた。手前の人物がつぶれてしまうかと思ったが、さすがフィルムカメラの実力。屋外の雨の雰囲気もしっかりと伝わる。ゾーンフォーカスは(1.7m)

PENTAX 17 作例:雨に濡れた地面

PENTAX 17・「低速シャッター」モード・使用フィルム:KODAK ColorPlus 200

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雨で暗かったため、低速シャッターモードで撮影した。スローシャッターによるブレで躍動感が生まれる。人物の動きだけでなく、水面の揺らいだ感じもいい。エモいといわれる写真かな?

作例|フラッシュ撮影

フラッシュ撮影は、逆光などのシーン、夕暮れ時から夜にかけての時間、また暗い室内で積極的に活用するようにすれば露出の失敗がなく撮影ができます。

PENTAX 17 作例:フラッシュモードで撮ったアーケード街

PENTAX 17・ フラッシュ「P」モード ・ 使用フィルム:KODAK ColorPlus 200

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薄暗いアーケード街の中での撮影。フラッシュが当たって、黄色と赤の植木鉢が鮮やか。被写体までフラッシュが届く距離が近いほど鮮明な写りになる

PENTAX 17 作例:夕暮れの東京駅

PENTAX 17・ フラッシュ「低速シンクロ」モード ・ 使用フィルム:KODAK ColorPlus 200

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フラッシュを使用することで雨や雪が反射して玉ボケになる。薄暮時間の空の青さもしっかりと引き出した。暗い場所や悪天候など、撮影条件が悪い時ほどフラッシュを活用したい

フィルムで撮影したなら、ぜひプリント体験を

撮影後の注意点として、フィルムを現像に出す時には「ハーフサイズフォーマットカメラで撮影した」ことをお店のスタッフに事前に伝えておくのが重要なポイントです。

今回の現像は写真店チェーンのパレットプラザを利用してみました。お店の混雑状況にもよりますが、待つこと約1時間で現像が仕上がります。現像と同時にデータ化をお願いし、さらにデータをプリントしてみました。一般的なLサイズよりも小さいサイズでプリントができ、ハーフサイズフォーマットにふさわしいサイズでおススメです。

PENTAX 17 作例:プリントした画像

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Lサイズの半分ほどのサイズになるトレカサイズプリント

フィルムで撮影した風合いはプリントにこそ生きてくるので、スマホの中にデータを入れたままにせず一度はプリントを体験してもらいたいと思います。

おわりに

想像以上に小さくて軽い。そして、しっかりカメラしてる。コンパクトカメラやトイカメラの感覚と、一眼レフカメラのいいとこ取り。撮影者の個性や創造性を発揮できるよう、あえて完全に全自動のカメラにしなかったというのも納得です。

ゾーンフォーカスは苦手な人も多いかもしれませんが、「ピントを合わせる」でなく「距離を合わせる」という感覚で撮影すればピントが外れることもほとんどなく、ばっちりと写ります。

撮影しながら「撮れているかな?」と、期待と不安が入り混じる感覚はフィルムカメラならでは。PENTAX 17がファーストフィルムカメラになる人も、改めてフィルムカメラで撮影する人にも、ワクワクする感覚を思い起こさせてくれるでしょう。

次はどんなフィルムで撮ろうかな。

作例に使用カメラ

【商品情報】PENTAX PENTAX 17 ダークシルバー

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PENTAX PENTAX 17 ダークシルバーバナー画像

Photo & Text by こばやしかをる

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