ある程度カメラに慣れてきたら、フィルターの使いこなしをマスターしましょう。
中でもカメラに入る光の量を減らしてくれる「NDフィルター」を使えば、肉眼ではみられない幻想的な写真が撮影できます。それだけでなく、実は背景がボケた綺麗な写真や動画ではNDフィルターが使われている事が多いのです。
今回はNDフィルターの選び方と使い方、さらにおすすめの商品を5種類ご紹介します。プロのカメラマンなら必須の技術と言っていいNDフィルターの使いこなしをマスターすれば、ますますカメラの世界にのめり込んでしまうでしょう!
NDフィルターとは?
NDフィルターを購入する前に知っておきたいこと
絞り
シャッター速度
ISO感度
NDフィルターはどんなときに使うのか?
NDフィルターの選び方
レンズのフィルターサイズを確認する
目的を確認する
NDフィルターの値と選び方
動画撮影時のNDフィルターの選び方
便利なバリアブルNDフィルター
おすすめのNDフィルターシリーズ5選
Kenko(ケンコー) PRO1D Lotus ND シリーズ
marumi(マルミ) EXUS ND シリーズ
Kenko(ケンコー) グラデーション ハーフ
marumi(マルミ) マグネット式角型フィルター シリーズ
Kenko(ケンコー) バリアブル NDX II
NDフィルターの使い方
付け外しのタイミング
動画撮影ではISO感度にも注目
取り外しに便利なManfrotto Xume(ズーム)
NDフィルターのメンテナンス方法
まとめ
NDフィルターのNDは「Neutral Density(ニュートラル・デンシティー)」の略で、色バランスを変える事無く光の量を減らす(減光する)フィルターです。
通常写真の明るさ(=露出)のコントロールは、絞り(光の量)、シャッタースピード(時間)、ISO感度(感度)の3つを調整する事で行いますが、何かの原因で3つの要素のうち1つないしは複数が変えられない(固定される)場合に、第4の要素として使われます。
減光される量が固定されたNDフィルターと、1枚で効果を変える事が出来るバリアブルNDフィルターがあります。
NDフィルターは主に露出のコントロールに使われます。
ここでは、露出をコントロールする為の3つの要素「絞り」「シャッター速度」「ISO感度」について解説します。基本的に露出はこれらの3つの要素を変える事でコントロールしますが、これら以外の第4の要素として登場するのがNDフィルターなのです。
絞りはレンズを通る光の量をコントロールする為の装置です。通常はレンズの中にある穴の大きさを変える事で、通る光の量を変化させます。
一般的に「F値」という値で表され、F1.4といったように小さい値になればなるほど光が通る量が多くなり(絞りの穴が大きくなる)、F11といった大きい値になる(絞りの穴が小さくなる)と光が通る量が少なくなります。
レンズのスペックにある50mm F1.4といった数字は、そのレンズの絞りの穴が全く閉じていない状態(最も光の量が多くなる時)のF値(開放F値という)を記載するルールになっているのです。
シャッターは光をセンサーにあてる時間を調整する装置で、シャッターが開いている時間の事をシャッター速度と言います。
同じ明るさの写真を撮ろうと思ったら、光の量が倍になる(F値が1段小さい数値になる)と時間は半分にする事になり、例えばF2.8、シャッター速度1/60で撮った写真と、F4、1/30で撮った写真は同じ明るさになるのです(ISO感度は固定)。
又、1秒間などのスローシャッターを切る事で被写体をわざとぶらす表現は、ボケと並んで写真ならではの表現として良く使われます。
ISO感度はセンサーが光に反応する強さです。
ISO感度の数値が大きくなるほど感度が良くなり(感度が高くなる)、少ない光、速いシャッター速度でも写真が撮れるようになります。
しかし、一般的に感度が高くなるとノイズが多く発生して画質が劣化するので、ISO感度は出来るだけ低い値で撮影した方が画質は良くなります。
写真でNDフィルターを使うシチュエーションは大きく分けて2つあります。ひとつは、日中スローシャッターを切る時です。
滝などの水の流れを表現する時には、カメラを三脚に固定してスローシャッターを切りますが、その際適正露出を得ようとすると、最小絞り、最小ISO感度でも値が足りなくなってしまいます。
そんな時、露出をコントロールする第4の要素としてNDフィルターが使われるのです。
NDフィルターを使うもうひとつのシチュエーションは、明るい条件下でボケを大きくする為にレンズのF値を小さくして使う時です。
このようなシチュエーションでは、ISO感度を最低にしてもシャッタースピードが最高速度を超えてしまうので、やはり第4の要素としてNDフィルターを使います。
これは頻繁に起こる事なので、日中、大口径レンズを使うならNDフィルターの携行は必須と言っていいかもしれません。
NDフィルターの選び方について解説します。
併せて便利なNDフィルターを紹介していますので、撮影目的や使い方に併せて最適なNDフィルターを選んで下さい。
他のフィルターと同様に、NDフィルターを選ぶ際にも使うレンズのサイズを必ず確認しましょう。
又、複数のレンズに装着する予定があるなら、一番大きなフィルター口径に合わせておくのがおすすめとなります。何故なら、大きなフィルターは小さなフィルター口径のレンズに「ステップアップリング」という道具を使って簡単に装着出来るので、1枚のフィルターを使いまわす事が出来るからです。
最近のレンズには、フィルター口径を統一したシリーズもあるので、動画などNDフィルターを使うのが当たり前の撮影なら、こういったレンズシリーズを選ぶのもおすすめです。
NDフィルターが必要になるのは、ある程度限られたシチュエーションになります。自分の撮影目的をよく考えて、必要な値を購入するようにしましょう。
具体的には、開放F値の明るいレンズを使う時、スローシャッターを日中使う時(水の流れを表現する時など)、それに本格的な動画撮影を行う時です。
これらの撮影では、NDフィルターがほぼ必ず必要になるので、是非購入を検討しましょう。
NDフィルターには減光出来る量によって値があります。例えば、ND16といったらフィルター無し→ND2→4→8→16と4段階減光出来る事を表します。
NDフィルターを選ぶ際に特に迷うのは「どの値を選べばいいか」という事ではないでしょうか。
一般的なNDフィルターの値は2段(ND4)~6段(ND64)くらいだと思いますが、迷ったら強めを選ぶ事をおすすめします。最近のデジタルカメラは高感度性能が高く幅広いISO感度が実用的に使える上、手ぶれ補正が搭載されているので、基本的に値が強くて困る事は殆ど無いからです。
難しい理由はここでは解説しませんが、動画撮影ではシャッタースピードを1/30~1/60前後から変える事が殆ど出来ません。絞りはピントの合う範囲を調整するのに使いますから、露出は基本的にISO感度とNDフィルターで調整する事になります。
よって動画撮影ではNDフィルターが必須アイテムとなるのです。
更に、動画でも低感度で撮影した方が画質は良くなるので、値の違う複数のNDフィルターを使い分ける必要が出て来ます。
動画撮影では多くの値のNDフィルターが必要ですが、1枚のフィルターで値が可変するタイプのフィルターがあります。バリアブルNDフィルターです。
煩わしいフィルター交換の手間が省けるので、動画ユーザーには愛用者の多いフィルターです。
バリアブルNDフィルターは、安価な粗悪品を使うと、色ムラなどの問題が出るケースがあるので、メジャーなメーカーの製品を購入する事をおすすめします。
おすすめのNDフィルターを5種類ご紹介します。
特にバリアブルNDフィルターは、安価な製品だと色ムラなどのトラブルがあるケースもあるので、信頼のおけるメーカーの製品を選びましょう。
Kenko(ケンコー) PRO1D Lotus ND シリーズの特徴は撥水・撥油コーティングが施されている事です。
付け外しが多いNDフィルターは、手で触ってしまったりして汚れが付きやすいので、汚れをクリーニングし易い撥水・撥油コーティングが最も効果を発揮するフィルターのひとつと言えます。
勿論、使い勝手だけでなく、性能的にもカラーバランスを損なわない優れたNDフィルターとなっています。
marumi(マルミ)の高性能フィルターシリーズ「EXUS」のNDフィルターです。
高品質なガラスと高性能なコーティングで安心して使える製品となっています。
値や口径など多くのバリエーションを持ち、品質、性能、価格のバランスがいいので、複数枚のNDフィルターを用意しなければならない動画ユーザーにもおすすめです。
半分は素通し、半分だけがNDフィルターになっているハーフNDフィルターです。
例えば夕日の撮影など、画面の半分だけを減光して明るさを均一にするのに使います。通常は四角いタイプが多いハーフNDフィルターですが、Kenko(ケンコー) グラデーション ハーフは一般的な丸型フィルターです。
素通し部分とND部分の境目のグラデーションのタイプによって、ソフトとハードの2種類が用意されています。
marumi(マルミ) マグネット式角型フィルター シリーズはマグネットを使ってワンタッチで脱着出来る角型フィルターです。
NDフィルターだけでなくハーフNDなど多彩なバリエーションを持ち、高度なフィルターワークが可能になっています。
特にハーフNDでは、明暗差の境目が中心になくても、フィルターを上下して調整する事が出来るので便利です。
動画ユーザーに人気の、効果を可変させる事が出来るNDフィルターがバリアブルNDフィルターです。
Kenko(ケンコー) バリアブル NDXは効果をND2.5~ND450相当(使用範囲)に可変出来るので、1枚でNDフィルターが必要な殆どのシチュエーションに対応出来ます。
少し高価ですが、品質の良さでプロカメラマンからも支持されている製品です。
NDフィルターは露出を調整する為のフィルターですが、取り付けた際の露出自体は通常カメラが決めてくれるので使うのはそれほど難しくありません。
難しいのは付け外しのタイミングではないでしょうか。
ここでは写真、動画それぞれの付け外しの際の注意点と、付け外しに便利なアイテムについてご紹介します。
NDフィルターを取り付けるタイミングを見極めるのは意外と難しいところがあります。
シャッター速度とISO感度にいつも気を配っていないと、気付いたらシャッタースピードが足りずに露出オーバーになっていた、といった事になってしまいます。
逆に取り付けのタイミングが速過ぎるとISO感度が高くなってしまい画質が損なわれる可能性もあるので、NDフィルターを使う際にはいつも以上にシャッター速度やISO感度に気を配っておく必要があると言えるでしょう。
動画撮影では、基本的にISO感度で露出を適正に保っているので、常にISO感度に注意をはらっておく必要があります。
オーバー側に適正露出を外す事が多い動画撮影では、NDフィルターを付け忘れる事は少なく、逆に、NDフィルターを外すのを忘れて、高いISO感度で撮影を続けてしまい、画質が悪くなってしまったという事が多い気がします。
最低感度以上に最高感度にも気を付けてフィルターを外すタイミングを外さないようにしましょう。
フィルターはねじ込み式になっているので、撮影中の脱着はとても面倒な上、落下させてしまう危険が伴います。
そんな問題を解決してくれるのがManfrotto Xume(ズーム)で、あらかじめレンズ、フィルター双方にXumeを装着しておけば、磁石の力でパチンと素早く簡単にフィルターの脱着が行えます。
頻繁にフィルターの脱着を行う動画ユーザーにおすすめのアクセサリーです。
頻繁に脱着するNDフィルターは、他のフィルター以上に汚れやすく頻繁にクリーニングしておく必要があります。
NDフィルターのメンテナンスは、レンズや他のフィルターと同様、ブロアーでホコリなどを吹き飛ばした上でレンズクリーニングペーパーで汚れを拭うといった方法です。
動画ユーザーは撮影中に頻繁に手でさわる事からキズなども付きやすいので、定期的に買い替える事をおすすめします。
・NDフィルターは露出を決める第4の要素です
・大口径レンズを開放で使うならNDフィルターは必須と言えます
・動画の露出コントロールは基本的にISO感度とNDフィルターで行います
・用途によりハーフNDやバリアブルNDといった特殊なNDフィルターも便利です
フィルター選びの参考にしていただければ幸いです。