ペンタックス のコンパクトなフィルム一眼レフカメラ MX を使って、久しぶりにフィルムで写真を撮ってみました。フィルム時代の代表的なマニュアルカメラである ペンタックス MX は、フィルム一眼レフの操作や、写真の基本を知るのに最適なカメラです。
今回は、そんなMXを使って、使い方から露出の基礎までを徹底解説したいと思います。
ペンタックス MX は、1976年発売のマニュアル一眼レフカメラで、ピントはもちろん、露出、フィルムの出し入れなど、写真を撮るのに必要な、ほぼ全ての動作を撮影者が手動で行わなければならないカメラです。
と言うと、初心者には少し難しく、ハードルが高く感じるかもしれませんが、ちょっとした理屈さえ覚えてしまえば、だれにでも出来る事ですし、なにより、ピントを合わせたり、フィルムを巻き上げたりの動作は「一眼レフで写真を撮っている」という感覚をリアルに味わえて楽しいものです。
なにより、覚えて、考えて、実際に手を動かして写真を撮れるようになれたら、すごく楽しい!
友達に、ちょっと自慢できるかもしれません。
又、フィルムを入れて、ピントや露出を自分で合わせて写真を撮り、現像に出して、完成した写真は、唯一無二のものであり、簡単にコピー出来るデジタルとは一味違った「作品」となるでしょう。
フィルムのマニュアルカメラは、扱いがちょっと面倒な部分がありますが、使いこなせれば作品作りの最高の相棒となるはずです!
フィルムカメラはフィルムを入れないと撮れません(あたりまえです)。
フィルムを入れる為に最初に必要な事はなんでしょうか。それは裏蓋を開けることです。どうやって?
この時代のフィルム一眼レフカメラの多くは、巻き戻しクランクを引っぱり上げる事で裏蓋が開きます。
古いカメラなので、たまに巻き戻しクランクを引っ張っても、裏蓋の建付けが悪くなっていて、開かない事があります。そんな時は、巻き戻しクランクを引っ張り上げ、ロックを解除しつつ、裏蓋を引っ張ってみて下さい。
それでも開かない時は、壊れている可能性があるので、買ったお店に相談しましょう。
次にフィルムを入れます。
ペンタックス MX は、出っ張りがある方を下にしてフィルムを入れます。
MX に限らず、一眼レフカメラの多くは、出っ張りが下に来るようにフィルムをいれます。
フィルムを入れたら、先ほど裏蓋を開けた際に上がっている巻き戻しレバーを下ろして、フィルムを固定します。
次に、フィルム先端を持って、白いストローの束のような部品のところまで引っ張り出し、ストローの隙間にフィルムを差し込みます。
フィルムの先端を固定する方法はカメラによって違いますが、ペンタックス はかなりやり易いです。
さて、ここはちょっと大切な箇所なので注意してください。
シャッターを切って、巻き上げレバーを動かしてフィルムを軸に巻き取っていきますが、その際、必ずフィルムに空いている小さな穴(パーコレーションという)に、巻き上げ軸の向かって左側にあるギアが入っている事を確認しましょう。
これを忘れると、巻き上げ軸からフィルムが外れてしまい、正しく巻き上げられず写真が撮れない、なんてことがありますので注意しましょう。
巻き上げ軸にフィルム先端が巻き付いているのを確認したら、裏蓋をしめて、カウンターが0になるまで、シャッターを切ってフィルムを巻き上げます。
その際、巻き戻しクランクが回っていれば、正しく巻き上げがされている、という事なので、巻き上げの際に確認しましょう。
これで、フィルムの装填は完了です!
初心者にハードルが高いのがピント合わせ。
しかし、一眼レフカメラの特徴の一つは、撮影レンズを通った光をファインダーで見る事が出来る、という事です。
つまり!ファインダーで見た映像でピントが合っていれば、出来上がった写真のピントも合っている、という事です。
とは言え、実際に撮るとなると本当に合っているのか心配なもの。
そこで、ファインダーのピント合わせを補助する2つの機能「スプリットイメージ」「マイクロプリズム」を使ってみましょう。
最初にスプリットイメージの使い方から。
ファインダーの真ん中にある丸の中で、像が2つにズレていたらピントが合っていません。
ピントリングを回して、像が1つになったら、そこにはピントが合っています。
これがスプリットイメージの使い方です。次にマイクロプリズムです。
スプリットイメージの丸の外側のドーナツ状の部分がマイクロプリズムです。
像が、モザイク状にぼやけていたらピントが合っていません。
ピントリングを回して、モザイクが消えて、クリアになったらピントが合ったという事です。
初めてマニュアルでフィルムカメラを使う際、最もハードルが高いのが露出だと思います。
正しい露出、すなわち「適正露出」を導き出すためには、露出を決定する3つの要素を理解しておく必要があります。
以下にその3つの要素を説明します。これがわかれば、立派なカメラマンです!
◇◇◇◇◇
初めに、露出とはなんでしょう?
写真は、フィルムに塗ってある、光で化学変化する薬剤(乳剤)に光をあててつくりだします。
この光をあてる「時間」「量」、そして薬剤の光に反応する「感度」の3つの関係が露出です。
フィルムに光を当てる時間を変えるのがシャッターです。
フィルムの前にあるシャッターという幕(MXのシャッターは、なんと布でできています!)を、開けて閉じる動作で、光をあてる時間をコントロールしています。
ペンタックス MX の場合、シャッタースピードは1~1/1000秒まで変えられます。
フィルムにあてる光の量をコントロールするのが絞りで、レンズの中にある穴の大きさを変える事で光の量を変化させています。
通常「f」という単位で表され、数値が小さくなればなるほど、フィルムに届く光の量が大きくなります(値が小さくなると大きくなるのがちょっとややこしい)。
又、fの値が小さくなる(光の量が多くなる)ほど、ピントが合う範囲が狭くなる(背景が大きくボケる)ので、一眼レフカメラっぽい写真は、このfの値が小さいレンズで撮られている事が多いです。
背景がボケている写真は、f値の明るいレンズでないと撮れない、と誤解される事があるのですが、ピントの合う範囲はf値だけで決まるわけではありません。
「被写体までの距離を短くする」「焦点距離の長いレンズを使う」といった方法でも、背景のボケを大きく出来るので、ズームレンズなどf値の暗いレンズを使っていたら、試してみて下さい。
最後に、フィルムが光に反応する強さ、すなわち「感度」についてです。感度は、フィルムごとに決まっているので、値をそのままカメラに設定すればいいので簡単です。
感度が高いフィルムは、光を当てる時間を短く出来るので、シャッタースピードを速くでき、シャッタースピードが速いと、ブレずらくなるので、暗い場所でも手ぶれの無いシャープな写真が撮れます。
(上の写真では、ペンタックスMXの感度の単位が「ASA」になっていますが、ISOと値は同じなので気にしないで下さい。ミリバールとヘクトパスカルみたいなものです(笑))
一般的に「1/レンズの焦点距離」よりも速いシャッタースピードを切ると手振れしないと言われます。
手振れしないように、シャッタースピードを速くする為には、感度の高いフィルムを使うのが有効的ですが、反面、感度の高いフィルムは、光を受ける薬品のツブが大きいので、ザラザラした写真になってしまいます。
ISO800くらいまでは比較的滑らかなので、使用する状況でISOいくつのフィルムを使うか選択しましょう。
又、本来、ザラザラした写真はあまり好まれず、出来るだけ感度の低いフィルムを使うのが一般的でしたが、最近は、わざとザラザラした質感にする為に、感度の高いフィルムを使う方もいるようです。
フィルムによって写真の風合いが変わる、これもフィルムカメラを使う楽しみの一つですね。
さて、露出の3つの要素がわかったところで、実際に適正露出を設定してみましょう。
適正露出とは、フィルムに丁度いい濃度で写真が写し取られる「シャッタースピード」「絞り」「ISO感度」の組み合わせの事です。ISO感度はフィルムにより決まるので、撮影時に実際に組み合わせるのは「シャッタースピード」「絞り」の2つです。
適正露出は、明るさによって変化するので、写真を撮る時に、その場所の明るさがわからないと適正露出がわかりません。この明るさを測る機械が「露出計」です。
ペンタックスMXは、露出計が内蔵されており、絞りとシャッタースピードの関係が適正露出になると、緑色のLEDが点灯する仕組みになっています。
又、適正露出を示す、LED表示は上下に「赤・黄・緑」の3色に色分けされ、赤は露出がズレている、黄はだいたい合っている、緑は合っている事を表します。
アンダーは暗く写る、オーバーは明るく写る事を表します。
1段オーバーだった場合、そのままだと明るく写りすぎてしまうので、シャッタースピードを1段(例 1/125→1/250)速くすると適正露出の緑のLEDが点灯するはずです。出来るだけ緑が点灯するように、シャッタースピードと絞りを調整します。
最初は、なんとしても緑のランプが点灯するようにしたくなりますが、使うフィルムがネガカラーフィルム(普通のフィルム)なら、黄色の点灯でもだいたい大丈夫です。
コツとしては、ネガフィルムの場合、迷ったらオーバー目にすると失敗が少なくなります。
適正露出を設定した後、絞りを1段明るく(f値を小さい値にする)したい事もあります。
そんな時は、光をあてる時間を1段短く(シャッタースピードを速く)すればOKです。
さて、ここまで何度か出て来た、「露出が1段変わる」とは、シャッタースピードなら光をあてる時間を半分(又は倍)にする、絞りなら光の量を半分(又は倍)にする事です。
絞りは値が少し複雑ですので、以下に1段ごとの数値を書いておきますので、覚えてしまうといいでしょう。
f1.4→f2.0→f2.8→f4.0→f5.6→f8.0→f11→f16→f22(間に半段が入る時もある)
ペンタックスMXの場合、シャッタースピードは1~1/1000秒まで、今回使用したレンズ PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited のf値はf1.8~22までになります。
さて、フィルムを入れて、ピント、露出が分かったら写真をどんどん撮ってみましょう。デジタルカメラと違って、仕上がりをその場で確認出来ないフィルム写真は、ちょっと緊張しますが、それこそがフィルム写真の醍醐味なので、是非楽しみましょう!
さて、撮影が完了したら、フィルムを巻き戻してカメラから取り出します。
36枚撮りのフィルムが入っていても、36枚以上撮れる事がありますが、最後の1枚まで撮ったあとフィルムを勢いよく巻くと、極寒冷地などでは切れてしまう事があるようなので、36枚までで巻き戻すか、それ以降は巻き上げをやさしく行うようにしましょう。
私は貧乏性なので、巻き上げられなくなるまでシャッターを切る派です。
それでは、フィルムを巻き戻します。
先ず初めに、フィルムの逆回転防止のロックの解除です。
カメラの底部を見て下さい。
先ず、このフィルムの逆回転防止解除ボタンを押し込んで下さい。
ボタンが押し込まれた状態になっているのを確認したら、巻き戻しクランクを回して、フィルムを巻き戻します。
しばらく、くるくる回すと、パチッ!っと小さな音がして、急に巻き戻しレバーが軽くなります。
これで巻き戻しは完了です。
裏蓋を開けて、フィルムを取り出し現像に出しましょう。写真を撮り終わってからも、現像、プリント、と写真が完成するまで少し時間がかかりますが、これこそがフィルムカメラを使う醍醐味です!
今回は、フジヤカメラと同じ中野にある「コイデカメラ」さんに現像とプリントをお願いしました。
ネガカラーフィルムならだいたい即日受渡ししてもらえるのでとても便利です。
今回は、完成まで2時間弱でしたが、どんな写真が撮れているか、久しぶりにワクワクする時間を過ごせました。
久しぶりに、ネガを見ました(笑)。
中野のコイデカメラさんは、しゃれた袋に入れてくれて、ちょっと気持ちが上がります。
とりあえず、露出もピントも問題なく撮れていて良かったです。デジタルでは味わえない緊張感です。
中野のコイデカメラさんは、ネガフィルムらしい色あいでプリントしてくれて、満足な仕上がりです。プリントするお店によって色合いが微妙に違うのもフィルムの面白さなので、気に入ったプリント店を見つけるのも楽しみの一つです。
フィルム写真は、手間はかかりますが、それぞれのプロセスを楽しめれば、デジタルとは違った満足感が味わえると思います。
今回、カメラはクラシックな「MX」を使いましたが、レンズについては、オートフォーカスも出来る、PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited を使いました。
ペンタックスは、最新型のデジタル一眼レフカメラも、フィルム一眼レフの時代と同じ K マウントを採用しているので、現行のレンズにも、フィルムカメラにも装着できるものがあるので、便利です。
特に今回使用した「Limited」シリーズは、デザインもクラシックで、古いフィルムカメラでの使用に必要な絞りリングもあるので、おススメのシリーズです。
今回使った FA 77mmF1.8 Limited は、標準より少し画角の狭い中望遠レンズですが、構図を整理し易く背景を大きくボカす事も得意なので、初めての方にも「一眼レフ」らしい写真を撮りやすいレンズだと思います。