国産初となるモノクローム専用機、PENTAX(ペンタックス)K-3 MarkⅢ Monochromeが登場
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochromeをさっそく実写した!
基本のカスタムイメージ3種のほか、自分好みの効果を細かくカスタマイズできる
ライバルとなるモノクロ機、ライカM10モノクロームとの比較
LEICA(ライカ) M10 Monochrome で撮影
K-3 MarkⅢ Monochromeカスタムイメージノーマルで撮影
K-3 MarkⅢ Monochromeカスタムイメージハードで撮影
K-3 MarkⅢ Monochromeカスタムイメージソフトで撮影
「ACROSモード」を備えたFUJIFILM X-Pro3との比較
富士フイルムX-Pro3の「アクロスモード」で撮影
K-3 MarkⅢ Monochromeデジタルフィルターハイコントラスト
K-3 MarkⅢ Monochromeカスタムイメージノーマルで撮影
K-3 MarkⅢ Monochromeカスタムイメージソフトで撮影
K-3 MarkⅢ Monochromeカスタムイメージハードで撮影
PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome作例集
まとめ
作例に使用したカメラ
PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome
作例に使用したレンズ
HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR / HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
1970 年東京生まれ。早稲田大学第一文学部中退。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。作家活動と共に東京・四谷三丁目にてギャラリー・ニエプスを運営。都市のスナップショットを中心に作品を発表し続けている。国内各地の他、東欧、ロシア、キューバ、中国、香港、パリ、ニューヨークなど世界各地を取材。国内外にて個展、グループ展多数開催。第29回東川賞特別作家賞受賞。第24回林忠彦賞受賞。
最初に告白するが、僕はフィルム時代に多少ペンタックス67やペンタックスLXを使用していた時期があるくらいで、いわゆるペンタキシアンでは全くない。
ミラーレス全盛の中、徹底して一眼レフにこだわる硬派なメーカーとして、その孤高の姿勢には敬意を覚えるものの、少し距離を置いて見ていたというのが正直な所である。
しかし、モノクロ専用機となれば話は別だ。現行APS-Cサイズのフラッグシップ、PENTAX(ペンタックス)K-3 MarkⅢにモノクロ専用バージョンが誕生すると聞いて俄然興味が涌いてきた。これまでのモノクロ専用機としては、ライカによる3世代に渡るライカMモノクロームシリーズとQ2モノクロームがある。
また、国産機としてはルミックスのLモノクローム、富士フイルムのアクロスモード、OM SYSTEMのラフモノクロームなど、モノクロモードにも力を入れている機種はいくつかあったが、国産のモノクロ専用機は自分の知る限り初めてである。
果たして、どのようなカメラであるのか、早速試用してみた。初めて手にするPENTAX(ペンタックス)K-3 MarkⅢ Monochromeはパッと目にした所ではノーマルのK-3 MarkⅢとほとんど見分けがつかないほど似通っている。
しかし、詳細に見るとメーカー名や機種名のロゴの文字入れが白からグレーに変更され、各種ボタンのカラーが徹底的にモノトーンになっていたりと特別仕様になっていることに気がつく。
外観は基本的にはノーマルのK-3 MarkⅢと変わらない。「PENTAX」ロゴなどの文字は、ノーマルモデルの白ペイントとは異なるグレーのペイントとなっている。背面モニター左上「Monochrome」のささやかな表記が入っている。
さらに、スイッチを入れると上面の液晶パネルのバックライトが白く光っていたり、背面モニターの表示からも色彩が省かれている。これまでノーマル機を使ってきたユーザーには、こうしたきめ細かい違いがモノクロ専用機であることを印象づけるだろう。ボディの造りは非常に良く、手触りや操作感からも丁寧に育て上げられた完成度の高いカメラであることが伝わってくる。
上面液晶パネルのバックライトが白色に変更されている。こうしたこだわりが嬉しい。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW・22mm(35mm判換算34mm相当)で撮影
絞りF2.8・1/50秒・ISO6400・WBオート・JPEG
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雨上がりの夜のストリートスナップは僕の好きなシチュエーションだ。思い切りコントラストを高め、飛ばす所は飛ばして夜の光を強調することで都会の夜を印象づけることができる。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW・16mm(35mm判換算24mm相当)で撮影
絞りF2.8・1/40秒・ISO3200・WBオート・JPEG
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都会のネオンに照らされて妖しく浮かび上がった夜桜。うっすらと明るさの残った空との対比が美しい。モノクロームの桜もまたオツなものである。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW・31mm(35mm判換算47mm相当)で撮影
絞りF8・1/100秒・ISO200・WBオート・JPEG
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川べりの漁師小屋の脇に「警戒船」というプレートが打ち捨ててあって、その文字の放つ気配に一瞬ギョッとさせられた。こうしたモチーフをモノクロームの削ぎ落とした表現で捉えることで強い印象の写真になる。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW・31mm(35mm判換算47mm相当)で撮影
絞りF8・1/125秒・ISO400・WBオート・JPEG
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お台場の観光スポットの風景の中で、思い思いに佇む人々の姿が、舞台の書き割りのようで面白い光景となっていた。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW・45mm(35mm判換算69mm相当)で撮影
絞りF2.8・1/80秒・ISO2500・WBオート・JPEG
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ライブイベントでのアーティストのパフォーマンスでの真剣な表情を捉えた。肌や髪の描写も美しく、凛とした格好良さを表現できた。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影
絞りF8・1/50秒・ISO3200・WBオート・JPEG
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やや絞り込んで撮影した事で綺麗な光芒ができた。ビルの面白い外壁と保護用のネットのディテールが克明に描写された。
まずは基本設定と言えるカスタムイメージの、ソフト、ハード、スタンダードの3種で比較撮影してみたが、デフォルトの状態でもそれぞれ十分に完成されたモノクロ画像を得ることができた。
RGBカラーフィルターを排したセンサーによる極めて高い解像性能によって通常のデジタル一眼より数段上のディテールを描写していると言えるだろう。そのシャープで繊細な画像は、モニターで見ても目を見張るばかりである。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影
絞りF4・1/6400秒・ISO400・WBオート・JPEG
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カスタムイメージノーマルで撮影。シャープで階調もしっかりと出ている。標準的なモノクロームのお手本の様な画質。まずは、このカスタムイメージを基準に設定を詰めていくのが良いだろう。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影
絞りF4・1/6400秒・ISO400・WBオート・JPEG
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カスタムイメージハードで撮影。ローキーの黒々とした空のトーンが印象的で、全体的に重々しい画質だ。同じ露出でもこのモードではアンダー気味になるようだ。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影
絞りF4・1/6400秒・ISO400・WBオート・JPEG
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カスタムイメージソフトで撮影。ハイキーでコントラストが低く全体的に薄めの描写だ。だが、決して眠くは感じない。解像力の高さが生きている。
カスタムイメージそのままでは飽き足らない場合には、これをベースに調色、キー、コントラスト、コントラスト(明部)(暗部)シャープネスなどの微調整で、より求めるイメージに近づけていくことが可能だ。
さらにデジタルフィルターを使用すれば粒状感、コントラスト、シェーディング、ネガポジ反転など、好みの効果も作ることができる。モノクロに特化して、これほど様々な設定をコントロールできる機種は他にないだろう。
カスタムイメージのハード、ソフト、スタンダードの3つのモードが基本設定となる。
カスタムイメージを元に、調色、キー、コントラスト(明部、暗部)、ファインシャープネスなど、更に細やかな設定が可能だ。
デジタルフィルターでは、粒状感、ハイコントラストの設定ができる。
僕自身は、ストリートスナップや都市風景を主な被写体とするので、カスタムイメージをハードにしてデジタルフィルターで粒状感を加えた設定や、コントラストをより高めた設定など強めの調子の画像が気に入って、この数日間撮りまくった。
今回、シェーディング、ネガポジ反転などまでは試す余裕がなかったのだが、こうした好みは使い手によって正に千差万別、ひとつの正解はなく、各々が試して気に入った設定を探るのがこのカメラの正しい使い方だろう。
PENTAX(ペンタックス)K-3 MarkⅢ Monochromeの最大のライバルといえば、同じくモノクロ専用カメラであるライカM10モノクロームであろう。同社には高級コンパクトのQ2モノクロームもあるが、ここではレンズ交換式のM型を比較機種としたい。
今回、同時に使用して感じたのは、M10モノクロームはカメラ内で調整できる項目を最低限に留めているということだ。どちらかというとPCによるRAW現像でじっくり仕上げるのに適したカメラといえるだろう。(ただし、両機種共にカラーフィルターを持たないため、チャンネルミキサーでの色彩に応じた明度の調整はできない)。
一方で、K-3 MarkⅢ Monochromeは、カメラ内の設定でかなり追い込んだモノクロ画像を仕上げる事が可能であり、より自在性の高いモノクロ専用機と言える。これは、思想の違いであり、どちらが正しいかという類いの話ではない。
今回、ライカM10モノクロームはデフォルトのjpegの状態で比較撮影したのだが、その解像力の高さは驚異的で舌を巻くばかりである。センサーサイズの違いはあるが、両者の生み出す作品の素材としての画像はほぼ互角と言えるだろう。
ライカM10モノクロームはレンジファインダー、K-3 MarkⅢ Monochromeは一眼レフと、共にミラーレス機全盛の時代に、フィルムカメラ時代の伝統的なスタイルを貫いている。両機種共にファインダーから見えるのはEVFの画像ではなく、ガラスやミラーを光学的に通して見える実像である。当たり前であるが、撮影の際は、ファインダーで実像を見ながら仕上がりのモノクロのイメージを脳内で想像しなくてはならず、両機種にはそうした意味での共通性がある。
LEICA(ライカ) M10 Monochrome・Summicron 35mm F2
絞りF6・1/3000秒・ISO400・WBオート・JPEG
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K3MarkⅢ Monochromeの最大のライバルともいえる先輩モノクロ専用機。フルサイズのモノクロ専用センサーはさすがの解像力である。ただ、カメラ内で設定出来る項目は少ない、どちらかと言えばRAWで撮影してじっくり仕上げるカメラと言える。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影
絞りF4・1/2000秒・ISO200・WBオート・JPEG
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ライカM10モノクロームと比べるとややハイキーで柔らかい印象に感じるが、このくらいのトーンを好む人が多いだろう。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影
絞りF4・1/2000秒・ISO200・WBオート・JPEG
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ライカM10モノクロームと比較するとより重厚な画質だが、3種の中ではこのモードが比較的近い印象である。甲乙つけがたい。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影・絞りF4・1/2000秒・ISO200・WBオート・JPEG
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好みの問題かもしれないが、この条件では全体的に白っぽすぎて薄い印象に感じる。
代表的なモノクロ専用機2機種がミラーレスではないことは決して偶然ではなく、モノクロと言う抽象的な表現がフィルム時代からのクラシックな機構と親和性が高いのかもしれない。後は、一眼レフを選ぶかレンジファインダーを選ぶか、予算と好みの問題であろう。また、今回、富士フイルムのモノクロフィルム名を冠した「ACROSモード」を備えたFUJIFILM X-Pro3でも比較してみた。
X-Pro3はEVFも選択できるが、光学ファインダーのOVFに切り替えるとライカと近い撮影感覚で、やはり想像力を最大限に働かせて撮る類いのカメラと言える。モノクロ専用機ではないものの、こだわりのモノクロモードの完成度はデフォルトの状態でも非常に高く、こうしたモードの有用性も感じさせられた。
富士フイルムX-Pro3・XF23mmF2 R WRで撮影
絞りF6.3・1/8000秒・ISO900・WBオート・JPEG(アクロスモード)
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階調に優れた柔らかめの画質は万人に受け入れられる完成度の高さで、さすがフィルムメーカーである。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・20mm(35mm判換算30mm相当)で撮影
絞りF8・1/1250秒・ISO400・WBオート・JPEG
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デジタルフィルターのハイコントラストを試してみた。メリハリのあるシャープな描写である。ビル壁面のメタリックな質感が実物以上に強調された。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・20mm(35mm判換算30mm相当)で撮影
絞りF8・1/1250秒・ISO400・WBオート・JPEG
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アクロスモードと比較するとズシリと重めの印象を受ける描写である。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・20mm(35mm判換算30mm相当)で撮影
絞りF8・1/2500秒・ISO400・WBオート・JPEG
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ややハイキーでコントラストが弱い。この作例では上手くはまりトーンが豊かに出ている。アクロスモードとは、こちらの方が近い印象である。
PENTAX(ペンタックス) K-3 MarkⅢ Monochrome・HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR・20mm(35mm判換算30mm相当)で撮影
絞りF8・1/2500秒・ISO400・WBオート・JPEG
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ローキーでズシリと重々しい描写である。
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Photo & Text by 中藤 毅彦(なかふじ・たけひこ)