焦点距離が短くて済むという事と、イメージサークルが小さくていいという事から、35mmフルサイズカメラでは一般的とは言えない、800mmを超えるような超望遠レンズが、コンパクトで高性能、使い易いレンズとして設計できるのです。例えば鉄道、野鳥、動物園、モータースポーツといった望遠レンズが必要な撮影で使うのに、マイクロフォーサーズは非常に適したシステムだと言えます。
私自身も当ブログのテスト撮影のために動物園をよく訪れるのですが、レンズの小型軽量さと高い描写性能、併せてOLYMPUS(オリンパス)カメラの非常に高速なオートフォーカスには、望遠レンズを使うならマイクロフォーサーズは決定版と言える程、非常に使い易いシステムだと感じています。
そんなマイクロフォーサーズ用の超望遠ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROは、PROシリーズらしい高い描写性能を持った、OLYMPUS(オリンパス)を象徴するレンズと言えるでしょう。
OLYMPUS(オリンパス)M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROの特徴
OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROは、35mm判換算で300mm~800mmの焦点距離(35mm判換算)をカバーする超望遠ズームレンズで、さらにレンズの大きな特徴の一つとなってる、内蔵された1.25倍のテレコンバーターを使えば、35mm判換算で375mm~1,000mmまでの超超望遠ズームとして使う事が出来ます。
画素数が多くないマイクロフォーサーズマウントのカメラでは可能な限りノートリミングに近い状態で撮りたいところですが、そんな時、ギリギリのフレーミングを可能にする1.25倍の内蔵テレコンバーターは心強い味方となってくれるでしょう。
1.25倍大きく撮れるだけで、トリミングの必要性を大きく減らす事が出来るからです。
重量は1,875g(レンズキャップ、レンズリアキャップ、レンズフードを除く)です。例えば、35mmフルサイズ用のF値が可変する500mmや600mmまでの望遠ズームレンズでも同程度の重量があるのが普通なので、最高クラスの性能を持ち、なおかつF値が4.5で固定されたレンズである事を考えると、これは驚くべき軽さだと言えるでしょう。
価格が高いという事はデメリットだとは思いますが、例えば他社製の軽量な超望遠単焦点レンズの中にはさらに2倍程度の価格のレンズもあるので、M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROが一概に高価だとは言えません。
何よりその性能は正に最高級レンズのそれなのですから。
OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROの特徴を一言で言うなら、超望遠レンズを使った撮影を、1本でほぼ全てカバー出来るレンズだという事です。
F4.5で固定されたF値、300~800mm(35mm判換算)をカバーするズーム比、望遠を強化する1.25倍内蔵テレコンバーター、2kgを切る重量、とこれだけ揃えばハイアマチュアからプロカメラマンまで、望遠レンズを使用するシチュエーションのほぼ全てをカバー出来るのではないでしょうか。
さらに動体を高精度に追従するOLYMPUS(オリンパス)カメラの強力なオートフォーカスと組み合わせれば、動体撮影では無敵の強さを発揮してくれそうです。
フィルター径
95mm
最短撮影距離
1.3m(内蔵テレコンバーター ×1/×1.25, ズーム全域)
最小絞り
F22(内蔵テレコンバーター×1.25時 F29)
絞り羽根
9枚(円形絞り)
長さ
314.3mm
重量
1,875g(レンズキャップ、レンズリアキャップ、レンズフードを除く)
実写レビュー
望遠ズームを存分に活かせる被写体として、鉄道を選んで撮影してきました。
カメラの共通設定は、ピクチャーモード:Natural、アスペクト比:3:2、AFモードはカメラの性能を試す意味で:追尾AF、追尾被写体設定はもちろん鉄道です。
作例1:f7.1 1/640 ISO640 露出補正±0 焦点距離:150mm(35mm判換算:300mm)
つくばエクスプレスを俯瞰撮影で狙いました。ワイド端を使って車両全体をフレーミングします。
35mm判フルサイズカメラなら300mm相当の画角ですが、マイクロフォーサーズなら150mmの焦点距離となるので、F7.1と大きく絞り込む事なく車両全体にピントを合わせる事が出来ます。
望遠レンズでピントを深くしようと思うと、フルサイズ機では大きく絞り込むために高感度を使う事になり、結局画質を損なう羽目になってしまうので、条件によっては焦点距離の短いレンズを使えるマイクロフォーサーズの方が有利になる事も多々あるのです。
作例2:f8 1/500 ISO320 露出補正±0 焦点距離:256mm(35mm判換算:512mm)
約500mm前後(35mm判換算)の画角で撮影しています。
一般的にはあまり使われない画角だと思いますが、OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROでは丁度ズームの真ん中あたりで、ワイド側にもテレ側にも余裕がある状態です。
高い圧縮効果を使って、長い中央線の車両を最後尾まで存在感を持ってフレーミング出来ました。
作例3:f5.6 1/30 ISO10000 露出補正±0 焦点距離:300mm(35mm判換算:600mm)
先にマイクロフォーサーズは高感度に弱いと書きました。このカットではISO10000で撮影していますが、全体的にノイズが発生しており、ややコントラストの落ちた写真になってしまいました。もし開放F値があと1段暗かったら、ノイズはより酷くなっていたと思うので、全域F4.5のレンズが画質に貢献してくれたとも言えます。
高い逆光耐性もポイントで、電車のヘッドライトにより強力な逆光が入る状況ですが、目立ったフレアやゴーストの発生はありません。
又、レンズ性能の高さと同様に驚いたのは、このような暗い、オートフォーカスに厳しい条件でも、高い追尾性能を見せたインテリジェント被写体認識AFで、OLYMPUS(オリンパス)のカメラが望遠レンズを使った撮影に非常に向いたシステムである事を再認識させられました。
作例4:f5.6 1/800 ISO320 露出補正±0 焦点距離:500mm(35mm判換算:1000mm)
内蔵の1.25倍テレコンバーターを使用したカットです。
マスターレンズの性能が高くテレコンバーターも専用に設計されたものだけあって、テレコンバーターの画質への影響をほぼ感じさせない抜けのいい描写となっています。
35mm判換算で1,000mmに相当する超超望遠レンズは、通常は味わえない高い圧縮効果により、非日常的な表現が可能となって来ます。
作例5:f6.3 1/1000 ISO2000 露出補正±0 焦点距離:500mm(35mm判換算:1000mm)
先のカットと同様、内蔵の1.25倍テレコンバーターを使用して撮影しています。
雨と言う悪条件の中、感度はISO2000まで高くなっています。高感度で撮影した映像からトリミングで画像を切り出すと、どうしてもノイズなどで画質の粗さが目立って来ますが、1.25倍のテレコンバーターのおかげでノートリミングを前提に撮影する事ができ、画質の面でも満足のいく写真になりました。
このほんの少しの余力が、M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROの価値を大きく高めていると感じる瞬間です。
作例6:f9 1/1000 ISO400 露出補正-0.7 焦点距離:500mm(35mm判換算:1000mm)
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROは純正の2倍テレコンバーター、MC-20にも対応しており、このカットはMC-20を装着して撮影しました。
非常に手ぶれ補正の効きが良く、フレーミングの難しい超望遠域でもファインダー内の画像はかなり安定しています。
余談ではありますが、時速200kmで移動する被写体をここまで正確に追従するOLYMPUSのオートフォーカスには脱帽です。
作例7:f11 1/800 ISO2000 露出補正±0 焦点距離:473mm(35mm判換算:946mm)
テレコンバーターを2重にかけて(2×:MC-20 + 1.25倍:内蔵)撮影しています。
一般的には行わないテレコンバーターを2重にかける撮影でも、マスターレンズ、テレコンバーター双方の性能が高いレベルにある為か、大きくは画質が劣化していないように見えます。
このカットでは望遠端を使っているわけではありませんが、最大で2000mm相当の迫力ある映像が撮影出来るという事実に新たな可能性を感じます。
画質(マスターレンズ、内蔵テレコンバーター、外付けMC-20)
マスターレンズのみの場合と、内蔵テレコンバーター、外付けの2倍テレコンバーターMC-20を装着した際の画質をそれぞれ見て行きたいと思います。
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画面周辺部ですが、高いシャープネスを維持しており、高性能なレンズである事がうかがえます。ISO感度は640ですがノイズの発生も無く滑らかな画質で、まだまだ安心して使える感度です。
次に1.25倍の内蔵テレコンバーターを使用した際の描写を見てみます。
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高感度によるノイズと、雨によるコントラストの低下は感じられますが、内蔵1.25倍テレコンバーターを使ってもレンズの描写性能はほとんど低下せず、驚くほど高い描写性能を維持しています。
次に外付けの純正テレコンバーターMC-20を使った際の描写性能を見てみます。
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やはりテレコンバーターの存在を感じさせない高い描写性能を維持しています。OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROは、2倍のテレコンバーターを使用しても、描写性能的には安心して使えそうです。
正直言ってこれには少し驚きました。
最後に、内蔵の1.25倍テレコンバーターと外付けの2倍テレコンバーターMC-20を併用した場合の画質を見てみます。
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ノイズと雨のせいでレンズの評価が難しくなります。
今回のテスト撮影で難しかった部分で、晴れた日に撮れば陽炎でレンズ性能がわからず、雨の日に撮れば高感度ノイズと雨でレンズ性能がわからないという葛藤に悩まされました。
しかし、枕木に乗ったバラストがきちんと分解しているように見えるので、テレコンバーターを2枚重ねている事を考えるとかなり高性能なようです。
まとめ
OLYMPUS(オリンパス) とマイクロフォーサーズという望遠に強いシステムを最大限活かせるレンズだと強く感じました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO のようなレンズを高性能にかつ軽量、コンパクトに設計出来る事はマイクロフォーサーズならではと言え、OLYMPUS(オリンパス) を象徴するレンズと言えるかもしれません。
システムを最大限活かして撮れる、このレンズでなければ撮れない写真がきっとある、そんな気にさせてくれる唯一無二のレンズだと感じました。
OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
Photo & Text by フジヤカメラ 浅葉、北原