Leica(ライカ) アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH. 11699 の実写レビューです。
100万円を超えるレンズのレビューは当ブログでも数年に1回あるかないかで、別な意味でもテスト撮影に緊張するという稀有な体験が出来ました。世界で最も有名なカメラメーカーの一つであるLeica(ライカ)は多くのカメラファンから「いつかはLeica(ライカ)」と言われるメーカーで、カメラに携わる仕事について20年以上経ちますが、こんな私でもいつかは使ってみたい憧れのメーカーでもあります。
今回は、そんな憧れのLeica(ライカ)が作るMマウントのレンズの中でも最高峰に位置するアポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH. 11699の実写レビューです。いつかLeica(ライカ)をこの手にという時の為の予行演習のつもりで撮影を楽しみました。
■この記事の監修
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Leica(ライカ) アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH. 11699
特徴/操作性
本来は勿論M型ライカで試すべきところですが、どうしても実機が手に入らず、テストボディは同社のミラーレス一眼カメラSL2を使いました。エッジの効いたデザインから日本製カメラにはない強い個性を感じます。
レンズは勿論、このSL2も含めてLeica(ライカ)のカメラには個性的でオリジナリティに溢れるデザインのカメラが多く存在し、それだけで使ってみたくなるメーカーです。
本来レンジファインダー機に装着するレンズなので、カメラに対してやや小さ過ぎる感はありますが、実際にレンズを装着したカメラを持ってみると、フィンガーグリップへの指がかりなど違和感なく行え、操作上の不便は感じませんでした。
アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.は、アポの名を冠している事からもわかるとおり、6枚の異常部分分散特性を持った特殊ガラスを使ったレンズと、3枚の非球面レンズ(1枚は両面非球面)を使用しする事で、妥協無い描写性能を追求しています。
又、フローティング機構を内蔵しているので、Leica(ライカ)Mマウントのレンズとしては唯一最短撮影距離は30cmの近接撮影が可能なレンズでありながら、至近距離でも高い描写性能を誇ります。
デザインは1970年代以降のLeica(ライカ)Mマウントレンズではお馴染みとなった、デジタル文字による焦点距離や距離指標が表記されたタイプとなっています。
先に書いた通り最短撮影距離は30cmですが、無限遠からフォーカスリングを回して行くと70cmのところに軽いクリック感があり、これ以降近接側はライブビューでピント合わせを行う事になるようです。
フォーカスの操作はフィンガーグリップ、フォーカスリングいずれでも行えますが、実際使ってみると私は無意識にフィンガーグリップを探してしまいました。Leica(ライカ)を使っているんだからLeicaらしい操作をしたいと、体が自然と求めていたのかもしれません。
フィルター径 |
E39 |
最短撮影距離 |
0.3m |
最小絞り |
F16 |
絞り羽根 |
11枚(円形絞り) |
マウント |
Mマウント |
長さ |
約40.9mm/49.3mm(レンズフード含む) |
実写レビュー
多くの著名なカメラマン、アーティストが使ったLeica(ライカ)は、持つだけで写真に取り組む気持ちが上がって来ます。
多くのメーカーがその後を追いかけた美しいボケ味はファインダーを覗いていても一目瞭然で、レンズの持つ味が写真に与える影響を実感せずにはいられません。
フィンガーグリップを動かしてピント合わせをしているだけで、いっぱしの写真家にでもなったような不思議な錯覚に囚われます。
ピントが合った部分とボケた部分の対比が美しいレンズです。
ピントが合った部分は非常にシャープに細かく再現されますが、それでいて硬いといった印象は一切なく、一言で言えば繊細な描写です。細かい諧調表現も申し分なく、抜けがいいといった月並みな表現が陳腐に感じられるほど、立体的に被写体を写しとめてくれます。
マウントこそ違えどカメラ、レンズ両方に同社の製品を選んだのも正解で、一本筋の通った哲学が感じられる写りです。
Leica(ライカ) アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.の最短撮影距離は30cmです。
最新型のミラーレス一眼デジタルカメラが、フィルム時代のレンジファインダーカメラでは実現出来なかった近接撮影を可能にしてくれます。
このカットではほぼ最短撮影距離を使って撮影していますが、ミラーレス一眼デジタルカメラでMマウントレンズの近接撮影を度々経験しているとは言え、Leica(ライカ)Mマウントのレンズで近接をするのはちょっと新鮮です。フローティングによる補正が働くので、近接でも画が眠くなったりボケが汚くなる事はありませんでした。
35mmは人気の焦点距離の為か多くのメーカーがラインナップし、リニューアルした新製品も頻繁に発売されます。
実は、今年に入ってからしばらく35mmのテストが頻発して少々辟易としていたのですが、Leica(ライカ)はやはり別格で、ファインダー像を見て、フォーカスリングを回し、ゆっくりと結像していく様を見ているだけでレンズの素性の良さが伝わって来る気がします。
おかげでこの青空のように清々しい気持ちでテスト撮影を進めて行けました。
最近の街づくりは緑を多く取り入れるのが普通なので、コンクリートジャングルと言われるようなビルの合間に驚くほど綺麗な緑の園があったりします。
個人的にLeica(ライカ)というメーカーに風景やネイチャー系の写真を録るメーカーというイメージはありませんが、先の近接撮影もそうですが緑色の発色も自然で、特に今回使用したアポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.は非常に高解像度なレンズなので、本格的に大伸ばしをする風景写真にも向いていると感じました。
このカットでは絞りをF8まで絞って撮影していますが画面周辺部まで非常にシャープな画となっています。
カメラにもレンズにも慣れて来て、光を見ながら写真を撮るのがかなり楽しくなってきました。
街路樹を通した木漏れ日が人のいないベンチに当たっている様に春らしさを感じてレンズを向けると、柔らかい光に温度まで感じられるような気がします。
全体的に眠い描写はガラス越しに撮っているからですが、Leica(ライカ) アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.は光の柔らかさやガラス越しの空気感が伝わるレンズだと感じました。
近接撮影が出来る事が便利で目が小さなものを探していました。恐らく夜間のライトアップのライトだと思いますが、暖かさに水滴がびっしりとついていました。
1時間ちょっと撮影して感じたのは、アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.は光を写しとめるレンズだという事です。ほんの少しの光の揺らめきを捉える事でその場の空気感が伝わって来る写真、今回の撮影で強く感じた事です。
一朝一夕には得られない、長い歴史を持つメーカーだけが到達する事が出来る何かがそこにはあるのでしょう。
レンズレビューの作例は、普段はあまり写真に意味を持たせないように撮るのですが、多くの歴史を刻み付けて来たLeica(ライカ)のレンズですので、1枚だけお許し下さい。
コロナウイルス感染防止の為ゴールデンウイーク中は一部小売店にも休業の要請があったようです。この写真は閉店している店舗のものではありませんが、閉じられたシャッターに、時短を余儀なくされ、大っぴらにお客さんに来て欲しいとは言いずらい昨今の小売店の寂しさが感じられて、同じく小売業に身を置く身として身につまされる思いでシャッターを切りました。
一瞬を写し取るのが写真という芸術、というとちょっと大げさに感じますが、Leica(ライカ)は撮影者をそんな気持ちにさせてくれるメーカーだと思います。
画質
写真を表現する表現力は勿論、解像感やコントラストといった一般的な描写力という面でもアポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.は最高クラスの性能をもています。フィギュアスケートで言えば、芸術点は勿論、技術点も最高レベルにあるレンズなのです。
拡大して解像感を見てみます。
画面右下隅の、一般的なレンズでは多少のピントの甘さや流れがある部分ですが、そういった事はほぼ認められません。非常にシャープで高解像度な描写性能を持っており、優秀なレンズです。
まとめ
昔ながらのLeica(ライカ)Mマウントのデザインからは想像出来ない、非常に高性能なレンズです。
それでいて柔らかくまるみのある描写、美しいボケ味など古いLeica(ライカ)のいい部分は継承されている、描写力という意味では殆ど欠点の無い無敵と言っていいレンズです。
レンズの価格としては破格と言っていい値段ですが、100年を超える歴史と技術の粋を集めた究極のレンズの価格としては妥当なのかもしれません。テスト撮影で色々と勉強させられるレンズでした。
Leica(ライカ) アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH. 11699
Photo & Text by フジヤカメラ店 北原