PENTAX(ペンタックス)のAPS-Cサイズセンサー搭載一眼レフカメラ用ズームレンズ HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRの実写レビューです。
2013年に発表、発売されたHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRは、それまで単焦点レンズのみのラインナップだったLimitedシリーズで初めてのズームレンズです。アルミ削り出し外装、実写重視で設計された画質といったリミテッドレンズの特徴はそのままに、30~60mm(35mm判換算)と倍率は2倍と控えめながら普段使いに適した焦点域をカバーしたズームです。
コンパクトな常用ズームとして最適なレンズを、実写レビューを中心にご紹介します。
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PENTAX(ペンタックス) HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR
特徴/デザイン
PENTAX(ペンタックス) HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRは、35mm判換算で約30-60mm相当の画角をカバーする標準ズームレンズです。開放はF2.8-4と比較的明るい可変式で、レンズには特殊低分散(ED)ガラスと異常低分散ガラス、非球面レンズが各1枚づつ使用され、描写性能の向上に寄与しています。
最近の標準ズームで、2倍という狭いズーム比の製品はあまり見かけません。どちらかというと、標準を中心とした画角の変えられる単焦点レンズと考えた方がしっくり来るくらいで、そんな割り切りがこのレンズを楽しむためのヒントなのかもしれません。
メーカーにそういった意図があったかはわかりませんが、ズームを30mmに、ピントリングを無限遠にすると、全長が一番短くなるようになっています。
外装部品はアルミ削り出し、文字表記は彫り込みで仕上げられており、単焦点のLimitedシリーズ同様高い質感が感じられます。
ずっしりしていそうな見た目ですが、手に取ってみると見た目よりも軽量で、やはり単焦点レンズのような趣です。ちなみに、付属しているフードとフロントキャップもレンズ本体と同じアルミ削り出し、彫り込み仕上げとなっており本体同様の質感をもっています。外装色はブラックとシルバーの2色から選べ、シルバーボディとのマッチングはもちろん、それぞれ異なる色の組み合わせで楽しむのも面白そうです。
ローレット加工が施されたズームリングは、PENTAX(ペンタックス)のM42マウント時代のオールドレンズ、SMCタクマ―を彷彿とさせます。ピントリングと合わせて動作は非常に滑らかです。
製品名にWR(Weather Resistant)とあるように防滴構造が採用され、雨や水しぶきがかかるような場面でも安心して使用できます。
又、リミテッドレンズとしては現時点(2021.5.5)で唯一DCモーターによるレンズ内駆動オートフォーカスが採用されており、無音とまではいかないものの静かで軽やかに動作します。
フィルター径
55mm
最短撮影距離/最大撮影倍率
0.28m/0.20倍
最小絞り
F22-32
絞り羽根
9枚(円形絞り)
長さ
68.5 mm
重量
283g
実写レビュー
発売から間もない話題のデジタル一眼レフカメラK-3 Mark IIIと組み合わせて、海岸沿いを散歩しながら撮影しました。
共通設定としてカスタムイメージは全て鮮やか、カメラメニュー内の各種レンズ補正はオフにしています。
作例1:f8 1/500 ISO100 露出補正-0.3 焦点距離 30mm
作例2:f8 1/400 ISO100 露出補正-0.7 焦点距離 20mm
作例3:f8 1/1000 ISO200 露出補正-0.3 焦点距離 20mm
8群9枚という最近のズームレンズとしてはシンプルなレンズ構成と、最新のHDコーティングが施された事で、第一印象はフレアの影響のない抜けのいいレンズというイメージです。
F8程度まで絞り込む事で画面周辺部までシャープな画にする事が出来ます。
作例4:f6.3 1/1000 ISO200 露出補正±0 焦点距離 31mm
作例5:f2.8 1/6400 ISO100 露出補正±0 焦点距離 20mm
20mmから30mmくらいまでのワイド側は、開放~少し絞るくらいだと解像感はありますがフワッとしたやや眠い描写です。
シャープさよりも自然な立体感とボケ味に重きを置いた設計はLimitedシリーズのレンズらしく、上品な柔らかい描写だと思います。
作例6:f4 1/1000 ISO100 露出補正±0 焦点距離 40mm
作例7:f4 1/1000 ISO100 露出補正±0 焦点距離 40mm
一方40mm側は、絞り開放でもピントが合った部分はキリッと固めの描写で、作例7のタンポポの綿毛も鋭くシャープに描写されています。
どちらも被写体にかなり近づいて撮影していますが、ズーム全域で最短撮影距離が0.28mと比較的短く最大撮影倍率は0.2倍となるので、簡易マクロ的な使い方もできそうです。
作例8:f5.6 1/640 ISO100 露出補正±0 焦点距離 40mm
作例9:f6.3 1/1000 ISO200 露出補正±0 焦点距離 20mm
今回の撮影では、30mm(換算45mm相当)の単焦点レンズを使うつもりで自分自身が被写体に対して寄ったり引いたりする事を意識しながら行いました。その上で、「ここはもう少し引いて遠近感を出したい」「圧縮効果を使って構図をシンプルにしたい」「もう一声近寄りたい」という時にズームを使うようにしました。単焦点レンズで撮るような感覚を意識しつつ、物足りない時のちょっとしたスパイスとしてズームを利用するイメージです。
ズームレンズを使う際は、立ち位置はそのままでズームで画角を変えて、例えば広く撮りたい、あるいは遠くの物を大きく写したい、というような使い方をしてしまいがちです。これは、どちらかというと物理的に被写体に近づけないなどの撮影条件にズームで対応する撮影方法だと思います。これはこれでいいのですが、撮影条件に制約がないなら、単焦点レンズを使う感覚で自分自身が動いて、画角だけでなく遠近感や背景のボケ感を意識する事で、ただズームで画角を変えて撮った時よりも一味違った結果が得られるのではないでしょうか。
PENTAX(ペンタックス) HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRはズーム比が狭く制約がある分、こんな写真の基本を思い出させてくれるようなレンズだと思います。
画角/画質
作例10:f8 1/500 ISO100 露出補正±0 焦点距離 20mm
作例11:f8 1/400 ISO100 露出補正±0 焦点距離 40mm
初めに2倍ズームの画角の変化を見てみます。この画角の変化を大きいと感じるか小さいと感じるかは人それぞれだと思いますが、スナップ撮影などではこの違いが大きな違いとなる事も少なくありません。
周辺光量や歪みも気になる程の物でもなく補正も容易だと思います。
次に、作例10を拡大して解像感をみてみます。
枠内を拡大
対岸の木々や住宅街も大きくは崩れておらず、十分な解像力を有しているのがわかります。
物凄くシャープという訳ではありませんが、ものがものらしく見える実写寄りの写り方だと思います。フリンジの発生もほぼありません。
まとめ
「ズームもできる標準レンズ」という感覚で、非常に使いやすいと感じました。
単焦点レンズのような大きなボケや速いシャッタースピードを稼ぐような使い方はできませんが、PENTAX(ペンタックス)の小型ボディによく似合うサイズ感とリミテッドレンズの高い質感、防滴構造で撮影条件を気にせず使える安心感、絞り値でコントロールしやすい画質等々、小粒ながら味わい深く楽しめる1本だと思います。
PENTAX(ペンタックス) HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR
Photo & Text by フジヤカメラ 浅葉