写真の四隅が暗くなってしまう周辺光量落ち(周辺減光)は、以前はレンズの欠点として見られる事が殆どでした。
しかし、最近のレンズ選びは選択肢が広がった事もあり、一般的な性能だけでなく個性を重視して選ぶ時代になったと思います。周辺光量落ちがおこる=性能の悪いレンズとは一概に言えなくなったと思うのです。
今回はそんな周辺光量落ちについて、その扱いや周辺光量が落ちるおすすめレンズをご紹介したいと思います。
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周辺光量落ちとは
画面中心に対して周辺部分が暗くなってしまう現象を周辺光量落ち(周辺減光)と言います。
主にレンズの性能が原因で発生し、超広角レンズやズームレンズで起きやすいようです。フィルムカメラの時代は後から修正する事が難しかった為一般的に周辺光量落ちはレンズの欠点として認識されていました。
しかし、デジタルカメラの時代となって、写真がデータとして扱われるようになると、比較的簡単に補正が行える事から、あまり気にされなくなったように思います。
特に純正レンズについては、メーカー側でどのくらい周辺光量が低下するのか詳細に把握する事が可能な為、ほぼ完ぺきに補正する事が可能です。カメラのレンズ補正はON、OFF出来る事が大半ですが、そういった事を踏まえてか最近はデフォルトでONになっている事が多いように感じます。
周辺光量落ちするのは性能が悪いレンズ!?
先に周辺光量落ちはレンズの欠点と書きましたが、最近は一概にそうとも言えなくなったと思います。
ボディ内レンズ補正の登場で周辺光量落ちが簡単に補正出来るようになり、好きな時に出したり消したり出来るようになると、表現の幅が広がると思うユーザーも少なからずいるようで、欠点ではなく利点として認識され、積極的に使われるようになって来たように思います。
かく言う私も周辺光量落ちがあるレンズが好きな方で、最近は特にストリートスナップのような写真を撮る際には、ボディ内レンズ補正をOFFにして、周辺光量落ちにより画面の中心に視線を誘導するような表現を頻繁に使うようになりました。
周辺光量落ちの2つの使い方
周辺光量落ちを活かす方法はいくつもありますが、使い方としては大きく分けて2つあると思います。
1つは言葉通りに周辺を暗くする方法で、露出は画面中央に合っています。
もう一つは画面中央を明るくする方法で、この場合露出は画面周辺部に合っています。カメラの内蔵露出計は通常画面の真ん中を重視して露出を決めるケースが多いので、後者の方法を使う場合少し露出補正をかけて、オーバー気味に撮ってあげると上手く行く事が多いようです。
上の写真では、後者を使う事で画面中央が少し光っているような表現になったと思います。
周辺光量の修正は簡単!?
先に書いた通り、周辺光量落ちの補正は画面周辺を明るくしてあげればいいだけなので、それほど難しいものではありません。
カメラを使ったボディ内レンズ補正に対応したレンズなら、周辺光量補正の項目をONにしてあげるだけです。
周辺光量がどのくらい落ちるかはレンズによって違い、逆に言うとレンズによってどのくらい落ちるか決まって来るので、データをもとにカメラが自動的に補正してくれます。
次にボディ内補正に対応していないレンズ、例えばオールドレンズなどマウントアダプターを使う場合や電子接点の無いレンズなどです。
この場合は画像処理ソフトを使って補正をかける事になります。例えばユーザーも多いスタンダードな画像処理ソフトAdobe Lightroomには編集の「効果」という項目の中に「周辺光量補正」という項目があり、細かい調整を行う事が出来ます(右の小さな三角を推すとさらに細かいパラメーターを調整出来ます)。
ちなみに、この周辺光量の調整をマイナスにすると逆に周辺光量落ちを出現させる事が出来ますので、後から周辺光量を出したい時に便利です。
周辺光量落ちしやすいレンズ
一概には言えませんが、広角レンズ、大口径レンズの開放、ズームレンズなどは全般的に周辺光量落ちし易いようです。上の写真は超広角のフィッシュアイレンズで撮影していますが、見事に周辺光量落ちが起きています。
又、そういった事をあまり意識しないで設計されている古いレンズ、特に古い大口径レンズでは周辺部の描写力の低下と併せて味わい深い描写をするものも多く存在します。
周辺光量落ちを無視して設計されたレンズ
実は、最近のレンズには周辺光量落ちする事を許容して設計されたレンズがあります。
SIGMA(シグマ)のDG DNレンズの一部がそれで、デジタルでのボディ内補正を前提に、周辺光量落ちする事を許容して設計する事で、コンパクトでありながら高性能なレンズの開発に成功しています。
デジタルで補正出来る収差を許容する事で、レンズ設計でなければ補正出来ない収差を除去する事に集中出来る為、コンパクト、超高性能なレンズとなっているのです。
周辺光量落ちするおすすめレンズ5選
SIGMA(シグマ) 35mm F2 DG DN | Contemporary
SIGMA(シグマ)のIシリーズのレンズは、デザインまで含めた、レンズ性能だけでなく写真の表現や撮る楽しさを重視したシリーズです。
中でも35mm F2 DG DN | Contemporaryは、開放では適度に周辺光量落ちするレンズで、35mmというわずかに遠近感が誇張される焦点距離と併せて、立体感に富んだ描写をするおすすめのレンズです。
特に同社のフルサイズミラーレス一眼カメラfpとの相性は抜群で、T&Oやパウダーブルーといったcolorモードを使った独特の写真表現は同社のカメラを使う大きなメリットの一つとなっています。
SIGMA(シグマ) 35mm F2 DG DN | Contemporary
KAMLAN(カムラン) FS 50mm F1.1
まるでトイレンズのような眠い写りと柔らかく美しいボケ味、開放では低下する周辺光量が特徴のレンズです。
APS-Cサイズのイメージサークルである事もポイントの一つで、一般的にフルサイズセンサーカメラよりも周辺光量落ちを出しずらいAPS-Cサイズセンサーでも明快な周辺減光が楽しめます。
価格が比較的安いのも魅力で、プレミアがついている高額なオールドレンズよりもオールドレンズらしい描写を楽しめたりします。マニュアルフォーカス専用レンズである上、絞りのクリックが省略されているので、ピントの移動を活かしたシネマチックな動画撮影にもおすすめです。
KAMLAN(カムラン) FS 50mm F1.1
七工匠(しちこうしょう) 7.5mm f2.8 fish-eye
KAMLAN(カムラン)と同じくマニュアルフォーカス、APS-Cサイズセンサー用の、こちらはフィッシュアイレンズになります。
フィッシュアイレンズとしての面白さは勿論、オールドレンズっぽい写りの悪さも魅力で、コンパクトなデザインと価格もそれ程高価ではない事から、フィッシュアイのお試しレンズとしてもおすすめです。
開放ではレンズ設計由来の自然な周辺光量落ちが楽しめます。
七工匠(しちこうしょう) 7.5mm f2.8 fish-eye
Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III
Voigtlander (フォクトレンダー)には周辺光量落ちする個性的なレンズが多くラインナップされていますが、今回はNOKTON 35mm F1.2 Aspherical IIIを選びました。
開放での周辺光量落ちだけでなく、絞った際、大きく描写性能が変化するあたりも含めて、オールドレンズのようなレンズの個性を表現として活かすのが楽しくなるレンズです。
色収差由来と思われるパープルフリンジの発生が気になる方には、同じ設計のSONY(ソニー)Eマウント用を使うと大幅にフリンジが少なくなるのでこちらもおすすめです。勿論Eマウント用なら周辺光量落ちをボディ内補正で完全に無くす事も出来ます。
Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III
Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 35mm F1.2 Aspherical SE ソニーE
PENTAX(ペンタックス) HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
周辺光量が落ちるという意味では、同社のHD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limitedの方が顕著だと思いますが、元祖PENTAX Limitedの43mmF1.9 Limitedはボケの面白さや個性もあるので、今回はこちらを選びました。
フィルム時代から同設計で作り続けられているベストセラーレンズで、こういった個性豊かなレンズがいまだに大きな支持を得ている事は喜ばしい限りです。
同社の一眼レフカメラ用のレンズですが、周辺光量落ちを楽しみたいならフルサイズ機が必要なのでご注意下さい。
PENTAX(ペンタックス) HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
まとめ
周辺光量落ちという、少しネガティブな要素について解説してみました。
デジタルカメラでは大きなリスクなく扱えるので、是非積極的に表現に活かしたいところです。
フィルム時代には嫌われた事が、デジタル時代では大きな問題とはならなくなり、より写真が自由なものになってくれるといいなと思います。
Photo & Text by フジヤカメラ 北原