SIGMA (シグマ) のフルサイズミラーレス一眼レフ用の望遠ズームレンズ 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary の実写レビューです。
SIGMA (シグマ) 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary は既に「ライトバズーカ」の愛称でお馴染みの、デジタル一眼レフカメラ用レンズの「DG DN」モデルで、フルサイズミラーレス用に新たに設計されたレンズです。名称が殆ど同じ為、混同してしまいそうですが、新光学系を採用した全く新しいレンズで、15群21枚→16群22枚となり、全長も少し長い199.2mm(一眼レフようは182.3mm)となっています。
ミラーレス用になって、レンズ構成が複雑に、全長が長くなるあたり、デザイン以上に性能を重視するSIGMAらしい変化です。
デザインは一眼レフ用ライトバズーカと殆ど同じで、回転ズームとしても直進ズームとしても使えるデュアルアクションズームや、レンズを縮めた際、親指のかかりがいい位置に配されたズームロックスイッチなど、定評ある操作性はそのまま継承されています。
又、CUSTAMスイッチが廃止され、代わってレンズボディにはカメラから任意の機能を割り当てられるAFLボタンが追加されており、ミラーレス一眼カメラとの操作性の一致を狙っての事と思われます。又、専用の三脚座が別売で用意されます。
「ライトバズーカ」、超望遠レンズがライトである事のメリットは何でしょうか?第一は、遠くのものを大きく撮れる、超望遠レンズがフットワーク良く使えるようになる事です。もう一つは、極端に狭い画角、強力な圧縮効果で、写真ならではの表現が可能な超望遠レンズが、気軽に使えるようになる事だと思います。
そんな、両側面をそれぞれ楽しもうと、SONY α7RIVに DG DN版「ライトバズーカ」を装着して、テスト撮影に出かけました。
先ずは王道の、素晴らしくフットワーク良く使える超望遠ズームレンズとして試してみたくて、動物園に向かいました。ヒマラヤタールは地味ですが、どこか悟ったようでいてコミカルな表情が魅力的な動物で、ちょっと目つきが怖いですが、印象的な顔立ちです。
今回行った多摩動物園は山の斜面にある為、SIGMA (シグマ) 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary のような軽量、コンパクトなレンズは体力の消耗を抑えられ、便利です。
虎は孤高の生き物で、その美しい毛皮だけでなく、立ち居振る舞いも凄くカッコいい動物だと思います。群れを作るライオンより強い(漫画、タイガーマスクの知識なので、本当かどうかは知りません)のも当然です。
動物園は、動物までの距離も動物の大きさもまちまちなので、被写体の大きさを自在に変えられるズームレンズは非常に便利です。高速なAFとSONY得意のリアルタイムトラッキングを使い、遠くを見つめる横顔を写真に納めました。
SIGMA (シグマ) 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary の特色の一つに、1:4.1までのマクロ撮影機能があります。サギなどの鳥は、野生では警戒心が強く近づいての撮影は難しいと思いますが、動物園では、安全な動物の為、近くまで寄って撮影する事が可能です。焦点距離を400mmとする事で、開放f6.3でも背景を大きくボカした写真を撮る事が出来ました。
猛禽類は危険な生物な為、遠くから見る事になります。カメラを構えたこちらに気付いたか、横目でギロリと睨まれた瞬間にシャッターを切りました。今回撮影地に選んだ多摩動物公園は、動物までの距離が比較的離れている為、400mmでは少し望遠が足りず、結果望遠端の400mmで撮影するケースが多くなってしまいました。
人気のユキヒョウですが、苦手な暑い季節の到来に辟易しているのか、不機嫌な表情で歩き回っていました。ユキヒョウは夏毛と冬毛で長さが倍近く違うそうですが、抜け替わる時期なのか、体毛の一部がまだらになってしまっています。
SIGMA (シグマ) 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary のオートフォーカスは高速で、このカットでは、SONYのリアルタイムトラッキングを使って顔にフォーカス、カメラが自動的に被写体をトラッキング、ピントを外すことはありませんでした。
さて、ここで動物園を出て、超望遠レンズでお散歩写真にトライしました。この時期、紫陽花がそこかしこで咲いていて、写真映えする花という事もあり、ついレンズを向けたくなります。
超望遠の用途はなにも野鳥やモータースポーツ、飛行機など、遠くのものを大きく撮る為ばかりではありません。強力な圧縮効果により、背景が整理される為、このカットの写真のように背景を1色にするといった演出が可能になります。f値が暗くても背景を大きくボカせるという事も特色の一つです。
多摩川の鉄橋を渡る中央線あずさ号です。ついこないだまでこの新型あずさE353を珍しく思っていた気がしますが、あっという間に旧型との入れ替えが概ね済んでしまったのか、今ではこちらしか見なくなりました。
長い編成の列車は、望遠レンズの圧縮効果と相性のいい被写体です。少し絞ってパンフォーカス気味に狙いました。
大草原の小さな花、のように見えますが、実はほんの小さな草むらです。写真をやっている人は、写真はリアルだけでなく多くの脚色を含むものだと知っています。なにも超望遠ズームを使う必要もない被写体だと思いますが、ライトバズーカの軽量コンパクトさのおかげで、色々遊んでみたくなります。
釣りに興じる太公望をパシャリ。以前は汚れて異臭を放っていた多摩川も、最近はだいぶ綺麗になって、このあたりでも水の色が青くなったと思います。何が釣れるのか興味がありましたが、私が見ている間には、何も釣れませんでした。凄い流れに向かって釣っているように見えますが、圧縮効果で遠くの川の波が誇張されている分は差し引いて下さい。
紫陽花の背後をモノレールが走り抜けて行きます。SIGMA (シグマ) 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary の取り回しの良さは、1本だけなら何とか軽快に撮影出来るレベルで、スナップ的にもギリギリ使えそうです。
動物園と、散歩しながらのスナップと2つのシチュエーションで撮ってみましたが、400mmが特別なレンズでは無いと感じられてライトバズーカというよりライトバズーカと表記したいくらいです。
フルサイズミラーレス用に新設計されたレンズという事で、性能にも期待が持てます。拡大して画質を見てみます。
開放での描写ですが、毛並みや鋭い目の再現性など、とてもシャープで抜けのいいレンズです。次に絞った際の描写を見てみます。
当たり前ですが、非常にシャープで、レンズの描写の甘さは一切感じられません。超高画素機α7RIVを活かしきれる性能と言えると思います。
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先に書いたとおり、400mmが特別なレンズでは無い、と感じさせてくれるレンズです。勿論、小さいとは言え、全長200mm近い鏡筒は一般的には小さく無く、目立つレンズではあります。が、これなら使えるかも、使ってみよう、と思わせるところに、SIGMA (シグマ) 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary の価値があると思います。
少し残念なのは大人の事情でテレコンバーターが無い事で、このあたりはアライアンスを組むLマウントのユーザーが羨ましく感じます。多摩動物園で使うには400mmは少し短いです。性能的にも申し分なく、これから超望遠にチャレンジする入門者から、今の望遠レンズが重すぎると感じているベテランまで、満足出来るレンズだと感じました。