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2026.02.20
写真・動画の撮り方・ハウツー,

日常の中で桜をスナップしよう × 写真家 鈴木さや香 | 桜に記憶を見つける

日常の中で桜をスナップしよう × 写真家 鈴木さや香 | 桜に記憶を見つけるキービジュアル


ライター鈴木さや香イメージ
■執筆者紹介

鈴木さや香

東京造形大学環境計画造形学部卒業。TVやCMなど映像の世界に携わったあと写真の世界へ。広告から日常まで撮影する写真家。独自の技術面からコンセプトまでの提案を得意とし、セミナーや講演も多数。ラジオやNHKの番組にて特集されたりとメディア出演しながら写真の楽しみかたを伝えている。
鎌倉にて営む写真のお店:「AtelierPiccolo」
著作:『日常写真が楽しくなるノートブック』

はじめに

桜を、「桜」として撮ろうとすると、どうしてだろう?その強さに一歩後退してしまう時がある。

わたしにとって桜という植物は、圧倒的な華やかさと散りゆく切なさとで、写真に写しきれる被写体ではないように感じてしまう。

だから正しく、素晴らしく撮ろうなんて、わたしにはおこがましいというか。。。

自分なりの桜と出合ったときの記憶を、ほんの少しおさめたらそれでいいのではないかと思う。

写真の題材としてだけ、桜を見ては無粋だし。

それぞれの人生のなかで何度も登場するこの春の花の木が、写真のなかにだけ美しく存在するわけではなく、記憶と現在を結び付ける媒介者的な存在あることをつよく意識したい。

わたしの撮影スタイル

わたしは“スナップを撮りに行く”ということが目的の日はほとんどなくて、春であれば心地のいい風と散歩をしたいとか、夏であればその湿度とヒグラシの情景を感じたいとか。写真よりも先に求めているものがあって、写真機をその日の気分と天気でころころと変える。

ただ、どれも共通しているのは軽量であるという点。あくまでも日常での自分が主役のため、機材を重く感じると、撮影のための日常になってしまう気がするので軽いものを選ぶ。

欲を言えば軽量で、かつ馴染みが良いもの、操作を過剰に意識しないでいられるものを使用している。

また三脚などは持ち歩かず、デフォルトでは、かならず何かしらのレンズフィルターを装着している。

川沿いの桜

Nikon FE・Ai Nikkor 35mm f/1.4S・マルミ光機ホワイトパウダーミスト1/2
絞りF16・1/1000秒・フジカラー200

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家路を急いでいたら、川沿いの桜に一瞬西日が強く当たっていて。
そこだけがやたらと輝いていたのだけれど、それは表通りとは反対側の誰も足を止めないような場所だったので、わたし以外が見ていないという偶然をうれしく思った。
こういうとき、手前の柵を入れないで撮るとやたらと整ってしまう。わたしはそれがとても寂しい気がするので、綺麗になりすぎないよう自分の立ち位置も入れて撮った。

定番構図の安心感

まずは、空抜けの写真を。

もちろん桜の花が咲きはじめた頃や、終わりかけた葉桜のときもいいけれど。

花がモリモリと咲いて枝先が見えないくらいの花付だと絶対的な安心感がある。寂しい花付だと、その切なさに写真も引っ張られてしまうので。

順光で撮るときは、光を跳ね返すような花の白さや潔白さが主張されるようで、逆光で撮るときは光で透き通るときの色味や繊細さが際立つ。そのどちらもまちがえがなく、ただ自分がどう花を見ているかが大切になってくる。

空と桜

Canon EOS R8・RF24-105mm F4-7.1 IS STM
絞りF13・1/320秒・ISO800

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定番ではあるけれど、撮らずにはいられないこの構図。空が透明感のあるブルーであることで、さらに切なくなる効果を感じてしまう。はらはらと花びらが散って風に舞う様子を撮るには絞りが浅いと空に溶けてしまう。

長谷寺の桜と子ども

Canon EOS R8・RF24-105mm F4-7.1 IS STM
絞りF8・1/640秒・ISO800

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春の陽気が伝わるような気楽なポージングで桜と撮れば、温かい空気が流れてくる。
お天気がいいことや風が気持ちいいことが、写真のレイヤーのいちばん上に来るように、こちらも構えずにスナップする。

穏やかな桜をスナップする

桜をスナップするとき、ほのかなピンク色に引き寄せられて花の一部に寄って撮ることがある。衝動的なアップを撮ったなら、一度すこし引いて見てみると桜を含む環境が見えてくる。

花が美しいと魅かれた理由は、それが集合体であることも関係している。

風に吹かれてゆれている、オレンジ色の西日で木の幹もやわらかな色をしているなど、後から理解する花の環境があると、自分の考えが深まっていいと思う。

ちなみに、わたしは穏やかな花のスナップが好きなので、緊張感が出てしまう写真について話すと。

花のアップを、絞りを開放にして撮るとピントが合った部分に緊張感がでて、それ以外のほとんどが背景として溶けてしまうので、穏やかな花の写真に感じにくくなってしまう。つまりピントの合焦の緊張感が、写真に対して高まってくるのだ。

そうならないように、あまり開放で撮影はしていないし、ピントの合わせる場所はなんとなくでいいと感じる。ほどよく雑で、丁寧に合わせる時間があるなら、もっと花を愛でるほうが心地よいでしょう。

桜を接写で撮影

FUJIFILM X-S20・XF35mmF1.4R・マルミ光機なついろパンチ!
絞りF3.2・1/3200秒・ISO1000

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花弁が陽に透けて美しく、やさしい表情をしていたので、がく片やがく筒も入れて撮る。レンズフィルター「マルミ光機 なついろパンチ!」をつけると、輪郭をやわらかく描画できるので儚さが増す。青みが強くなるようであれば、ホワイドバランスを8000Kくらいに設定すると青みが消え、やわらかさだけが残る。

高台に咲く桜と海

FUJIFILM X-S20・XF35mmF1.4R・マルミ光機アルプスパンチ!
絞りF3.2・1/3200・ISO1000

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高台にある桜を海に向かって撮影。偶然立ち止まった修学旅行の学生が見ている景色を想像する。誰かが入ることでその場所のスケールが見えてくるが、人間はポイントになりやすいので誰でも彼でもいいということはないかと。

小さな花の軍勢は、やはりわたしにはすこし圧倒的に強過ぎて。

桜と、もうひとつ主役になるような景色で構成する方が、穏やかに見えるように思う。こういった記事に載せてはいるけれど、Exifや設定を気にしながら見るよりも、自分が見ている景色が、自分にとってどういうモノであるかを考えながら眺めるほうが、はるかに自分に添った情景が見つかる。

スナップは、鮮度が大切で、考えていては瞬間は通り過ぎてしまう。けれども、何をどういう視点で撮るか、というのが個々様々であるから面白いので、撮影前にも一度ぼんやり考えるといい。

踏切と桜

FUJIFILM X-S20・XF35mmF1.4R・マルミ光機アルプスパンチ!
絞りF2.2・1/4000秒・ISO640

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桜の全景を入れず、踏切と同じくらいの割合で構成する。「マルミ光機 アルプスパンチ!」は緑色が美しく描画できるので春の景色には相性が良い。滲みが強く望遠での撮影ではかなりぼけぼけになってしまうので、35から55mmくらいの焦点距離がおすすめ。

お天気との相性

桜のスナップでいちばん困ることは、人の多さ。写り込んでしまう顔などではないかと推察する。だから、いちばん人が少ない時間帯に歩いたり、雨上がりなどに重い腰をすっとあげて目当ての場所に行く。

テクニックじゃなく、それがいちばん困らずに、自由に桜と向き合えるのだ。そう、つまり、1対1で向き合う時間をどうつくるかということ。

鎌倉の極楽寺の桜

FUJIFILM X-S20・SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary・マルミ光機ホワイトパウダーミスト1/4
絞りF5・1/160秒・ISO200

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桜の名所でもある鎌倉の極楽寺。大雨が降って、「花散らしの雨ですね」などと近所のおばあさんと話をしていたらいつの間に止んできた。丁度、仏生会の日で、本尊開帳は普段ひとが多いのでなかなか行けないのだが、今なら参拝できるのではないかと伺ったところ、帰りに神々しい光が桜に降り注いだ。そういう普段しないチャレンジも時には必要かと。

桜を写している水鏡

Nikon FE・Ai Nikkor 35mm f/1.4S・マルミ光機ホワイトパウダーミスト1/2

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これは別の日、別の場所の桜を写している水鏡。雨上がりはとてもドラマチックで美しい情景が現われる。被写体にも、それ以外の場所にも。空に抜けていく桜の花もいいけれど、水の底に沈む空に浮かぶ桜を撮るのもいい。

人物と桜を撮る①スナップポートレート

輝く桜と満面の笑みの少女など、撮り方はひとそれぞれ、好き好きもそれぞれ。わたしは、なんとなく雨の日というシチュエーションが瑞々しくて、はしゃぎ過ぎなくて落ち着く。桜の賑わいが見えない分、その日の背景が見える気がするからだ。

桜の花を前ボケにすれば奥行きが出るし、色の統一感もモノトーンでまとまりがいい。花の色がやさしい色合いなので、人物が纏っている服や表情によって、桜よりも強くなってしまう場合がある。桜、人物どちらを主体に考えるか気を使って考えたいところだ。

女学生と桜

FUJIFILM X-S20・SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary・マルミ光機ホワイトパウダーミスト1/4
絞りF2.8・1/320秒・ISO500

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雨の日に傘を差し、浮かない表情をしている学生の普通ぽさに魅かれる。この時のポイントは透明な傘だ。これに桜以上の色がついていたり、色が濃いようだと春の軽やかさがでない。

女学生とたくさんの桜

FUJIFILM X-S20・SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary・マルミ光機ホワイトパウダーミスト1/4
絞りF2.8・1/800秒・ISO500

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人物が小さく、桜の木が大きく写る王道なポジショニング。ポイントは画面のなかで終わりを見せないこと。桜の木の枝の終わり、人物の足元、並木の終わり。元々せつない画が、更に切なくなってしまうからだ。それは作為過ぎかなと思う。

人物と桜を撮る②七五三

スナップと言えど、おさえる部分はおさえないとならないのが七五三撮影。

桜の下で行うことは稀かもしれないが、わたしはこの時期がいちばん被写体に負担が少ない気がしている。七五三撮影は、何よりも本人が慣れない着物で気分が乗らない場合も多く、表情が浮かないのを周りが「笑顔で!」「笑って」とプレッシャーを与える場合が多い。

そんなときに桜吹雪が舞い散るなら、演出にもちょうどよく、撮影は勢いをつけてできるので、子どもは楽しく表情が豊かだ。

何よりも成長を願うお祝なので、桜という強めのアイテムとの共演で負けないくらいには撮ってあげたい。

桜吹雪の中の七五三の男児

Canon EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM
絞りF2・1/400秒・ISO200

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桜吹雪が舞い散るなか、しっかりと踏ん張り、桜をすくおうとする被写体。スナップでは35mmや50mmでコミュニケーションを撮りやすくするが、背景の抜けの良さを作り出すのに85mmほどの中望遠が使いやすい。

桜と七五三の男児

Canon EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM
絞りF2・1/400・ISO200

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見上げた顔、唇に花びら。こんな瞬間は声をかけずにスピード感を持って撮って残したい。

まとめ

住宅街に咲く桜

Nikon FE・Ai Nikkor 35mm f/1.4S・マルミ光機ホワイトパウダーミスト1/2

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住宅街に現われた桜たち。こんな何気ない、心構えのないときに見つける桜が、わたしはいちばん心を奪われてしまう。

わざわざ桜をどこかに眺めに行かずとも、日常のなかに桜は溢れている。

いつもの通勤路が桜吹雪で別世界になったり、いつもは少し寂しい公園が賑やかな空間になったりと。日常でありながら、非日常の世界を作り出してくれるのが桜だ。

桜の撮り方にきっと正解も間違いもない。それぞれの思いが重なって、それを感じればいい。だから、自分だけの世界観を見つけながら、春風に吹かれて、短い季節を楽しむことが何よりだと感じる。

その傍らにカメラがあったなら、尚いいね。そんなふうなこと。

晴れの桜も、雨も曇りの桜も 全部短い春からの贈り物だと、思って受け取ってみてほしい。

作例に使用したレンズ

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Photo & Text by 鈴木さや香(すずき・さやか)

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