
はじめに
質量はわずか約675g。優れた機動性と携行性を実現
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIの操作性をチェック
スナップ作例による実写レビュー
さまざまなシーンで、ボケ味による演出を試す
解像感と歪み、最短撮影距離について
まとめ
作例に使用したレンズ
作例に使用したカメラ
私が職業写真家となったのは新聞(厳密に言うと雑誌だが)の写真部でした。報道現場ではレンズ交換をするタイムラグを嫌い、3台のボディに3本のレンズを固定で撮影に挑んでいました。ワイド単焦点、望遠単焦点、そして標準ズームと言う装備がポピュラーでした。なかでも標準ズームは最も汎用性が高くあらゆる現場で活躍してくれました。その後もシンプルなセットで取材に望みたい時はいわゆる「大三元レンズ」のうち標準ズームと望遠ズーム2台体制が多くなりました。
つまり私の仕事現場で最も活躍しているレンズが標準ズームレンズと言っても良いくらい「はずせないレンズ」と言い切れるでしょう。
今回のNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIも例外なく私のレンズラインナップに加わりました。スナップ写真を多く撮る私にとって肝になるのがそのフットワークの良さです。当然レンズの表現力は妥協できませんが、その軽快さは大いに武器となるのです。
» 詳細を見る

今回、先代のNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sから6年ぶりの登場となり大きく変わった点がいくつかあります。その中でも何より軽量化が大きなトピックになっており805gから675gへの大幅な減量に成功しました。これは持った瞬間の手応えも明らかに変わり、持ち運びのストレスも大きく軽減されました。鏡胴もスリム化され握りやすい、取り回しの良い印象です。
全長は126mmから142mmと僅かに伸びましたが、このクラスとしては初めてインターナルズーム機構を採用して望遠側にズームした時の伸縮がなくなり、近接撮影時にレンズ接近を気にせず撮影することができるようになりました。ズームレンズならではの様々な被写体に対応することがでできるのです。そしてこれは動画撮影にも大きな力となります。ジンバルなど使用時に重心の変化がなくなり、使い勝手の良さが大幅に向上したと言えるでしょう。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
70mmで撮影・絞りF2.8・1/2500秒・ISO400・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
操作機能的には割り当て可能なL-Fnボタンも変わらず搭載されており、応用の効く使い勝手の良さは引き続き継続されています。ちなみに先代であった情報パネルは搭載されていません。大きく変わったのはコントロールリングです。専用のスイッチが搭載されクリック感を与えることができるようになりました。
絞りを設定しておけばオールドレンズの操作感に近くなります。露出補正を割り当てるのもボタンを押すワンアクションが省けるので便利かもしれません。個人的にはクリックがないと誤操作しやすく、ある意味軽くロックがかかる状態なのでありがたいポイントです。リングデザインもフォーカスリングやズームリングとは違いを出しローレット形状になっており、指がかりもよく使いやすい印象です。
レンズ経は77mm。大口径の両面非球面レンズとEDレンズを効果的に組み合わせ、レンズ枚数も減らすことで軽量化と同時に高画質化を達成しています。これは嫌なゴーストやフレアも抑えることにもつながり、加えてメソアモルファスコートとアルネオコートを組み合わせて、嫌な反射を防止しています。
フードにも工夫がされており、フィルター操作窓がつき回転式フィルターを使う風景写真などのフィールドでは大いに役に立ちそうです。普段フィルターワークをしないジャンルのユーザーにとっては窓のロックが若干甘く簡単に開閉してしまうところは、改善できるとありがたいところです。
この後は実際に撮影してきた作品とともに、レンズのインプレッションをしたいと思います。スナップ写真はフットワークの良さが問われます。そこでレンズ性能的に問われるのはAFのスピード感でしょう。一瞬を逃さない、その精度とともにスピード感が良い作品を撮るための重要なポイントになります。
今回は新たに独自のシルキースウィフトVCMを採用し、先代より約5倍早いAF速度を達成しました。そのAFは滑らかで素早いと実感できます。ほぼ無音で稼働し動画撮影でも大いに力を発揮するでしょう。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
70mmで撮影・絞りF2.8・1/2500秒・ISO320・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
街のドラマは一瞬で通り過ぎます。カラフルなオブジェで楽しく遊ぶ子供達、迷路から抜け出した瞬間を切り撮りました。AFのスピード感はこんな時に役に立つのです。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
24mmで撮影・絞りF5.6・1/2500秒・ISO200・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
私は「この場所でフォトジェニックな瞬間が起きれば良いな」といった感覚で、その瞬間を待つことが多いと思っています。その瞬間が来た時にAFが遅かったり精度が低ければその一瞬を逃す事になります。工事現場の白い壁に絵画のように木の影が投影されていました。後は素敵な被写体が前を通ってくれればと思っていました。仲良い二人が顔を寄せ合うとは予想していませんでしたが…
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
43mmで撮影・絞りF22・1/100秒・ISO800・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
寺社仏閣、そんな神聖な場所を撮影する場合、光をどう表現するか考えます。それを象徴するものと光芒。組み合わせることによって神々しさが演出できます。逆光を意識して太陽を入れその空気感を演出する。逆光耐性の強い本レンズの腕の見せ所です。嫌なゴースト・フレアを抑えたスッキリとした表現力が光の力を写し出してくれました。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
30mmで撮影・絞りF2.8・1/800秒・ISO400・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
背景のボケ味もレンズ選びのポイントとなるでしょう。F2.8という程よいボケ感と背景に残る情報。商店街で熱く包容する二者を際立ててみました。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
70mmで撮影・絞りF2.8・1/2000秒・ISO320・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
ボケ味の表現というと後ボケを想像すると思いますが、私は前ボケの使い方こそ奥行き表現の重要な鍵だと思っています。程よい前ボケの奥にあるからこそ感じられる立体感。本レンズは程よい奥行きを演出してくれます。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
70mmで撮影・絞りF2.8・1/800秒・ISO1600・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
玉ボケが美しいのも良レンズの証です。絞り羽も9枚から11枚に増え、非球面レンズの加工精度の向上もあいまって、同心円状にでる玉ねぎボケも低減し美しい玉ボケの演出が可能となっています。キラキラとしたイルミネーションなどこれからの季節に大活躍してくれるでしょう。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
39mmで撮影・絞りF2.8・1/1600秒・ISO320・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
ボケ味とは対極的な解像感と歪みについて。本レンズの解像感は非常に高く感じられます。周辺に対しても嫌な歪みも少なくキリッとした質感描写を可能としています。瓦や石垣の素材感や構造を見事に描いてくれました。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
24mmで撮影・絞りF2.8・1/200秒・ISO250・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
最短撮影距離は広角端で0.24m、望遠端で0.33mと花や物撮りなどにも十分対応してくれます。レンズ繰り出しがないので思い切って寄り切ることができました。
ニコンZ 8・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
24mmで撮影・絞りF2.8・1/25秒・ISO12800・WBオート・RAW
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
軽量なレンズは大胆なアングルの手助けとなります。片手で目一杯ローアングルにして奥行き表現をするなどアングル、表現の自由度が上がります。
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIは、写真表現として基本的な画角を網羅した、すべてのジャンルの被写体をカバーできるレンズです。
そんな中、単なる便利レンズにならず表現に妥協せず、評判の良かった先代を機能、表現的に上回るレンズに仕上げたところに、レンズ群の軸となる重要な存在だということをニコンが示したと思います。
スチールにとどまらず動画用レンズとしても大幅に進化した本レンズは、ジャンルに囚われない万能レンズとなったと言っても過言ではないでしょう。
» 詳細を見る

» 詳細を見る

Photo & Text by 熊切大輔(くまきり・だいすけ)