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2023.04.27
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Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2 S レビュー × 熊切大輔|豊かな表現力を発揮する大口径レンズ

Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2 S レビュー × 熊切大輔キービジュアル
Nikon(ニコン)のNIKKOR Z S-Lineシリーズの中でも圧倒的な描写力を誇るNIKKOR Z 85mm f/1.2 S。開放F値1.2からあらゆる場面で臨場感あふれる映像を捉えることができます。

F1.2の浅い被写界深度でもマルチフォーカス方式採用の高速AFにより、写真・動画を問わず、さまざまなポートレート撮影やスナップの現場で表現の幅が大きく広がるでしょう。

今回は、フォトグラファーの熊切大輔さんに早速レビューして頂きました。


ライター熊切大輔(くまきり・だいすけ)イメージ
■フォトグラファー紹介

熊切大輔(くまきり・だいすけ)

1969 年東京都新宿生まれ。東京工芸大学短期大学にて写真表現を学ぶ。卒業後、株式会社日刊ゲンダイ写真部に入社プロ野球や社会面や文化面なども担当する。その後フリーとなる。現在は「人」という要素を中心にメディア、企業オフィシャル撮影・広告など様々なジャンルで撮影活動中。作品はスナップ写真で東京や世界の街を切り撮っている。高校や大学、専門学校などで講師として指導も⾏う。公益社団法人日本写真家協会理事。

はじめに

「人物を撮って欲しい」私がそんなオーダーを受ければまず用意するのが85mmだ。
今回は話題のニコンZレンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」を使ってみた。

NIKKOR Z 85mm f/1.2 S の特徴

85mmというと一般的にポートレートレンズという印象が強いと思う。その焦点距離が生み出す歪みの少ない描写と柔らかいボケ味は被写体を背景から分離し、浮かび上がらせる表現がなんとも魅力的だ。

そんなレンズの特徴を更に強めるのが、より明るい開放値であることだ。ZレンズシリーズではF1.8があるが今回は更に明るいF1.2、S-Lineシリーズというハイグレードなラインアップに属するにふさわしい表現力を持った堂々たるレンズとなっている。

大口径レンズということでサイズは大きくなったがずしりとした手応えは、その力強さを感じることができる。ボディはやはりZ9クラスと合わせるのがベストバランスかもしれない。

ニコンNIKKOR Z 85mm f/1.2 Sを装着したZ 9の画像
今回の撮影機材
ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 S

NIKKOR Z 85mm f/1.2 S の作例

ポートレート撮影での実力を試す

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 Sで撮影した道端で振り返る女性の画像

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
絞りF2・AE(1/3200秒)・ISO100・WBオート・+0.3EV補正
モデル=桜田澪(舞夢プロ)

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まずはポートレートの撮影。背景のボケ味を最大限に活かす「抜けの良い」ロケーションを選ぶ。日の丸構図的に集中線がセンターに集まる構図にして奥行き感をさらに強調した。足元のタイルの前ボケから合焦し、またボケてゆくリズムが気持ち良い。典型的なポートレートをしっかりと写し出させてくれた。

そんな美しい描写力を決めるレンズ構成は10群15枚、ナノクリスタルコートもしっかり施してあり、その解像力は期待通り当然高い。望遠レンズならではの歪みの少ない描写はもちろんで、隅々まで解像感の高い表現を実感できる。

開放で撮ってもシャープさは失われず、点光源の多い夜景を撮っても嫌なにじみが出ない描写にその精度の高さを感じられる。

最大の魅力であるボケ味は文句なしの描写

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 Sで撮影したライトアップされた東京タワーの画像

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
絞りF1.2・AE(1/100秒)・ISO400・WBオート・–1.33EV補正

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都市の粒だった光源はまるで星空のようで、東京タワーはそれを突き抜けるロケットのように写し出された。暗いなかの光を撮る、レンズの性能が最も問われるシーンだ。

さらに最大の特徴であり魅力であるボケ味は文句なし、どころか想像を上回る味わいを魅せてくれる。F1.2となると合焦面が薄いため甘い描写、どこにピントが合っているかわかりづらい心配があるが、このレンズは合焦面はしっかりと、そこから一気にそして柔らかいボケ味に変化してく表現は本当に魅力的だ。

もちろん開放もよいが、そこから軽く絞っていくと更にボケとシャープさがバランス良く混在した素晴らしい描写を描くことができる印象だ。シャープネスはカリカリの硬い描写ではなく肌や髪、白い衣服を質感豊かに柔らかく写し出してくれる。

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 Sで撮影した桜の木の下に立つ女性の画像

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
絞りF1.3・AE(1/16000秒)・ISO100・WBオート・–0.67EV補正

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桜のような複雑なボケの背景も色付きも抑え自然に、柔らかく被写体を引き立ててくれる。都会の桜は構造物の反射がその表情を倍増させている。

大型レンズはAFのスピード感が問われる。大きいレンズを動かすわけで機動性が心配になるが、その対策もしっかりなされている。

不意に訪れるシャッターチャンスにも対応できる

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 Sで撮影した傘を持って歩く女性の画像

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
絞りF2.2・AE(1/400秒)・ISO200・WBオート・–0.33EV補正

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スナップ写真などのシャッターチャンスは不意に訪れるものだ。AFのスピード感が勝負を分ける。AFにはSTM(ステッピングモーター)を2個搭載したマルチフォーカス方式を採用。よりスムーズで静音性の高いAF駆動を実現している。フットワークの良い撮影ができる、ということになるのだ。

マルチフォーカス方式は近距離性能にも貢献しているという。

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 Sで撮影した水溜りに浮かぶ桜の花びらの画像

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
絞りF3.2・AE(1/640秒)・ISO200・WBオート・–0.67EV補正

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最短撮影距離、撮像面から85cmと近接での撮影はほどほどだが、やはりそのボケ味を活かし寄った表現は撮影フィールドを広げてくれるだろう。街の桜の花びらはマンホールを写し込むことであえて都会の桜感を演出してみた。

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 Sで撮影した傘をさして歩く人々の画像

ニコンZ 9・NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
絞りF3.5・AE(1/800秒)・ISO400・WBオート・–2.0EV補正

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雨の日など、ある程度タフな撮影環境でも防塵防滴に配慮されており機能的にもぬかりはない。

まとめ

望遠系のレンズを使うときは意識してその表現を変えたい。ボケ味ばかりでは単調に似た作品ばかりになってしまうので望遠ならではの圧縮や引き寄せを使い平面的な画作りをもチャレンジしたいところだ。

このように王道のポートレートはもちろん幅広い被写体に精度の高い表現で挑めるNIKKOR Z 85mm f/1.2 S。究極の一本を持つならこのレンズなのかもしれない。

作例に使用したレンズ

Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2S

【商品情報】Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2S

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Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2Sバナー画像

作例に使用したカメラ

Nikon Z 9

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Photo & Text by 熊切大輔(くまきり・だいすけ)

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