HASSELBLAD X2D II 100C 実写レビュー × 写真家 渡部さとる|高画質でありながら小型軽量なスナップカメラ

目次
はじめに
ハッセルブラッド Xシリーズとの付き合い
「X2D II 100C」の進化点と使用感
これまで使ってきたXシリーズのレンズ
XCD 2.5/38V
XCD 2.8/65
XCD 1.9/80
新ズームレンズ「XCD 2.8-4/35-100E」を試す
まとめ
作例に使用したレンズ
作例に使用したカメラ

渡部さとる(わたなべ・さとる)
1961年山形県米沢市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。同社退職後、フリーランス。2006 年よりギャラリー冬青にて作家活動を開始。第33回「写真の会賞」特別賞を受賞。現在慶應義塾大学大学院非常勤講師。写真表現や現代アートを紹介するYoutube「2BChannel」を運営中。写真集、著作多数。近著に『撮る力見る力』(ホビージャパン)、「inception」(ふげん社)がある。作品は複数の美術館に収蔵されている。東京都写真美術館、ケ・ブランリー美術館(パリ)他。
https://youtube.com/@2bchannel606?si=CXqKhwDqUh1rHJcI
はじめに
僕はフィルム時代から長年ハッセルブラッドを愛用していて、デジタル機になってからもメイン機として使い続けている。今回、ハッセルブラッド「X2D II 100C」と新設計のズームレンズ 「XCD 2.8-4/35-100E」をレビューする機会に恵まれた。実は購入を検討していたこともあり、どのように進化したのか興味津々だった。
まず結論から言おう。今回のX2D II 100Cは大型のメジャーアップデートではなく、あくまでマイナーアップデートだ。新規購入やX1D、X1D II 50Cユーザーには迷わずおすすめできる。しかしX2D 100Cユーザーにとっては、買い替えを急ぐよりも次期モデルを待つ選択肢も十分にある。SNSやYouTubeレビューでの盛り上がりからすると、正直やや肩透かし感があったのも事実だ。誤解しないでほしいが、間違いなく素晴らしいカメラである。ただ「X2D 100Cを下取りに出してまで手に入れるか」と問われれば、悩ましいところだ。
ハッセルブラッド Xシリーズとの付き合い
ハッセルブラッドのデジタル機X1D II 50Cを手に入れたのは2020年、コロナ禍の真っ只中だった。デザインに惹かれて購入したが、実際に使ってみると想像を超える写りを見せてくれた。長野県松本市近郊を撮る仕事で大活躍し、正月行事「さんくろう」で炎を撮影したときには、その圧倒的な描写に驚かされた。僕のYouTube「2B Channel」でその写真を紹介すると大きな話題になった。いわゆる「ありえない写り」という常套句を超えて、本当に「今まで見たことのない写り」だったのだ。
2022年には後継機のX2D 100Cを迷わず購入。5000万画素から1億画素へと倍増したが、それ以上にAF性能が大幅に向上し、合焦の正確性が格段に上がった。以来、X2D 100Cは僕のメイン機として活躍し、国産ミラーレスの出番はほとんどなくなった。ただし不満もある。最大のストレスは、背面液晶とファインダー切り替え時のわずかなタイムラグ。この遅延は想像以上に撮影時のストレスとなっている。これに関してX2D II 100Cではほんのわずかだが、改善が感じられた。
「X2D II 100C」の進化点と使用感
X2D II 100Cに期待したのは、この課題を超える「大幅な進化」だった。主な変更点は以下のとおりだ。
・ボディの軽量化
・手ブレ補正の強化
・ライダースキャナーによるAFの高速化
・新しいHDR機能の搭載
まず驚かされたのは価格設定だ。物価高の中にもかかわらず、前機種より安い7399ドル(国内価格も同様に抑えられている)。「大型アップデートなら150万円はするだろう」と想像していただけに、この価格は意外だった。
ボディはX2D 100Cのデザインを踏襲しつつ55グラムの軽量化。グリップ形状もわずかに改良され、握りやすさが増した。さらに背面にはジョイスティック型のレバーが追加され、これが非常に快適。X2D 100Cでは液晶タッチでAFポイントを動かす仕様で煩わしかったが、この変更で大きく改善された。
AFについても進化がある。X1D II 50CはコントラストAFのみで課題が多かったが、X2D 100Cで位相差センサーを搭載し大きく改善。今回のX2D II 100Cではライダースキャナーが加わり、速度と安定性がさらに向上した。確かに違いは感じられるものの、宣伝で言われる「SONY製品に匹敵」はさすがに言い過ぎだ。現状では国産上位機種に及ばない。
センサーは1億画素のままだが刷新され、新たに「エンドツーエンドHDR」が搭載された。従来のHDRは不自然さや扱いづらさがあったが、今回は撮影から保存、展開まで同一のイメージを共有できるという。ただ僕自身は必要性を感じない。16ビットRAWであれば現像ソフトで柔軟に補正できるからだ。
手ブレ補正も強化され、数秒のシャッターでも手持ち撮影が可能と話題だ。しかしX2D 100C自体も十分優秀だったため、僕にとっては劇的なアドバンテージにはならない。
これまで使ってきたXシリーズのレンズ
ハッセルブラッドXシリーズのレンズは、これまで、XCD 2.5/38V・XCD 3.5/45・XCD 2.8/65・XCD 1.9/80を使用してきた。外観デザインの違いから、X1D・X1D II 50C時代の前期型と、X2D 100C以降の後期型に分けられる。
ちなみにXシリーズのセンサーはフルサイズの約1.7倍の大きさがあり、フルサイズ換算値を出すには0.8倍をかける。たとえば100mmのXCDレンズであれば換算80mmとなる。
そしてXCDレンズ最大の特徴は「レンズ組み込み型シャッター」であることだ。一般的なミラーレス機ではセンサー前面にシャッター幕が配置されるが、XCDはフィルム時代のハッセル同様、レンズシャッターを採用している。そのため全速でストロボ同調が可能であり、屋外でストロボを多用するファッションフォトグラファーには欠かせない機能となっている。
XCD 2.5/38V
X2D 100Cと同時期に購入したレンズ。ISOや絞り、シャッター速度などを割り当てられるコントロールリング、AFとMFをワンタッチで切り替えられるクラッチ機能付きフォーカスリングなど、ビルドクオリティは非常に高い。描写は中心から周辺まで破綻なく、ライカで言えばアポ・ズミクロンを思わせる精密さ。重量も350gと軽く、開放値も明るいため、万能スナップレンズといえる。
【商品情報】HASSELBLAD XCD 2.5/38V
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XCD 2.8/65
使ってみた印象だが、このレンズの描写はライカの旧ズミクロンを思わせる「中心解像度に全振りした設計」だ。周辺が大きく崩れるのだが、それがかえって魅力になり、使い込むほどに「XCD 2.8/65 だけで十分では?」と思わせる味わいがある。
【商品情報】HASSELBLAD XCD 2.8/65
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XCD 1.9/80
海外の多くのYouTuberが「ベストレンズ・エバー」と評する1本。大口径ながら中心から周辺まで破綻なく、完璧に近い描写を見せる。僕自身、最近はこればかり使っている。ただし重量は約1kgあり、ボディと組み合わせると総重量は2kg超え。決して扱いやすいとは言えない。またX1DおよびX1D II 50CではAF精度が不安定だったことを付け加えておく。このレンズをAFで快適に使うなら、X2D 100Cか新型X2D II 100Cが必須だ。
【商品情報】HASSELBLAD XCD 1.9/80
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ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 1.9/80
絞りF2.8・1/160秒・ISO100
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この組み合わせは、わずかな光も美しく捉えてくれる。絞りは基本的に開放だが、ボケを利用するというより、中心に自然と目がいくように使っている。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 1.9/80
絞りF2.8・1/160秒・ISO100
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XCD 1.9/80はオールドレンズの癖がある描写とは対照的な、現代最高峰の性能を誇るレンズだ。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 1.9/80
絞りF2.8・1/15秒・ISO64
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暗部からハイライトまで階調が連続している。
新ズームレンズ「XCD 2.8-4/35-100E」を試す
今回、X2D II 100C発売に合わせてリリースされた新設計の標準ズームを試用する機会を得た。従来の XCD 3.5-4.5/35-75 に代わるモデルで、望遠側が長くなり、開放値も半段明るくなっている。フルサイズ換算で約28-76mmに相当。末尾の「E」は Excellent を意味し、最高品質を保証する。
重量は894g、全長145mm。前モデルより約10%軽量化されたとはいえ、依然としてずっしりしている。レンズシャッターの最大速度は1/4000秒で、もちろんこの速度でもストロボ同調が可能。クラッチ式AF/MF切替リングは非搭載だが、コントロールリングは備えている。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
35mmで撮影・絞りF4・1/10秒・−1.33EV補正・ISO400
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夜祭をあえてISO400で撮影してみた。シャッタースピードは1/10秒。被写体はブレているが背景は全く問題ない。HDRを仕様しているせいで若干不自然な感じがする。使い方はケースバイケースで、基本はRAWから調整することになるだろう。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
35mmで撮影・絞りF4・1/13秒・ISO400
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今回背面の液晶が下側にもチルトすることで、ハイアングルのポジションで撮影しやすくなった。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
45mmで撮影・絞りF16・1/90秒・ISO800
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(左)HDR使用。バランスの良い明暗になっている。
(右)HDR不使用。もちろんRAWデータから調整すればHDR使用時のような明暗さにコントロールできる。
X2D II 100Cで「AF速度が劇的に向上」とアナウンスされたが、XCDレンズはステッピングモーター方式のため、国産ミラーレス機の速度に迫るのは構造的に難しい。ただし合焦精度は極めて高く、拡大してもピントのズレは一度も見られなかった。
描写に関しては言うまでもなく、1億画素センサーに完全対応。次世代のX3Dが噂される1億5千万画素を見据えて設計されているはずだ。標準域を広くカバーする焦点距離は、多くのユーザーに歓迎されるだろう。特にレンズ交換を極力避けたいロケ撮影には適している。価格も2025年9月時点では他のXCDレンズと比べ意外とリーズナブルで、X2D II 100Cとセットで購入する人も多いはずだ。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
35mmで撮影・絞りF2.8・1/3000秒・ISO100
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JPEG撮影であれば周辺減光や歪みが解消されている。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
35mmで撮影・絞りF3.4・1/500秒・ISO50
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小田原にある写真家杉本博司の美術館「江之浦測候所」
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
42mmで撮影・絞りF3.2・1/1500秒・ISO100
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HDRを使用すると、バランス重視のため、若干くすんだ感じに仕上がることがある。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
42mmで撮影・絞りF3.4・1/1000秒・ISO100
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江之浦測候所は室内ではなく、屋外にこそ真骨頂がある。杉本博司の代表作「海景」を彷彿させる円形舞台。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
50mmで撮影・絞りF3.5・1/60秒・ISO200
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このような状況にはHDRは非常に有効。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
100mmで撮影・絞りF4.8・1/80秒・ISO800
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AFの進化により動くものにもある程度対応できるようになったため、X2D 100Cより撮影領域が拡大された。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
35mで撮影・絞りF3.4・1/640秒・ISO100
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江之浦測候所の敷地内に新たに建立されている春日大社。
ハッセルブラッド X2D II 100C・XCD 2.8-4/35-100E
35mで撮影・絞りF6.8・1/60秒・ISO50
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海に向かって伸びている江之浦測候所の「隧道」(トンネル)。冬至の朝日が海の向こうから隧道を通って館内に差し込んでくる。
まとめ
総合的に見れば、X2D II 100Cは「堅実なマイナーアップデート」だ。新規購入には十分おすすめできる完成度だが、X2D 100Cからの買い替えは慎重に判断した方がいいだろう。数年後のX3DまでX2D 100Cを使い倒すという選択もある。僕自身も結論は保留中で、しばらく悩むことになりそうだ。中古購入であればX2D 100C一択。X2D II 100C登場で長らく高止まりだったX2D 100Cの中古価格も変化があるだろう。
ハッセルブラッドのデジタルカメラは、その歴史とブランド力からライカと比較されることが多い。ライカM型が唯一無二であるように、ハッセルには907Xというエレガントなボディが存在する。僕がフィルム時代からハッセルブラッドを愛用してきた理由は、ひとえにレンズ性能の高さと、デジタルハッセルが生み出す唯一無二の色再現にある。
最後に、これは一人の長年のユーザーとしての願いだ。どうかサービスセンターを再設置してほしい。修理やメンテナンスに安心できる体制は、ユーザーにとって何より重要だ。日本のユーザーが心から安心してハッセルブラッドを使える環境が、一日でも早く整うことを切に願っている。
作例に使用したレンズ
【商品情報】HASSELBLAD XCD 1.9/80
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【商品情報】HASSELBLAD XCD 2.8-4/35-100E
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作例に使用したカメラ
【商品情報】HASSELBLAD X2D II 100C
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Photo & Text by 渡部さとる(わたなべ・さとる)

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