はじめに
Zシリーズの中での立ち位置が大幅にステップアップしたZ5II
ボディのコンパクトさ、軽快さは「Z5」を踏襲
「ピクチャーコントロールボタン」が新たに配置された
カメラで被写体の動きを検出し、AFモードを切り換える「AF-A」を搭載
高感度領域の性能、表現の向上も大きな魅力の一つ
作例に見る、NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3との相性の良さ
まとめ
作例に使用したレンズ
作例に使用したカメラ
2020年に発売されたZ5が5年ぶりに2代目をリリースした。
ニコンのミラーレスラインナップの中でフルサイズとしてはエントリーモデルという位置づけになるが、その使い勝手の良さ、バランスの良さで初心者からプロまで幅広く需要のある機種となっている。デジタルカメラは総じて新しいモデルが最新の機能を搭載し、優れたものになるのは当然である。しかしエントリー機がフラッグシップモデルの良い部分が反映しているとなると、そのコストパフォーマンスの高さが気になっているユーザーも多いのではないだろうか。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・35mmで撮影
絞りF5.0・1/250秒・ISO400・WBオート・RAW
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不思議でカラフルなオブジェ。細かいの数字の装飾も隅々まで精細にそして色鮮やかに描いてくれた。
本機の特徴は何より、フラッグシップモデル「Z9」や「Z8」と同じ「EXPEED 7」を採用しているところだろう。
最新の技術を投入してディープラーニングを活用したAI技術による被写体検出を活用、合焦スピードや精度の向上など前機Z5から大幅な進化を達成している。加えて撮像素子は、有効2450万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用。高感度に強い裏面照射型CMOSセンサーの特徴を活かしてでノイズを大幅に低減することができている。主要デバイスとソフトの進化によりZシリーズの中での立ち位置が大幅にステップアップした印象だ。
小さいながらグリップも指がかりがよく持ったときの頼りなさはない。
ボディ主要面にはマグネシウム合金を採用、防塵防滴性はエントリー機と思えぬ堅牢性を持っている。一方でボディのサイズ感は700gと先代「Z5」の重量675gより若干上回ったがほぼそのサイズ感を維持。Z5の大きな特徴、有利点としてのコンパクトさ軽快さは維持されている。
そして機能的な変更点は他にもある。まず液晶がチルト式からバリアングル式に変更された。動画ユーザーを意識してのことであろうが、この辺は好みの違いが出るだろう。ファインダーは3000カンデラの明るさを実現した高輝度EVFパネルを採用。明るい環境下の見易さが向上している。
沈胴式でコンパクトに収納できる。
今回のキットレンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3は、ボタンレスの沈胴方式ボディーを採用し、ミラーレスカメラ用フルサイズフォーマット対応のズームレンズでは最薄の約51mmかつ最軽量の約195gコンパクトさであり、その組み合わせはベストマッチである。携帯性にも優れており軽快な撮影を楽しめる最高の組み合わせなのではないだろうか。
シンプルな操作感は直感的に扱える。
さまざまな特徴がある中で、今回の大きな特徴でもあるのはピクチャーコントロール機能だろう。積極的に活用してほしいという思いはボディデザインにも反映されている。FXフォーマットのカメラで初めて、モードダイヤルの横の最もアクセスしやすい場所に「ピクチャーコントロールボタン」が新たに配置された。
今回は著名なクリエイターが作成した画作りのプリセット「イメージングレシピ」を新たに採用している。最大9個のレシピをNikon Imaging Cloudから直接Z5IIに送信して楽しむことができるのだ。画作りの楽しさ積極的に提案しているのも本機の特徴だろう。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・35mmで撮影
絞りF6.3・1/320秒・ISO800・−0.3EV補正・WBオート・RAW・ピクチャーコントロール:ビビッド
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微妙な色合いやコントラストを変えることで作品の印象は大きく変わる。
まず何よりAFの進化を実感できる。被写体検出や高精度な合焦は画像処理エンジン「EXPEED 7」によるところが大きい。位相差AF、コントラストAFのハイブリッドAFを採用し、フォーカスポイントがシングルポイントAF時は273点、オートエリアAF時は299点になる。人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機の9種の被写体検出に対応する。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF6.3・1/1600秒・ISO800・WBオート・RAW
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よさこいの旗を振る練習をする青年に出会った。この様な構図だと旗にピントがもってかれがちだが、しっかりと人物を捉えてくれた。
動きの激しい被写体にも対応できる「3D-トラッキング」、被写体の動きや構図の変化に応じてAFモードをカメラが切り換える「AF-A」搭載など、豊富なAFモードを備えている。動体撮影への強さが体感することができた。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF6.3・1/800秒・ISO400・WBオート・RAW
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子どもなどの動きは予測不能だ。機能を活かして正確なフォーカスを得たい。
また、Z5IIはAF用の露出をライブビュー用の露出から独立して制御するため、逆光の厳しい環境でもAFが正確に被写体を捉えてくれるのだ。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF8・1/8000秒・ISO400・−1.67EV補正・WBオート・RAW
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空中ブランコで動き続ける被写体は、前にぶら下がるロープなどでシャッターチャンスが限られる。シャッターボタンを押し込む前にさかのぼって画像を記録できる「プリキャプチャー機能」を利用すれば反応しづらい瞬間を切り撮れる。
画質の関しては有効2450万画素と取り回しの良い解像度を持っており、作品としての品質を十分に担保できている。実際細かいディテールの被写体も隅々まで精細に描いてくれた。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF8・1/8000秒・ISO400・−1.67EV補正・WBオート・RAW
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シャープで都会的な直線と柔らかい雲が描く空模様を美しく表現できている。
高感度の性能、表現の向上も大きな魅力の一つだ。新たに採用された裏面照射型CMOSセンサーと画像処理エンジン EXPEED 7との相乗効果で高感度域の表現が大きく広がった。ISO 64000の最高常用感度を実現し暗所での撮影表現が大幅に広がった。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF6.3・1/3200秒・ISO64000・−1.67EV補正・WBオート・RAW
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ISO64000で撮影してみた。もちろん多少のノイズや解像力低下が見られるが、気になるカラーノイズが大きく抑えられているのがわかる。
加えて手ブレ補正は、5軸のボディ内手ブレ補正を搭載、中央で7.5段の高い手ブレ補正効果を得られている。「フォーカスポイント VR」はピントを合わせたフォーカスポイント付近のブレを抑制することで、被写体が画面の端に近い構図でもブレを抑えてシャープに描写でき安心した暗所撮影に挑める。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・24mmで撮影
絞りF5.6・1/400秒・ISO32000・−1.67EV補正・WBオート・RAW
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ISO32000。シャープなディテールを描き質感描写が犠牲になっていないのがわかる。
キットレンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」はZ5IIと非常に相性の良いレンズと実感できる。幅広い撮影シーンをこの一本で済ませられる気軽さは撮影フィールドを広げてくれる。気軽だがしっかりと作品表現のできるレンズだ。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF6.3・1/400秒・ISO100・−0.33EV補正・WBオート・RAW
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AF機構は「STM(ステッピングモーター)」を採用し滑らかでスムーズなフォーカスに寄与している。もちろん動画撮影にも適している。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF6.3・1/250秒・ISO400・−0.33EV補正・WBオート・RAW
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EDレンズ2枚を採用し、軸上色収差を補正、色にじみを低減している。ズーム全域で高い解像感での撮影が可能だ。
ニコンZ5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影
絞りF6.3・1/160秒・ISO800・−0.33EV補正・WBオート・RAW
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最短撮影距離はどの焦点距離でも0.35mと、テーブルフォトなど近接撮影も十分に楽しめる。
本格的な撮影から気軽な日常撮影まで、ユーザーや撮影シーンを選ばない、オールラウンダーなカメラと言えるだろう。
初めてのフルサイズミラーレスとしても使いやすくハードルが低く、ここから本格的な撮影に移行しても、レンズシステムを充実させることによって、使い続けられるカメラになっているのではないだろうか。さまざまなユーザーの要望に答えられる非常にバランスの良いカメラといえるだろう。
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Photo & Text by 熊切大輔(くまきり・だいすけ)