創造性と実用性を両立したSAMYANG Remaster Slim
スナップシューティングが捗るミニマルなレンズ
Remaster Slim AFモジュールへレンズユニットを装着
49mmのレンズフィルターも装着可能
近接撮影するならMFを活用
トイカメラのような写りを楽しむ
Remaster Slim+RS21mm F3.5の作例
Remaster Slim+RS28mm F3.5の作例
Remaster Slim+RS32mm F2.8の作例
まとめ
作例に使用したカメラ
作例に使用したレンズ
東京都北区出身。写真プリントのデジタルデータ制作を現場で習得。のちに商品・製品企画、フォトギャラリー、写真教室アシスタントなどを経て講師に。撮影・プリント指導を行う他、展示・イベント企画、プロデュース、コンテスト審査員まで、写真に関する幅広い活躍の場を持つ。カメラ・写真雑誌、WEBへの寄稿などライターとしても活動中。日本作例写真家協会(JSPA)会員。主宰するPhotoPlus+にて写真塾、ワークショップも開催している。
https://linktr.ee/kobayashi.kaworu
韓国のレンズメーカーSAMYANG(サムヤン)からユニークなレンズ Remaster Slimが登場しました。〝Remaster〟の通り、1980年代から2000年にかけて登場した高級コンパクトカメラの写りからインスピレーションを受け、再現して作られた光学ユニット交換式オートフォーカスレンズです。
薄くて軽量、持ち運びに便利なパンケーキレンズスタイルのモジュールに対し、3つの焦点距離の光学レンズユニットが交換できる仕組みになっています。
どことなく懐かしく、個性的な写りで、日常のスナップや風景などの撮影にふさわしいとても小さなレンズは、SONY αシリーズのクリエイティブルックと併せることで、よりクラシックな雰囲気でフィルムのような温かみと深みのあるイメージを味わえます。
今回はα7CIIで撮影をしてきました。
カメラが小さく軽くても、レンズが大きく重くなると結果的に持ち運びに苦労することになりますが、Remaster Slim AFモジュールは、全長19.5mmのコンパクトなデザインで、質量58.1g(モジュールのみ)の優れた機動性を保っています。
威圧感のないコンパクトなレンズは、軽快なスナップシューティングに最適で、様々なシーンでのシャッターチャンスをより確実なものにしてくれます。
実用性を考慮したミニマルなデザインの小さな3本のレンズユニットは、ペリカンケースのような形の小さなハードケースに収納されています。ガジェット好きにもたまらないパッケージですね。
レンズの焦点距離はRS21mm F3.5、RS28mm F3.5、RS32mm F2.8と広角レンズをラインナップ。これだけでも、ちょっと尖った感じがしませんか?広角レンズ〝しか〟ないんです。フルサイズのセンサーをカバーできるレンズでこの小ささに驚きます。
広角レンズは大口径となることや、高価であり、持ち運ぶにもかなりの重量となることが多いものですが、このサイズなら気兼ねなく持ち運べるのは大きな利点。最も軽量なモデルとなるRS 32mm F2.8レンズは、わずか8.4gと、とにかく軽く、長時間撮影も負担なく撮影に集中することができます。
レンズ本体の大きさを変えずに、異なる焦点距離、描写の異なるレンズへ交換することができる仕組みのRemaster Slim AFモジュール。光学レンズユニットは磁石固定のバヨネットマウント式で交換は簡単です。
レンズユニットをモジュールの正面側からダイレクトに着脱することで交換ができます。交換時、毎回カメラの電源をオンオフする手間を軽減するために、カメラの電源がオンの状態でも安定して動作するように開発されています。
Remaster Slim AFモジュールにはステッピングモーターが搭載されているのでレスポンスの良い軽快なオートフォーカスで撮影が可能。オートフォーカスは全群繰り出し式です。
磁気固定式のバヨネットマウントを採用しており、レンズ側にある溝と白い線を合わせてはめ込み、回し入れるのみ
マウント接点部のUSB Type-Cポートは、アクセサリーを介することなく、ファームウェアアップデートなどを簡単に適用することができ、レンズを常に最新のバージョンにしておくことができます。
Remaster Slim AFモジュールには、一般的な49mm径レンズフィルターも取り付けられます。これにより、好みの表現を加えることができるので撮影シーンも広がりますね。フィルターを取り付けると、レンズユニットの交換にひと手間かかってしまうので、その点を考慮して使うのがポイントです。
49mmのフィルターは使い慣れたものも多く、汎用性が高い
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 28mm F3.5
絞りF6.3・1/400秒・ISO100・WB太陽光・-0.7EV・KENKO ブラックミスト No.05 N使用
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レンズユニットはそれぞれの焦点距離で最短撮影距離が異なります。AFで撮影していると「広角レンズなのにもっと寄れないの?」と感じてしまうことも。
そんな時はMFに切り替えての撮影をします。どのレンズユニットも、MFではAFよりも最短撮影距離が短くなるので、被写体によっては有効的に切り替えて撮影するのがコツです。
モジュールユニットに備わっているスイッチをMFに切り替え、フォーカスリングによりピント合わせを行います。なかなか高精度な合焦でストレスフリーでした。
撮影中に間違えて動作させない配慮だろう。AF/MF切替スイッチは少々固め
RS 21mm F3.5/ AFで撮影 最近接距離 0.18m
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RS 21mm F3.5/ MFで撮影 最近接距離0.15m
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RS 28mm F3.5/ AFで撮影 最近接距離0.3m
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RS 28mm F3.5/ MFで撮影 最近接距離0.23m
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RS 32mm F2.8/ AFで撮影 最近接距離0.37m
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RS 32mm F2.8/ MFで撮影 最近接距離0.28m
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カメラボディ側のレンズ補正の周辺減光補正を「切」にして、周辺減光をあえて加えるのも表現のひとつ。トイカメラのような味わいが加わって、むしろこの方がフィルムコンパクトカメラの光学系にインスパイアされたとされる本レンズにふさわしい気がしました。今回の作例でも積極的に使ってみています。
周辺減光補正「オート」:シーンによっては周辺光量落ちする
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周辺減光補正「切」:フィルムコンパクトカメラで撮影したような雰囲気がより引き出される
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最近の標準ズームレンズに多い広角端24mmを超えて、ダイナミックで開放的な気持ちいい写りのR21mm F3.5。全体的にスッキリとしたシャープな印象の写りです。
普段はあまり使わない画角だな。と思いながらも、21mmでないと切り取れないシーンもありますし、16:9のアスペクト比での撮影は動画で活躍することはもちろん、静止画でも撮影しやすいレンズです。
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 21mm F3.5
絞りF3.5・1/50秒・ISO100・WB太陽光
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懸崖(けんがい)の菊の一部を切り取った。近接撮影距離は0.18mとかなり寄れるが、画角の広さもあるため周囲に入り込むものを考慮したい
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 21mm F3.5
絞りF3.5・1/30秒・ISO250・WB太陽光・-0.7EV
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まだ色づいていない紅葉は残念だったが、手前から奥への視線誘導を用いた広角レンズらしい扱い方。周辺減光「切」にすることで一層奥行感を引き立てられた
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 21mm F3.5
絞りF3.5・1/250秒・ISO100・WB太陽光
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21mmでこそ撮りたいシーンもあります。開放F値でもシャープに決まって気持ちいい描写。曇天の淡いトーンもしっかりと出ていて白トビしていない
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 21mm F3.5
絞りF3.5・1/30秒・ISO640・WB太陽光・-0.7EV
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バリアングルモニターを使って撮影。レンズの小ささから考えられないほどよく写るという印象。解像感はまずまず
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 21mm F3.5
絞りF3.5・1/40秒・ISO100・WB太陽光・-0.3EV
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路地裏の古着店。路地の奥行き感と距離、周囲の様子まで入ると広角レンズでのスナップの楽しさを感じる
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 21mm F3.5
絞りF6.3・1/400秒・ISO100・WB太陽光・-0.7EV
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通りすがりにカフェの店先で。ガラスのツヤ感がリアル。写り込んだ街、スタッフの様子までいい雰囲気で取り込めた
とっさに構えても決まる画角。3本の中で、私がもっとも慣れ親しんだ画角のレンズと言える焦点距離が R28mm F3.5です。撮影していて、素直に見たままの雰囲気を写すことができました。
逆光などで直接レンズに入り込んでくるシーンではフレアが入り込むこともあり、レンズ付きフィルムカメラとコンパクトカメラの間のような写り。Remaster Slimのコンセプトに一番近いと感じたレンズです。
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS28mm F3.5
絞りF3.5・1/320秒・ISO100・WB太陽光・-0.7EV
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低い斜光により、冬らしい温かな空気をまとった午後の様子が再現された。インバウンド旅行客のおかげで海外の公園のよう
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS28mm F3.5
絞りF3.5・1/640秒・ISO100・WB太陽光・-1.7EV
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テラスの開放的な心地よさが伝わってくる。気持ちいいくらいにまっすぐな屋根の水平が出ており、曲収差補正の恩恵を感じた一枚
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS28mm F3.5
絞りF3.5・1/500秒・ISO100・WB太陽光・-0.7EV
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季節外れの桜ではなく、寒桜。青空と淡いピンクのコントラストが気持ちいい。ボケ過ぎない背景の描写がフィルムコンパクトカメラの写りに似ている
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS28mm F3.5
絞りF6.3・1/250秒・ISO100・WB太陽光・-0.7EV
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クリエイティブルック「FL」の色は、ネガフィルムのような印象的な空の色になる。羽ばたいてきた鳩がアクセントになった
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS28mm F3.5
絞りF3.5・1/320秒・ISO100・WB太陽光・-0.3EV
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とっさに撮影した1枚だが、いいタイミングで一瞬をとらえている。AF性能も良好でストレスはほとんどない
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS28mm F3.5
絞りF3.5・1/640秒・ISO100・WB日陰・-0.7EV
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レンズフードがないことで、強い逆光だと簡単にフレアやハレーションが盛大に起こる。このような描写もフィルムカメラのようで好み
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS28mm F3.5
絞りF4.0・1/ 6秒・ISO400・WB太陽光・+0.3EV
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石畳の質感やイルミネーションの色合いがいい雰囲気で引き出された。パースペクティブが誇張されず、ほどよいと感じるのが28mm。
正直言って思いの外寄れないのがR32mm F2.8で、最短撮影距離が0.37m。テーブルフォトや、小さな被写体では距離を感じるでしょう。MFモードに切り替えて撮影もよいのですが、このレンズこそ「スナップ専用レンズ」と割り切るのがよい使い方。被写体より一歩引いた感じで撮影すると、標準レンズといわれる50㎜にも似たような雰囲気もあります。また、開放F値での淡いトーンのボケは特徴的で巧妙な感じを受けました。
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 32mm F2.8
絞りF2.8・1/100秒・ISO100・AWB・+0.3EV
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このレンズでのファーストショット。近づけなくて少々戸惑ったが、距離感覚をつかむことでスナップ撮影にふさわしいレンズだと感じた
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 32mm F2.8
絞りF2.8・1/80秒・ISO100・AWB・-0.7EV
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開放F値での淡く優しいボケが良好。周辺に行くほどボケは流れるが、これはレンズの味として楽しみたいところ
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 32mm F2.8
絞りF5.6・1/100秒・ISO100・WB太陽光・-1.3EV
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明暗のコントラストが高いシーンでもシャドー部は潰れることなく、冬の日差しの雰囲気をよく捉えている。細部のディテールもなかなかいい
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 32mm F2.8
絞りF2.8・1/30秒・ISO400・AWB・-0.3EV
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奥行きを意識して撮影すると、広角レンズらしさが引き立つ。椅子やガラスの質感がいい。収差による点光源のボケの形がアクセントになっている
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 32mm F2.8
絞りF5.6・1/80秒・ISO400・AWB・-1EV
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正対して距離感を保つと標準レンズのような感覚を得る。夕方の薄暗い雰囲気に周辺光量を落としたことで、マッチした
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 32mm F2.8
絞りF5.6・1/40秒・ISO500・WB電球色・-0.7EV
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窓枠の取手が功を奏し、アパートメントの窓から撮影したように感じられる一枚となった。ガラス越しだが、建物の細部までしっかりと写し込んでいる
SONY α7C II・SAMYANG Remaster Slim + RS 32mm F2.8
絞りF5.6・1/40秒・ISO1600・WB電球色・-0.7EV
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曇天の柔らかい光が、ダイヤル式アナログ電話機の黒さとツヤ感、机の木目も質感を引き出してくれた。ムードのある描写が得意なレンズのようだ
いずれのレンズもどのコンパクトカメラにインスパイアされたのかは不明ですが、「あー、こんな写り方するカメラあったよね」と思いながらの撮影でした。
フルサイズのセンサーで楽しめるゆるい写り。「完璧を求むなかれ」といったら好ましくないと思う方もいるかもしれませんが、風合いを重視したこのような〝味〟レンズは楽しんだもん勝ちです。
それぞれの焦点距離により写りが個性的で、好みもはっきりしそうですし、被写体の選び方も異なるでしょう。オールドコンデジが人気といわれる今、改めて見直されている描写のような気がします。
広角ズームや標準ズームでカバーできてしまう焦点距離ですが、大げさにならないサイズが最大の魅力。単焦点レンズが気軽に取り揃えられるメリットを活かすなら、40mm前後の焦点距離でもう1本レンズが欲しいと感じました。
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Photo & Text by こばやしかをる