はじめに
わたしのLeica遍歴
Leica M4のすばらしい点
フィルム装填のしやすさ
巻き戻しの簡単さ
使えるレンズの豊富さ
Leicaはどんなものでも大抵直る
使い心地
リセールバリュー
Leica M4の作例
まとめ
小説家。第11回(2012年)このミステリーがすごい大賞隠し玉にてデビュー、著書にカメラミステリー『谷中レトロカメラ店の謎日和』シリーズ(宝島社)、23カ国語版で展開中『人生写真館の奇跡』(宝島社)『天国からの宅配便』シリーズ(双葉社)などがある。
「谷中レトロカメラ店の謎日和」の執筆をきっかけにカメラにはまる。カメラ系の媒体でライターとしても活動中。フジヤカメラはジャンク館→用品館→本店→ルノアールの順で巡ります。
このページにいらした方は、Leicaについて興味がおありだとお見受けします。
Leicaなんて、ブランドネームだけが有名なカメラじゃないか、と思っている方も、もしかしたら中にはいらっしゃるかもしれません。わたしも昨今の、ぺらっとしたTシャツに、ただのロゴを付けただけで、何十万とかしてしまうブランド品に関しては、苦々しく思っていましたので、その気持ちもわかります。
それでも、Leicaに関しましては――やはり、一生に一度は使ってほしい、素晴らしいカメラだ、と言わざるを得ません。
わたしが使っているLeicaの中でも、一番のお気に入りのLeica M4について、どういった点が良いのかについて、お知らせしたいと思います。
その前にまず、わたしのLeica使用歴についてお話ししますと、最初に買ったのはLeica IIIfでした。これは幸運なことに、赤城耕一先生と一緒に行ったお買い物企画で購入したものです。その次にM3、その次にM4と、カメラ趣味を卒業する方からお譲りいただいたりして、増やしていきました。
その最初の買い物の時、カメラの初心者であるわたしに、赤城先生が熱烈にお勧めしてくださったのがLeica M4だったのです。M4の説明の末に、わたしは「はい、わかりました。じゃあIIIfを買います」と言い、その場にいた人が全員(人の話を聞けよ!)という顔をしていたことを懐かしく思い出します。でもIIIfが可愛かったんですから仕方がありません。
それでも何年かLeicaをいろいろと使っていくうちに、なぜ赤城先生がわたしにM4を勧めてくださったのか、わかるようになってきました。
Leicaには興味があるけれど、でも何から?と思っている人には、わたしも赤城先生と同じく「M4!やはりM4ですよ!」とお勧めしたいですね。
フィルムを切ったり、レンズを外して注意深くフィルムを装填しなければいけないIIIfに比べて、M4は爪のところに通すだけです。これがものすごく楽で、ついつい手が伸びます。旅行の時なんかは、特にすぐにフィルムを交換したいじゃないですか。ただし、M4とはいえ、あまり雑に装填すると、爪からするりと抜けて、フィルム一本分の虚無を写していた、ということもありますから、これも赤城先生に教えていただいた、フィルムの先を折りまげる作戦で間違いがありません。この方法を知ってからは、失敗はまずありません。
撮り終わったその後、フィルムを巻き戻さなければならないのですが、M3は巻き戻しノブが、クランク方式ではありません。大きなネジを回すような手つきで、巻き戻しノブを回します。(これはいつまで巻かなければいけないのかな……フィルムって意外に長いよな)と、毎回思います。M4は、改良されてクランクがついており、それがすごく回しやすい。
みなさんはどんなレンズがお好きでしょうか。わたしはちょっと広角気味のレンズが好きで、Elmar 3.5cm F3.5やSummaron 35mm F3.5をよく使っています。(個人的にはSummaronの写りが一番好きです)
M4はファインダーの枠が35mm、50mm、90mm、135mmと四種類です。もちろん、外付けファインダー選びも楽しいところですが、やはりファインダーに35mmの枠が出るのは便利ですよ。
ちなみにM3のファインダー枠は50mm、90mm、135mmですから、Elmar 3.5cm F3.5やSummaron 35mm F3.5を使おうと思うと、キワキワまでガラスがみっしり詰まった美しいファインダー、SBLOOか、コンパクトなWEISUを使うことになります。特にSBLOOは、(もしどこかにぶつけて少しでも欠けたら、泣くどころではない……)などと、小心者のわたしはヒヤヒヤしながら使っています。広角好きな人はM4の方がいいのではないでしょうか。
わたしは過去にある方から、シャッター幕が無く、貼り革も無しという、ジャンクめいたバルナックLeicaをいただいたことがあります。
ありがたくいただいたものの、使い道がよくわからなかったので、しばらく眺めて楽しんでいました。ある日(無理だろうなあ)と思いつつ、カメラ修理師の方に見せてみました。すると、「直ります」と言うのです。
電子部品の使われているカメラは、その電子部品の在庫がなくなれば、どんな修理名人にも修理は不可能となります。でも電子部品の使われていないカメラ、特にLeicaは、修理が可能なものがほとんどのよう。需要と人気の高いカメラならではだと思います。修理先もあるし、修理の部品も手立てもあるのです。Leicaでありさえすれば大抵直る――これは、Leicaを選ぶ大きな強みじゃないかと思います。
一生物のコート、一生物のバッグ、一生物の靴などと言いますが、本物の一生物というと、なかなかないのではないでしょうか?しかし、Leicaに関しては、修理やオーバーホールをしつつ、一生涯をかけて楽しむことができます。そんな、本来の意味での一生物が、数十万で手に入れられるなんて、素敵ですよね?
わたしは使用感がギシギシしたカメラもよく使う雑食です。巻き戻しなんか、指の皮膚がちぎれそうになるカメラもあったりします。
LeicaにはコピーLeicaというものが存在して、コピーの中でもものすごく精巧なものがあります。一度、そのコピーLeicaで、オーバーホールが終わったばかりのものを触らせてもらいました。オーバーホールの後ですから、それはもう気持ちよく動いて、へえ、コピーLeicaも、なかなかいいものだなと思ったものです。
今度はこちらをどうぞと、これもオーバーホールが終わったばかりのバルナックLeicaを渡してもらいました。「あっ」と思いましたね。同じ形なのに、感触が全然違う。たぶんこれは、いろいろなカメラを使ってきた人が、一番よくわかる部分じゃないでしょうか。
わたしのM4もオーバーホールをしてもらって、ものすごくなめらかに動くようになりました。あまりに触り心地が良く、意味もなくしょっちゅう触ってシャッターを切ってしまうほどです。あと、サテンのような金属部分の材質が、ずっとなでさすっていても飽きないくらいに指に心地いい。
M4は、これも好みが分かれるところですが、巻き上げレバーにプラスチックの指当てがあって、それが少し動きます。わたしはこの可動するプラスチック部分も使いやすくて気に入っています。
ここ8年くらいは、東京で行われるすべてのカメラ市に毎回行っていますが、価格の推移を見ていると、カメラには、安定して人気があるものと、そうでないものがあるように思います。ある人など、Leicaを買った時と、同じ値段で買い取りしてもらった(実質タダだった)ということもあるとか。当たり前ですが、クラシックカメラを今から作ることはできないので、今あるLeicaは、これから時代が移り変わるにつれて、ますます希少なものになることでしょう。わたし自身はカメラをほとんど売らないので、家にカメラがどんどん増えていっています。買うときに、売るときのことを考えるのは好きではありませんが、後々、価値が下がらないカメラかどうかというのも、お買い物の判断材料になるかもしれません。
以上の点で、Leica M4は、生涯にわたって使い続けることのできる相棒カメラだと思っています。一生大事に使いたいですね。
Leica M4・Leica Summaron 35mm F3.5
絞りF5.6・1/250秒・富士フイルムC200
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黒猫のいる庭。日常で一番よく使うレンズ、ズマロンで撮りました。
Leica M4・Leica Summaron 35mm F3.5
絞りF3.5・1/60秒・富士フイルムC200
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高架下の店で。南国のレストランに見えますが、日本の高架下です。
Leica M4・Leica Elmarit 28mm F2.8
絞りF8・1/500秒・富士フイルムC200
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風の強い日。Elmarit 28mm F2.8も好きなレンズです。
Leica M4・Leica Elmar 35mm F3.5
絞りF8・1/500秒・Kodak GOLD200
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庭を見下ろす。これはELMAR 35mm F3.5で撮りました。
Leica M4・Leica Elmar 35mm F3.5
絞りF3.5・1/60秒・Kodak GOLD200
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階段。薄暗いところでも良く撮れます。
Leica M4・Leica Elmar 35mm F3.5
絞りF3.5・1/60秒・Kodak GOLD200
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息を止めて撮ったランプ。
Leica M4・Leica Elmar 35mm F3.5
絞りF8・1/1000秒・Kodak GOLD200
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俯瞰する冬の街。
Leica M4・Leica Elmar 35mm F3.5
絞りF8・1/500秒・Kodak GOLD200
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倒木と海。
Leica M4・Leica Elmar 35mm F3.5
絞りF8・1/500秒・Kodak GOLD200
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船。
Leica M4・Leica Elmar 35mm F3.5
絞りF3.5・1/60秒・Kodak GOLD200
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ある日の朝やけ。
Leica M4のお買い物は、やはりたくさんの人の手でチェックされ、保証も充実している専門店が一番です。
フジヤカメラの豊富な品揃えなら、いろいろなM4の中から好みのものを選べます。一生の相棒を選びに、フジヤカメラへぜひ。Leica M4、本当にいいですよ……!
Photo & Text by 柊サナカ(ひいらぎ・さなか)