Nikon初のフルサイズミラーレス一眼カメラZ6、Z7の発売から3年が経過し、ついに発売となったNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR SはZマウント待望の中望遠マクロレンズです。

往年のNikonファンからはMicro-Nikkorの名前が付いていない事に一抹の寂しさを感じるといった声も聞かれましたが、心機一転、ショートフランジバックの利点を最大限活かした設計には、未来を見据えたNikonの意気込みが感じられます。

至近距離での撮影でも高い解像感を維持する、マクロレンズでは理想的と言えるAF方式であるマルチフォーカス方式を採用している事も見逃せません。

実際に撮影してみて、その高い描写性能には驚きました。

EDレンズ3枚、非球面レンズ1枚を使い、ショートフランジバックを活かした理想的な設計は、Sラインらしいシャープネスと美しいボケ味が高いレベルでバランスされ、一眼レフ用の同スペックのレンズ性能を凌駕したものです。

最後玉に配置された非球面レンズにより画面全体の画質の均一性が、3枚のEDレンズによりフリンジのないストレートな色再現が、ナノクリスタル/アルネオコートにより条件を選ばない高いコントラストが達成されており、現時点でのベストなマクロレンズの一本と言えるのではないでしょうか。

Nikonというメーカーに抱く印象として堅牢の二文字が先ず浮かびます。Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sは、防塵・防滴仕様となっているので、フィールドでも安心して使えるでしょう。

ピントの合う範囲を、近接と全域に切り替えられるフォーカス制限切り換えスイッチなど、従来どおりの機能があるので、一眼レフから乗り換えたユーザーも違和感なく使えるのではないでしょうか。

又、レンズ情報パネルを備えているので、最短撮影距離まであとどれくらいか、といった情報を直感的に確認し易くなっています。

※マクロレンズの作例という事で、一部被写体に昆虫（アブ、チョウ）を含みます。ご注意下さい。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S は、高い描写性能と美しいボケ味を持った最高クラスのマクロレンズです。

どんなレンズでも等倍に近い最短撮影距離での撮影では多少の甘さがあるのが普通ですが、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sではピントが合った部分が非常にシャープで、ボケた部分とのコントラストがはっきりしたメリハリのある映像として再現されます。

優れた光学性能とマルチフォーカス方式による高い描写性能に、まずは驚かされました。

素直でとても美しいボケ味もNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sの特筆すべき特徴です。

開放での描写は勿論、多少絞っても美しいボケ味が損なわれる事はありません。背景が多少ごちゃごちゃとした被写体でも崩れる事無く、美しいボケ味が楽しめます。

9枚羽根の円形絞りを採用しているので、朝つゆや夜景など背景に点光源が多く入る条件でも、美しい丸ボケを楽しめるでしょう。

ピントが合った部分とボケた部分のコントラストが美しいレンズです。

特にシャープなピント部分は今までテストしたマクロレンズの中でもトップクラスで、ここまで高性能なレンズにはお目にかかった事がありません。最短撮影距離近くでもこのレベルなのには驚きです。

作例でも、小さな花の上に止まった更に小さなアブの羽根の透明感や模様が克明に写し取られています。

ミクロの世界の一瞬を切り取る事が出来る、高速なオートフォーカスを持ったレンズです。

近接撮影はマニュアルフォーカスで撮れ！と言われたのは昔の話で、最近のミラーレス一眼カメラでは高速なAFと、画面全体に配置されたフォーカスポイントのおかげで、マクロ撮影もオートフォーカスで快適に行う事が出来ます。

作例はシジミチョウですが、ちょこまかと飛び回る小さなチョウがじっとしているのは一瞬ですが、高速なAFによりシャッターチャンスをものに出来ました。

Nikon(ニコン)のカメラの絞り値の表示は実行F値となるので、撮影距離によって開放F値の表示が変化します。

マクロ撮影では理論上センサーからレンズの距離が離れる事になるので、実際のF値は無限遠側とは異なりますが、Nikon(ニコン)のカメラはこの実行F値がカメラにきちんと表示されるようになっているのです。NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sの等倍撮影時の実行F値はF4.5程度です。

撮影中開放に設定したF値の変化でおおよその撮影倍率がわかるので、その上で絞り値を決めてシャッターが切る、といった事が出来て便利でした。

通常撮影でも中望遠レンズらしい美しいボケ味が楽しめるので、ポートレートなどにも使い易いのではないでしょうか。

開放f2.8というとややボケの大きさに不満が残りそうですが、バストアップ程度の距離感で撮れるなら、被写界深度とのバランスが丁度いい値だと思います。

開放では周辺部で口径食が発生しますが、素直なレモン型なので目障りになる事はないでしょう。

通常撮影でも高い解像感は健在で、マルチフォーカス方式と最後尾に配置された非球面レンズのおかげで周辺部までシャープな描写です。

105mmはスナップには少し長すぎると感じる方も多いと思いますが、50mmの半分程度の画角なので、2本目のレンズとしては意外と使いやすいのではないでしょうか。

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sの本分では無いと思いますが、ナイトスナップに挑戦してみました。

光学式手ぶれ補正VRとボディー内手ブレ補正機構との協働による高い補正効果により、望遠レンズでありながら手ぶれの事をあまり気にせずに撮影に集中出来ます。

作例では点光源が入っていますが、先に書いたとおり口径食もあまり気にならないのではないでしょうか。

マクロレンズなので、近接時と通常撮影時、両方の画質を拡大して確認してみたいと思います。

近接撮影時の描写とは思えない、素晴らしくシャープで高い解像感を持っています。

美しいボケ味とシャープさがここまで高いレベルでバランスされたレンズは珍しく、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sは最高クラスのマクロレンズと言って差し支えないと思います。

開放、画面端の画質ですが、中心部と差の少ないシャープな描写で、画質の均一性も高いレベルにあるようです。

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sはマクロレンズとしてだけでなく、通常の中望遠レンズとしても活躍してくれる一本と言えるでしょう。