1972年新潟県生まれ。東京電機大学卒。
中学生の時にカメラを持ち、大学生の頃から本格的に自然風景を撮り始める。隔月刊『風景写真』編集部での勤務を経て、フリーの写真家となる。主に日本全国の水のある風景や、森の表情などを撮り続けている。写真雑誌の口絵での作品発表をはじめ、撮影技法・製品などについて数多くの記事を手掛ける。2022年カメラグランプリ外部選考委員。クラブ「フォトR」主宰。
Canonからニュータイプとも呼ぶべきRF28-70mm F2.8 IS STMが発売された。
F2.8通しのズームレンズは大きくて重いというイメージがあるものの、本レンズは沈胴式の採用によって大幅な軽量・コンパクト化を実現している。また、F2.8の大口径ズームレンズにもかかわらずLタイプではなく、CanonのRFレンズ・EFレンズの中では異色ともいうべき存在の一本だ。
発表当初から個人的に興味を惹かれていたこのレンズは、果たしてどのような描写性能を持っているのかを、今回はフィールドに繰り出して検証してみた。
標準ズームレンズは使用頻度が高く、数あるレンズの中でも花形ともいうべき存在の製品といえる。CanonのRFレンズだけでも、広角から中望遠までをカバーするズームレンズは、本製品以外にすでに5種類の製品が揃えられている。
開放F値がF2やF2.8のズームレンズに加え、F4通しや可変絞りタイプ、テレ端が105mmまでのものなど、そのバリエーションはさまざまだ。今回のRF28-70mm F2.8 IS STMが登場した背景については、Canonのホームページに開発者インタビューが掲載されているのでここでは割愛するが、このレンズの特徴を端的に表現するのであれば「小型軽量のF2.8通しの高性能ズームレンズ」といった具合になる。
広角28mm域と望遠70mm域の鏡筒の繰り出し具合。70mm域での繰り出し量はかなり大きいものの、撮影時に気になることはほとんどなかった。
その小型軽量化に寄与したのが、沈胴式の採用である。
一般的に沈胴式のレンズといえば、廉価版のレンズに採用されているというイメージを持つ人が多いのではないだろうか。
沈胴式タイプは撮影時に所定の位置までレンズを回さないと撮影ができず、そのひと手間を煩わしいと感じるユーザーも少なくない。今回の実写では、筆者もいつもと違う作業を最初は若干負担に感じたものの、撮影の時間が経ち慣れてくるに従ってそれほど気にならなくなった。要は慣れの問題で、小型軽量で光学性能が高いのであれば、沈胴式の採用は大いに歓迎すべきものなのかもしれない。
さて、気になる光学性能に目を向けてみよう。本レンズはLタイプ仕様ではないものの、Lレンズに匹敵する描写力を備えているとメーカーでは謳っている。
実写してみると確かに色のヌケ具合は心地よく、解像性能の高さも感じられる。今回は他のズームレンズを揃えて直接比較したわけではないが、他のLレンズに見劣りしない描写力を持っているのは肌感覚ながらも実感できる。
この実写ではカメラ側での光学補正はすべてオンの状態にしているが、画面中心部だけでなく周辺部でもしっかりと解像していたのが印象的だった。画面全体のコントラストも高く、メリハリの効いた描写を求めるユーザーにとっては、充分に満足できる画質が得られる。
Canon(キヤノン)EOS R5 Mark II・RF28-70mm F2.8 IS STM
28mmで撮影・絞りF8・1/125秒・ISO800・WB太陽光
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葉のテカリに惹かれてカメラを向ける。F8まで絞り込むと、手持ちでもパンフォーカスで表現することができた。画面周辺部でも解像感の低下はほとんど感じられず、満足のいく仕上がりになった。
最短撮影距離はワイド側で27センチと短く、絞りを開放にして撮影すると背景が大きくボケて大口径レンズならではの描写を存分に味わえる。
さらに風景の撮影で嬉しいのが、本体が防塵防滴仕様となっていることだ。フィールドでは雨だけでなく、滝の飛沫がかかるような水辺で撮る機会も多いことから安心して作画に集中できるのは大きなメリットといえる。
また、ボディー側との協調制御により手ブレ補正は7.5段分の効果が得られ、光量の少ないシーンでの撮影で役立つだけでなく、風景を撮る場合は手持ちでも絞り込んでパンフォーカスで写すことができる。
Canon(キヤノン)EOS R5 Mark II・RF28-70mm F2.8 IS STM
28mmで撮影・絞りF2.8・1/200秒・ISO200・WB太陽光
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ワイド端で落ち葉に迫り、最短撮影距離付近で写す。ピント面の解像感は若干物足りなさを感じるものの背景は玉ボケ状となり、美しいボケ味も印象的だ。
Canon(キヤノン)EOS R5 Mark II・RF28-70mm F2.8 IS STM
28mmで撮影・絞りF11・1/5秒・ISO100・WB太陽光
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1/5秒のシャッター速度でもブレずに写せて、光条も美しく描写された。他のカットで画面内に太陽を入れた時に、目立つゴーストが発生していたのは気になる点だ。
Canon(キヤノン)EOS R5 Mark II・RF28-70mm F2.8 IS STM
70mmで撮影・絞りF2.8・1/320秒・ISO800・WB太陽光
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葉っぱについたセミの抜け殻をテレ端で捉えた。絞り開放でも抜け殻の硬い質感が見事に表現され、描写力の高さが窺える。背景のボケも柔らかく、大口径レンズならではの世界を堪能できる。
Canon(キヤノン)EOS R5 Mark II・RF28-70mm F2.8 IS STM
70mmで撮影・絞りF2.8・1/640秒・ISO100・WB太陽光
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太陽を入れて撮影した一枚。強い日差しが降り注ぐ少し意地悪な条件での撮影にもかかわらず、コントラストの高い描写が得られた。葉脈もカッチリと表現されていて、狙い通りに再現してくれた。
Canon(キヤノン)EOS R5 Mark II・RF28-70mm F2.8 IS STM
47mmで撮影・絞りF8・1/60秒・ISO800・WB太陽光
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質感をしっかりと表現できるのは、高画素機と高解像レンズの成せる技だ。岩肌にへばりつく木の根や、岩のザラザラとした質感をイメージ通りに再現してくれた。
Canon(キヤノン)EOS R5 Mark II・RF28-70mm F2.8 IS STM
70mmで撮影・絞りF16・1/80秒・ISO100・WB太陽光
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シャッター速度を変えながら、水が作り出す光の模様を捉える。暗部はしっかりと締まり、画面全体のコントラストも高くてメリハリのある一枚に仕上がった。
本製品のライバルになりそうなのが、価格帯的に似ているRF24-105mm F4 L IS USMだろう。
焦点距離や開放F値などの違いはあるものの、風景写真のように絞り込んで撮影する機会が多いのであればRF24-105mm F4 L IS USM、花や人物などボケ味を生かして撮るシーンが多ければRF28-70mm F2.8 IS STMというチョイスになりそうだ。
また、495グラムという超軽量仕様のため、機材の重さを負担に感じているユーザーにも本製品はおすすめしたいズームレンズといえる。
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Photo & Text by 伊藤亮介(いとう・りょうすけ)