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2024.10.10
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Leica M1 × 写真家 田中長徳|自分の視神経の一部みたいな存在

Leica M1 × 写真家 田中長徳|自分の視神経の一部みたいな存在キービジュアル


ライター田中長徳イメージ
■フォトグラファー紹介

田中長徳

田中長徳 (たなか・ちょうとく)
デジタルライカよりフイルムライカがいいね。Chotoku First and Last写真集が次の誕生日5月31日に出ます。
1947年、東京生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業。在学中より作品を雑誌やギャラリーで発表し、卒業後はウィーン、ニューヨーク、プラハに滞在して写真家として活動。カメラに対する造詣も深く、現在も専門誌へ多数執筆している。

半世紀以上前だがLeica M1と私の出会いを思い出してみる。

1960年代の日本カメラの毎年出されていた年鑑は表紙が赤とイエローで分厚い小さな本だった。これで私はLeicaのお勉強をしたのである。

それによるとLeica M2から距離計だけを取り除いたシンプルなカメラで、Leicaは高価だから最初にLeica M1を買って、資金にゆとりができたらLeicaの会社で距離計を組み込んでLeica M2にするというのがうまい使い方であると書いてある。

Leicaには伝統として、戦前からLeica Aを距離計のついたモデルに改造したりする伝統芸能がある。Leica M1をLeica M2に改造するというのはそのサービスの1番最後の時代であった。これを最後にしてその後Leicaの会社は改造を引き受けていない。

銀座のカメラ屋さんで手に入れたLeica M1は60,000円位だったから、私の初任給が30,000円なのでかなり高い買い物だった。距離計のついてないLeica M2という認識である。だからLeicaビットMPもつけることができる。

Leica M1のファインダーは常に35ミリと50ミリのブライトフレームが浮かんでいる。35ミリと50ミリレンズはスナップショットの基本なのであるがその両方が常に見えるというのは撮影の時になかなか便利なものである。距離計はないけれどレンズの撮影距離に応じてパララックスが自動修正できるというのが親切である。

まず理想的なスナップシューターのLeica M1である。半世紀以上、手にしていて身体に馴染んでいるというよりも、自分の視神経の一部みたいな存在になっている。

Leica M1 本体画像

Leica M1 本体画像

Leica M1 本体画像

Leica M1 本体画像

アンリ・カルティエ=ブレッソンのLeica作法に学んだ

スナップの神様であるアンリ・カルティエ=ブレッソンはLeica M3の愛用者であったが、彼のLeicaは50ミリレンズにエナメルのドットが盛り上げてあってそれは撮影距離5mと撮影距離2.5mなのだ。

つまり横画面でスナップの人物を撮影するときは5mの距離で、縦画面で人物を接近して撮影するときは2.5mというわけだ。ブレッソンはライカの距離計でピントを合わせるのではなくて50ミリレンズに赤いエナメルで盛り上げたドットを指で探って撮影のフォーカシングをするのである。

だからブレッソンの撮影テクニックは距離計付きのLeica M3ではあるが使い方は距離計のないLeica M1と同じわけだね。

世界的有名写真家の撮影に同行した経験からすると、ウィリアム・クラインは28ミリレンズをいつも使っているが、ピントなんか合わせていない。全部目測で撮影していた。

リー・フリードランダーはLeicaに35ミリレンズ一本槍であるが、彼もピントなんか距離計で合わせていないのである。長年Leicaを仕事で使ってきて距離計の付いているLeicaでピントを合わせたことは、私の場合は最短撮影距離の1mで人物を撮影したときだけである。人物のポートレートはお約束で目にピントが合ってないと使い物にならないんだけど、それ以外はLeicaには距離計はいらないね。

Leica M1と交換レンズ、それと一眼レフ装置Visoflex

ペーパーに印刷したエグゼクティブマガジンが流行していた頃に長い海外取材に行くことが多かった。年間260日も外国のホテルで暮らしていたこともあった。そういうときの機材というのは結構大変で、Leicaと一眼レフ、それと4 × 5インチの大型カメラも必要だった。

でもその後印刷が良くなったので、35ミリカメラだけでも仕事ができるようになった。それでレンジファインダーのLeicaだけで仕事をするようになった。旅行雑誌などでは必ず料理の写真を撮らなければならない。それで一眼レフを持ち歩いていたのだが、Leicaの一眼レフ装置であるVisoflexに65ミリのエルマーをつければそれで撮影ができることがわかった。超望遠レンズも200ミリから400ミリ位まで使える。

そうなると常用のレンズ21、35ミリ50ミリをLeica M1で使って、65ミリから90ミリ200ミリと400ミリはLeica M1に Visoflexを組み合わせて使うとすべてのシチュエーションに対応できる。

Leica M1 本体:Visoflexを組み合わせた画像

Leicaの素振りに最適なLeica M1

実は本当のことを言ってしまうとこの2年間ぐらいフイルムカメラで撮影をしていない。デジカメも使っていなくて使っているのはiPhoneとiPadだけだ。現代の映像生活はそれが1番快適なのである。

そこで提案したいのはフィルムカメラの素振りである。日本カメラでカメラ本を3冊セットで出していた頃は、私は真面目だからフィルムを入れて撮影するのが真面目な写真人類であると書いていたのだが当時はまだデジタルカメラは実用化もしていなかった。

現代ではフィルムの値段がとんでもないことになっているから映像の必要な時はiPhoneで撮影してカメラで遊びたい時はLeica M1で素振りをすると楽しい人生になる。

30年来のLeica友達である坂崎幸之助さんと赤瀬川原平さんと20年くらい前の1月2日に、日本カメラ編集部のTさんがロンドンから巨大な箱に入ったLeicaのパーツを買ったのでその内容を見学に行ったことがある。1.5mの立方体の木の箱からはレアなパーツがたくさん出てきた。

坂崎幸之助さんがお年玉にもらってきたのはLeica M1の距離計を塞いでいた小さなプレートなのである。それを加工してイヤリングにしますと坂崎さんは言っていた。

Leica M1はコレクターズアイテムとして将来プライスが上がるぞ

50年前に60,000円で買ったLeica M1だけどもう1台欲しいので最近ネットオークションで手に入れたらちょうど2倍のハンマープライスになった。50年間のインフレ率を考えれば安いと思う。でもこれからコレクターズアイテムとしては値段が上がりそうだね。

ドイツ空軍が特注したグリーンのLeica M3から距離計を外したグリーンのLeica M1というのがあって、これは50,000ドル位の値段が付いている。数十台しか作られてないからそうなるわけだ。ドイツ空軍は135ミリのレンズと組み合わせて使っていたがインフィニティーでの撮影だから距離計はもともと必要ないわけだ。

Leicaの製造番号表で調べるとすぐわかるけれどLeica M1 というカメラは数がかなり少ない。数の少ないライカはコレクターズアイテムとして値上がりするのは当然である。

Leica M1から距離計をプラスしてLeica M2になったカメラが相当の数があるから、Leica M1の存在台数というのはますます貴重なモデルになってくる。つまらないデジタルライカを1,000,000円出して買うならフイルムカメラのLeica M1を手に入れた方がライカ人生をより楽しめると思う。

デジタル画像はスマートフォンで充分だからね。

Leica M1の作例

Leica M1 作例:お面をかぶった女の子

Leica M1+ニッコール2.1cm F4

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バスの中でお面をかぶった女の子。

Leica M1 作例:新宿駅

Leica M1+キヤノン35mm F1.8

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新宿駅東口。

Leica M1 作例:北千住

Leica M1+ニッコール2.1cm F4

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北千住。

Leica M1 作例:木場

Leica M1+ニッコール3.5cm F3.5

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江東区木場。

Leica M1 作例:水を飲む学生

Leica M1+ニッコール5cm F2

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営団地下鉄駅構内。

Leica M1 作例:メーデーの日

Leica M1+ニッコール2.1cm F4

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代々木公園。メーデーの日。

Leica M1 作例:行徳駅

Leica M1+ニッコール85mm F1.9

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営団地下鉄東西線行徳駅。

Leica M1 作例:西銀座

Leica M1+ニッコール2.1cm F4

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西銀座。

Leica M1 作例:新橋

Leica M1+キヤノン35mm F1.8

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新橋。

Leica M1 作例:文京区大塚坂下町

Leica M1+ニッコール2.8cm F3.5

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文京区大塚坂下町。

Leica M1 作例:三億円事件のモンタージュ写真

Leica M1+ニッコール2.1cm F4

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三億円事件のモンタージュ写真。撮影地不明。

※撮影はすべて1966年から1973年頃(田中長徳 写真集『Today Tokyo』より)

Photo & Text by 田中長徳(たなか・ちょうとく)

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