はじめに
RF24-105mm F2.8 L IS USM Zの感触
このレンズを選択するメリットや理由
CM撮影現場での使用をイメージしてみる
サーボズーム、ショルダースタイル
ジンバルに載せてみる
まとめ
作例に使用したカメラ
作例に使用したレンズ
1985年神奈川県横浜市生まれ。朋友学院高等学校美術・デザインコース卒業。東放学園映画専門学校プロモーションビデオ科卒業。その後、フリーランスを経験し、2014年に株式会社pingsetを設立。 現在、妻(写真家フジモリメグミ)と かねこ書房を運営し、YouTubeチャンネル「genkikaneko」で自身の作家作品を公開中。
YouTube:genkikaneko
みなさんはキヤノン24-105mm F4のレンズと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
コスパ最強、一本あればOK、始まりのレンズ、スタンダード、縁の下の力持ち、バックアップ、と様々なワードが浮かんでくるのではないでしょうか。
私自身、キヤノンEOS 5D Mark IIの動画革命(と勝手に命名してますが)以来、思い返せば常にカメラバックにこの一本は入っており、共にこの変革の時代を生きてきたといっても過言ではないレンズです。
ですが、心の中で「あぁこれがF2.8だったらな~」と呟いたことは幾度となくあり、読者の方の中にも同じような経験をしてるかたもいるのではないでしょうか。
2018年のRFマウントへ移行以来、どんなレンズが開発されるのかと期待される中、2024年に満を持して発売された RF24-105mm F2.8 L IS USM Z。
今回、このレンズレビューの依頼をいただくにあたり、やっと開放F2.8の時代がきたかと、胸が高鳴りながらも、正直どのようなに向き合っていいかと悩んだ部分もありましたが、正直な感想を書いてみようと思います。
もはやこの子にとってそれは言わない約束でしょ!? になっているのかもしれないですが、まず手にして感じることは正直、デカい、重い。
それゆえに、誰にでもフィットするレンズですとは言い難く、これ一本で手軽にスナップに出かけようなどと言える代物ではないでしょう。
映りは申し分のないレベルで解像してくれてますし、24-105mm F4や24-70mm F2.8のレンズと比較しても同等と言ってよく、さすがの“Lレンズ”クオリティーの高さを感じます。
F2.8のボケは見事で、24mmからの広角でのボケを感じながら105mmまで圧縮していくと背景が溶けていく様子が心地よく、レンズに撮らされてしまう。
ああ、F2.8とはなんて素晴らしいものだとあらためて感じるながら、F2.8でボケる喜びと、一段明るいという使い勝手の良さ、そして70mmでは届かない105mmまでの“後一歩” を兼ね備えたこのハイブリットなレンズ。
初見で、大きさと重さに拒否反応が出てしまった方もいるかもしれないが、ぜひ手に取る機会があったら、食わず嫌いせずまずは触っていただきたい。
まず、このレンズで撮影のイメージできる内容は、イベント、メイキング、ブライダルなどだ。私的に、そういった撮影環境で一番に厄介だと思い浮かぶのは、暗さ。
照明を焚くことができず、F4ではどうにもならないという場面に遭遇した方もたくさんいらっしゃるのではないだろうか。何かと60Pで撮影する場合が多く、その場合フリッカーを嫌うのでシャッタースピードを1/100秒に固定する。後は感度で調整するしかないのだが、気づけばISO12800くらいになっていて、ノイズでザラザラになった画面を眺めながら「ワンカットでもいい画を。」と、その度にレンズを変えようと一瞬悩むも… 数秒後には別のイベントが始まるな…などと揺れ動く心に動揺しながら、次の動きに備えていく。
また、どうにも画にならない撮影場所でも、ボカすことで積極的にイメージショットも狙うことができ、記録的な撮影もしながらも、瞬時にイメージ撮影にも対応することができるので、近年一般の方にも普及したシネマティックという需要にも応えられるのではと考えられる。こういった過酷な撮影環境にこそ“F2.8”とは動画撮影においてはマストと言えるのだ。
過酷な現場では10時間を超えるので、重さの部分では数グラムでも軽くというのが正義になる。単品で評価すれば不利になるかもしれないが、このレンズ一本だけで済むと考えれば (カメラR6/約700g +レンズ/約1330g=約2kg)、総合的には身体への負担が少ないのではないだろうか。
何だかんだで結局70-200mを持っていることが多い筆者だが、最近のカメラのAPS-Cサイズのクロップモードを使えば、EFで105mmレンズなら約170mmまでの画角が使えるようになる。
またF値の話に戻るが、クロップした画でも望遠側でもボケはやはりきれいで、クロップしても積極的に使っていけると考える。これ一本で済ますことができることになると、F2.8はあらゆる面で恩地をあると言えるだろう。
どんな現場でも時間に迫られている。予期せずカット順が変わったり、演者さんのケツや、スタジオの使用時間が迫っていたりと、単玉でやり切るにはレンズチェンジする時間がないこともしばしば。過酷な場面では、時には雨が降ってきてレンズチェンジが困難だったり、森に入っていくから他のレンズは持っていけないなど、いろいろな場面でこのズームレンズが生きる場面が容易に想像できる。
重たいと欠点を初めに書いたが、CM現場になったりすると、この重さは気にならないのではないだろうか。シネマレンズ単玉でも1kg前後のレンズは珍しくなく、シネマズームレンズの枠で比べると軽い方だ。シネズームって多少増えてはきたがAPS-C用だったり、重量がかなりヘビーだったり、PLマウントだったりして費用面からも使い勝手はわるい。
同じ価格域のフルフレーム/RFマウントで使用できるレンズではSIRUI Jupiter 28-85mmや、DZOFILM Catta Zoomが候補にあがるのかなとも思うが、こういった選択肢がある中でもキヤノンボディならAF機能は間違いなく純正キヤノンレンズに軍配が上がるだろうし、持っている他のキヤノンレンズと併用も可能と考えると、予算を抑えることができるのではないだろうか。
またボディ側のブリージング補正機能の補完により、高価なシネマズームレンズと差し支えない使用感を体感することができるだろう。MFで使用する場合でも、広角ワイドの画角を変えてもピント位置がずれないよう設計されているため、ズーミング演出も可能だ。
MFでの使用も視野に入ると、よりRED KomodoやRapterなどRFマウントを持つカメラでも積極的に使用できるレンズになってくるのではないだろうか。
料理や組み立て動画など一連の流れをストップをかけずに撮影したい場面を想定し、広角から手元のクローズアップまでを、フォーカスモーターを使用して操作できるようにセットした。また今回はショルダースタイルにしたため、画面タッチが行えないので、クローズアップ時などはフォーカスが合わないことを想定して、MF用にフォーカスにもモーターを組んでみた。
今回は、三脚座を外して使用したが、その場合はマウントへの負担や、ボディーがずれてフォーカスギヤが外れる懸念が予想される。こういった場合に備えて専用のレンズホルダーもあるのでこれはありがたいアクセサリーである。
長所としてレンズの長さがある分、モーターを設置するスペースにも余裕がある。ロッドを使用するアクセサリーの自由度も撮影に生きてくるだろう。
このレンズの特徴でもあるズームしてもレンズの長さが変わらないことは、重量バランスが変わらないということもあるが、角フィルターを使用する際のマットボックスの装着にもメリットがある。長さが変化するレンズに対応しないマットボックスもたくさんあるため、これにも汎用性の高さも感じることができた。
使用感はというと、現場レベルで使えると感じた。ショルダーにしたときの重量バランスも良く、MF操作はほとんどする必要がないくらいAFがしっかりと効く。ズーミングしてもピントが泳がないので、一連のカットとして引き、手元、顔へのワークが可能だった。
外で歩きながらのロケ撮影を想定して同じセットで撮影してみた。
IS付きということもあるので、不安感なく手持ちなどでにも挑むことができた。動画でも確認することができるが、状況説明からコメントの寄りまで一連で対応でき、アイリスリングがあることで野外から室内への移動時などもフレキシブルに露出を変えることができた。まさにこういった撮影に生きるレンズだった。
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今回は、残念ながら供給不足なのかパワーズームアダプターはお借りすることができなかったが、これがあれば筆者が行ったような複雑なフォーカスモーターを装備しなくても、同じような撮影ができるかもしれないので、期待がたかまるアクセサリーだ。
レンズの長さが変化しない、重量バランスが変わらないという事で、ジンバル撮影が安易なのではという事で試してみることに。
ジンバル撮影では16-35mmなどのワイドレンズを使用するケースが多いイメージだが、作品を通してみると広角ばかりの画を使う事は少ない。最近ではAFが使い物になってきたことで24-70mm F2.8などの標準画角のレンズを載せる方も多くなってきたが、これだと望遠が70mmでは物足りなく感じる事もしばしば。
だからと言って85mmや70-200mmを載せるのにも結局レンズチェンジする回数を増やすだけで、そのたびに重さが変わるので調整時間をそこそこ必要になるので、非常にリスキー。
無論24-105mm F4だとぼかしたいイメージ撮影などには使いづらいので、候補にあがらず。
では24-105mm F2.8の使い心地はいうと、正直な感想は、結構最高だった。
F2.8の恩地は広角側から感じる事ができ、離れた距離感から被写体に寄って行くとボケが大きくなる。マイルドなボケが、より特別感を演出してくれているように感じた。70mm-105mmでは、今までなかなか撮ることがなかった画のため、新たな可能性を感じる事ができた。背景の玉ボケがムービングするカメラとも相まってキラキラと動く。望遠側でも広角とは違ったレイヤー感を感じる事ができ、より遠近感を強調することが出来た。
今回は写真撮影風景を軽量装備でドキュメント的に対応してみたが、ワイヤレスのフォローフォーカスを搭載することも可能なので、ドラマ撮影やMV撮影などにも流用可能だと想いをめぐらせることが出来た。単純ことだが、様々なイメージをレンズチェンジせずに撮影できることで、どんな撮影に対応できる可能性を感じられテスト撮影となった。
2024年、RFマウントの新たな設計として開発されたキヤノン史上初めてのF2.8通しで作られた、24-105mmのレンズ。商品ページにも堂々と「あらゆるシーンで」と描いてある通り、まさにどのような場面でも生きるレンズだと感じることができた。
スーパーロングセラーを続ける24-105mm F4は完成されたレンズであり、そしてこの完成されたレンズRF24-105mm F2.8 L IS USM Zなのだ。このレンズが新たな時代をつくることを期待している。
pingset 金子元気でした。
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Photo & Text by 金子元気(かねこ・げんき)