特徴/操作性
フルサイズ用のマクロレンズとは思えないコンパクトなサイズ
近接は勿論中望遠レンズとしても使える優れた光学性能
インナーフォーカスをはじめ扱いやすい操作性
実写レビュー
マクロレンズである事を意識させない取り回しの良さ
近接から遠景まで安心して使える高い光学性能
マクロ撮影のストレスを軽減する高速なオートフォーカス
決定版と言ってもいい欠点の少なさ
画質
解像感(マクロ撮影時)
解像感(通常撮影時)
フリンジ
F値によるボケ感の比較
ライバル・旧製品との比較
Canon RF100mm F2.8 L MACRO IS USMとの比較
SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Artとの比較
メリット・デメリットとおすすめユーザー
驚く程のコンパクトさは大きなメリット
デメリットとしてはレンズよりもカメラが気になる
Lマウントユーザーなら是非持っていたい中望遠レンズ
まとめ
LUMIX S 100mm F2.8 MACROの最大の特徴は中望遠のマクロレンズとは思えない、驚く程のコンパクトさです。
まるでAPS-C用レンズか標準のハーフマクロのような大きさで、一目で取り回しの良さがわかります。
今回テストボディとして使ったLUMIX S5IIとのバランスも良く、マクロレンズとしてだけでなく中望遠レンズとして幅広く使いたくなりました。
LUMIX S 100mm F2.8 MACROは軽量コンパクトながら描写性能についても高いレベルにあります。
私のような年寄りの写真好きは「描写性能の高いレンズは大きい」と思ってしまいがちですが、実際に撮影してみて、そんな偏見は打ち砕かれました。
近接から無限遠まで安定してシャープで高解像な画を撮れるので、オールマイティに安心して使えるレンズです。
マクロレンズは全長が大きく変化してしまうものが多いですが、LUMIX S 100mm F2.8 MACROはインナーフォーカスを採用しているのでレンズの長さはピント位置を変えても一定です。
マクロ撮影では、思った以上に繰り出されたレンズ先端が気づかないうちに被写体にコツンといった事がよくありますが、インナーフォーカスならそういった事故も少ないでしょう。
スイッチ類はフォーカスリミッターとAF/MF切り替えだけのシンプルなものです。マクロ撮影では重要なフォーカスリングのトルクも適度で各操作も扱いやすいレンズだと感じました。
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実物を手にして先ず感じたのは「小さい」という事です。
一般的にマクロレンズは近距離でもピントが合うようにレンズを大きく繰り出さなければならない為、全長が長くなってしまうのが普通ですが、LUMIX S 100mm F2.8 MACROの全長は約82mmとフルサイズ用のマクロレンズとしては驚異的な小ささとなっています。
テストボディのLUMIX S5IIにレンズを装着して撮影をはじめればマクロレンズを使っているという感覚はすぐに薄れ、まるで標準レンズを持ってきたような軽快さで使う事ができました。
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LUMIX S 100mm F2.8 MACROはその小ささ、軽さを活かしてお散歩カメラや気軽なスナップ写真にもピッタリです。
焦点距離を活かして印象的な部分を切り取ったり、圧縮効果を使ったりと意外とスナップでも使いやすいので、型にはまらずに使ってみるのも面白そうです。
Panasonicには同じくコンパクトな単焦点レンズが数本用意されているので、例えばLUMIX S 35mm F1.8などと組み合わせて使えば幅広い表現でスナップを楽しめるのではないでしょうか。
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驚いたのは近接から遠景まで抜けの良い高い光学性能を示した点です。
私などは、ついついレンズの描写性能と利便性は両立しないものという古い考え方をしてしまうので、軽量コンパクトさと高性能さの両方を持ったレンズである事がにわかには信じられませんでした。
ボケの美しさと高い解像感・シャープネスが共存しているのもLUMIX S 100mm F2.8 MACROが優れている点のひとつです。
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標準ズームで100mm F2.8を実現しているレンズは殆どありません。
そういった意味で中望遠レンズとしても高い性能を発揮するF2.8のマクロレンズは他のレンズとかぶらずに使い道の多いレンズと言えます。
70mm F2.8よりもボケが大きくなるので大口径標準ズームと比較してもボケを使った表現がしやすい点もメリットです。
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高速なオートフォーカスがマクロ撮影でのストレスを大幅に軽減してくれます。
ピントの合う範囲が非常に狭くなるマクロ撮影では、ちょっとしたフォーカスポイントの位置の違いでピントが奥に抜けてしまう事がよくあります。
LUMIX S 100mm F2.8 MACROは高速なフォーカススピードにより、ピントを外した際の対応もしやすく、マクロ撮影時のストレスを軽減してくれる感じました。
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写真は扱う機材によって撮影のリズムが大きく変わります。
マニュアルフォーカスでじっくりと撮りたい時もあれば、オートフォーカスで子気味良くシャッターチャンスに対応していきたい時もあるでしょう。
LUMIX S 100mm F2.8 MACROは後者のような撮影にはピッタリで、軽く取り回しのいい機材と素早いレスポンスで撮影者の意図に着実に応えてくれます。
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使い勝手の良さとレンズとしての高性能さが非常にうまくバランスした欠点の少ないレンズです。
マクロレンズとしてだけでなく中望遠レンズとしても使いやすく活躍の場が広いのもLUMIX S 100mm F2.8 MACROが優れている点で、トータルでコストパフォーマンスが高くなっています。
Lマウントのシステムとしての価値をワンランク上げるレンズだと感じました。
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少し本音を言うと描写性能に特に注目していなかったので、思った以上に描写性能が高かった事に少し驚きました。
冒頭にも書いたのですが、小さいレンズ=性能より利便性を優先したレンズという先入観に振り回されてしまいました。
「決定版」と書いたのも、性能的にフルサイズ用のマクロレンズとして最高クラスにあるからで、是非このレンズを使いやすいレンズとしてだけでなく高性能レンズとして認識していただければ幸いです。
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マクロ撮影では非常に高い解像感とシャープネスを示します。
又、立体感も素晴らしく、ものの質感を写しとめる能力も高いレベルにあると感じました。
作例は最短撮影距離に近いマクロ撮影なので絞りをF8まで絞っておりISO感度は6400になっていましたが、テストボディに使ったLUMIX S5IIの高感度時のノイズ処理の仕方も自然で好みです。
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通常撮影でも高い解像感は健在です。
作例でも木目や細かな質感が事細かに描写されています。
Panasonicの単焦点レンズはわずかに柔らかさの残るフィルムライクな写りが玄人受けするレンズだと感じていたのですが、LUMIX S 100mm F2.8 MACROはどちらかと言うとシャープで高い解像感を売りにしたレンズのようです。
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ごくわずかですが(作例でも殆どわからないと思います)フリンジが発生する事がありました。
テスト撮影を行ったの日が生憎の曇り空だった為、あまり強烈な明暗差のある作例を撮る事ができなかったのですが、より厳しい条件では多少フリンジが発生するかもしれません。
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作例はF2.8開放とF5.6まで絞った時のボケの大きさを比較したものです。
2絞り違うとボケの大きさにはっきりと違いが出てイメージがだいぶ違うのがわかると思います。
100mm前後の中望遠レンズはF4よりも暗いF値でもそこそこボケますが、やはりF2.8よりも明るくなるとピントの合った部分とボケた部分にはっきりとメリハリをつける事ができるので、そういった意味でも単焦点レンズを持つ意味は大きいでしょう。
最大撮影倍率1.4倍、SAコントロールリング、ハイブリッドISなどの先進的な機能を満載したCanon RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは、ミラーレス時代を象徴するような最新のマクロレンズです。
対するLUMIX S 100mm F2.8 MACROはマクロレンズとしてはシンプルで目新しい部分が無いものの、常識はずれな小ささでミラーレス時代のレンズである事を主張します。
フルサイズ機をラインナップに加えた頃のPanasonicカメラは少々大きすぎるという意見も多く聞かれましたが、コンパクトで高性能なレンズはそういった事への反動なのでしょうか。
Lマウントのマクロレンズと言えばSIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Artが人気です。
描写性能をとことん追及したSIGMAに対して、LUMIX S 100mm F2.8 MACROは高い描写性能とコンパクトネスを両立するようデザインされたレンズで、コンセプトが少し違います。
Panasonicはミドルグレードのカメラ・レンズに特に力を入れているように見えるメーカーなので、そういった点も異なるコンセプトでデザインされたレンズの誕生と関わりがあるのかもしれません。
コンパクトなサイズとレンズの高性能さが見事にバランスされたレンズです。
近接でも通常撮影でも高い描写性能を維持するのでマクロとしてだけでなく中望遠レンズとしても高いポテンシャルを持っています。
「マクロ」という少し特殊な撮影をするためのレンズという事を殆ど意識する事無く使えるコンパクトさや高性能さはLUMIX S 100mm F2.8 MACROの大きなメリットです。
正直に言って殆ど欠点の無い優れたレンズで、このレンズを選択するデメリットは殆ど感じられませんでした。
そんな中敢えて欠点をあげるなら、価格がやや高目な事とラインナップされるカメラの選択肢が少ない事が少し気になります。
今回のテストでもカメラはLUMIX S5IIを使いましたが、高画素機のS1Rに新型があればそちらを使っていたと思います。魅力的なカメラを開発できる技術力はあるのに、新機種がなかなか出てこないのが少々残念です。
あらゆる面で欠点の少ない非常に使いやすいレンズなので、Lマウントユーザーなら是非持っていたいレンズです。
今回はPanasonicのカメラで試しましたが、コンパクトなフルサイズミラーレス「SIGMA fp」との相性も良さそうに感じました。
選択肢のそれほど多くないLマウントのマクロレンズの中にあって決定版と言ってもいい高性能なレンズです。
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Photo & Text by フジヤカメラ 北原