2014年5月に発売された、Canon(キヤノン) EF-Sマウント(APS-Cサイズセンサー用)の超広角ズームレンズ EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM の実写レビューです。
キヤノンのAPS-Cサイズセンサー用の超広角ズームレンズの中では最後発の製品で、静粛性が高くスムーズな動作のステッピングモーター(STM)の採用や、4段分の手ぶれ補正機構(IS)を搭載しながらも価格を抑えたモデルです。
■この記事の監修
フジヤカメラ店
東京都 中野区のカメラ専門店 フジヤカメラ店です。カメラ、レンズ、三脚、動画機材まで、新品、中古機材を多数取り扱っております。中古在庫は常時3,000点以上!これからカメラを始める方も、ベテラン、プロカメラマンも、機材の事ならフジヤカメラ店にお任せ下さい。
WEBサイトは
こちら
Canon(キヤノン) EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM
特徴/操作性
Canon(キヤノン) EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM は、35mm判換算16mmから29mm相当となる超広角のズーム域を持ちながら、サイズ、重量を標準ズームと同等に抑えられたコンパクトなレンズです。
超広角ズームというと大型のものが多いですが、このレンズは、使うかわからないけれどついでにもう一本バッグに忍ばせておこうかな、という気持ちになれる程のコンパクトさをもっています。
F値は広角から望遠に向けてF4.5-5.6と変化する無理の無い設計で、それが小型化に貢献しているのだと思います。
操作部はAF/MF切替スイッチ、ISのON/OFFスイッチ、フォーカスリング、ズームリングと一般的なEFレンズと変わりません。
リーズナブルな価格のレンズにありがちな、フォーカスリングの軽さが少し気になりましたが、オートフォーカスが難しい近接撮影以外は使用機会は少なそうです。
写真はCanon(キヤノン)のコンパクトなデジタル一眼レフカメラEOS Kiss X10iと組み合わせた例です。
レンズもカメラも大きくなりがちなデジタル一眼レフですが、EOS Kiss X10iもEF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM も非常にコンパクトなので、超広角という個性を活かした一味違う写真が撮れるお散歩カメラとして活躍してくれそうです。
フィルター径 |
67mm |
最短撮影距離/最大撮影倍率 |
0.22m/0.15倍 |
最小絞り |
F22-29 |
絞り羽根 |
7枚 |
手ぶれ補正 |
4.0段分(CIPAガイドライン準拠) |
長さ |
72mm |
重量 |
約240g |
実写レビュー
テスト撮影にはCanon(キヤノン) EOS 80Dを使用しました。ISO感度はISO100~400に適宜変更、ホワイトバランスはオート、レンズの光学補正は全てオフにして撮影しています。
テストボディにはレンズに合わせて、小型なEOS Kiss X10iを使うべきだったかもしれませんが、コマンドダイヤルが2つある方が速写性で勝るので、実写レビューではEOS 80Dを使いました。
渋谷に来る度にちょっとホラー感のある銅像だなぁと思っていた銅像をローアングルで撮ってみました。
露出がうまく決まらず、銅像はつぶれ気味、背景の空は白飛びしてしまいました。広角は、当たり前ですが写る範囲が広いので、画面全体の明暗差を考えながら露出を調整しないと、肝心のところに露出が合わなくなってしまいます。
露出をモニターしながら撮れるミラーレスに慣れ過ぎたか・・・修業が足りませんね。
知らぬ間に開業していた渋谷スクランブルスクエアの入り口付近の壁面ガラスを写してみました。渋谷には足を運ぶ事が少なく、訪れる度に駅周辺の通路が変わっていたり建物が増えていたりと驚かされます。
フレーミングの外には、未だ工事中の部分がありましたが、望遠端を使う事で写したい部分だけを切り取る事が出来ました。
手ごろな価格の超広角ズームという事で、歪曲収差が結構大きいだろうと思っていたのですが、広角端・望遠端どちらも大きな歪曲は無く、直線の多い被写体でも気にする事無くシャッターを切る事ができました。
荘厳なイメージすら思い起こさせる巨大なエスカレーターフロアを、構図を整理しながら18mm側で撮影しました。
しっかりしたシャープさを出したかったので一段絞って撮影しています。天井に映り込んだエスカレーターが十分に解像しており、期待通りです。
設計の難しい一眼レフ用の超広角レンズだけあって、四隅は甘くなっていますが、ぼやけてしまってどうしようもないという程ではありません。
間違えて露出補正をかなりマイナスに振っていたらF14まで絞られてしまい、回折現象の影響か少し描写が甘くなってしまいました。EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STMの性能のピークはF8前後にあるようなので、必要が無ければあまり絞り過ぎない方が良さそうです。
ピクチャースタイルはスタンダード、パラメーターはデフォルトですが、彩度・コントラストともに高く鮮やかな印象で、トラックの赤色、タクシーの緑色の鮮やかさが際立ちました。
広角レンズは最短撮影距離が短い物が多いですが、このレンズもその例に漏れず最短撮影距離が0.22mと短く、レンズ先端から4cm程までピントが合います。
ボケ味云々言うような高額なレンズではありませんが、素直で悪くないボケ味だと思います。
細い道が多い狭い場所での撮影では、超広角ズームのメリットが如何なく発揮されます。
全て構図内に納めたいけれど後ろに下がり切れない、そんな時に広く撮れるという事はシンプルにありがたいですね。
フジヤカメラ店員の本能なのか、撮影に夢中になっていたらとうとう中野駅までやってきてしまいました。
改札に向かう人々の動きを表現する為にスローシャッター(1/5秒)で撮影しましたが、手ブレ補正がしっかり効いて、手持ちでも動感の有る写真が撮影できました。
日中の撮影では気付きませんでしたが、強い点光源付近から飛び出すような形のゴーストが出るようです。このカット撮影の後、裏通りを撮影している際も街灯付近にゴーストが度々見られ、構図によっては目立つ場合が有りそうです。
画質
少し絞って使う事が多いレンズだと思いますので、開放から半絞り絞った作例4の写真を拡大して、解像感を見てみたいと思います。
物凄くシャープという訳ではありませんが、必要十分な解像感とシャープネスを持っています。
実写レビューでも書きましたが、これ以上画面の隅になると描写性能が落ちて来るあたりは、価格相応といったところでしょうか。
まとめ
F値は控えめなものの軽量コンパクトで、APS-C用超広角ズームとは思えない程の軽快さを持ったレンズです。STM(ステッピングモーター)による高速で静かなAFは、写真のみならず動画撮影にも威力を発揮してくれそうです。超広角のレンズとしては比較的手ごろな価格も魅力の一つで、F値が暗いという弱点は、4段分の手ぶれ補正が補ってくれます。
Canon(キヤノン)APS-CのEFマウントユーザーであれば持っていて損は無いレンズだと思います。
Canon(キヤノン) EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM
Photo & Text by フジヤカメラ 田中