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2023.07.17
写真・動画の撮り方・ハウツー,

室内ポートレート写真撮影の光を考えよう × 鵜川真由子 | プロが解説するポートレート写真撮影のコツ【第三回】

室内ポートレート写真撮影の光を考えよう × 鵜川真由子 | プロが解説するポートレート写真撮影のコツ【第三回】キービジュアル


ライター鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)イメージ
■フォトグラファー紹介

鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)

株式会社松濤スタジオを退社後、アシスタントを経て独立。広告や雑誌などでポートレイト撮影を中心に活動。アパレルメーカーとのコラボ展の企画など写真を通じて幅広く表現活動を行っている。
2012年 個展「The Secret Garden」開催、TOKYO FRONT LINE PHOTO AWARD入賞
2013年 グループ展「nice to meet you」、個展「Out of the Garden」開催
2015年 個展「NY Love Stories」「Ginza Love Stories」開催
2017年 個展「Rhapsody in Blue」開催
2021年 個展「LAUNDROMAT」「WONDERLAUND」開催、写真集『WONDERLAUND』刊行

はじめに

旅行やイベントごと、日々の仕事や日常のさまざまなシーンで、人物写真、ポートレートを撮影する機会は増えています。どうしたら素敵なポートレートを撮ることができるのでしょうか。

このブログでは、プロカメラマンの鵜川真由子さんによるポートレート撮影についての基本となる考え方やコツを、シチュエーションごとに8回に分けて進めていきます。

構図、自然光、ライティング、焦点距離、背景やボケの活かし方、夜のポートレートなどなど、毎回、鵜川さんが撮影した素敵な作例写真と共にお伝えしていきます。ぜひ参考にしてみてください。

1. 室内ポートレート撮影に必要な機材

◉ストロボ/LED など
◉露出計
◉三脚
◉レフ板

【今回の使用機材】
ストロボ:Profoto D1 500 Air
LED : Godox SL60W

2. 自然光とライティング(設定や違い、それぞれの活かし方など)

自然光は文字通り自然に生まれる光なので本来はコントロールできないものですが、その特徴や性質をよく知れば上手に活用でき、思い通りの表現ができるようになります。

時間帯や季節、お天気によって光の強さや方角が変わるため、常に露出に気をつけながら撮る必要があります。

ストロボのような人工の光を使うと暗い場所でも明るく撮影できる反面、その場所の持つ雰囲気を壊してしまう場合もあるので、狭い部屋での撮影の場合はより注意が必要です。

どういったシチュエーションでどちらの光を活用するべきか、作例を見ていただきながら解説したいと思います。

自然光

この写真のように曇り空の場合は差し込む光が弱いため、被写体には窓の近くに立ってもらう必要がありました。

指示を出して動いてもらうことで、顔の向きを調整します。シャドウ部が潰れてしまわないよう、右側にレフ板を置いて光をおこします。

自然光とレフ板を活用して撮影した片肘をついてポーズをとる女性の画像

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自然光とレフ板を活用して撮影した両肘をついてポーズをとる女性の画像

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ライティング

窓を背にしているためそのまま撮ると逆光になる時は、ライティングで顔を明るくします。今回はストロボではなくLEDライトを使いました。

LEDは光が当たっている場所を目視できるので扱いやすく、そこまで強い光量が必要ではない場合にはオススメのライトです。

・光量が強い場合
背景のファイル類までくっきり写っていて露出は合っていますが、Tシャツの皺が消えてしまいフラットな光になりました。首の辺りには不自然な影が出ています。

LEDライトでライティングしながら撮影したティーカップを持つ女性の画像

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・ライトの位置を左側にかえて被写体との距離が取れるよう少し背後に下げ、さらに光量を一段落としました
全体的に柔らかい印象になり、自然な光で顔も明るく見えるようになりました。ライトの位置をずらすことで不自然な影は消えました。

LEDライトの位置と光量を調節後に撮影したティーカップを持つ女性の画像

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3. 室内のポートレート撮影におすすめのレンズ

中望遠レンズ

・その場にあるものを使って一味違ったポートレートを作る
85mmレンズを使い、手前に置いた観葉植物と背景をボカすことで印象的な一枚になりました。

85mmレンズで手前の観葉植物と背景をボカして撮影した女性の画像

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・窓ガラス越し
こちらも85mmを使用。絞りは開放にすることでガラスに反射する光がボケてアクセントに。

85mmレンズで窓ガラス越しに撮影した女性の画像

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同じ位置から異なる焦点距離のレンズを使った時の見え方の違い

■35mm

35mmレンズで撮影したティーカップを持つ女性の画像

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■50mm

50mmレンズで撮影したティーカップを持つ女性の画像

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■85mm

85mmで撮影したティーカップを持つ女性の画像

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35mmでは部屋全体の様子がよく見えます。85mmでは人物にグッと寄った写真に。
50mmでは背景と人物がバランスよく描写されています。

人物がメインなのか、その場の状況も表現したいのか。
伝えたい情報によってレンズを使い分けるといいでしょう。

4. 室内のポートレート撮影で気をつけたいこと(構図やテクニック面での注意点など)

余計な物が写り込む

人物の左側にある黒いヨガマットや鉢植えにぶら下がった霧吹き、電気のコードなどが画面に写り込むと、撮る時に思っていた以上に目立ちます。

ほんの少し位置を動かしレイアウトを変えるだけで美しい背景になるので、手間を惜しまず細部まで気を配ってくださいね。

余計な物が写り込んだ場合の画像

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室内の人物と、外の背景の露出

窓の外と中では露出が大きく違うため、室内の人物と外の背景を同時に写したい時はライトを使って人物を明るく補正する必要があります。

窓の外に露出を合わせた場合の画像

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・窓の外に露出を合わせた場合
逆光のため、人物が真っ暗になってしまいました。

人物に露出を合わせた場合の画像

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・人物に露出を合わせた場合
柔らかい光に包まれて美しいポートレートになりました。背景は真っ白に飛んでいます。

人物も背景もしっかり描写されるよう撮影した画像

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・人物も背景もしっかり見せたい時
外の光よりも明るくなるよう強めの光量が必要だったため、ここではストロボを使いました。
人物には直接当てずに天井にバウンスさせることで光を和らげています。

背景も人物もしっかり描写されていますよね。
眺めのいい部屋などから人と風景を一緒に撮りたい時にはぜひお試しください。

【応用編】その場の光を使う

光には色々な種類があり、日常の中でいくつも見つけることができます。その場にある電灯を利用することで、自然光やライティングとは違った趣きのあるポートレートが撮れます。

例えば白熱球は色温度が低いため、夕日と同じように赤い光になりノスタルジックな表現が可能になるのです。

・こちらは日が暮れた後、部屋の赤い壁を利用して白熱灯だけで撮った一枚です

日が暮れた時間帯に部屋の赤い壁と白熱灯を利用して撮影した少女の画像

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・外の光と室内の電灯を利用した場合
ストロボを使った時とは違った表現になりました。人物をあえて暗く描写することでしっとりとしたポートレートに。

外の光と室内の電灯を利用して撮影した窓際の椅子に座っている少女の画像

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まとめ

今回は曇りでの撮影で比較的安定した光でしたが、天気が良い日には光が強すぎる時があります。

そういった時は前回のライティング講座でも説明したように、トレペや、レースカーテンを使うなどして光を和らげるとふんわり優しい光になります。

普通の部屋での撮影ではスタジオのような真っ暗な空間とは違い、自然光とストロボをミックスすることになるので、やはりここでも”光のバランス”が重要になってきます。

日光の性質をよく知り上手に活用すれば、室内でのポートレートの表現の幅はぐんと広がります!

Photo & Text by 鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)

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