標準50mmから始まったシグマの快進撃
SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary の登場
外装のほとんどがアルミ削り出しのIシリーズ
強い個性はないけれど優等生的な描写
“兄貴分”F1.4 Artとどちらを選ぶべきか
SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary 作例
作例に使用したレンズ
SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary
作例に使用したカメラ
SIGMA fp L
SONY α7R V
まとめ
1974年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、さまざまな職業を経て写真家に。広告や雑誌などを手掛けるかたわら、スナップやドキュメンタリーの作品を精力的に発表している。近年の写真展に「#shibuyacrossing」(ソニーイメージングギャラリー)、「煩悩の欠片を燃やして菩提の山へ走れ」(ナインギャラリー)など。昨年9月には『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)を出版。日本写真家協会会員。
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@shikanotakashi
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@shikanotakashi
シグマが交換レンズで確固たる地位を築いたのは、2008年に発売された50mm F1.4 EX DG HSMではないかと思う。
それまで価格が手頃というイメージのあったシグマが、突然フィルター径72mmという当時としては規格外に大きな50mmF1.4を発売してきた。希望小売価格は6万円。実売価格はそれよりさらに安いはずだが、キヤノンやニコンの50mmF1.4も5万円でお釣りがきた時代だ。
突如現れたその50mm F1.4 EX DG HSMは、僕も愛用していたがボケ味がすばらしいレンズだった。寄り引きや絞りで作画を自由自在にアレンジできる50mmの良さを、このレンズで多くの人が再認識したのではないだろうか。
そして2012年にシグマは現在に至る3つのプロダクトラインを策定。2014年には現行品でもある50mm F1.4 DG HSM | Artを発売する。一眼レフ用だが、後に後部を伸ばすかたちでミラーレスのLマウントやEマウントも発売している。
その後シグマはミラーレス専用のDG DNシリーズを拡充。しかし定番中の定番、50mmがなかなかラインアップされなかった。ようやく今年2月に満を持して発売されたのが、こちらのブログでも僕がレビューをした50mmF1.4 DG DN | Art(以下F1.4 Art)。それから間を置かず、今回紹介する50mm F2 DG DN | Contemporaryを送り出してきた。
同じくレビューした17mm F4 DG DNと同様、小型ながらアルミ削り出しで高い質感を誇る単焦点「Iシリーズ」に属する。金属とプラスチックを組み合わせているF1.4と比較すると、小柄ながらずっしりと重量感がある。本体の質感や感触ならこちらに軍配を上げる人が多いだろう。
シグマではArtとContemporaryの両方が存在する焦点距離がいくつかある。Artのほうが上位モデルにはなるが、Contemporaryに属するIシリーズは、金属の質感やArtにひけをとらない描写でArtとは違った価値を創造している。僕もシグマのレンズはいろいろ愛用しているが、バッグの中身をコンパクトにできるIシリーズは重宝している。
コンパクトといっても高画素にも対応すべく、レンズ構成は9群11枚、うちSLDガラスが1枚、非球面レンズが3枚と贅沢。非球面レンズは年輪ボケを生みやすいが、僕が実写した限りではその心配はなさそうだ。
前ボケこそやや硬い印象を受けたが、後ボケは柔らかく、F1.4にひけをとらないと思う。わずかに口径食や周辺光量低下はあるものの、総合的な描写は各メーカーがしのぎを削る50mmF1.8〜F2では、間違いなくトップクラスといえる。
F1.4 Artとは直接比較していないので主観でしか語れないが、F1.4 Artはその明るさがもたらすボケや立体感といった恩恵を、最大限引き出す方向へ振ったように感じる。また緻密さという点でも抜きん出ている印象を受けた。
対してこちらは派手さこそないものの、堅実に常用レンズとしての実用性を高めているように思う。F2で主役の前後をボカすもよし、絞り込んで遠景をシャープに見せるもよし、といったところだ。
というわけでF1.4 Artとこちらで迷うユーザーも多いのではないだろうか。たとえば撮影ジャンルがポートレートであれば、僕も絞り1段分のアドバンテージがあるF1.4を勧める。
しかし35mmや85mmなど前後の焦点距離、あるいは広角ズームや望遠ズームも併用するのであれば、50mmはF2に抑えて機動力を高めるという考え方もアリだと思う。F2でもポートレートに必要なボケは十分得られるからだ。またfp/fpLやソニーα7Cのユーザーは、バランス的にこちらの方がマッチするだろう。
50mmはあらゆるジャンルで常用できる焦点距離。かくいう僕もプライベートなら50mmだけでほぼ事足りる。どちらか1本を、と聞かれれば大口径を選ぶというのが定石かもしれないが、僕のルーティーンである町をぶらぶら歩く撮影であれば、取り回しのよさでF2を選ぶ。Artラインを使ってきたシグマユーザーも、これを機にぜひIシリーズを手にとってほしい。
シグマfp L・シグマ50mm F2 DG DN | Contemporary
絞りF2・1/4000秒・ISO100・+0.7EV補正・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG
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豊かな質感と鋭いシャープさが両立するスポーツカーを、強い日差しが照りつける。写真にまとめるには難しい状況だが、高い再現力が支えてくれた。
シグマfp L・シグマ50mm F2 DG DN | Contemporary
絞りF8・1/2000秒・ISO100・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG
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コントラストが高めのカラーモードで撮影しているが、白の中の白も、黒の中の黒もしっかりと再現されている。
シグマfp L・シグマ50mm F2 DG DN | Contemporary
絞りF2・1/200秒・ISO160・+0.3EV補正・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG
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奥の桜にピントを合わせ、前ボケで奥行き感を作ってみた。前ボケはややザワつく印象だが、このサイズ・スペックとしては優秀だと思う。
シグマfp L・シグマ50mm F2 DG DN | Contemporary
絞りF2・1/1000秒・ISO100・+0.7EV補正・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG
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レンズの実力が如実に現れる、ちょっと意地悪な作例。しかし生地のテクスチャーを見ると、ピントが合った部分からきれいにボケているのがよくわかる。
ソニーα7R V・シグマ50mm F2 DG DN | Contemporary
絞りF2・1/2500秒・ISO100・+0.7EV補正・WBオート・JPEG
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AF駆動は静かで速いステッピングモーターを採用。動く被写体もしっかり追従できる。
ソニーα7R V・シグマ50mm F2 DG DN | Contemporary
絞りF8・1/125秒・ISO100・WBオート・JPEG
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もちろん絞り込むとキレ味が増し、質感もよりリアルになる。
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Photo & Text by 鹿野貴司(しかの・たかし)