フジヤカメラ

 

分類

分類

2023.05.14
専門店・プロレビュー,

SIGMA 23mm F1.4 DC DN|Contemporary レビュー × 鹿野貴司|多彩に楽しめるAPS-C用大口径レンズ

SIGMA 23mm F1.4 DC DN|Contemporary レビューキービジュアル


ライター鹿野貴司(しかの・たかし)イメージ
■フォトグラファー紹介

鹿野貴司(しかの・たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、さまざまな職業を経て写真家に。広告や雑誌などを手掛けるかたわら、スナップやドキュメンタリーの作品を精力的に発表している。近年の写真展に「#shibuyacrossing」(ソニーイメージングギャラリー)、「煩悩の欠片を燃やして菩提の山へ走れ」(ナインギャラリー)など。昨年9月には『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)を出版。日本写真家協会会員。
Instagram: @shikanotakashi
Twitter: @shikanotakashi

SIGMA fp Lに装着したSIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporaryを斜め上から撮影した画像

実力派トリオに新顔が加わってカルテットに

シグマには16mm、30mm、56mmという、ともにF1.4 DC DNのトリオがある。APS-C・マイクロフォーサーズ用のレンズで、マウントはライカL、ソニーE、富士フイルムX、キヤノンEF-M、マイクロフォーサーズと対応マウントは実に多彩。

さらに4月21日にはニコンZも加わる。フルサイズ換算はカメラによって異なるが、ソニーαや富士フイルムX、ニコンZのAPS-C機ならそれぞれ24mm、45mm、84mmに相当する。

そこに4本目として加わるのが、今回取り上げる23mm F1.4 DC DN | Contemporaryだ。まずはライカLとソニーEの2マウントを発売。2023年夏頃に富士フイルムXマウントを発売するという。フルサイズに換算すると35mm相当、常用レンズとするのにちょうどいいスナップ向きの焦点距離だ。

SONY α6600に装着したSIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporaryを上から撮影した画像

おすすめの使い方と特徴

fp/fp Lの多彩なアスペクトが生きる!

ここで鋭い方はお気づきかもしれないが、ライカLマウントには現在APS-C機がない。なのにレンズを発売して、いったいどう使えというのか。

fp/fp Lにはオートクロップ機能があり、DC DNレンズを装着すれば自動的にAPS-Cサイズへクロップ(つまりトリミング)される。6100万画素のfp Lならクロップされても2600万画素あり、一般的なAPS-C機と変わらない。でもそんな使い方をするなら、価格がさほど変わらない35mm F2 DG DN | Contemporaryを買えばよい話。

そこで僕が勧めたい(そしてシグマも大きな声では言わないけれど、たぶん本音では勧めたいはずの)このレンズの使い方が、オートクロップのオフだ。メニューの「クロップズーム設定」で「ズーム下限」を「オート」から「x1.00」にすればよい。

もちろんフルサイズでは四隅が黒くケラれるが、fp/fp Lは多彩なアスペクト(縦横)比が選択できる。1:1や21:9では絞り開放で周辺光量がわずかに落ちるものの、ほとんど影響を気にせず使うことができる。16:9や7:6も四隅が少し暗く落ちるが、僕個人の感想としては十分使える。むしろそれが視点を中央に誘い、作品が印象的になると思う。

SIGMA fp L・オートクロップオフ・フルサイズ・絞り開放で撮影したタイルの画像
絞り開放
SIGMA fp L・オートクロップオフ・フルサイズ・絞りF8で撮影したタイルの画像
絞りF8

fp Lでオートクロップをオフにし、フルサイズで撮影。絞り開放(上)では1:1で四隅が軽く、21:9では左右に周辺光量不足が起こるが、F8(下)ではともにほとんど影響がない。3:2のフレームより外は歪曲収差が自動補正されないが、軽微なので厳密な建築写真でもなければ気にならないだろう。

1:1のスクウェアフォーマットで29mm相当に

ハッセルブラッド、ローライフレックス、マミヤと6×6のカメラを愛用している僕は、先に発売されているF1.4 DC DNの3本をシグマfp/fp Lで、もちろん真四角の1:1で愛用している。ちなみに56mmだけ1:1でも四隅がわずかにケラれるが、そもそも1:1のアスペクトなど仕事ではなく私事で使うわけで、僕はあまり気にしていない。

というわけでこのレビューでも、個人的興味も含めてfp Lで1:1に設定して使ってみた。フルサイズ換算で29mm相当の画角。僕がハッセルブラッドやマミヤで使ってきた50mmとほぼ同じで、真四角というかたちのせいか、数値以上に広く感じる。

さらに21:9も試してみたが、こちらはフルサイズ換算で25mm相当。一時期フィルムコンパクトカメラで流行したパノラマが、ちょうどこれくらいの画角だった。

あまり広すぎると作画が難しいが、これくらいなら風景をダイナミックに撮影できると思う。もちろんメインは本来の正しい使い方であるAPS-Cフォーマットを、ソニーα6600で撮影しているのでご心配なく。

SONY α6600に装着したSIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporaryを斜め上から撮影した画像

シグマの良心が感じられる実直な写り

肝心な写りの話をしなければとレンズ構成を見ると、ライカLで340gと小型軽量ながら10群13枚と贅沢。SLDガラスを3枚、非球面レンズを2枚使用している。絞り開放からキリッとシャープだが、1〜2段絞るとさらに解像力が高まる。

APS-Cフォーマット+大口径ということで軸上色収差は目立ちやすいが、一方でボケ味や周辺の画質はなかなか良好だ。逆光への強さはシグマのストロングポイントだが、このレンズもその点はぬかりない。

総合的にみて、これまでのF1.4 DC DNと同様、ContemporaryラインではなくArtラインに入れても異論はないと思う。

フォーカスリングは電子式だが、適度なトルクがあって滑らか。近接時やガラス越しなどはマニュアルフォーカスが頼りになることもあるので心強い。ただしArtラインのレンズにあるようなスイッチやボタンは一切ない。AF/MFの切り替えをすぐ呼び出せるよう、カスタマイズしていくといいかもしれない。

同じシグマ製品ではあるがビルドクオリティを極めたArtラインや、アルミ削り出しのIシリーズのような派手さは、このレンズからは感じられない。むしろやや素っ気ない気もする。

しかし実力の高さはすでに述べてきた通り。装着できるボディを持っているなら買って損はないし、むしろこのレンズのためにボディーを買うのも、賢い選択だと思う。

SONY α6600とSIGMA fp Lに装着したSIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporaryの画像

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary 作例

シグマfp L・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影した建物の横を歩く日傘をさした女性の画像

シグマfp L・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF5.6・1/400秒・ISO100・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

まずはfp Lの1:1で撮影したカットを。絵柄が45度の方向へ広がっていくスクウェアの特性か、29mm相当という数値以上に遠近感が強く感じる。

シグマfp L・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影したピンクの花と黄色の葉をつけた植物の画像

シグマfp L・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF1.4・1/2000秒・ISO100・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

主題をど真ん中に置く“日の丸構図”も、1:1ではきれいにハマりやすい。

シグマfp L・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影した大きな青い橋の画像

シグマfp L・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF5.6・1/1000秒・ISO100・WBオート・カラーモード「FOVクラシックブルー」・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

21:9で撮影。このアスペクトも非日常的でなかなかおもしろい。ほんのわずかに四隅が暗く落ちているが、本来サポート外の両端も十分シャープだ。

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影した人の石像の画像

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF1.4・1/640秒・ISO100・-1EV補正・WBオート・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

町で見かけたものをスッと切り取るのに、この焦点距離はちょうどいい。石像の質感も奥のボケ具合も期待以上だ。

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影した建物の側面の画像

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF5.6・1/1250秒・ISO100・-0.7EV補正・WBオート・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

絞ればシャープなのは当然として、細部までしっかり捉える緻密さが感じられる。

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影したフジの花の画像

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF1.4・1/1600秒・ISO100・+2EV補正・WBオート・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

太陽が写り込みながらも、優しいトーンで花びらを再現。色収差が目立ちやすい被写体で、少し意地悪かなと思いつつ撮影したのだが、このレベルに抑えられていれば十分合格だと思う。

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影した深緑色の車の画像

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF1.4・1/1600秒・ISO100・-2EV補正・WBオート・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

光が乏しい状況で、ダークトーンの被写体を露出補正-2で見たままに再現。黒の濃淡を思い通りに描けたのも、レンズの能力が高いからこそ。

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporaryで撮影したお線香に火をつけている画像

ソニーα6600・シグマ23mm F1.4 DC DN | Contemporary
絞りF1.4・1/1000秒・ISO100・WBオート・JPEG

画像にマウスを合わせると拡大表示します

画像をスワイプすると拡大表示します

フルサイズに換算すれば35mmF2に相当するのだから、被写界深度はそこそこ浅い。フルサイズとの比較論でAPS-C=ボケが小さい、と語られがちだが、このレンズを手にするとそんなイメージは吹き飛ぶ。

作例に使用したレンズ

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary

【商品情報】SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporary

» 詳細を見る

SIGMA 23mm F1.4 DC DN | Contemporaryバナー画像

作例に使用したカメラ

SIGMA fp L

【商品情報】SIGMA fp L

» 詳細を見る

SIGMA fp Lバナー画像

SONY α6600

【商品情報】SONY α6600

» 詳細を見る

SONY α6600バナー画像

まとめ

・fp/fp Lでオートクロップをオフにし、フルサイズで撮影
・逆光に強いシグマレンズ
・良好なボケ味と周辺の画質
・電子式のフォーカスリングは、適度なトルクがあって滑らか

Photo & Text by 鹿野貴司(しかの・たかし)

ブランド

Page Top
Page Top