ハッセルブラッドの最高中判ミラーレス、X2D 100Cが登場!
X2D 100Cの外観からチェック
グリップ
液晶モニター
チルト式の背面液晶モニター
電子ビューファインダー
バッテリー
X2D 100Cとともに3本のレンズが追加発表!
X2D 100CとXCDで撮影した作例
X2D 100Cの注目ポイント&性能面の進化とは
センサー
ボディ内手ブレ補正を搭載
ISO感度と連写
記録媒体
AFについて
画質
X2D 100Cは次元の違う写りを楽しめる
作例に使用したカメラ
HASSELBLAD(ハッセルブラッド)X2D 100C
作例に使用したレンズ
HASSELBLAD(ハッセルブラッド)XCD 2.5/38V・XCD 2.5/55V
まとめ
フォトグラファー/映像作家。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像を学び、CMやドキュメンタリーを撮影。
帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファー、映像作家として活動開始。新しい技術をいち早く取り入れ、写真や映像表現に活かしている。2014年頃からはドローンを取り入れた撮影も行っている。
現在は、雑誌、広告を中心に、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。講演や執筆活動も行っている。YouTubeチャンネル「写真家夫婦 上田家」でカメラや旅について情報を発信中。ニコンカレッジ講師、LUMIXアカデミー講師、Hasselbladアンバサダー2015、プロフォトトレーナー。
Hasselbladから最高の中判ミラーレスカメラHasselblad X2D 100Cが発売になった。筆者はHasselblad ローカルアンバサダー 2015を勤めたこともある根っからハッセルブラッドファンでもある。ハッセルブラッドと言えばフィルムのVシステムが歴史を作り、それ以降Hasselblad Hシステムそして、ミラーレスカメラのXシステムと育ってきた。今回のX2DはXシステムになって4機種目のカメラとなる。
筆者は全てのXシステムを購入して作品づくりはもちろん、仕事まで幅広く使っている。Hasselblad Xシステムの進化は初代X1D、X1D IIとなり、派生型の907X CFV II 50C、そしてX2D 100Cとなった。初代X1D以外は現行機種となる。中判デジタルカメラの価格は高価ではあるが、製品のサイクルが長くとても長く使えるメリットがある。筆者はHシステムで言えば6〜7年ほど使用していた。1年単位で考えるととてもコストパフォーマンスに優れているのも特長だ。ここからは本題のX2D 100Cについて紹介していこう。
それでは外観を見てみよう。外観は今までのハッセルブラッドXシリーズと似ているが、手ブレ補正を搭載したことやトップモニターを搭載したことによりひと回り大きい。
グリップもしっかりしており、ホールド感に優れる。重量はバッテリーを含んで895gと少しズッシリと高級感がある。モードダイヤルなどは無くなり、基本的にボタンで撮影モードなどを変更する。ボタンも洗練されており、操作感はかなり良い。
液晶モニターも大きい、3.6インチ236万ドットのモニターを採用。もちろんタッチでの操作ができる。メインモニターはチルトができるようになり、40度と70度のポジションで止められるので、ローポジション撮影がとてもしやすい。トップモニターは1.08インチで、設定などを一目で分かるようになっている。
電子ビューファインダーはファインダー倍率1倍のEVFを搭載。画素数は576万ドットの高精細なファインダーで見やすい。今回、視度調整をしていて驚いたのが、視度調整はメニューから行う。
電子視度調整はVHPICTURESと画面に沢山サイズ違いで表示されて視度を調整する、とてもオシャレな視度補正機構を備える。ホットシューはニコン互換でTTLはSB-5000やニコン用のProfotoのストロボも使用できる。
バッテリーは7.27V DC/3400mAhを採用。充電はボディに付属のUSB-C充電器を使い充電する。満充電まで約2時間。ちなみにバッテリーの消費は早い印象だ。一日撮るのであれば使い方にもよるがバッテリーは2本は欲しいところ、筆者は一日3本持って行って2本使うくらいだ。予備バッテリーは必ず持っておこう。
追加でX2D 100Cと同時に発表されたレンズが3本ある。XCD 2,5/38V、XCD 2,5/55V、XCD 2,5/90Vの3本で、そのうちの2本は作例を撮影しているので見て欲しい。筆者はXCD 2,5/55Vを購入して使っている。クラシカルな外観や操作系はさらにブラッシュアップされており使いやすい。AF・MFの切換もワンタッチだ。XCD 2,5/38Vも広角で使いやすいのでスナップなどにも便利な印象だ。
Hasselblad X2D 100C・XCD 2,5/55V
絞りF4・1/900秒・ISO64
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55mmのレンズは44mm相当のレンズになる。標準レンズとしてとても使いやすく、解像力もしっかりある。デザインの良いレンズなのでスナップには最適だ。沖を航行する漁船にピントを合わせたがしっかりとディテールが確認できる。
Hasselblad X2D 100C・XCD 2,5/38V
絞りF2.5・1/2000秒・ISO64・−0.75EV補正
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有料の双眼鏡を撮影。38mmのレンズで撮影したが、中判ならではの立体感とボケ感を堪能できた。ボケは広角にも関わらず大きく、ピント位置はとてもシャープで立体感が感じられる。
X2D 100CはX1D IIの後継というよりは別のラインと考えても良いだろう。まず、注目すべきは画素数が1億画素になったこと。11656 × 8742ピクセルの画像を撮影できる。センサーサイズは43.8X32.9mmと大きなセンサーを搭載している。センサーは裏面照射型 CMOSセンサーを搭載し1ピクセル当たりのサイズは3.76μmだ。ハッセルブラッドを筆者が長年使用している理由の1つは画素と階調だ。ビット深度は16ビットのRAWを撮影できる。一般的なデジタルカメラの色深度は12ビットや14ビットが主流だが、ハッセルブラッドは16ビットだ。X2Dから14ビットも選べるようになったので、撮影方法に合わせると良いだろう。
ダイナミックレンジは圧倒的な15ストップを実現、圧倒的なダイナミックレンジで輝度差の激しいシーンなどもしっかり撮影できる。RAWデータに余裕があるのでRAW現像は劇的に楽になる。風景などはもちろん、ポートレートやスナップなど広い階調で表現することが可能だ。ちなみに、センサーがフルサイズよりも大きいので焦点距離に0.8倍すると35mm判換算になる。
Hasselblad X2D 100・XCD 2,5/55V
絞りF4.8・1/900秒・ISO64・−0.75EV補正
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オリーブ園から55mmのレンズで瀬戸の風景を撮影。オリーブ園の木々のディテールまでしっかりと確認できる。さすが1億画素だ。
Hasselblad X2D 100・XCD 4/21
絞りF11・1/90秒・ISO64・−0.667EV補正
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ビル群を見上げるように撮影。絞り値をF11で被写界深度を稼いだ。拡大してみると、肉眼では見えないディテールまでしっかり写っていることが分かった。細かな部分の表現は立体感に関係するので、一億画素の力が感じられた。
そして、筆者が驚いたのはボディ内手ブレ補正を搭載したことだ。これまでの、ハッセルブラッドのカメラには中判では手ブレ補正を搭載したカメラはなかった。しかし、X2Dになってついにボディ内手ブレ補正を搭載した。
しかも5軸で7段分の補正を実現している。初めての手ブレ補正がなんと7段分の補正ができるとは驚きだ。実際に1億画素ともなると手ブレ補正が重要な要素になる。実際に試すと1/8秒は余裕で止められた。中判撮影は1/60秒を切ると基本ブレていたが、低速での撮影もこなせるのは革命的だろう。
Hasselblad X2D 100・XCD 2,5/55V
絞りF2・1/70秒・ISO64
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雨上がりの公園で印象的な葉があったので撮影。逆光の難しいシーンだが、階調が豊かでハイライトからシャドウまでしっかりと表現できている。1/70秒だが、手ブレすることなく撮影できた。
Hasselblad X2D 100・XCD 4/21
絞りF22・1/20秒・ISO64
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1/20秒で撮影。被写体がブレるほど低速のシャッタースピードだが、手ブレはしなかった。1/20秒で一億画素は勇気がいるが、X2Dであればまず手ブレしない印象だ。
ISO感度に関してはISO64始まりでISO25600まで上げられる。高感度性能も優れておりISO6400でも十分実用できる印象だ。ちなみに、Hasselblad Xシリーズのレンズはレンズシャッターになっているため、シャッタースピードの最高速度が1/2000秒になっている。最新のXCD 2,5/90Vのみ、1/4000秒まで対応できる。とはいえ、フォーカルプレーン機に比べるとシャッタースピードのリミットが1/2000秒になるので、最低ISO64にできるのはありがたい。そこそこ明るいシーンでも1/2000秒あれば絞り開放などでも撮影することができる。
また、連写に関しては、中判カメラなので連写はそこまで考えられていない。しかし、X2Dは14ビットRAW記録にすると3.3枚/秒で撮影できる。決して高速ではないが、少しの連写は可能だ。
さらに筆者が嬉しかったのは記録媒体になんと内蔵のSSDを搭載している点だ。容量は1TBととんでもなく大きな容量なので、購入してから一度も外部メディアを使っていない。撮影した画像はパソコンとカメラをUSB-Cケーブルで接続することで簡単に画像にアクセスできる。もちろん、メディアも使える。使用メディアはSDカードではなくCFexpress Type Bカードを採用。画素数もあるので高速メディアに対応しているのはありがたい。
X1DはコントラストAFのみだったがX2Dは位相差AFとコントラストAFのハイブリッド。最大294の位相差を検出できるので精度が高く高速だ。良い意味、普通のミラーレス機のAFになった印象だ。機敏にAF撮影ができるようになったので、スナップなどにも活用している。
画質については撮って出しのJPEGも十分綺麗。HNCSというハッセルブラッド ナチュラルカラーソリューションにより自然な色味になる。ハッセルブラッドにはいわゆる仕上がり設定などはないので、色調整したい場合は純正のRAW現像ソフトPhocusなどを使ってRAW現像時に自分色を表現する。今回、作例は撮って出しのJPEGだが十分なクオリティーであることが分かるだろう。RAW現像すればさらに追い込むことができ、RAWデータも情報量が多いので安心感がある。
Hasselblad X2D 100・XCD 2,5/55V
絞りF4・1/640秒・ISO64・−0.667EV補正
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水に沈んでしまったコテージを撮影。バブルの名残かなんとも言えないさみしさが感じられる。ハッセルブラッドの色は美しく空の青や草の緑まで鮮やかに表現できている。
Hasselblad X2D 100・XCD 4/21
絞りF4・1/580秒・ISO64・−0.667EV補正
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21mmの超広角で撮影。17mm相当の画角で新宿を撮影した。超広角でもボケが大きいが、ピント位置のディテールはさすが中判だ。大きなセンサーは表現も豊かだ。
今回、様々なシーンをX2D 100Cで撮影したが、本当によく出来ているなと感じた。長年ハッセルブラッドXシリーズを使っているが、これほどまでにストレスが少ないと、しっかりと被写体に向き合えるので購入して正解だった。レンズも充実しており、用途に合わせて超広角から望遠までカバーできる。高画素機ではあるが、旅やスナップでも十分使用でき、風景撮影などでは次元の違う写りを楽しめるはずだ。興味のある方は是非店舗に来ていただきたいと思う。
Photo & Text by 上田晃司(うえだこうじ)