Panasonic（パナソニック）のマイクロフォーサーズ機「LUMIX（ルミックス） GH6」を持って箱根へブラブラと出かけた。LUMIXのGHシリーズというと動画性能がクローズアップされるが、実は静止画性能も素晴らしいものを持っているのだ。今回はその写りを試すべくF2.8-F4.0のズームレンズ3本、

LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.

と、F1.7の明るい超広角レンズ

LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.

をバックパックに入れて台風が接近しつつある景勝地に向かった。

「LUMIX GH6」はイメージセンサーと画像処理エンジンを刷新。有効画素数2521万画素の新開発Live MOSセンサーはローパスフィルターレス設計で高精細な描写を獲得し、「LUMIX GH5」より約20パーセント以上の画素数向上を図りながら、滑らかな階調や高い感度特性をも実現している。

処理能力が約2倍に向上した新世代のヴィーナスエンジンは、高画素化されたLive MOSセンサーのデータを高速に処理し、ノイズの低減やオートフォーカススピードの精度と速度、被写体認識などを大幅にアップした。実際に撮影してみると確かに被写体の認識やオートフォーカススピード向上を体感できた。

旧街道沿いの畑宿で見かけた寺社は歴史を感じさせる佇まいだった。

有効画素数2521万画素となった新開発Live MOSセンサーの描写は実に豊かだ。古ぼけた寺社の様子をリアルに解像している。剥がれかけた塗装や浮いた錆などとても鮮明である。マイクロフォーサーズの絵もここまで来たか、という印象だ。「新インテリジェントディテール」と「新2Dノイズリダクション」の立体感とノイズ処理は優秀だ。

強羅で箱根登山電車からケーブルカーに乗り換える。
その時に接近してくる様子を「LUMIX GH6」で連写した。

接近してくるケーブルカーを撮りもらしなく正確に合焦しつつ高速連続撮影できた。また有効画素数2521万画素の新開発Live MOSセンサーは精細度が高く、運転士の表情や車体のディテールもリッチに捉えられた。動体でもほぼカメラ任せで正確なピント合わせができそうである。

日ごろの行いが悪いせいかロープウェイは展望がイマイチだった。
揺れるゴンドラ内でも手ブレ知らずである。

ロープウェイに乗った。こういうシチュエーションでは超広角レンズの「LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.」が役に立つ。引きがない狭いゴンドラ内でもきっちりと窓枠を入れて撮ることができた。また「LUMIX GH6」の「リアルタイム認識AF」によってしっかりと「頭部認識」し、後ろ向きの乗客にも確実にフォーカシングできたのがスゴい。旅のワンシーンも撮り逃すことがない。

（共通データ）Panasonic（パナソニック）LUMIX GH6・LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.・8mm（35mm判換算16mm相当）で撮影・絞りF8.0・1/125秒・ISO100・WB太陽光・JPEG

大涌谷は霧というか雲で真っ白。
温泉地独特の匂いの中、1億画素とノーマル撮影を試した。

手持ち撮影が可能な約1億画素ハイレゾモードも面白い。センサーをシフトさせてカメラ内で画像合成をして超高画素を作り出す仕組みだが、手ブレの画像ズレを利用して手持ち撮影を可能にしたところが興味深い。三脚使用が制限されている場所や、どうしても携行できない撮影などで心強い機能だろう。大涌谷を撮ったカットだが、さすが1億画素、ディテール感が素晴らしい。11552×8672ピクセル［4：3］は伊達じゃない。岩やパイプの描写が見事だ。

芦ノ湖もどんよりとして色がなかった。
こういうときはモノクロームモードの出番だ。

芦ノ湖に出た。台風接近のせいかどんよりとした雲が流れている。ここはフォトスタイルの「L.モノクロームD」の出番だろう。LUMIXの定評ある「フォトスタイル」は好みの色味や画質（コントラストや彩度など）の調整ができる機能である。カラーとモノクロ全14種類も搭載されているのできっと気に入ったスタイルが見つかるはずだ。自分はフルサイズ機「LUMIX S5」でも愛用しているこのダイナミックなモノクロームが好みなのだ。

生憎の天候だったが波止場ではわずかながら観光客の姿があった。
涼しいというか肌寒い湖畔であった。

「LUMIX GH6」はチルトフリーアングル構造の背面モニターを採用している。これはいわゆるバリアングルスタイルとチルトスタイルを融合させた画期的なもので、好みや撮影スタイルに応じて使い分けることができる。自分は常に背面モニターが光軸上にないと落ち着かないタイプなのでこれはうれしい。観光船に乗り込む人たちをローアングルで撮影したが、このスタイルならば水平が取りやすいのだ。採用されている約184万ドット3.0型タッチパネル液晶は視認性も高くタッチ操作の反応も上々であった。

湖面を進む芦ノ湖名物の海賊船。
船内で飲むビールは旨いのでオススメ。

EVFの使い心地も快適だった。約368万ドット・0.5型の有機ELを使ったファインダーは光学式ファインダーのように自然な見え方で疲れ知らず。きっちりとフレーミングを決める際にもその高精細さと約100パーセントの視野率が役立った。大型のアイカップも余計な外光をカットしてくれるので心強いはずだ。

ロープウェイでは家族連れと一緒だった。
父娘の会話が興味深かった。

「LUMIX GH6」はやや厚めのボディだ。動画撮影時のボディ冷却性を高めるため、ファンを搭載しているのと独自の放熱構造をもっているためだ。それに伴って握りやすい大型のグリップを採用している。これがホールド感向上に大きく寄与しているのだ。右手小指が遊んでしまうグリップの小さいフルサイズミラーレス機に見習って欲しいところである（笑）。この安定感と5軸7.5段もの補正効果を誇るボディ内手ブレ補正（B.I.S.）や「Dual I.S. 2」とで手ブレ知らずである。揺れるロープウェイ内でも安心してシャッターが切れた。帽子のステッチや素材の質感など、驚くほどクッキリと撮ることができた。

湖畔にあるレトロなホテルで一泊した。
新型コロナウイルスの影響で静かかつ空いていた。

手ブレ補正機能がよく効くのでシャッターを切る回数が激増する。写真を撮るのがとても楽しくなるのだ。高感度特性も向上しているので、ちょっと絞り込んでの室内カットもラクラクである。明るいシーンはもとより、低照度のシチュエーションでもシャッターボタンを押すのが快感になってくるほどだ。

海賊船は海外からの観光客が結構いた。
日本を楽しんでいって欲しいなと思った。

パナソニック「LUMIX」シリーズの使い勝手は定評がある。撮影者の意図をストレートにカメラに伝えてくれるからだ。ボタンやレバーなどの配置、その節度感など非常によく練られていると感じる。今回旅に持ち出してみてそれを実感できた。AFポイントを移動させるジョイスティックの機能や、「押している間」と「押したあと」など設定の操作感を変更できるホワイトバランス、ISO感度、露出補正の3連ボタンなど、実に撮影をスムーズに行うことが可能だった。使えば使うほど手に馴染んでくる道具になるに違いない。

記録メディアはCFexpress Type BカードとSDカードだ。それぞれ1枚ずつをスロットに挿入できる。高速で信頼性の高いCFexpress Type Bカード採用によって、特に動画撮影での領域が拡大した。5.7K 30p ProRes 422 HQなど高ビットレートの映像でも外部レコーダーなしに直接カードに収録できるのだ。まさにプロ向けの仕様と言える。SDカードとともに実績のあるメモリーカードを使いたいものだ。

大涌谷を行くロープウェイ。
強風が吹くとゆらゆらと大きく揺れていた。

左右からやってくるゴンドラを撮影。8方向に移動可能なジョイスティックで315点フルエリアAFを使って撮るもよし、完全にカメラに任せてオートで撮ってもよしと懐の深いカメラだと感じた。高性能な手ブレ補正機能のおかげでEVF内の像がピタッと安定しているので動体もとても撮りやすかった。

早雲山駅には山々を見渡せるカフェがあった。
淡い青空をフレームに収めることができた。

測光も「LUMIX GH6」は優秀だ。明暗差が異なるシチュエーションでも思い通りの明るさに露出制御をしてくれた。超広角レンズ「LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.」でも安心してシャッターを切れた。もし露出補正が必要でも適切に配置された露出補正ボタンがあるので調整しやすい。

箱根旧街道の石畳。ここを歩くのは結構大変である。
昔の人はすごいなあと思いながらシャッターを切った。

有効画素数2521万画素の新開発Live MOSセンサーと新世代のヴィーナスエンジンは心強い。箱根旧街道の石畳を絞って撮ったカットだが、ISO 3200でもやや湿り気があり歴史を感じさせる雰囲気を確実にキャプチャーできた。トーン表現もノイズ処理も大幅に進化した印象を受けた。

芦ノ湖の朝。
柔らかな光の中、静かな一日がはじまろうとしていた。

今回は3本のズームレンズと1本の超広角レンズとともに箱根を巡ったが疲労感をおぼえなかった。たしかに「LUMIX GH6」自体はそれほど小さくない。しかしレンズがフルサイズと比較すると格段に小さくて軽いのだ。35mm判換算16mmから400mmまでF2.8～4.0までカバーできるのにカメラ用のバックパックも小さいもので済んだほどだ。それでいてこの「LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.」のように高い描写性能を見せてくれるのだから心が動いてしまうではないか。

当然ながら「LUMIX GH6」は動画性能もずば抜けている。静止画撮影のついでにパッと撮ってみたが、クリアで深いトーンの映像を気軽に手にできた。手持ちでもラクに撮れるが、トライポッドグリップ（DMW-SHGR1）があれば簡易三脚にもなるしVlog風撮影も可能になる。小型軽量なのでカメラバッグに忍ばせておくのもいいだろう。

動画性能に注目が集まる「LUMIX GH6」だが、静止画性能も高いことを確認した。優秀なライカレンズシリーズと組み合わせてフットワークよく旅の記録を快適に撮影できた。やはりマイクロフォーサーズは機材が軽くコンパクトに済むので疲れ知らずだ。ブラブラと旅に出るカメラとしてはもってこいだろう。写りも新開発の有効画素数2521万画素Live MOSセンサーの描写が美しく印象に残った。使い勝手も良好で、これから静止画も動画もしっかりと撮れるマイクロフォーサーズ機を検討している人に試してもらいたいカメラに仕上がっていた。