SONY(ソニー)の第二世代となるGマスターの大口径標準レンズ FE 24-70mm F2.8 GM II を、フォトグラファー山下大祐さんにレビューしていただきます。
光学性能だけでなくフラッグシップ機α1の超高速オートフォーカスにレンズの駆動スピードが対応しているかなど、プロカメラマンならではの視点でレンズの魅力に迫っていただきました。
フォトギャラリーに載せていただいた作例は、光の捉え方、構図、ボケの活かし方、流し撮りなどのテクニックまで、鉄道ファンだけでなく写真を趣味にしていれば参考になるものばかりなので、是非最後までご覧ください。
はじめに
高速なオートフォーカス駆動が、リアルタイムトラッキングを100%活かす
I型と比較して少ない周辺光量落ち、自然なボケ味
ズームレンズでは最高峰と言っていい解像性能、広角ではF5.6で画質がピークに
カメラの性能を引き立てる暗部再現力、I型以上の逆光耐性
歪曲収差はテレ側がやや強いか
I型と明らかに変わった!小型化と軽量化
フィルターの操作を考慮したフード
操作しやすい位置に、クリック感をOFFにする事ができる絞りリングが装備された
ズームリングの重さが選択可能
フォトギャラリー:SONY FE 24-70mm F2.8 GM II 南海電車でスナップ旅
まとめ
SONY(ソニー)の35mmフルサイズ用ミラーレス用レンズは、他社に先駆けて早い時期からラインナップを拡充してきた。なかでもG MASTER(Gマスター)はソニーレンズの最高峰を謳うシリーズとして2016年に登場したブランドだ。ズームから単焦点までひと通り出揃ってきた近年、Gマスターもいよいよ2世代目への代替わり時期に突入し始めた。
今回、開放F2.8通しの標準ズームFE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]の発表で、その時流は色濃くなってきたが、先代のFE 24-70mm F2.8 GM[SEL2470GM](以降、I型)発売がブランド立ち上げと同時期の2016年4月であるから、約6年ぶりのブラッシュアップということになる。近年のデジタルカメラボディのモデルチェンジサイクルに比べればだいぶ長く感じるが、それでもひと昔前までカメラレンズというのは8年程度は空いていた。そうすると果たしてモデルチェンジでの違いを実感することができるか、不安と楽しみの入り混じった試用が始まった。
いよいよ発売となったフルサイズEマウント標準ズームの最高峰。オレンジ地に「G」マークがGマスターの証。
今回、メインの一枚として通称「モノサク」と呼ばれる有名撮影地でインカーブから空を見上げて撮る編成写真を撮影した。普段なら置きピンで安全に撮るところであるが、FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]ではα1[ILCE-1]の30コマ/秒の高速連写をAF追従で実現しているというから、それならとあえてAFでピントを追従させてみた。
画面内を左右に移動するため、フォーカスモードは「リアルタイムトラッキングAF」を使用、画面奥で列車の顔を認識させて追従させる方法だ。AI技術が進歩しカメラのトラッキング能力がいくら高くなろうとも、実際に光学を動かすレンズが追いついてこないことにはピントは合わない。ここでは撮影距離が比較的近くなるため、AF機能にはかなり厳しい条件かと覚悟していたが、撮影画像をコマ送りして、いやいや驚いた。ちゃんとトラッキングの通りにレンズのフォーカスが追いついている。特急列車や普通列車の車両を問わず、望遠レンズの遠い撮影距離で追従しているのと同じくらいの安定した成果を見せてくれた。フローティングフォーカス機構やXDリニアモーターなど、物理駆動部に盛り込んだ新機構の成果はたしかに体感することができた。何にしても標準レンズにおいてAFを信頼して編成写真が撮れるということは、実はすごいことである。少なくともI型ではなし得なかったことだ。
「モノサク」では新鋭のE235系横須賀色をシュート。画面中央付近で被写体を捕捉し、トラッキングAFと30コマ/秒連写で撮影した。置きピン目標となる線路が見えない状況でもAFを信じて大丈夫だった。
画面奥で列車の顔に白枠が重なったらAF開始。その絵柄を覚えたカメラが緑枠を追従させるというもの。カメラと連携して光学部を動かすレンズの役割も重要。
大三元の本当の実力は、開放F2.8での描写にあると思う。せっかくの大口径、しかも35mm判フォーマットなのだから、開放値に満足できないのはかなり残念なことだ。そこで今回は列車の走りのカットも、開放での撮影を試してみた。テレ端を使い、極力撮影距離を近づけることで被写界深度を浅くして撮影。鑑賞サイズによってはピントの浅さはそれほど目立たないかもしれないが、注目は四隅の光量落ちの具合。I型よりも随分と目立たなくなったというのが私の印象だ。当然そこから少し絞ると露光が全体に均一になっていく。ボケ描写もクセがなくボカせるだけボカしたくなる写りである。
開放で走りの写真を撮ってみた。四隅の光量落ちが開放とは思えないほど少ない。ちなみにこれもAF撮影だ。
SONY(ソニー)α1・FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]・70mmで撮影
絞りF2.8開放・1/3200秒・ISO100・WBオート[総武本線 物井〜佐倉]
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ボケは自然でクセのない印象。近接撮影もI型からの進化が顕著で、最大撮影倍率は0.32倍である。
解像性能については、Gマスターブランドに格付けされているだけあって、非の打ちどころのない優秀さである。Web上の作例ではすべてをお伝えすることはできないが、ズームレンズでは最高峰の解像性能であると言っても過言はないだろう。
その上で、あくまで作例のようにワイド側での使用感ではあるが、ピントが合ったところの解像感はF8以上よりF5.6のほうがシャープに見えた。もちろんズーム域やピント位置などでも変化はあると思うが、F8で回折現象を無視できないということである。被写界深度を気にしなくていいようなワイドな風景カットであれば、F5.6付近を使いたいと感じた。
SONY(ソニー)α1・FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]・30mmで撮影
絞りF5.6・1/2500秒・ISO400・WBオート[総武本線 物井〜佐倉]
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つい絞り込みたくなる風景カットもF5.6で十分すぎるほどシャープ。むしろ意図がなければこのくらいに留めた方がいいかもしれない。露出に余裕が出る分だけISO感度を下げよう。
私の撮影の傾向としては、ハイライト部の露出を基準にすることが多く、暗部はカメラのダイナミックレンジをある程度信頼して撮影している。FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]においてもその感覚で撮って、十分に暗部に情報を残すことができた。画面中で最大黒と最大白が及ぶ面積にさえ気を付ければ、だいたいは現像で思うような階調に仕上げることができるのである。そのほか、ナノARコーティングIIの採用により、I型以上の逆光耐性となっている点も心強い。
SONY(ソニー)α1・FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]・42mmで撮影
絞りF13・1/500秒・ISO400・WBオート[神戸新交通ポートライナー 計算科学センター〜神戸空港]
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神戸空港のフェリー乗り場からポートライナーを背景に入れ込んだ。フルサイズαの得意とする輝度差の大きな画に対しても、従来通りしっかり質感を取り込んでくれている。
きちんとチャートを撮ったわけではないので実感の話だが、ワイド端24mmのタル型収差よりもテレ端70mmの糸巻き型収差が目立った。とはいえ現像ソフトで調整できる程度なので、直線で構成されているものを撮影する場合は画面周辺を少し広めにフレーミングするなど気を配ったほうがいいだろう。
特急電車の保存車両をグラフィックデザインっぽく切り取ってみた。画面右端に入れたタイルの壁に歪曲収差が表れている。デザイン性を突き詰めるならソフトウェアでの補正をしたいところ。
こちらは37mmの作例だが、ワイド側の歪曲収差はよく補正されているように思えた。
実際にレンズを現場まで持ち運ばなければいけない撮影者にとって、レンズの大幅な小型化、軽量化は、実は何を置いても喜ぶべきところ。私もレンズを手に取った瞬間、はかりに乗せるまでもなく「軽くなった」ことを実感できた。その実なんと約191gも(本機約695g、I型 約886g)。同じスペック値のレンズなのに約20%も一気に軽くなったということは、構成レンズの枚数を減らした設計変更があったに違いないと思って仕様をみると、枚数ではI型の18枚から20枚に増えているではないか。たしかにAFの駆動機構が一新していたり、そもそも体積比で小さくなっていたりと、軽量化の要因は様々あるのだろうが、レンズ枚数を増やしながら軽量化を実現していることは目から鱗だった。
また鏡筒を掌に持つときの感覚で「細くなった」ということも実感できる重要なところ。撮る瞬間より、カメラを持って歩く時やレンズの脱着の時に扱いやすくなった。というよりこれに関しては、I型がややゴツかったというのが実勢に近いのかもしれない。
レンズ群の基本的な組み合わせを変えずに、ここまで小さくできるなんて。このあと出てくるGマスターレンズについても期待せずにはいられない。
FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]のフィルター径はI型と同じ82mmが採用された。しかしフードの前後長が若干短縮され、装着時でもPLフィルターなどを回転させることができるスライド蓋の付いた開口部が設けられた。おそらくI型でのリクエストが多かったのだろう。便利だがそのついでにいつも密かに思うのは、フード装着時にフィルターの脱着をもできるようにならないかということ。まあそれは高望みだろうか。
フードには可変NDやPLなどの操作を考慮したフィルター窓が備わった。
こういう順光の青空にはPLフィルターが効く。当然だが、フィルターの脱着はフードを外した状態で行う必要がある。
FE 70-200mm F2.8 GM OSS II[SEL70200GM2]などでも採用された絞りリング。AEがまだなかった頃のカメラレンズには当たり前のように付いていた機構が、ここにきて復活しているというのも面白いところ。しかし重要なのは、絞り操作のクリック感をOFFにできるという点にある。お察しの通り、この絞りリングの装備は動画撮影中にシームレスに絞りを変化させるためにある。レンズ付け根ではなく鏡筒の太い箇所にリングがあるのも、リグが組みやすいようにとの配慮であろう。そしてこれをスチルで使い道を見出す人もいないわけではないだろう。カメラを構えながら指先で扱うにもなかなか良い位置にある。
新たに備わった絞りリング。ズームリングとの間に段差があり、手探りでもわりと操作しやすい。
標準ズームレンズでは珍しい機能として、ズームリングの重さが2段階から選べる。つまりズームリングの回転にトルク感をつけることができるということだ。前玉が重い望遠ズームレンズなどでは、不用意な鏡筒の繰り出しを抑える機構として便利に感じているが、FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]ではあまり“TIGHT”を選択する機会は少なく、試用中はほぼ “SMOOTH”一択で不自由はなかった。
レンズ右手側にはズームリングのトルク感を変えるSMOOTH/TIGHT切替スイッチ(写真右)と、絞りリングのクリック感のON/OFFスイッチ(写真左)が備わる。いずれもI型にはなかった機構だ。
ズーム間流し撮りにもズームリングの重さはSMOOTHが適当。ちなみにI型のズームリングの重さはFE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]のSMOOTH/TIGHTのちょうど中間くらいだ。
大阪から和歌山・高野山方面をつなぐ鉄道会社、南海電気鉄道、今回は、SONY(ソニー)α1とFE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]を持って、ぶらりと散歩スナップ。大口径標準ズームの小型化・軽量化を受けて、実はこういう使い方こそおすすめしたい。
南海電車の起点、なんば駅で列車を待つ。
電車から素敵なホーム屋根が見えた。気持ちよさそうな風が吹いている。
高野下駅に着く。改札口とホームとの間を線路が横切っている。構内踏切といわれる施設だ。
ひと駅歩くことにする。まっ赤な電車と橋。夏の陽の高い時間。
陽が雲にかくれた。とっさに鉄橋の下へ行き、見上げた空。
列車は小さく緑を大きく、1/13秒で流し撮りする。
九度山駅に着いた。さっき電車から見た屋根が素敵な駅だ。
駅で手作りおにぎりを売っている。
古書も売っている。
駅の休憩室には古い制御盤が展示されている。
おにぎりはお土産にした。
【撮影を終えて】
FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]は、レンズの枚数は増やしながらも、総合的な設計見直しにより驚異の軽量化を実現している。体積比では約18%の小型化だ。AFのスピード、描写はレビューした通りの素晴らしいものであるが、やっぱり最初に手に持った時の軽さの衝撃は驚きだった。性能の担保と軽量化、これを見事に両立させたレンズだ。
SONY(ソニー)α1[ILCE-1]発売=2021年3月19日
新モデルのFE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]発売=2022年6月10日
従来モデルのFE 24-70mm F2.8 GM[SEL2470GM]発売=2016年4月28日
・高いAFトラッキング能力に脱帽!標準レンズにおいても、AFを信頼して鉄道の編成写真が撮れる
・開放F2.8から積極的に使いたい!高い描写性能を発揮
・画面四隅の光量落ち具合も、I型と比べて、大幅に改善
・おいしい絞り値はF5.6で決まり
・従来モデルと体積比で約18%も小型軽量化
・絞り操作のクリック感をOFFにできる、絞りリングの復活
・取り回しの良さと高い光学性能を両立した新定番標準ズーム
【商品情報】SONY(ソニー)FE 24-70mm F2.8 GM II
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