ミラーレスカメラのフラッグシップ機「SONY α1」。その卓越した高速性能と画質、オールラウンドさは、今までは難しかった撮影を簡単にしてくれるレベルです。
今回はそんなSONY α1の性能について、その威力が遺憾なく発揮される野生動物を被写体に、プロカメラマン井上浩輝さんにレビューしてもらいました。
驚くほど高速で精度の高い被写体認識によるオートフォーカス、一瞬の表情を切り取る高速連写、8Kによる超高精細な動画撮影などについて、美しく豊富な作例をもとに、シビアな撮影を数多くこなすプロカメラマンらしい鋭い視点で解説してもらいます。
SONY(ソニー)α1、その高速連写の実力
30コマ/秒を支える周辺の機能や性能
撮影データ処理と操作系のサクサクチューニング
30コマ/秒の高速連写性能を最大限に引き出すレンズ
最大120回/秒の演算によるAF/AE追随
EVFや背面モニターはより自然に滑らかに
動画撮影機材として
8Kの恩恵
動画撮影モードと静止画撮影モードの切替えが素晴らしい
写真撮影と動画撮影の垣根がなくなりはじめている
α1を使うということ──最善を尽くすことができるはず
作例に使用したカメラ
SONY α1
作例に使用したレンズ
SONY FE 24-70mm F2.8 GM II / FE 70-200mm F2.8 GM OSS II / FE 400mm F2.8 GM OSS
まとめ
きつねのひと | 写真家 | 早稲田大学非常勤講師
風景写真の撮影をする中、キタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになり、米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』のネイチャー部門において、日本人初の1位を獲得。写真は国内のみならず海外の広告などでも使用され、最近は、SONYや AIR DO などの企業と提携しながら撮影をしている。その活動は毎日放送『情熱大陸』やTBS『金スマ』などで紹介されている。早稲田大学基幹理工学部非常勤講師。
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歩いてこちらに向かってくる子ぎつねを撮るとき、その足先の爪も見える力強い瞬間を得たいものです。
かつて、10コマ/秒や20コマ/秒のカメラを使っていたときは、連写をしてもなかなかうまくその瞬間を得ることができなかったものですが、30コマ/秒となれば、連写したカットの中にバッチリ写ります。
SONY α1・FE 400mm F2.8 GM OSS[SEL400F28GM]
絞りF2.8・1/640秒・ ISO125[6月撮影]
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また、α9シリーズから実現されているブラックアウトフリー撮影というのも撮りやすい。「撮りたい」瞬間をしっかり写し止めるためにも、何が起きるかまったくわからない一連の中から「まさか」の瞬間を写し止めるのも、α1が有する30コマ/秒の高速連写性能による恩恵と言えるでしょう。
ブラックアウトすることがないため、連続撮影中もまるで肉眼で被写体を捉えているかのような感覚でシームレスに被写体を捉えながら撮影可能。
α1といえば、なんといっても30コマ/秒の高速連写性能を思い浮かべるものです。
これは、単に30コマ/秒のシャッターが切れるというだけでなく、それに対応したレンズ性能、AE/AFの追随、撮影データ処理と操作系のチューニング、EVF(電子ビューファインダー)や背面モニター表示のタイムラグ低減など、周辺の様々な機能や性能を知ると、それらが相まってはじめて実現されていることに気づかされます。
高速連写後や高画質録画後のデータの処理が効率化されただけでなく、操作系のシステムの高速化のチューニングがうまくされているので、α1ならではの“これでもか!”という連写した後でもサクサクとカメラの設定を操作したり再生ができるようになっていることを感じます。
α1が誇る30コマ/秒の高速連写性能を享受するためには、SONY純正のGレンズおよびGMレンズが必須となるようです(一部例外あり、詳細はSONY公式α1紹介ページを参照)。
私が使用している様々なレンズのなかで、FE 400mm F2.8 GM OSS [SEL400F28GM]、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II[SEL70200GM2]は、α1の高速連写性能との関係で特に素晴らしい相性を持っている印象があります。
SONY α1・FE 400mm F2.8 GM OSS[SEL400F28GM]
絞りF2.8・1/640秒・ ISO125[2月撮影]
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手前に向かってくるシーンでは、正負それぞれの加速度を持って複雑にレンズとの距離を作りながら奥からこちらへ向かってくる顔の瞳が迫ってきます。この瞳に完璧といっていいような合焦をさせるためには、レンズ側にも超高速なAFが必要になります。
SONY α1・FE 70-200mm F2.8 GM OSS II[SEL70200GM2]
絞りF2.8・1/1600秒・ISO125[6月撮影]
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毛糸のパンツのような“おもちゃ”を手に入れてよろこび走りまわる子ぎつねを撮影したときも、ビシッとその瞳にピントが合っています。
手前に向かってくるだけでなく、振り回したり他の子との関係で急に向きを変えたりするというような、いっそう複雑な条件では、α1側のAF速度が高速でもレンズが対応していなければ、その高性能さを十分に発揮できないものですが、4つのXDリニアモーターによって超高速にAFを駆動させて、このような瞬間を捉えさせてくれます。
このFE 70-200mm F2.8 GM OSS II[SEL70200GM2]の話をもう少しすると、ものすごく軽いのです。現モデルになったときに前モデルのFE 70-200mm F2.8 GM OSS[SEL70200GM]から400g以上の軽量化をしてくれているので、俊敏に動き回る被写体の前での機動力がとても高くなり、それが成功カットの大幅な増加をもたらしてくれるようになりました。
α1と組み合わせて使用するには、最高のレンズのひとつと言えるでしょう。
せっかくなので、もう一本、α1と組み合わせる素敵なレンズを紹介しましょう。2代目になった標準ズームレンズのFE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]です。近ごろリリースされるGMレンズは、AFの高速化、大幅な軽量化、まるで単焦点レンズのような高画質化が特徴ですが、このレンズもその例にもれず素晴らしいレンズです。
子ぎつねたちを撮ろうと長い望遠レンズをつけたα1で地面にはいつくばってばかりいて、頭を上げたときに目の前に広がる素敵な風景を「高画質のα1で撮っておきたい!」というときに最高のレンズなのです。
SONY α1・FE 24-70mm F2.8 GM II[SEL2470GM2]
絞りF11・1/160秒・ ISO100[6月撮影]
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1秒間に120回もの測距と測光をしてくれることには、おどろきました。指定した箇所や人間や動物の瞳にマークされるAFカーソルが、ファインダーの中で意思のある生き物のように追従していく様子にぎこちなさはなく、あまりに自然な雰囲気でため息が出ます。
また、急激な輝度変化にも素早く対応してくれるので、藪の中を行くキタキツネの顔に影と朝陽が交互に落ちたり射したりするようなシーンでも遅滞と違和感なく露出がバシっと決まってくれます。ちなみに、このAEの反応レイテンシーは、公称値で0.033秒とのこと(SONY公式α1の紹介ページによる)。あまりにすごすぎます。
SONY α1・FE 70-200mm F2.8 GM OSS II[SEL70200GM2]
絞りF2.8・1/4000秒・ISO400[6月撮影]
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“30コマ/秒の高速連写”や“最大120回/秒の演算によるAF/AE追随”機能があっても、素早く動く被写体を連写中、ファインダーやモニターの表示にタイムラグが出てしまうと、とても被写体を追いかけきれなくなって、結果、失敗カットが増えてしまうものです。
この点、α1のEVFの最大リフレッシュレートは240fps。圧倒的に滑らかです。そのうえ残像も少なくて、素早く動く被写体を捉えやすくなりました。
かつて、α7R IIを手にして4K動画の録画ができるようになったとき、その精細さに感動して麦の穂が揺れる様子やきらめくダイヤモンドダストを撮影して歓喜していました。
そして今、α1によって8K30Pの動画を録画できるようになりました。8K対応のテレビがまだ少ない現状で「8K動画なんてどうやって見るの?」なんて声が聞こえてきそうでもありますが、それでもすごいのです。4Kを超えるPCモニターで見ればそれは一目瞭然、そこに圧倒的な臨場感とリアリティが広がります。
また、画素数の多い8Kで撮影した動画を編集時に大きくトリミングして最終的に4Kの映像作品を作るということもできます。フィックスで撮影した映像に少し動きを出したいときや望遠レンズの距離が足りないときに大きな利点があります。
もっとも、撮影してきた動画ファイルの再生や編集には大きなマシンパワーが必要になりますが、その点さえ乗り越えることができれば、α1の大きな画素数がもたらす恩恵の大きさはとても大きなものと言えるでしょう。
静止画の撮影でも動画の撮影でも素晴らしい性能で様々な恩恵をもたらすα1。なかでもうれしい機能に、静止画撮影モードのときの設定が、動画撮影モードの設定に影響を与えないというものがあります。
例えば、動画撮影の際のシャッター速度は1/30~1/120秒という静止画撮影のシーンからは遅めの速度を使うわけですが、旧世代機では1/1000秒のシャッター速度で静止画を撮影しているときに「あ!これは動画で撮っておきたいぞ」と思って動画撮影モードに変更すると、シャッター速度が1/1000秒になったままでした。絞り値やその他も同様です。
そのため、その都度、様々な設定をし直さなければなりませんでした。
この点、α1は、静止画と動画の撮影モード間で設定を引きずることなく、それぞれのモードで前回使用したときの設定を記憶していてその設定が呼び出されるのです。これによって、多くのチャンスを失わずに済むようになりました。
こちらの写真を見てみてください。キタキツネの親子の素敵な時間が写っています。
子ぎつねの近くでお母さんぎつねがすっと座ったのを見て、「もしかしたら素敵な時間がはじまるかもしれない」と思ってとっさに動画撮影モードにして8K動画を撮影しはじめました。この写真は、その動画からの切り出しなのです。
8K30Pの10bit(4:2:0)(※1) 動画から切り出したときの静止画は、約3300万画素の7680×4320ピクセル。そこから3:2の2200万画素の5784×3856ピクセルにトリミングをしています。
動画からの静止画切り出しには、シャッター速度の制約はありますが、被写体が大きく激しく動いていないときには、「写真」として使用できるものになりつつあることを感じます。動画のデータから「写真」として使う瞬間をまるでシャッターを切るように切り出すという時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。
SONY α1・FE 70-200mm F2.8 GM OSS II[SEL70200GM2]
絞りF3.2・1/125秒・ISO125[6月撮影]
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SONY(ソニー)のαシリーズの最高峰に位置づけられているα1。その「1」という名前が語る高性能さは、素敵なカットへ近づくために準備に準備を重ねてα1を手にして撮影に臨むとき、「最善を尽くすことができるはず」という気持ちにさせてくれます。
こんなことを言うと、技術の話から精神性の世界の話になってしまいそうですが、そんなパワーを秘めているカメラが、“THE ONE”ことα1だと思うのです。
※1 6月14日のファームウエアアップデートで、「XAVC HS 8K記録時に4:2:2 10bit の選択可能」になりました。
https://support.d-imaging.sony.co.jp/www/cscs/firm/?mdl=ILCE-1&area=jp&lang=jp&ref=update
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Photo & Text by 井上浩輝(HIROKI INOUE)