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2023.12.26
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SONY α7C II レビュー× 鹿野貴司|AF性能は上位機を凌駕!コンパクトな万能フルサイズミラーレスカメラ

SONY α7C II レビュー× 鹿野貴司|AF性能は上位機を凌駕!コンパクトな万能フルサイズミラーレスカメラキービジュアル


ライター鹿野貴司イメージ
■フォトグラファー紹介

鹿野貴司

鹿野貴司(しかの・たかし)
1974年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、さまざまな職業を経て写真家に。広告や雑誌などを手掛けるかたわら、スナップやドキュメンタリーの作品を精力的に発表している。近年の写真展に「#shibuyacrossing」(ソニーイメージングギャラリー)、「煩悩の欠片を燃やして菩提の山へ走れ」(ナインギャラリー)など。昨年9月には『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)を出版。日本写真家協会会員。
Instagram:@shikanotakashi
Twitter:@shikanotakashi

まずは外観をチェック

SONY α7C II 本体:前

α6000シリーズのような、あるいはレンジファインダー機のような、トップがフラットな形状をもつα7C。「世界最小・最軽量のフルサイズミラーレス」も発売から3年が経ち、待望の後継機・α7C IIが登場した。高画素モデル・α7CRも同時に発売されたが、価格を考えるとこちらの購入を検討する人が多いのではないかと思う。というわけで今回はまずα7C IIを、そして後日α7CRもレビューを公開する。

ソニーはフルサイズミラーレスを7つのジャンルに分けているが、α7C IIはその中のCompactシリーズにカテゴライズされる。ファインダーを内蔵しているものの、天面は出っ張りがないフラットな形状ゆえ、バッグなどへの収納性がよい。通勤時にもカメラを持ち歩くといった、アクティブなユーザーにおすすめのモデルだ。また旅などで一日中持ち歩くといった場面でも、この小ささと軽さがありがたく感じるだろう。

SONY α7C II 本体:アイレベル

α7Cから進化・変化した点は

SONY α7C II 本体:上部

ここはα7Cから進化した点を探ろうと、2台同時に触ってみたのだが、まず感じたのはグリップの変化。最近のα6000シリーズと同様、握りがだいぶ深くなった。厚さを数字で比較すると53.5mmから63.4mmと、1cm近く増している。今回は小型軽量のレンズばかりを使用したが、より高性能な大口径レンズや、全長のある望遠レンズを使うときでもしっかりホールドできそうだ。また貼り革もα7シリーズなどと同じ、シボのあるタイプに変わった。一方でボディの高さ71.1mmと横幅124mmはそのまま。重量もわずか5g増の429gと、小型軽量という特徴は受け継いでいる。

SONY α7C II 本体:バリアングルモニター
SONY α7C II 本体:バリアングルモニターを操作する筆者

ファインダーはα7Cと同じ236万ドット・0.39型OLEDだが、倍率が0.59倍から0.7倍へ向上。背面のモニターがバリアングル・タッチパネル対応なのは変わらないが、解像度が92万ドットから104万ドットに向上している。

SONY α7C II 作例:菓子職人

ソニーα7C Ⅱ・FE 50mm F2.5 G
絞りF2.5・1/50秒・ISO125・AWB・JPEGエクストラファイン

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腕を高く伸ばしてハイアングルで撮影。
ボディが軽いのもありがたい。

SONY α7C II 作例:仁王像

ソニーα7C Ⅱ・FE 50mm F2.5 G
絞りF2.5・1/100秒・-0.7EV補正・ISO800・AWB・JPEGエクストラファイン

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金網に覆われた仁王像だが、網の目からうまく撮れる角度を探してみた。
こういうときもバリアングルが重宝する。

前ダイヤルやシャッター閉幕機能を搭載。動画メインのユーザーにもオススメ

SONY α7C II ・α7Cとの比較:正面
SONY α7C II ・α7Cとの比較:背面

操作面ではα7Cにはなかった前ダイヤルが搭載されている。前ダイヤルがあるα7シリーズと併用する際、前ダイヤルがないα7Cは操作に戸惑いがちだが、本機はα1/7/9シリーズのサブ機としてもよさそうだ。またα7Cではモードダイヤルに含まれていた動画とS&Q(スロー&クイックモーション)が、静止画との切換ダイヤルで選択するようになった。

今回は静止画を主としたレビューだが、動画メインでも本機は大きな魅力があると思う。切換ダイヤルの搭載はもちろんだが、キットレンズのFE 28-60mm F4-5.6や、動画撮影に良さそうなFE 24mm F2.8 Gを装着した場合の重量は700g以下。さまざまなジンバルに載せることができるし、ドローンへの搭載も現実的になる。またα7CではXAVC S 4K・30p・100Mbps・4:2:0・8bitだった最高画質が、本機ではXAVC HS 4K・60p・200Mbps・4:2:2・10bitに向上(ただし4K・60pでの記録はSuper 35mm相当にクロップ)。3段階の「美肌効果」や、ボケ具合を色でわかりやすく表示する「フォーカスマップ」が加わったほか、編集時にパソコンへの負荷が軽くなるイントラ記録も可能になった。

動画メインのユーザーが本機を購入するとなると、同じソニー製のフルサイズセンサー搭載機で、価格も近いVLOGCAM ZV-E1と迷うかもしれない。あちらはメカシャッターもEVFもなく、約1200万画素しかない“静止画も撮れる動画専用機”。もちろん動画しか撮らないのであれば非常に魅力的なカメラだが、ある程度写真も撮るというのであれば、動画メインでも本機を選ぶほうが賢明だと思う。

話を静止画に戻ると、電源オフでシャッターを閉幕できるようになったのもありがたい…といいたいのだが、機材を返却してからその存在に気付いた(初期設定ではオフなのだ)。αシリーズはどんなに気をつけてもレンズ交換を繰り返すことでセンサーにホコリが付着し、写り込みやすいのが難点だった。シャッター閉幕で完全に防げるわけではないが、だいぶ低減はできるはずだ。

SONY α7C II 作例:夕日

ソニーα7C Ⅱ・FE 20-70mm F4 G・70mmで撮影
絞りF5.6・1/800秒・ISO100・AWB・JPEGエクストラファイン

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こういう空を広く写すと、センサーのホコリが写り込みやすい。
この写真は撮影前にセンサーをブロアーで吹いたが、シャッター閉幕を活用すればその手間も減らせるはず

いささか残念な点もあり、この形状のαシリーズに共通しているのだが、AF測距点を右手親指でグリグリと指定できるマルチセレクターがない。今どき十字キーでAF測距点を指定するのもなぁ…と思っていたら、液晶パネルにタッチパッド機能が割り当てられることを思い出した。試してみると右手親指をかなり左側に寄せなければならないが、感度や精度はまずまずだ。また露出補正ダイヤルが、これも最近のαシリーズに共通しているが、カスタマイズ可能な無刻印の電子ダイヤルになった。これは便利になったと思う人が多いのだろうが、僕はカメラを構える前に露出補正をセットしておきたいので、以前のほうがよかったなぁ…と思う。将来的にダイヤルごと交換できるようなサービスが生まれたらいいなぁ(なさそうだが)。

AIの搭載によりAF性能は上位機種を凌駕

AF関連をチェックすると、AF測距点はα7 Ⅳと同じ759点(ちなみにα7Cは693点)。これはフラッグシップ機・α1と同じだ。さらにα7 Ⅳにもα1にもないAIプロセッシングユニットを搭載しており、速くて正確な被写体検出を実現している。α7Cでは人物と動物の2つだけだった検出対象は、さらに鳥、昆虫、車、列車、飛行機が加わった。一見すると携行性重視のモデルに思われがちだが、AF性能に関しては3年前に発売された先代のα7Cはもちろん、兄貴分のα7 Ⅳよりも上というわけだ。

SONY α7C II 作例:スマホと人物

ソニーα7C Ⅱ・FE 50mm F2.5 G
絞りF2.5・1/100秒・-0.3EV補正・ISO500・AWB・JPEGエクストラファイン

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さまざまな状況で撮影をしてみたが、このように遠近に被写体が入り組んだ状況でも、実に気持ちよく「ここだな」と思うところにピントが合う。

SONY α7C II 作例:猫

ソニーα7C Ⅱ・FE 40mm F2.5 G
絞りF2.5・1/80秒・ISO200・AWB・JPEGエクストラファイン

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路地裏で目力の強い猫に遭遇。被写体検出機能の「動物」を使ってみた。
いずれ撮影者が種別を指定しなくても、カメラが判別するようになるのだろう。

SONY α7C II 作例:仲見世

ソニーα7C Ⅱ・FE 50mm F2.5 G
絞りF2.5・1/100秒・-0.7EV補正・ISO500・AWB・JPEGエクストラファイン

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日没後の光が乏しい状況は、カメラの真価が問われる。
一方でスナップが楽しい時間帯でもある。

先にマルチセレクターがないことを憂いたが、一般的な撮影であれば測距点選択はカメラ任せでほぼ問題ないだろう。普段α7R Ⅳ・α7R Ⅲとひと世代前のカメラを使っている僕には、ちょっと羨ましい部分だ。ボディ内手ブレ補正の効果もα7 Ⅳやα7Cの5.5段相当から7段相当にアップ。αシリーズのボディ内手ブレ補正は、ファインダーをのぞいても効いている実感がほとんどなかったが、本機では揺れが軽減され、像が安定しているように感じた。

同時発売のα7CRが気になるところだが…

撮像素子はαシリーズの主力機種であるα7 Ⅳと同じ、約3300万画素フルサイズセンサーと画像処理エンジン・BIONZ XRを採用。α7Cの約2420万画素、BIONZ Xからひと世代新しくなった。ちなみに同時発売のα7CRは画像処理エンジンこそ同じものの、α7R Vと同じ約6100万画素。ここの差が気になる人も多いと思うが、同条件で比較すればたしかにα7CRとは明確な差がある。とはいえその差が生きる場面は限られると思う。A3ノビやそれ以上の大きなプリントでも、フルサイズ3300万画素で不満を感じることはまずないだろう。

SONY α7C II 作例:自動車

ソニーα7C Ⅱ・FE 55mm F1.8 ZA
絞りF1.8・1/125秒・-0.7EV補正・ISO200・AWB・JPEGエクストラファイン

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適度にメリハリがありながら、階調も豊かに再現。
難しいことを気にせずシャッターを切れるのがいい。

反対に本機がα7CRより優れている点は高感度の描写だろうか。画素を抑えているぶん余裕があり、常用がISO100~51200、拡張でISO204800まで設定できる。対するα7CRはISO100~32000、拡張でISO102400なので、およそ1段分のアドバンテージがある。

SONY α7C II 作例:境内

ソニーα7C Ⅱ・FE 50mm F2.5 G
絞りF4・1/100秒・-0.3EV補正・ISO1600・AWB・JPEGエクストラファイン

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ISO1600ではほとんどノイズも感じられない。
α7CRと違って本機ではローパスフィルターを搭載しているが、解像感もかなり高い。

SONY α7C II 作例:夜景

ソニーα7C Ⅱ・FE 40mm F2.5 G
絞りF2.8・1/80秒・-0.7EV補正・ISO8000・AWB・JPEGエクストラファイン

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ISO8000ではさすがにややノイズも目立ってくるが、屋形船や鉄橋を拡大してみると、ディテールがしっかりと残っている。

また連写速度も本機は最高で秒10コマ、α7CRは秒8コマで両機の差を実感しやすい。画質を何より優先するなら迷わず本機よりα7CRを選ぶべきだが、小型軽量なフルサイズ機が欲しいということであれば、価格差やバランスの良さで本機を選ぶのも賢い。そして浮いた予算を交換レンズに回すほうが、楽しいカメラライフを送れると思う。

レンズ選びが楽しくなる。

SONY α7C II 本体:レンズ3本

沈胴式のキットレンズ・FE 28-60mm F4-5.6は侮り難い描写性能を持つが、気楽に持ち歩くなら小さな単焦点レンズもいい。ソニー純正ではFE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gという薄型単焦点トリオがある。本機とのマッチングはもちろん良好で、カメラの軽快さをさらに享受できるはずだ。また17mmから90mmまで9本でカバーするシグマのiシリーズと組み合わせるのもいいだろう。またズームではシグマの28-70mmF2.8 DG DN|Contemporaryや、タムロンの20-40mmF/2.8 Di III VXDといった、コンパクトながら明るさや高画質も兼ね備えたレンズもいい。

SONY α7C II 作例:イルミネーション

ソニーα7C Ⅱ・FE 55mm F1.8 ZA
絞りF1.8・1/125秒・ISO1000・AWB・JPEGエクストラファイン

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史上初のフルサイズミラーレスであるα7が登場したとき、一緒に発売されたレンズのうちの一本が、カールツァイスとの協業によるFE 55mm F1.8 ZA。
口径食が大きく、周辺の点光源がレモンのようなかたちになるが、軽さもあって手放せないレンズだ。

SONY α7C II 作例:着物の女性

ソニーα7C Ⅱ・FE 55mm F1.8 ZA
絞りF1.8・1/200秒・-0.3EV補正・ISO100・AWB・JPEGエクストラファイン

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カールツァイスらしく、写りがどこか情緒的なのもFE 55mm F1.8 ZAの魅力。
もっと収差を抑えた後発のレンズはたくさん存在するが、数値だけで評価できないのがレンズの妙味というものだ。

SONY α7C II 本体:オールドレンズ

さらにマウントアダプターでオールドレンズを楽しむのにも適している。
電子接点のないレンズではライブビューの拡大ができず、ピント合わせはピーキング頼りになるが(ソニーさん、ファームアップで改良していただけないでしょうか…)、レンジファインダー用レンズを装着したときの美しさは、EVFが出っ張ったαシリーズにはない魅力だ。機動力も相まって、本機はさまざまな楽しみ方ができる一台といえる。

SONY α7C II 作例:喫茶店

ソニーα7C Ⅱ・Wニッコール3.5cmF2.5
絞りF2.5・1/60秒・ISO400・AWB・JPEGエクストラファイン

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L39マウントで3.5cm、すなわち35mmのニッコールレンズで撮影。
周辺部こそ流れるものの、中央部の解像力はなかなかのもの。1952年製、人間なら古希を過ぎたレンズとは思えぬ描写だ。

作例に使用したカメラ

【商品情報】SONY α7C II ボディ

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作例に使用したレンズ

【商品情報】SONY FE 50mm F2.5 G

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【商品情報】SONY FE 20-70mm F4 G

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【商品情報】SONY Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA

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SONY Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZAバナー画像

【商品情報】SONY FE 40mm F2.5 G

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まとめ

・世界最小・最軽量のフルサイズミラーレス待望の後継機となります
・上面はフラットでバッグなどへの収納性がよい形状です
・グリップが深くなりホールドが向上しています
・旧モデルには無かった前ダイヤルが搭載されました
・AIの搭載によりAF性能は上位機種を凌駕するレベルとなっています

Photo & Text by 鹿野貴司

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