フジヤカメラのプロフェッショナルレビュー。今回はコムロミホさんによるLeica(ライカ)M11実写レビューです。
瀬戸内・尾道の旅を楽しみながらスナップした美しい写真とともに、ご自身で愛用するM10-Rとの違いを交えながらLeica M11の魅力を綴っていただきました。
Leicaというと敷居の高いブランドな気がしますが、コムロミホさんのLeicaに対する愛ある文章と、尾道、瀬戸内の魅力を存分に伝えるやさしい写真を見ていると、構える事無くLeicaというブランドとM11にふれてみたい気分になってきます。
ブラックボディは約130gも軽くなって機動力がグッと向上
M型ライカのアイデンティティー、ベースプレートからの脱却
RAW(DNG)でも60MP、36MP、18MPの3種類から選べる
目で見た感動をリアルに再現してくれるアポ・ズミクロン
60MPの高画素が生きる!大胆にトリミングして作品制作もできる
高速シャッターがあるから、開放撮影を積極的に使える
重厚感のあるモノクロ表現ができる「モノクロHC」
まさに次世代のデジタルM型ライカ
まとめ
Leica(ライカ)を持って、瀬戸内のしまなみ街道を抜けて、尾道へと向かった。
道中撮影した写真をご覧いただきながら、Leica(ライカ)M11の魅力をお伝えしたい。
ライカM11ブラックと、M10-Rブラックの外観比較(正面、上面、背面)
まずは外観から見ていきたい。一見、従来のM型ライカと比較してみると、あまり違いがないように見えるが、大きく進化している。私が愛用しているLeica(ライカ)M10-Rと比較しながら、変化した点をご紹介していきたい。
Leica(ライカ)M11にはブラックボディとシルバーボディのラインナップがあるが、まず驚くのはブラックの重量だ。Leica(ライカ)M10-Rの本体重量約660gに比べて、Leica(ライカ)M11は約530gになる。従来のM型ライカは見た目の小型さ以上に金属の重みを感じるが、それが約130gも軽くなっている。今までのM型ライカを使用してきた方なら、その軽さにきっとびっくりするだろう。尾道の坂や階段を一日中上り下りしながらスナップしていたが、そのおかげで機動力を活かしながら撮影を楽しめた。
スナップは一日中歩けば歩くほど、さまざまなシャッターチャンスに巡り合えるため、ボディが軽くなるのはかなりのメリットだ。ちなみにシルバーはLeica(ライカ)M10-Rの約660gに対して、Leica(ライカ)M11が約640gと約20gほど軽くなっている。ブラックボディのトップカバーはアルミニウムを採用し、シルバーは真鍮を使用。それにより、シルバーよりも重量が約20%も軽量化されている。そして、ブラックは耐傷性のあるペイント加工を採用している。
次に驚く点はベースプレートをなくしたところだ。
デジタルM型ライカでもベースプレートを外してバッテリーやSDカードを交換するのが、フィルムカメラを使っているような操作感で、M型ライカのアイデンティティーでもあると感じていた。それがなくなってしまい、使用する前は何とも言えない寂しさがあったが、実際に撮影し始めると便利で仕方がない。レバーひとつでバッテリーの出し入れができ、以前よりもバッテリーが大きくなり、容量が64%もアップしている。またカメラの消費電力を抑えているため、長時間撮影を楽しめる。今回、予備のバッテリーを持って行かずに撮影を行ったが、一本で1日中撮影することができた。もし途中でバッテリーがなくなったとしても、USB Type-Cによる充電と給電ができるのが嬉しい。
そして、個人的にありがたいのが内蔵メモリーを搭載したことだ。慌てて出かけると忘れてしまうSDカード。流石に仕事では事前に機材の荷造りをするので忘れないが、プライベートで出かけたときに忘れてしまうことがある。そんな時に64GBの内蔵メモリーが重宝する。今回の撮影でも、猫を撮影している時にSDカードの残量がなくなってしまったが、急いでSDカードを差し替えることもなく、内蔵メモリーでそのまま撮影を続けることができた。
大きく変化したのは外観だけではない。総画素数6030万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載し、トリプルレゾリューションテクノロジーを採用している。それにより、イメージセンサーの全域を使用しながら、JPEGだけでなく、DNGでも60MP、36MP、18MPの3種類の記録画素数を選ぶことができる。
今回の旅にはアポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.とアポ・ズミクロンM f2.0/35mm ASPH.の2本を持っていった。アポズミの持ち味を最大限に活かして撮影したいと思ったので、60MPを選んで撮影している。一方で36MPや18MPを使用することで連写の持続性の向上やファイルサイズを小さくして撮影したい時などにも対応ができる。
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Leica(ライカ)M11・アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.・絞りF2.0開放・1/1000秒・ISO64・+0.67EV補正・RAW+JPEG
それにしてもLeica(ライカ)M11とアポズミの組み合わせは最強だ。目で見た感動をリアルに写真に残したいという思いから、シャープな描写が好みだが、この組み合わせはその理想形と言っても良いだろう。
街のディテール、瓦の質感、草の立体感、目の前にその風景が広がっているようなリアリティがある。ピントが合った部分を極めてシャープに表現してくれているが、このシャープさが心地いい。画像処理で無理やりシャープにしたような不自然なシャープさではなく、実物の被写体がそのまま写真の中にあるような錯覚に陥る。
また高画素のメリットはトリミングしやすい点だろう。60MPで撮影したものを大胆にトリミングしても、ある程度の画素数を保持できるため、撮影の幅が広がりそうだ。
下の写真はアポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.で撮影を行っている。ススキを大きくフレーミングしようとすると、50mmでは画角が広すぎて、広い範囲が写ってしまう。そこでススキと背景の海をバランスよく、縦にトリミングしてみた。ここまでトリミングしても約10MPあるため、A3サイズにプリントしても十分に画素数が足りる。
私がスナップするときは、ボケを活かして、ピント面の被写体を立体的に強調したいために開放F値で撮影することが多い。今回の撮影もほぼ開放F値のF2.0で撮影を行っている。Leica(ライカ)M11はISO64からISO50000までの設定が可能だが、最低ISO感度がISO64のため、日中の明るいシーンでも開放F値での撮影がしやすくなる。さらに電子シャッターを使用すれば、1/16000秒の高速シャッターで撮影できるため、ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.のように極めて明るいレンズも開放F値での撮影を堪能できる。私のように開放で撮影するのが好きな人にLeica(ライカ)M11をおすすめしたい。
高画素機になると、一般的にはダイナミックレンジや高感度性能が劣りやすくなるが、Leica(ライカ)M11はそのあたりも頑張っている。ダイナミックレンジは最大15ストップと、ハイライトからシャドウまでの粘りを感じる。
下の写真はISO3200で撮影を行っているが、ピント面の解像感も高く、ノイズが出やすい暗部の平坦な部分も目立ちにくくなっている。スナップにおいてはISO3200でも常用できるレベルだと感じる。
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Leica(ライカ)M11・アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.・絞りF2.8・1/90秒・ISO3200・+1.67EV補正・RAW+JPEG
そして、今回の旅での作品作りに最も役に立ってくれたのが「モノクロHC」という機能だ。Leica(ライカ)Q2などに搭載されていたフィルムモードがLeica(ライカ)M11にも搭載されている。暗部をぐっと締めながら、重厚感のあるモノクロ表現を楽しむことができるため、尾道で出会った被写体を深みのあるトーンで表現することができる。
少し露出をアンダーめに設定すると、さらに重厚感が生まれ、何気ないワンシーンもドラマチックに切り取ることができる。
撮って出しで、このモノクロ表現を楽しめるのはありがたい。一枚一枚撮影するごとにモチベーションが上がり、どんどんシャッターを切りたくなる。これだけでもLeica(ライカ)M11を買う価値があるのではないかと買い替えを考えたくなる。
そして、画面操作がさらに便利になっていると感じた。表示が一新され、メニューが見やすくなっている。タッチ操作で、露出補正やISO感度の設定が直感的にできるため、速写性も上がっている。
M型ライカの伝統を引き継ぎながらも、操作性がブラッシュアップされ、表現力も大幅に向上している。
Leica(ライカ)M11は次世代のデジタルM型といえるのではないかと思う。これからライカで写真を撮ってみたいという方から、そろそろ買い換えたいと思っている方まで、きっと満足してもらえるカメラに仕上がっていることだろう。この記事がライカを購入したいけど迷っている、という方の最後の一押しになれば幸いです。
・ブラックボディはトップカバーはアルミニウムを採用、M10-Rに比べて約130gも軽くなっている
・ベースプレートを廃止、バッテリーの出し入れがしやすくなった上、バッテリー容量が64%もアップ!長時間の撮影に便利
・トリプルレゾリューションテクノロジーを採用、60MP、36MP、18MPの3種類の記録画素数を選ぶことができる
・総画素数6030万画素の裏面照射型CMOSセンサーは、高性能なアポズミクロンレンズとの相性抜群!
・1/16000秒の高速シャッターとISO64の低感度が搭載され、日中でも開放F値での撮影がしやすい
・Leica(ライカ)Q2などで好評の「モノクロHC」フィルムモードが搭載、重厚感のあるモノクロ表現が楽しめる
・表示が一新、メニューが見やすく画面操作がさらに便利になった