Nikonからフルサイズミラーレス一眼カメラZ fが発表されました。
Nikonが発売するクラシックデザインのレンズ交換式カメラは3機種目ですが、ついにFM-2と同程度の大きさ、フィルムと同じサイズのセンサーが搭載された事に小さな感動を覚えます。
D fの発売からおよそ10年、ついにフィルムカメラと同じサイズになったフルサイズデジタルカメラの特徴や他機種との比較、おすすめのユーザーなどを解説します。
Nikon Z fの特徴
クラシックなスタイル
モノクロームモード
9種類の被写体を検知オートフォーカス
手ぶれ補正などバランスのいい基本性能
D fとの比較
よりフィルムカメラに近いボディサイズ
高性能なSラインレンズ
Z fcとの比較
フルサイズによる高い表現力
ボディ内手ぶれ補正
デザインの違い
FUJIFILM X-T5との比較
フルサイズによる幅広い表現力
画素数の違い
Canon EOS R6 Mark II
コンセプトの違いが基本性能の違いに
デザインと操作性
Nikon Z fをおすすめしたいユーザー
デザインだけじゃない高性能なフルサイズミラーレス
レンズとのデザイン的なマッチング
写真を楽しみながら撮りたいユーザーにおすすめ
まとめ
フィルムカメラのようなクラシックなスタイルはZ fの大きな特徴です。とは言えこれはNikonがはじめて打ち出すコンセプトではなく、D f→Z fc→Z fとつづいてきた機種の最新モデルになります。
フルサイズセンサー搭載でフィルムカメラ並の小ささにするのは難しいのではと思いますが、多くのユーザーの熱望により、ついにフルサイズでフィルムカメラ並みにコンパクトさのカメラが登場しました。
シャッターボタンやダイヤルに真鍮パーツが使われている質感の高さもデザインの良さに花を添えます。
カメラのデザインに合わせるように、Z fには3つのモノクロームモードが用意されています。
しかも、ダイヤルにモノクロモードの設定ポジションが用意されているという念の入れようです。
フィルム時代にはモノクロは自分で現像、プリントまで行うユーザーも多く、印画紙や引き延ばしレンズなどを工夫して好みのプリントに仕上げる楽しみがありました。そんな雰囲気を少しでも味わって欲しい。そんなNikonからのメッセージを感じます。
Nikon Z fのセンサーは2450万画素でグレードとしてはZ 6IIに近い機種ですが、最新機種という事でオートフォーカスには上位モデルと同じく9種類の被写体検知オートフォーカスが搭載されています。
条件の難しいピント合わせをオートでできる事で成功率が上がりますし、場合によってはあきらめていた被写体にチャレンジする機会が訪れるかもしれません。
動く被写体に使うイメージの強い被写体検知オートフォーカスですが、明るいf値のレンズで正確なピント合わせをする際にも非常に有効な機能です。
Z fにはZ シリーズで最も優れた8段分の手ブレ補正が搭載されています。
先に述べた被写体検知オートフォーカスなど、クラシックな外観だけでなくカメラとしての基本性能が高いレベルにある事も特徴のひとつです。
クラシックな外観に合わせてた操作性はカメラの理論を勉強するのにも適しているので、これから写真を本格的にはじめるユーザーにもおすすめの機種となっています。
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Nikonが初めて出したフィルムカメラのようなレンズ交換式デジタルカメラはD fですが、一眼レフである事や当時の技術やトレンドなどから、サイズ的には大きく、デザイン的も少し不格好なものでした(そこがD fのかわいいところですが)。
次に出たZ fcはセンサーサイズがAPS-Cで、サイズやデザインはよりFM-2に近くなったものの、写真好きからしたらほんの少しものたりない機種となりました。
そういった意味で、Z fはやっとコンセプトの全てを満たすカメラとなったのではないでしょうか。
D fとZ fを比較して一番大きな違いは一眼レフかミラーレスかということです。
一眼レフ時代からカメラを使っていた身からすると、ミラーレスカメラのレンズ性能の高さに度々驚かされてきました。
特にNikonのフルサイズミラーレスカメラ用の高級レンズ「Sライン」は、ボケ味の美しさと高解像が非常に良くバランスされている点や、各レンズの写りの差が少ない点などの特徴を持った最高クラスの高性能レンズシリーズです。レンズ性能の差は、個人的には一眼レフ(D f)とミラーレス(Z f)の差を最も強く感じる点のひとつです。
同じコンセプトで、フルサイズのZ fとAPS-CのZ fcは兄弟のようなカメラですが、2機種を比較する際にはセンサーサイズの違いが個性の差となって現れます。
画質やボケを利用した表現力の高さはフルサイズセンサーを搭載したZ fが有利ですが、カメラのサイズという意味ではAPS-CのZ fcがひとまわりほどコンパクトになります。
どちらを選ぶかはユーザー次第と言えますが、大雑把に言って表現力の高さはZ fが、コストやサイズを優先するならZ fcと言えるでしょう。
もうひとつZ fとZ fcの大きな違いは、Z fにはボディ内手ぶれ補正が搭載されている点があります。
しかもZ fの手ぶれ補正はZ シリーズで最も優れた8段分の補正効果が期待できる強力なものです。
ナイトスナップや夜景など手ぶれ補正の効果で結果が変わってくる撮影が多いなら、Z fを選択するメリットは大きそうです。
操作性などは共通点の多いZ fcとZ fですが、サイズ意外にも微妙にデザインに違いがあります。
特にZ fには小さいながらグリップがあり、ボディ重量が重い(Z f:約710g→Z fc:約445g)事や、大型のレンズを装着する事への配慮がされています。
個人的にはグリップが無い、よりFM-2に近いZ fcのデザインが好きですが、重いレンズを装着するとフォールディングが落ちる事は間違いないと思うので、使い勝手がいいのはZ fでしょう。
クラシックなデザインのミラーレスと言えばFUJIFILM Xマウントカメラです。操作性もZ fに近いライバル機種として、今回はX-T5を選びました。
最大の違いは、Xマウントのカメラが全てAPS-Cサイズセンサーであるのに対してZ fはフルサイズな事です。
ボケを活かした撮影や高感度性能ならフルサイズ機が有利で、レンズを含めたコンパクトネスや価格の面ではX-T5が有利になります。オートフォーカスまで含めて互角と言っていい2機種なので、どちらを選ぶか少し悩ましい機種です。
驚く事に、画素数はAPS-Cサイズセンサー搭載のX-T5が上になります(Z f:2450万画素→X-T5:約4020万画素)。
一般的に画素数が多い事は高感度性能とトレードオフなので、ここは好みの分かれるところです。また、高精細な画像は画素数だけでなくレンズ性能の高さも必要ですし、一般的に綺麗と感じる写真は解像感よりもカラーバランスが美しい事の方が要素として大きい気がします。
画素数が多い=高画質とは必ずしもならないところが写真の面白いところでもあり、カメラ選びを難しくしているところかもしれません。
Z fのライバルにEOS R6 Mark IIを持ってくるのは少し反則かもしれません。
コンセプトの全く違う2機種は、想定される使い方が違うので単純には比較できないからです。
大雑把に言えば、スピーディーに確実に写真を撮る道具としてのカメラとしてはやはりEOS R6 Mark IIが優れており、写真やカメラの操作を楽しみながら撮影するならZ fに軍配が上がりそうです。
コンセプトの違いはデザインや操作性にも色濃く現れています。
シャッターを押すまでの時間をできるだけ少なくするようデザインされているEOS R6 Mark IIに対して、Z fは例えば露出を合わせるといった操作自体を楽しめるようにデザインされているように見えます。
常に正しい解を求められるEOS R6 Mark IIと違って、数式を説くプロセスを楽しめる。Z fのメリットはそんなところにあるように感じます。
ついついクラシックなデザインにばかり目が行ってしまうZ fですが、基本性能も優れたバランスのいいカメラです。
特に8段分の補正効果が期待できる強力な手ぶれ補正は、低輝度下での撮影だけでなく初心者にも嬉しい機能と言えるでしょう。
強力な手ぶれ補正や9種類の被写体を検知オートフォーカスなど、現行のNikonフルサイズミラーレスの中でも基本性能の高いカメラとなっているのは、Z fを購入する動機のひとつとなりそうです。
少し心配なのはカメラのデザインが優秀すぎてレンズとのバランスはどうなのか?という点です。
NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)の2本はいいとして、それ以外のレンズがデザイン的にZ fに合うのか。
レンズとのデザイン的なマッチングはカメラのデザインが良いだけに少し心配で、ネガティブな要素かもしれません。
Nikon Z fは基本性能の高さはもちろん、持っているだけで楽しいデザイン、写真を楽しめる機能や操作性のカメラです。
カメラの扱いを楽しみながら、ボケや露出補正、時にはモノクロモードを使って表現を楽しむ。そんな使い方をするユーザーにおすすめしたカメラとなっています。
真鍮製のシャッターボタンやダイヤル、ペンタ部に刻まれた旧ロゴなど質感の高さも魅力で、持っているだけで楽しくなりそうです。
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Text by フジヤカメラ 北原