Canon(キヤノン)の一眼レフ用レンズEF 28mm F1.8 USM の実写レビューです。
1995年に登場した一眼レフカメラ用レンズの解像感、逆光耐性などの描写性能、マウントアダプターEF-EOS Rを使った際のフォーカススピードなどの使用感を、フルサイズミラーレスカメラ EOS R5 で試します。
大口径の広角レンズながらコンパクトにまとまったデザインで、コンパクトなフルサイズミラーレスカメラでも使い易いレンズでした。当時は高性能と評価されたレンズですが、高性能なミラーレス用レンズの写りを見慣れた目にはクセのある、なかなかのじゃじゃ馬で、オールドレンズのような使いこなす楽しさのあるレンズです。
特徴/操作性
コンパクトな大口径単焦点レンズ
シンプルなデザイン
クセのある描写
実写レビュー
開放付近では特徴的な描写
絞り込む事で描写性能が向上
適度な「広がり」を表現しやすい画角
近接性能
画質
耐逆光性能
解像感
フリンジ
EF28mm F2.8 IS USMとの比較
こんな方におすすめ
まとめ
Canon (キヤノン) EF 28mm F1.8 USM の特徴は、広角レンズとしては大口径と言えるF値を持ちながら、コンパクトにデザインされている事です。
おかげでマウントアダプターEF-EOS Rを使ってミラーレスカメラに装着しても、比較的バランス良く使う事が出来ます。
又、例えばEOS Kissシリーズ等のAPS-Cセンサーを搭載したカメラなら、約44mm(35mm判換算)の明るい標準レンズとしても使えるので、センサーサイズを問わず幅広く活躍出来るレンズと言えるでしょう。
鏡筒のデザインはフォーカスリングとAF/MF切り替えスイッチ、距離目盛だけの、単焦点レンズらしいシンプルなものです。距離目盛には被写界深度指標も付いています。
Canonオートフォーカスレンズの特徴であり売りの機能とも言えるフルタイムマニュアルフォーカスも搭載しているので、AFのままフォーカスリングを回せばマニュアルフォーカスでピントを操作する事が可能です。
今回のテストでは純正のマウントアダプターEF-EOS Rを使いましたが、USMによるフォーカス駆動はスムーズで、感覚的には一眼レフカメラで使うのと同じように快適に使う事が出来ました。
使い勝手としてはフルサイズミラーレスでも快適なEF 28mm F1.8 USM ですが、描写性能は25年以上前に設計されたレンズらしいクセのある特徴的なものです。
テストで使用したEOS R5は4500万画素の高画素センサーを搭載した高性能機ですが、EF 28mm F1.8 USM の描写性能の欠点を余すところなく写しとめてくれました。
現代のレンズではほとんど味わえない開放での甘さや、絞りによる画質の変化、周辺光量落ちなどのレンズの欠点を、表現に活かしながら使うレンズだと思います。
フィルター径: | 58mm | 最短撮影距離: | 0.25m |
---|---|---|---|
最小絞り: | F22 | 絞り羽根: | 7枚 |
長さ: | 55.6mm | 重量: | 310g |
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今回のテストボディには最新のフルサイズミラーレス一眼カメラEOS R5を選択しました。
マウントアダプターには純正のEF-EOS Rを組み合わせたので、機能制限等も無く快適に使用できます。
カメラの設定はピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:AWB、レンズのクセを存分に楽しみたかったのでレンズ光学補正はすべてオフとしています。
開放では周辺光量落ちと眠さが目立つ描写でした。
特に周辺部の眠さが顕著で、画像を拡大しなくても眠さがわかる、オールドレンズで撮ったような描写です。
以前同社のEF 50mm F1.4 USM を試した際も開放での眠さを面白く感じましたが、EF 28mm F1.8 USM はそれ以上の特徴的な写りを見せてくれました。
ボケの味や色味にもクセが感じられます。
少し流れるようなボケ味は素直で美しいとは言いづらいものですが、このレンズ独特の特徴や個性を主張していて好感が持てます。少し言い方があれですが、昔のフィルムカメラ、例えばレンズ付きフィルムを使っているような、どこか安っぽい感じがする描写です。
描写の古さに反してフォーカススピードなどの操作感は現代のフルサイズミラーレスらしい快適なものなのが、何処かちぐはぐで不思議な感じでした。
当時のレンズにありがちな、絞り込む事で解像感、コントラストが増していくわかりやすく扱いやすい特性です。
物凄くシャープになるという事はありませんが、開放での眠い描写は影をひそめて、扱いやすい描写になりました。
ある程度絞っても周辺光量落ちは残るようで、作例5ではF8まで絞り込んでいますが空の部分で四隅が暗くなっているのが確認出来ます。気になるようならカメラ補正をONにして対処すればいいでしょう。
28mmは、広角レンズとしては遠近感の誇張が適度で、広がりを自然に表現しやすい画角です。
標準レンズのように画角をフットワークでコントロールしやすい広角レンズと言えるでしょう。
併せてEF 28mm F1.8 USM はF1.8という明るさを利用してボケを活かした作画も出来るので、レンズのクセとうまく付き合う難しさはありますが、初めて使う単焦点の広角レンズとしてもおすすめ出来ます。
最短撮影距離0.25m、最大撮影倍率0.18倍は近接性能としては月並みですが、開放F1.8の明るさを活かして背景を大きくボカせば、近接能力以上にマクロらしい写真が撮れます。
ここで問題になるのは特徴的なボケ味で、背景に何を入れるか、色や明るさに注意しながら撮る必要がありそうです。
EF 28mm F1.8 USM は、クセの強い特徴的な写りでレンズを使う楽しさを提供してくれる反面、常にそれを念頭においてフレーミングする必要がある頭の痛いレンズでもあります。
フレアカット絞りを搭載し、当時としては逆光耐性に留意した設計ですが、現代のレンズのような超高性能コーティングが施されているわけではないので、それなりにゴーストやフレアが発生します。
動画ではゴーストが表現のひとつとみなされ、カメラの移動とともに動いていくゴーストやフレアをわざと入れる為に、わざわざコーティングをはがしたレンズを使うほどです。対する写真では、入り方や形を完全にコントロールするのは難しく、条件によっては厄介な問題となるでしょう。
開放で撮影した作例8の画像を拡大して解像感を見てみます。
開放ではかなり眠い描写です。
レンズの特徴がはっきりと感じられる写りは、高性能な現代のミラーレス用レンズでは、狙った製品でなければ余程安価なレンズでもまずあり得ないレベルです。
反面、レンズを感じられる、レンズの特徴を活かした表現は、こういったクセのあるレンズならではの楽しみなので、単純に性能の悪さと捉えず積極的に表現を楽しみましょう。
作例8を拡大してフリンジを確認してみます。
フリンジは後処理で除去する事も可能ですが、あまり多く発生していると自然に処理するのは難しくなります。
カメラ内補正をONにする事である程度少なくする事も可能なので、気になるなら補正をONにして撮影しましょう。
Canonには2012年に発売されたEF28mm F2.8 IS USM があります。同じ年に2230万画素のフルサイズデジタル一眼レフカメラの名機EOS5D MarkIIIが発売されているので、高画素のデジタルカメラにも性能的に十分対応出来るように設計されたレンズと思われます。
性能的にはEF 28mm F1.8 USM よりもシャープで高性能、さらに手ぶれ補正が内蔵されたレンズなのでオールラウンドに使い易いのはEF28mm F2.8 IS USM だと言えます。
高性能なレンズがあるにもかかわらずEF 28mm F1.8 USM をわざわざ選ぶポイントはF1.8の大口径である事と、特徴的なレンズのクセです。ストレートな表現となる高性能なレンズと違い、EF 28mm F1.8 USM はレンズが個性を主張してくるので、レンズの個性や味を楽しみたいならEF 28mm F1.8 USM は価値のあるレンズです。
思った以上に個性的でクセの強いレンズでした。
現代の高性能なレンズと比較して、レンズ性能上の短所を多く持っているので、そういったクセを楽しんだり上手く付き合えるユーザーにおすすめです。使用者側に、レンズの性能を描写力だけでなく、面白い個性やクセに見出す懐の深さが必要なレンズだと感じました。
まさかオートフォーカス時代のレンズに、ここまでのじゃじゃ馬がいるとは思わなかったので、良し悪しはともかく少し嬉しくなりました。
・コンパクトな大口径広角レンズです
・純正マウントアダプターEF-EOS Rを使っても使用感は良好でした
・開放では特徴的な柔らかくクセのある描写です
・レンズに個性を求めるレンズ沼中級者以上向けのモデルです
レンズ選びの参考にしていただければ幸いです。
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