専門店スタッフが SONY(ソニー) FX6 をレビューします。
動画カメラとして充実の機能を持つFX6は、プロからシネマトグラファーまで幅広いユーザーに支持される、クリエイター向けの本格派シネマカメラです。
特徴や使い方、メリット、おすすめのユーザーなどをご紹介します。
FX6の特徴
SONY Cinema Line カメラのミドルグレード
裏面照射型の有効約1026万画素の35mmフルサイズCMOSセンサー
動画撮影をサポートする幅広いインターフェース
電子式のバリアブルNDフィルター内蔵
大容量のバッテリーによる長時間使用
FX6の使い方
バリアブルNDフィルターの使い方
撮影モードの設定
ゲイン(ISO感度)の設定
FX3との比較
ポイントは電子バリアブルフィルターとバッテリー
より動画寄りのユーザーインターフェース
業務用レベルのファイルフォーマットに対応
モニター、トップハンドル、右手ハンドルなどユーザビリティがしっかりしている
利便性ではFX3に軍配が上がる点も
FX6を選ぶメリット
シネマカメラらしい高い画質
動画機らしい操作性、デザイン
電子バリアブルNDフィルター
デメリット
シネマカメラらしく、ある程度上級者向けの面も
バッテリー、チャージャーが高価
グリップリモコンにズームレバーが付いているが、対応レンズが少ない
おすすめのユーザー
まとめ
SONY Cinema Line カメラのミドルグレードに位置するFX6は、本格的なシネマカメラとしてはリーズナブルな価格で人気の機種です。
高速なファストハイブリッドAF、高画質な4倍スローモーションが可能な4K 120p記録、業務利用ではスタンダードな4:2:2 10bit内蔵記録が可能で、幅広いカメラマンを満足させるハイレベルな動画用万能カメラと言えます。
35mm判フルサイズの裏面照射型CMOSセンサーを採用、ISOの上限を409600まで拡張可能(Customモード時)で、高感度でもノイズの少ない滑らかな映像をつくりだします。
事実上ISO感度で露出を調整しなければならない動画の撮影では、幅広いISO感度を実用的に使える事は大きなメリットです。
業務用では定番と言える12G-SDI出力に対応しています。BNC端子はロック機構を備えておりケーブル抜けを防ぐことができるので、長い距離の伝送にも向いていると言えるでしょう。
ATOMOSのShogun7、NINJA V+などを使用すれば12bitのProRes RAW収録が可能で、プロのポストプロダクションを想定した高画質録画も可能となっています。
FX6の売りのひとつは電子式のバリアブルNDフィルターを内蔵している事です。
無段階で1/4から1/ 128まで調整できるので交換の手間が省ける上、可変式のNDフィルターでは問題となるムラが出ないのもメリットです。絞り開放で大きなボケを活かしたシネマチックな映像を高画質で撮るなら強力な機能と言えるでしょう。
プロ向きのカメラである事から、電源供給についてはBPシリーズのバッテリーが3種類選べます。
一番小さいタイプBP-U35でも、FX3に採用されているNP -FZ100の倍以上の容量があるので、バッテリー消費の大きい高画質での長時間撮影にも安心です。
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FX6のよく使う基本的な操作を幾つか解説します。
非常に多機能なカメラなので、ユーザーでも全ての機能を把握するのは難しいと思いますが、よく使う部分だけでも把握しておけば、撮影時にまごつく事も無いでしょう。
FX6にはMENUボタンを押すと表示される「ステータス画面」とMENUボタンを長押しすると表示される「フルメニュー」の2つがあるので、念頭に置いて読み進めていただけると良いと思います。
FX6の特徴のひとつ、電子NDフィルターには幾つかの使い方が用意されています。事前に設定しておいた透過率にする「プリセットモード」、光量を自動調整するオート、手動で調整するManualなどです。
プリセットモードはND PRESET/VARIABLEスイッチをPRESETの位置にして、ND FILTER POSITIONスイッチの上下を押して値を切り替えます。初期設定ではCLEAR→1/4→1/16→1/64に設定されていますが(CLEARが選択されている=ND/OFFの場合はスイッチにLEDランプが点灯)、フルメニューのShooting→ND Filterから好みの値を設定する事も可能です。
光量を自動調節する場合は、PRESET/VARIABLEスイッチをND VARIABLEの位置にし、ND FILTER POSITIONスイッチの上(+)を押してNDフィルターをONにした後、ND VARIABLE AUTOボタンをAUTOになるまで長押しして設定します。手動調整する場合は、ND VARIABLE AUTOボタンをManualになるまで長押し、ND VARIABLEダイヤルを回す事でシームレスに透過率を調整する事が可能です。
FX6では現場で自在に映像の作りこみができる「Customモード」とポストプロダクション処理を前提とし、現場では画作りを行わない「Cine EIモード」の2つのモードが用意されています。
撮影モードはMENUを押してステータスメニューを表示、プロジェクトメニュー(4/10)→撮影モードから切り替えます。
Customモードでは人気のルック「S-Cinetone」、Cine EIモードでは15+ストップの諧調を誇る「S-Log3」を使用する事が出来ます。
ゲイン(ISO感度)は、アイリスを変えずに明るさを変える際に頻繁に使う機能です。
設定はISO/GAINファンクションボタンを長押ししてダイレクトメニューを表示、Auto、Manualを選びます。その際撮影モードが「Cine EIモード」になっているとダイレクトメニューが表示されず設定を変更出来ないので注意しましょう。
Manualの場合はISO/GAINスイッチで、H/M/Lを選択する事で行います。又、アサイナブルダイヤルにISO/Gain/EIを割り当てておくと、ISO/GAINスイッチで設定した値からダイヤルで調整することができるので、被写界深度を変えずに露出を追い込む際などに便利です。
FX6は2つの基準感度を選択出来るので、通常の撮影ではLowまたはISO 800、低照度下ではHighまたはISO 12800を選択すれば、よりノイズの少ない滑らかな映像を撮影出来るでしょう。
※各設定の方法は他にもありますのでここに記載したのは一例です
下位グレードのFX3は、コンパクトで多用なニーズに応えるFX6の強力なライバルです。
ここでは、FX3とFX6を比較、FX6を使うメリットやFX3との違いを要点ごとに見ていこうと思います。
FX3には無いFX6の特徴的な機能として電子バリアブルフィルターが挙げられます。
無段階で1/4から1/128まで5段階の調整が行える電子バリアブルフィルターは、明るいF値のレンズを使って背景をボカした写真を撮る際などに非常に有効です。通常のバリアブルフィルターのように、条件によっては映像にムラが出てしまうような事も無いので、便利且つ安心して使えます。
3種類の大容量バッテリーが用意されている点もポイントです。標準的なバッテリーBP-U70でも連続動作時間215分となっており、長回しだけでなくバッテリー交換の手間が少ないという意味でもメリットは大きいでしょう。
FX3のカメラ寄りのメニュー画面と比較して、FX6のそれは同社の業務用ビデオカメラPXW-Z280やZ190に近いものです。これは既にハンドヘルドのSONYカメラを使っているユーザーにはむしろ馴染みのあるものと言えるでしょう。
フルサイズミラーレス一眼から乗り換える際に入りやすいFX3のメニュー画面とは違い、業務用ビデオカメラに近いユーザーインターフェースを採用している事も、FX6がシネマカメラとしてより高い位置に立っている事を感じさせます。
記録形式にMXFファイルフォーマットに対応している点も、FX3には無いFX6の特徴と言えます。
MXFファイルは業務用向けの編集に適したコンテナフォーマットで、RAWより圧縮率は大きくなりますが、汎用性の高いMP4よりも編集に適したコンテナフォーマットです。
勿論、外部モニターレコーダーを使えば、12G-SDI出力による12bitのProRes RAW収録が可能となります。
FX3とは違い動画機らしい縦型のデザインで、モニターやトップハンドル、右手ハンドルなど、幅広いスタイルの動画撮影に対応出来るしっかりしたユーザビリティを持っている事もFX6の特徴です。
FX3のバリアングル液晶は、実際に収録で使うと、ヘッドフォン端子やHDMIのOUT端子、UBC端子に電源供給しながら使う時などに、ケーブルと干渉してモニターの角度に制限がでてしまいます。ミニマムボディがあだとなるのです。
FX6は動画撮影に特化したデザインと大きさを持っているので、そういったストレスはほとんどありません。
より幅広いユーザーが対象となるFX3は、FX6と比較して利便性が高い部分があります。例えばタッチトラッキング機能とボディ内手ぶれ補正です。
画面上でタッチした被写体に自動でフォーカスを合わせ続けるタッチトラッキングは、フォーカスをカメラ任せに出来る撮影者を強力にサポートしてくれる機能となります。又、FX6には無いセンサーシフト式の手ぶれ補正は、安定したフィックスの画を撮れるだけでなく、デジタル手ぶれ補正と併用するアクティブ手ぶれ補正機能を使う事で、歩きながらなどのアクティブな撮影でも滑らかな映像を撮影する事が可能です。
いずれの機能も搭載していないFX6は、三脚やジンバルなどより本格的な機材が必要になります。
FX6を選ぶメリットを選ぶメリットはなんでしょう?
多彩な機能を持つFX6ですが、この機種を選ぶ動機となるポイントを解説します。
高画質である事は勿論、MXFファイルや4K 4:2:2 10bit、12G-SDI出力による12bitのProRes RAW収録など、業務用レベルのフォーマットをサポートしている事は、FX6の大きなメリットと言えるでしょう。
カラーグレーディング耐性の高い情報量の多いファイルフォーマットに対応している事は、ポストプロダクションを見据えた多彩な用途やニーズに対応しなければならないプロカメラマンにとって必須だからです。
高性能という事だけでなく、仕事で使うカメラとしてのニーズを高いレベルで満たしている事はFX6を選ぶ大きな動機となるでしょう。
高感度に素晴らしく強い点もFX6の大きなメリットです。
もともと高感度に強いフルサイズセンサーを搭載しているだけでなく、基準感度を標準のISO800と、暗所環境用の高感度ISO12800の2つから選択可能、切り替えて使う事で暗い場所でもノイズの少ない、黒の締まった映像表現を楽しむ事が可能となります。
暗い場所での撮影を恐れる必要が無い事は、FX6の大きな特徴のひとつです。
動画カメラらしいデザインである事もFX6の特徴のひとつです。
横長の写真用カメラと違い縦に長い動画カメラらしいデザインは、トップハンドルを使ったチェストポジションでの撮影がし易い、三脚に取り付けた際の操作性、安定性が高い、ケーブルなどインターフェースの取り回しがスムーズに出来るなど、多くのメリットがあります。
長い年月をかけて落ち着いたデザインにはそれなりの理由があるのです。
電子バリアブルNDフィルターを内蔵している事はFX6の大きな特徴です。
シネマカメラなら明るいF値を選択してボケを活かす映像表現は必須だと思います。しかし、動画で速いシャッタースピードを選択するとパラパラ漫画のような不自然な画となってしまう為、1/30~1/60前後のシャッタースピードを選択するのが普通です。すると日中の撮影では最低ISO感度を使っても露出が合わなくなってしまいます。
そんな時でも1/128まで無段階で減光出来る電子NDフィルターが内蔵されているFX6なら、自在に開放での撮影が可能となるのです。レンズ先端にNDフィルターを付け外す手間や、バリアブルNDフィルターの色ムラなどの問題から開放される事は、FX6を選ぶ大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
非常にバランスのいいシネマカメラであるFX6ですが、短所が無いわけではありません。
ここでは購入に際して知っておいた方がいいFX6のデメリットを解説します。
ひとつは基本的に上級者やプロカメラマン向けの機種であるという事です。
機能を考えればコストパフォーマンスが高いと言えますが、価格が安いわけではありませんし、初心者をサポートしてくれる手ぶれ補正やタッチトラッキングといった機能は搭載されていません。
マニュアルフォーカスやジンバルでの撮影にもある程度対応出来るプロカメラマンや上級者向けの機種と言えます。
バッテリーやチャージャーが別売な上高額な事も、FX6のデメリットです。
例えば標準的なバッテリーであるBP-U70を予備と合わせて2本、それにチャージャーを購入すると、それだけで10万円近いコストになります。
それでもREDなどのシネマカメラと比べれば素晴らしくコスパが高いと言えますが、絶対値として安いカメラとは言えません。
FX6のトップハンドルとグリップリモコンにズームレバーが付いていますが、対応レンズが少ない事で、折角の機能を活かし切れません。
現在(2021.12.23)対応するレンズは5本、うち4本はスーパー35mm(APS-C)用なので、スーパー35mmで4Kが撮影出来ないFX6では、実質使えるレンズは1本と言っていいでしょう。
撮影しながら手元でズーム出来るのはとても便利な機能なので、活かし切れないのは少々勿体ないと感じます。
フジヤカメラでは、SONY ビデオカメラの中古商品を多数取り揃えております。在庫は日々更新されますのでどうぞこちらからご確認下さい。
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SONY(ソニー) FX6 をおすすめしたいユーザーは、やはり個人で撮影するプロカメラマンやシネマトグラファーと言えるでしょう。
SONYシネマラインのカメラの中でもMENU画面や操作性などユーザーインターフェースが大きく動画カメラ寄りになっているので、他機種との併用や買い替えもし易いのではないでしょうか。勿論、ポストプロダクションを前提として高い画質を持っている事も重要です。
写真と動画の垣根が希薄になっている昨今ですが、より動画中心のカメラマンにおすすめ出来る機種だと感じました。
・シネマカメラとして充実の機能とカラーグレーディングを見据えた高い画質
・電子バリアブルフィルターが素晴らしく使い易い
・ビデオカメラらしい上級者向けのユーザーインターフェース
・長時間の撮影をサポートするバッテリーシステム