SONY(ソニー)Cinema Line(シネマライン)初のAPS-Cセンサー(Super 35mm)機、「FX30」の実写レビューです。
同じデザインのフルサイズ機FX3との比較を中心に、ボケ感の比較、6Kオーバーサンプリングの解像感、ブリージング補正、おすすめのアクセサリーなどをご紹介します。
特徴/操作性
SONY「Cinema Line」シリーズのエントリーモデル
6Kオーバーサンプリングによる高画質な4K動画記録
上位モデル「FX3」を踏襲したボディデザイン
αシリーズの最新撮影機能「ブリージング補正」を搭載
FX3との比較:テスト動画
FX3との比較:解説
ボケ感
FX30の6Kオーバーサンプリング vs FX3のダイナミックレンジ(15+ストップ)
高感度・耐ノイズ性能
ブリージング補正の実写比較
おすすめのアクセサリー
SONY ECM-B10 ショットガンマイクロホン
TILTA(ティルタ)MIRAGE
おすすめのユーザー
これから本格的に映像制作を始めたい方
ドキュメンタリー撮影
Vlogなど日常をシネマティックに撮影したい方
まとめ
FX30はSONY「Cinema Line」シリーズとしては初めてのAPS-C機です。
エントリーモデルの位置付けですが、ピクチャープロファイル「S-Cinetone」を用いたシネマクオリティでの映像表現や、αシリーズの最新撮影機能を搭載するなど、本格的な撮影から機動力を活かしたコンパクトな運用まで、幅広いニーズに応えることができるカメラとなっています。
また、値段はFX3の約半分(ボディのみの場合)となっており、コストパフォーマンスに優れている事も大きな魅力です。
FX30は、上位グレードのFX3や、フルサイズミラーレスカメラのα7 IV、α7 IIIなどと同じ最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」を搭載しており、4:2:2 10bit記録や4K 120p(約38%画角がクロップ)のハイフレーム動画のカメラ内記録に対応します。
又、6K相当の豊富な情報量を凝縮することで(オーバーサンプリング)、高品位な4K(QFHD:3840×2160)映像を出力できるところもポイントです。
ボディデザインはFX3を踏襲しており、手持ち撮影はもちろんジンバル撮影の際も高い親和性、機動性を発揮します。
又、ボディに直接アクセサリーを装着できる取り付け用ネジ穴をボディに5カ所、付属のXLRハンドルユニットに3カ所備えており、ケージ不要で拡張することも可能です。
FX30は「ブリージング補正」機能を実装しています。
通常のレンズはフォーカスの移動によりわずかに画角が変化するのが普通ですが、「ブリージング補正」機能によりフォーカスによる構図の変化を抑えた自然な映像を撮影する事が可能です。
この機能は未だFX3には実装されておらず、FX30の強みとなっています。
実際にFX30で撮影したテスト動画です。
ボケ感の違い、画質、高感度・耐ノイズ性能比較、フォーカスブリージング補正の有無による違いを、フルサイズ機のFX3と比較しています。
高感度ノイズの出方やフォーカスブリージング補正によるイメージの変化などは、映像で見るとより分かりやすいと思います。解説と併せてご覧ください。
フルサイズ機(FX3)との「ボケ感」「画質」「高感度・耐ノイズ性能」「フォーカスブリージング」の比較動画です。
同じ画角で撮影した際のFX3とのボケ感の違いを比べてみました。FX30はAPS-Cセンサーなので、同じ焦点距離のレンズなら被写体から少し離れて撮る事になります(同じ焦点距離のレンズならAPS-Cサイズセンサーのカメラは画角が狭くなる為)。
単純なボケ感の比較ではフルサイズセンサーのFX3に軍配が上がりますが、作例のとおりF1.4などの明るいレンズを使用すればFX30でも十分なボケ感を活かした撮影が可能です。
又、シーンによってはボケすぎることがマイナスに働くこともあり、背景の情報もある程度残り適度なボケ感が出せるFX30は、ドキュメンタリーやイベント撮影向きのカメラと言っても良いかもしれません。
画質の面でFX30がFX3よりも有利な点は、画素数の多さを利用して、4Kよりも大きな6Kからのオーバーサンプリングで4K映像をつくりだしている点です。対するFX3の有利な点は、大型のフルサイズセンサーによる、15+ストップ(FX30は14+ストップ)という広いダイナミックレンジにあると言えるでしょう。
テスト撮影では評価を同じくする為、レンズはどちらもFE PZ 16-35mm f/4.0 Gを使用しています。
画質の良し悪しは、解像度やダイナミックレンジ以外にも様々ですが、FX30の6Kオーバーサンプリングによる高精細な4K映像はFX3のダイナミックレンジ15+ストップの映像と比較しても、遜色ないレベルです。
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結論から言えば、高感度・耐ノイズ性能はやはりフルサイズセンサーを搭載するFX3の方が優秀でした。
しかし、FX30もカラーグレーディングやノイズリダクションなど編集で後処理をすれば、ISO4000(ギリギリISO6400)までは許容範囲と言えそうです。
夜間や暗い環境下の撮影ではFX3の一択となりそうですが、そういった環境でなければFX30でも大きな問題はなく、十分実用レベルと言えます。
優秀な「ブリージング補正」が搭載されている事は、FX30がFX3よりも優れている点のひとつです。
作例のとおり、ピントを手前のカメラボディから背景に送った際に、FX3では画角変化が顕著に出ますが、「ブリージング補正」をONにしたFX30ではほとんど変化が起きませんでした。
「ブリージング補正」機能を有効にするには、対応レンズを使う必要がありますが、スチル写真用のレンズを使って、まるでシネレンズを使用したような自然な映像を撮影できる事は大きなメリットです。
音質重視ならセット販売もしているXLRハンドルユニットを使った、本格的な外付けマイクの使用がオススメですが、小型軽量なFX30の機動力を活かすのであれば、純正の「ECM-B10」もオススメです。
マルチインターフェースシューからデジタル処理された音質はノイズが少なくとてもクリア。さらにバッテリーレス、ケーブルレスで、アクティブに撮影する事が可能となっています。
ドキュメンタリー撮影などで、ワンオペで長時間撮影する際や、被写体にカメラの圧をあまり与えたくない時はこちらのセットアップなどいかがでしょうか?
【商品情報】SONY ECM-B10 ショットガンマイクロホン
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明るいレンズでボケを使った映像表現を楽しみたいならNDフィルターの使用は必須です。
FX30のポテンシャルを最大限発揮(ダイナミックレンジ14+ストップ)するためにはCine EIモードで基準感度のISO 800もしくはISO 2500で撮影する必要がありますが、動画撮影では基本的にシャッタースピードは固定となる為(絞りを変えれば調整できますが、その分ボケ感などは犠牲になります)、露出のコントロールをNDフィルターで行う必要があるからです。
ご紹介するTILTA(ティルタ)はフジヤカメラ動画館スタッフも絶賛のメーカーで、MIRAGEマットボックスシステムも勿論スタッフおすすめの製品となっています。
【商品情報】Tilta(ティルタ) Mirage Matte Box VND Kit
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SONY Cinema Lineの正確かつ高速なAF性能、強力な手ぶれ補正、多くのクリエーターが愛用する「S-Cinetone」などをリーズナブルな価格で手に入れられる、これから本格的に映像制作を始めたい方におすすめしたい一台です。エントリーモデルの位置付けで「Cine EIモード」は複雑ではないか?と感じるものの、上位モデルのFX3と類似した操作性は、カメラをアップグレードしやすいという意味でもプラスと言えるかもしれません。
ドキュメンタリー撮影では撮られることに慣れていない方が被写体になることもしばしば。シネマカメラのような大型カメラでは相手を萎縮させてしまいます。
FX30は存在が目立ちすぎないサイズ感でありながら上質な映像や音声収録も可能で、まさにドキュメンタリーテイストの撮影にピッタリです。
APS-Cサイズセンサーなので、フルサイズほどピントにシビアでは無い事も、基本的に一発撮りとなるドキュメンタリー撮影向きと言えるでしょう。
VLOGやYouTubeなどで日常やライフスタイルを発信する際も、FX30はオススメです。
E PZ 10-20mm F4 Gなどのコンパクトな広角レンズもあり、日々持ち歩いてもストレスにならない重量感のカメラで、最高の一瞬をシネマティックに記録してみてはいかがでしょうか。
・SONY Cinema Lineシリーズのエントリーモデルです
・SONY Cinema Line初となるAPS-Cセンサー機です
・コンパクトで機動力を活かした運用が可能となっています
・FXシリーズの機能をあわせもった幅広いシーンで活躍できる一台です
・映画やドラマのような作品性の高い映像や、絵作りに徹底的にこだわりたいユーザーはFX3を選択するのがベター
シネマカメラ選びの参考にしていただければ幸いです。
【商品情報】FX30 ボディ
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【商品情報】FX30 XLRハンドルユニット同梱モデル
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