PENTAX (ペンタックス) smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDMの実写レビューです。
2009年に発売された、PENTAX(ペンタックス)の一眼レフカメラ用中望遠単焦点レンズは、高い描写性能だけでなく、堅牢性、耐環境性能を兼ね備えた「スターレンズ」シリーズの一本です。
発売から時間の経過した製品ですが、最新世代のボディであるK-3IIIと組み合わせる事で、レンズ本来の力をより発揮できるようになりました。実写レビューを中心に紹介します。
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PENTAX (ペンタックス) smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDM
特徴/操作性
PENTAX (ペンタックス) smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDMは、APS-Cサイズセンサーカメラ用の、35mm判換算で約84.5mm相当となる中望遠単焦点レンズです。
肉眼で見たままに近いと言われる標準レンズに対して、85mm前後の中望遠レンズは一点を注視した時の見え方に近いと言われ、自然に一部分を切り取る構図を得意とします。
又、標準レンズよりも大きなボケを得られる、レンズのゆがみが目立ちにくい、適度な距離感でモデルとコミュニケーションを取りやすい、といった理由から、ポートレート撮影用の定番画角として扱われる事も多いようです。
smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDMの特徴の一つに、エアロ・ブライト・コーティングの採用があげられます。
通常のマルチコーティングの上に、均質な空隙を持つシリカエアロゲル層をコーティングする事で表面反射を大幅に低減させ、通常のマルチコーティング以上にゴーストやフレアを抑制する効果があるようです。他社製品で例を挙げると、CanonのSWC、Nikonのナノクリスタルコートが位置付け的に近いでしょうか。
レンズフード裏面には、反射防止のための植毛加工が施されており、エアロ・ブライト・コーティングと合わせてゴーストやフレアの発生を徹底的に抑え込むよう配慮されています。
APS-Cサイズセンサーに合わせて設計されている為、大口径中望遠レンズとしてはとてもコンパクトなデザインです。
外装は金属ではなくプラスチック製ですが、レンズがずっしりと詰まっており、見た目に反してずっしりとした重みが感じられます。
金色のラインや文字、側面のエンブレムが、上位クラスのレンズである事を主張するかのように配されています。
オートフォーカスは超音波モーター駆動で、動作音はとても静かです。
側面にAF/MF切り替えのスイッチがありますが、AFモード時でもピントリングを回すことで即座にマニュアルフォーカスに移行できる「クイックシフト・フォーカス・システム」にも対応しています。
フォーカスリングは適度なテンションがあり、絞り開放付近のピントが浅い状況下での微調整も容易です。
フィルター径 |
58mm |
最短撮影距離 |
0.45m |
最小絞り |
F22 |
絞り羽根 |
9枚(円形絞り(F2.8まで)) |
長さ |
66mm |
重量 |
375g |
実写レビュー
テスト撮影は私物の愛機であるK-3 Mark IIIに装着して、街中を散策しながら行いました。
共通設定としてカスタムイメージは鮮やか、ホワイトバランスはAWB、カメラメニュー内の各種レンズ補正はオフにしています。
撮影時は猛暑以上の酷暑が前日まで続いていましたが、当日は曇り空。歩き回ると汗はかきますが、日差しが無い分撮る事に集中できたのが幸いでした。
開放F1.4、オートフォーカスでのピント合わせですが、最新のK-3 Mark IIIの性能にも助けられて、オートエリアのまま狙いたい所に合焦してくれました。
何枚か撮る中で、MFで微調整する事もありましたが、クイックシフト・フォーカス・システムのおかげでスムーズに行えました。駆動音は静かですが、繰り出し移動量がある分動作速度は速いとは言えず、被写体によってはややもたつく場面もありました。
撮影を開始して早速目に付いたヒマワリの花を、開放絞りで撮ってみます。開放では柔らかさのある描写で、近年登場したレンズのような鋭さはありませんが、解像力は必要十分なレベルです。明暗差のあるエッジ部分にはわずかにフリンジが発生しました。
絞るとシャープになる、扱いやすい特性です。
開放から2段絞ったf2.8の時点でかなりシャープになり、フリンジの発生も少なくなるようです。
経験的に、開放がわずかに甘くなるレンズは、開放でのボケが美しくなる事が多く、全域でシャープなレンズよりメリハリのある撮影が出来るので嫌いではありません。大口径中望遠レンズであれば尚更です。
前後のボケ方を見るために、絞り開放で真ん中の花にピントを合わせています。なだらかで美しいボケ味です。カメラの補正を切って開放で撮影するとわずかに周辺光量落ちが発生しました。
日中の絞り開放での撮影は、明るすぎてシャッタースピードが追い付かずNDフィルターが欲しくなる所ですが、K-3 Mark IIIが2021年7月のファームウェアアップデートで、電子シャッターによる高速シャッターが使用できるようになったのを思い出し、早速設定してみます。
静止している被写体であればローリングシャッター歪みといった問題も出ないので、明るい大口径レンズでの屋外の撮影に効果的な機能だと実感しました。
でこぼこした突起が印象的な木の質感を引き出そうと、f5.6まで絞って撮影しました。
目で見た以上に硬そうな質感に対して、背景のボケは柔らかく、シャープさと柔らかさが両立されているように見えます。円形絞りの効果で木漏れ日が綺麗な丸い形で描写されている事もスターレンズらしいこだわりと言えるでしょう。
余談ですが、PENTAX(ペンタックス)のレンズで円形絞りが採用されたのは、このレンズが第一号だそうです。
自身で所有して感じている事でもあるのですが、高い解像感を活かしながら目で見た光景の一部を切り取っていく撮り方をしている事が多いです。
硬く無機的でありながら、曲線が美しい車のボディの様な被写体も、美しく滑らかに描写してくれるレンズです。
個人的な趣味が出た作例ですが、プライベートで車を撮る際にもこのレンズを使用する事が多く、離れた位置から自然な形に全体を写したり、この作例のように程よく近寄って特徴的な箇所を切り取ったりと、85mmは幅広い撮り方が出来る焦点距離だと思います。
画質
遠景で絞りの設定を変えて画質の変化を見ます。手持ち撮影のため、構図に若干ずれがあるのはご容赦ください。
絞り込むに従い、着実に描写性能が向上し、F5.6まで絞ると超高性能と言っていいレベルに達します。
裏を返せば開放は眠いという事ですが、この焦点距離のレンズを使うシチュエーションを考えると、開放で極端にシャープに写るよりは、多少眠くなってくれた方が使い易いのではないでしょうか。
その対価として、美しいボケ味を手に入れられるのも、同様に実写では有利なPENTAX (ペンタックス) smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDMの強みとなるでしょう。
まとめ
PENTAX(ペンタックス)らしい、実写に重きを置いた使い易い中望遠レンズだと感じました。2009年発売と新しいレンズではありませんが、PENTAXらしいレンズに対する哲学が感じられて感心しました。
長くPENTAXを愛用している身としては、このレンズが発売された当時のカメラ、例えばK20DやK-7等で使用した際、開放近辺では思った場所にピントが合わず苦労した思い出があります。今回、最新機種のK-3IIIで使ってみて、AF性能の向上やライブビュー機能の充実、映像エンジンの進歩など、ボディ側が進化する事でレンズ本来の性能が更に引き出せるようになったと感じました。
PENTAX(ペンタックス)最高峰のレンズシリーズである「スターレンズ」の中では、比較的リーズナブルな価格の上、中古ならより安価に入手する事もできるので、非常にコスパの高いレンズと言えるでしょう。
PENTAX (ペンタックス) smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDM
Photo & Text by フジヤカメラ 浅葉