PENTAX(ペンタックス) smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR の実写レビューです。
2009年12月に発売されたペンタックスKマウント用のマクロレンズD FA MACRO 100mmF2.8 WRは、軽量コンパクトなフルサイズセンサー対応の本格的マクロレンズとして、現在もペンタックスの定番レンズの一本です。
今回は、コンパクトさや実写を重視した描写性能、美しいボケ味を持ったsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRについて、実写レビューを中心にご紹介します。
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特徴/操作性
PENTAX(ペンタックス) smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRの大きな特徴は、PENTAX(ペンタックス)の単焦点レンズらしく非常にコンパクトだという事です。
コンパクト化を意識した設計で、他社製の中望遠マクロと比べて一回り以上小さく、重量も340gと軽量なレンズに仕上がっています。今回テスト撮影に使用したフルサイズセンサー搭載のデジタル一眼レフカメラK-1 Mark IIに装着すると、レンズが小さすぎてややアンバランスに見える程です。
軽量コンパクトなデザインでありながら、外装はアルミ合金製で、堅牢で高級感もあります。
マクロレンズで気になるマニュアルフォーカス時の操作感は滑らかで、オートフォーカスレンズとしてはかなり良好な部類に入ると思います。
フォーカス方式はペンタックスが長く採用しており、トラブルも少ないボディ内モーター駆動で、AFで合焦後、そのままマニュアルフォーカスができるクイックシフトフォーカスも搭載しています。
絞りリング、フォーカスリミッターは省略されていますが、こういった割り切りがレンズの小型化に寄与しているのでしょう。
smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR は野外での使用を前提に、ある程度過酷な使用条件でも耐えられるよう、簡易防滴機構(WR)を搭載しています。
併せてフロントレンズには汚れの付きにくいSPコーティング(防汚コート)が施され、メンテンナンス性も意識しているあたり、ネイチャーでの愛用者も多いペンタックスらしい配慮です。
マクロレンズでは必須と言える円形絞りも採用されているので、朝露に反射した光など、点光源の表現も美しい円として再現されます。
フィルター径 |
49mm |
最短撮影距離/最大撮影倍率 |
0.303m/1.00倍 |
最小絞り |
F32 |
絞り羽根 |
8枚(円形絞り) |
長さ |
80.5mm |
重量 |
340g |
実写レビュー
PENTAX(ペンタックス) smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR を実写した第一印象は、ボケが非常になめらかで美しい、という事です。
マクロレンズという事で、近接時のボケの美しさは想定内ですが、それ以外の撮影距離でも抜群の表現力を持ったレンズだと感じました。
アウトフォーカスに向かってのなだらかなボケは、円形絞りを採用しているおかげか絞っても汚くならず、更に印象を柔らかいものにしてくれています。実写を重視するペンタックスらしい写りです。
PENTAX(ペンタックス) smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR は、ボケの美しさや基本的な描写性能の高さから、マクロとしてだけでなく、中望遠レンズとしても使い易いレンズです。
コンパクトで軽量なデザインである事も、通常のレンズとしての使い勝手を良くしてくれています。
むしろ、マクロレンズとしてだけ使うのはかなり勿体ないレンズと言えるでしょう。
最短時でも被写体までの距離は12~13cmと、十分なワーキングディスタンスを保った状態での撮影が可能です。
撮影倍率は等倍まで、インナーフォーカスではないので、最短時にはレンズ先端が47mm程レンズが繰り出します。今回の撮影ではフルサイズセンサーのK-1 Mark IIを使いましたが、さらに大きく撮影できるK-3 Mark III等のAPS-Cセンサーのカメラで使ってみるのも面白いかもしれません。
冒頭からマクロレンズなのにマクロらしい写真が殆ど無かったのは、中望遠レンズとしてとても面白いレンズだと思い、中距離~遠距離の撮影に偏ってしまったからです(汗)。
木の上にカラスを見つけ、咄嗟にカメラを構えクイックシフトフォーカスを使ってピントを合わせました。
最近の駆動音の静かなレンズばかり使っていると、ボディ内モーター駆動のギュイーンという音がどこか可愛らしく思えてきて、PENTAX(ペンタックス)のカメラを使っているという実感がわいてきました。
オートフォーカスのスピード、精度は悪く無く、マニュアルフォーカスの際のフォーカスリングの操作も、適度な重みで使いやすいと思います。咄嗟のシャッターチャンスでも、容易に瞳にピントを合わせる事が出来ました。
曇り空、フラットな光の中でも色乗りが良く、透明感のある描写です。
柔らかいボケ味と、シャープなピントのおかげで、リアルで立体感のある描写が楽しめます。
コントラストの低い、光線状態の悪い中での撮影でしたが、レンズの良さとフレーミングしやすい中望遠レンズという事にも助けられて、楽しく撮影出来ました。
光で見せられないなら色で、という訳で緑一色を背景に白い花、という構図にもチャレンジしてみました。
ボケの汚いレンズだと背景がゴチャゴチャとした印象になってしまったと思いますが、PENTAX(ペンタックス) smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR の美しいボケ味が、シンプルな写真を彩ってくれたと思います。
地味な部分ですが、葉っぱの質感の再現などにも、PENTAX(ペンタックス)の実写を重視するレンズ設計の一端が見えるような気がしました。
画質
解像力も高いレンズで、3640万画素のK-1 Mark IIと組み合わせても不足を感じません。
合焦部のキレの良さがボケを際立たせる一因となっており、遠景近景問わずシャープな写りで、開放でもしっかりとした解像力を持っています。
作例3を拡大して解像感を見てみましょう。
開放F2.8での描写ですが、ボケの美しもさることながら、ピントの合った部分のシャープさもなかなかで、コンパクトさにより画質や描写が犠牲になっている、といった心配は一切なさそうです。
次に無限遠に近い、遠景での描写を見てみます。
遠景の描写も秀逸で、中望遠レンズとしても安心して使えます。
立体感も十分以上にあって、リアルな描写です。
フリンジ
全般的に10年以上前の設計である事を感じさせない優秀な描写性能をもった、PENTAX(ペンタックス) smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR ですが、欠点が無いわけではありません。
それは、明暗差が大きい被写体を撮影する際に発生するフリンジで、残念ながらこの部分だけは年代の古さを感じます。
絞りが開放F2.8という事もあって、大きくパープルフリンジが発生してしまいました。
しかし、倍率色収差補正をONにする事と、ある程度絞る事で大幅に軽減させる事が可能です。
以下は同一のフレーミングで、絞りF4、倍率色収差補正ONで撮影した作例となります。
大幅にパープルフリンジの発生が抑えられました。
画像処理ソフトなどを使って後処理で除去する事も可能ですが、失敗するリスクもあるので、JPEG撮影時は収差補正をオンにしておいた方が無難でしょう。
まとめ
PENTAX(ペンタックス) smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRは、リミテッドの名こそ付いていませんが、とても味わい深い面白いレンズ、特にボケの美しさはPENTAX(ペンタックス)のレンズ群の中でも上位に入るレンズだと思います。
フリンジが出やすいというわかりやすい弱点はありますが、倍率色収差補正を使う事で回避出来るので、大きな欠点とはならないでしょう。なにより設計年代を感じさせない高い描写性能は大きな魅力です。
コンパクトで価格も比較的手ごろな、PENTAXユーザーなら1本持っていたい、そんなレンズだと思います。
Photo & Text by フジヤカメラ 田中