Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 の実写レビューです。
高性能タイプのSラインでは無いものの、ショートフランジバックで設計できる事を活かした、非常にコンパクトで高性能な、Zマウント用の標準マクロレンズです。
今回はZマウント用のレンズとしては比較的リーズナブルな価格も魅力なNIKKOR Z MC 50mm f/2.8について、実写レビューを中心にご紹介します。
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Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 特集
特徴/操作性
Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 50mm f/2.8の第一の特徴は、非常にコンパクトかつ軽量に設計されている事です。
画質に定評のあった一眼レフ用のAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDと比較して、重量で約40%(425g→260g)軽量化され、全長も約25%(89mm→66mm)短くなっており、見た目にも大きく小型化されています。
手ぶれ補正は内蔵されていませんが、フルサイズのZシリーズのカメラはボディ内手ぶれ補正が搭載されているので問題にはならないでしょう。
フォーカスは前群繰り出し式を採用しています。
一般的に光学性能を上げやすいと言われる前群繰り出し式は、レンズの全長が変わるという短所はありますが、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8では高性能さとコンパクトさの両方を実現する為に採用されたものと思われます。
オートフォーカスの駆動はステッピングモーターを採用しており高速とまでは言えませんが、ストレス無く撮影出来るレベルで、マクロ撮影においても今回は全てオートフォーカスを使用しました。
防塵防滴に配慮した設計、近接(0.16~0.3m)でのフォーカスリミットスイッチ、繰り出した鏡筒にプリントされた撮影倍率や距離目盛など、細かな部分に手抜きが無いのもニコンのレンズらしい特徴です。
素っ気ない、悪く言えばややチープな外観は少し残念ですが、Zマウントのレンズとしてはリーズナブルな価格なので、ここは目をつぶる箇所なのかもしれません。
フィルター径 |
46mm |
最短撮影距離/最大撮影倍率 |
0.16m/1倍 |
最小絞り |
F16 |
絞り羽根 |
9枚(円形絞り) |
長さ |
66mm |
重量 |
約260g |
実写レビュー
作例:1 f2.8 1/640 ISO100 露出補正±0
Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 の大きな特徴の一つであるコンパクトさは、専用のマクロレンズとしての価値は勿論、気軽に標準レンズとして持ち出せる軽快さにあると思います。
今回は上位機種のZ 7IIに装着して、テスト撮影を行いましたが、高級機を使っているという気負いも無く、気軽な気分で撮影をすすめられました。
あまりの暑さに立ち寄った公園のベンチがふと目に留まりレンズを向ける、そんな余裕はNIKKOR Z MC 50mm f/2.8の軽快さが作り出してくれたものでしょうか?50mmという焦点距離が感覚的に自然な視角に近い事も原因の一つでしょう。
作例:2 f8 1/250 ISO100 露出補正-0.3
50mmという焦点距離は、マクロレンズとしては被写界深度を稼ぎやすいというメリットもあります。
反面、近接撮影時には被写体との距離(ワーキングディスタンス)が短くなるという短所がありますが、スナップ的なマクロ撮影ならむしろ被写体に近づいて撮りたい事も多々あるので、便利に感じる事もしばしばです。
周囲に、ある程度人の目がある撮影では、何を撮っているかがはっきりとアピール出来た方が撮影し易いと感じるからです。
作例:3 f5.6 1/500 ISO100 露出補正±0
NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 のボケ味は柔らかく、ピントが合った部分のシャープさとのコントラストが綺麗です。
中望遠マクロよりも、圧縮効果が小さく、被写界深度も深く出来る標準マクロは、近接でも被写体の全容を見せられる長所がありますが、そんな特徴を最大限活かせるボケ味の良さだと感じました。
Sラインでないのが不思議なくらいの描写力の高さに、Zマウントレンズのレベルの高さをあらためて再認識させられます。
作例:4 f7.1 1/50 ISO140 露出補正±0
今回はマクロレンズで撮影しているというよりも、等倍まで寄れる標準レンズで撮影している事を意識しながら撮影をしました。
最短撮影距離を気にしないでの撮影は思いのほか快適で、目にする光景もどこか普段と違う視点で感じとれたような気がします。
壁に貼られた古びたポスターに描かれた女性がこっちを見ているようで思わずレンズを向けました。ごちゃごちゃした路地裏の感じを出したくて絞りは少し絞り込んで撮影していますが、背景が広めに入る標準の画角を活かせたんではないかと思います。
作例:5 f2.8 1/250 ISO100 露出補正-0.3
開放F2.8は単焦点レンズとしては物足りないと感じる方もいると思いますが、実際には結構大きくボケるので頃合いの使い易さと言えるかもしれません。
スナップのような撮影では、50mmという焦点距離も長めに感じるので、ボケの大きさと併せて構図をまとめ易いスペックです。
当ブログでも何度も訪れている路地ですが、来るたびに持って来るレンズが違う事もあり、新しい撮り方出来ます。写真の面白さや、写真に占める機材の大切さを感じて、沼の深さを思い知りました。
作例:6 f3.3 1/160 ISO100 露出補正-0.3
NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 はショーウィンドウの撮影にも向いています。
ショーウィンドウを撮影する際の難しさは、ガラス面に撮影者が写り込んでしまう事ですが、50mmならガラスに近づいて撮れるので、映り込みをある程度抑制する事が出来るのです。
又、逆に写り込みを写真に活かしたい時には狭い路地でも引きを取りやすいというメリットもあり、使い易く感じました。
作例:7 f4.5 1/50 ISO500 露出補正-0.3
実はNikon(ニコン)のレンズのボケ味について、優等生過ぎて個人的に好きでは無いという印象を持った時期がありました。
しかし、今回 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 を使ってみて、全くの勘違いだったと感じました。シャープなピントと素直で美しいボケ味はやはり写真の王道で、レンズごとの差が少ない事と併せて、非常に使い易いレンズシステムと言えるでしょう。
Sラインではないからか、Zマウントレンズとしてはリーズナブルな価格も魅力で、Nikon(ニコン)Zシステムのユーザーなら是非持っていたいおすすめのレンズです。
作例:8 f10 1/320 ISO100 露出補正±0
Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 は近距離だけでなく遠景でも十分以上にシャープなレンズで、特に絞り込む事で驚くほどの解像感を見せてくれます。
周辺部までシャープな画質はZ 7IIの高画素にも十分対応出来るレベルです。
同じくZ用の105mmのマクロレンズが高級タイプのSラインである事から性能的に劣るのではと考えるユーザーもいると思いますが、そういった心配は不要だと思います。
画質
Nikon(ニコン) Z用のレンズという事でシャープで抜けのいい高性能なレンズで、勿論高画素機のZ 7IIにも十分以上に対応出来るレベルにあります。
拡大して画質を見てみましょう。
枠内を拡大
非常にシャープで抜けのいい描写性能です。作例からわかるとおりシャープなだけでなくボケの美しさも特筆すべき点で、解像感とシャープネスの両方を高いレベルで達成しているのは、Sラインのレンズと共通な点です。
まとめ
Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 は、コンパクトで高性能な、とても使い易いマクロレンズだと感じました。
Sラインでもなく、ナノクリスタルコートも採用されない少し地味なスペックの為、どこかに廉価版のレンズなのでは?というイメージをもっていたのですが、予想を全く覆す高性能なレンズです。50mmの焦点距離は、スナップマクロといった趣の使い易さを改めて感じさせてくれて、ボケの美しさも手伝い、標準レンズの代わりになるのではと思ったほどです。
Zマウントのレンズとしては、価格もリーズナブルな事から、Nikon(ニコン)Zマウントユーザーなら、持っていて損のない優秀なレンズだと思います。
Nikon(ニコン) NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 特集
Photo & Text by フジヤカメラ 北原