TAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060) の実写レビューです。
開放では柔らかく、絞り込む事で非常にシャープになる描写の特性は、大口径広角ズームとしては扱いやすく、表現に幅をもたせやすいレンズだと思います。又、あまり話題になりませんが、ズームの動きが滑らかで扱い易い事から、動画撮影にも使えるレンズだと思います。
今回はそんないぶし銀の名玉となりそうな予感のするTAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)について、実写レビューを中心にご紹介します。
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TAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)
特徴/操作性
TAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060) の特徴の一つは、高性能な大口径F2.8のレンズでありながら、非常にコンパクトにデザインされている事です。
35mm判換算で約16mmから30mmまでの広角ズームレンズは、ある程度ズーム比を限定する事で驚きのコンパクトさを実現しているようです。
TAMRON(タムロン)には以前からズーム比をわずかに狭くする事で同じクラスの他メーカーのレンズと比較して驚異的に小さいレンズシリーズがありましたが、11-20mm F/2.8 Di III-A RXDもそういった流れをくんだ設計がされているのかもしれません。
今回のテスト撮影には、コスパの高さから人気のSONY α6400を使いましたが、大きさ、デザインのマッチングも良く使い易い組み合わせでした。
少し前であれば、カメラは小さいけれどレンズが大きいから、APS-Cのフォーマットもトータルとしてはそれ程小さい事の恩恵を受けないのでは?と思える事もありましたが、こういったレンズの登場でそういったイメージも大きく様変わりして来ました。
余談ですが、同社の同様のコンセプトのレンズ70-180mm F2.8は私の愛用レンズであり、あまりカメラを大袈裟にしたくない、それでいて全域で明るい大口径ズームレンズはライブ撮影などで大活躍してくれています。
以前からTAMRON(タムロン)のレンズを使う際に好感を持っていた点に、ズームリングの操作感が滑らかな事があげられます。
これは風景写真などのフルフレーミングが原則で、画角の厳密な微調整が必要な撮影は勿論、撮影中のズームリングの操作が映像表現として記録される動画撮影でも使い易い特徴だと思います。明るい広角ズームレンズは動画では使い易いレンズなので、これは嬉しいポイントです。
長らくSONY APS-Cサイズセンサー搭載のカメラ用の広角ズームと言えばE10-18mm F4が定番として長く君臨して来ましたが、TAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)は、それに真っ向から対抗出来るレンズだと思います。
フィルター径 |
67mm |
最短撮影距離/最大撮影倍率 |
0.15m (WIDE)-0.24m (TELE)/1:4 (WIDE) / 1:7.6 (TELE) |
最小絞り |
F16 |
絞り羽根 |
7枚(円形絞り) |
マウント |
ソニーEマウント用 |
長さ |
86.2mm |
重量 |
335g |
実写レビュー
開放では柔らか目の描写で、絞り込むほどに非常にシャープになってくるレンズです。このカットではF8まで絞っていますが、鋭い描写を見せてくれました。
青空を高く青く表現したかったので、若干露出をアンダーにしてビルのディテールよりも空の青さを優先しました。
ワイド側端の11mmを使っている事もあり、遠近感が大きく誇張されて、それ程高くないビルがまるで高層ビルのように実物以上に高く表現されました。
画角が広い事による情報量の多さは超広角レンズの強みの一つで、近接でも背景のボケはそれほど大きくなく、ボケた中にも何が写っているのかわかる事がこれを後押しします。
ある程度の偶然が介在するのは写真の面白さの一つですが、紫陽花の花をフレーミングして背景にモノレールが来るのを待っていたら、たまたまスポーツ用の自転車が通りかかり、咄嗟にシャッターを切りました。
こんな偶然に出会えるのも画角が広い広角レンズならではと言えるでしょう。
ワイドレンズらしからぬボケ味の綺麗さは特に開放時に顕著で、TAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)の良さの一つになっています。
APS-Cサイズセンサー用の広角レンズなので、ボケは大きくありませんが、被写体にカメラを近づけて撮れば、開放F2.8の大口径である事も手伝って、前後をある程度ボカして撮影をする事も可能です。
ボケの綺麗さが、青い色ガラス越しの光をより美しく見せてくれました。
ある程度絞り込むと素晴らしくシャープになる事がTAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)の大きな特徴の一つです。
超広角ズームらしく周辺部分はわずかに甘くなりますが、それも中心部分がシャープ過ぎる故、と感じてしまうほどのレベルです。この写真でもビルのタイルが一枚一枚分解され且つ殆ど眠さを感じさせないシャープさで再現されています。
まるで水鏡のようなビルの窓ガラスに移った青空や雲が夏の到来を感じさせてくれます。
大きな曲面を持ったレンズを使わなければならない超広角レンズは経験的にフレアやゴーストが入り易い傾向があります。広い範囲から光を取り込む事もそれに拍車をかけているのでしょう。
この写真でも小さくゴーストが入っていますが、逆に光の清々しさが強調される結果となり、レンズの性能としては倦厭されるゴーストも使い方次第だと思います。太陽がフレーミングされる写真も撮りましたが、コントラストが低下する事も無く、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)の逆光耐性は高い方だと思います。
望遠端の20mmは35mm判換算で30mmとなり、スナップ撮影などでも構図をまとめ易い画角になって来ます。最も大きくボケる焦点距離でもあり、開放で積極的にボケを大きくして撮りたい時に使えます。
開放F値が大きい事で、広角端との表現のギャップが生まれて撮影が楽しくなりました。
これは個人的なクセですが、ズームレンズではどうしても焦点距離の端っこを使ってしまいがちで、今回も11mmで撮った写真と、20mmで撮った写真が大半を占めてしまいました。
コンクリートジャングルにひっそりと咲く紫陽花の花をローアングルで狙います。誇張された遠近感のおかげで奥行き感のある写真になりました。
F2.8の明るさが近接での撮影に活きて、ちょうどいいボケ具合になったと思います。F4ではここまで背景がボケないので、もう少しごちゃごちゃしてしまったでしょう。
それにしても広角レンズとは思えないボケの柔らかさ、綺麗さですね。
今回の撮影ではカメラ内の歪曲収差補正は常時AUTOにしており、当然直線の歪みはほぼ完全に補正されています。
街中での撮影は直線が多く歪みが気になるので、積極的にカメラ内補正を使いたいところです。
ひと昔前であれば、広角レンズのレビューに歪曲収差や周辺光量落ちの有無を書くのが普通だったと思いますが、そういった事も昔話になりつつあるのかもしれません。
画質
開放では柔らかく、絞り込むと驚くほどシャープになるレンズです。開放ではボケの美しさを、絞り込んだ際にはカミソリのような鋭い描写を、それぞれ作画に活かせる広角ズームとしては理想的な性能だと思います。
拡大して解像感を見てみましょう。
開放では柔らかい描写で、これがボケの綺麗さに大きく寄与しているものと思われます。
次にF8まで絞り込んだ際の描写を見てみます。
壁面のタイルが一枚一枚克明に再現されていて驚くほどシャープです。ワイド端11mmで撮影していますが、四隅に近い部分でも殆ど描写力に変化が無い、高い画質の均一性と解像力、シャープネスを持ったレンズです。
開放では周辺部がわずかに甘くなりますが、この写真のようにF8程度まで絞る事で、驚くほどシャープで抜けのいい描写になります。
まとめ
コンパクトで非常に使い易いレンズだと感じました。広角ズームとして使い易い画質の傾向(開放で柔らかく絞ると非常にシャープ)にも好感が持てます。
開放F2.8である事を忘れてしまうようなコンパクトさは、ズームリングの操作性の良さや、動画でも使い易い画角と併せて、動画で使う事を前提に設計されたのではないかとさえ思える、動画撮影にもおススメ出来るレンズです。
TAMRON(タムロン)の製品は爆発的ヒットを飛ばすものは少ないですが、いずれも高性能で堅実な作りとなっており、TAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)もそんないぶし銀の良さがあるレンズだと思います。
TAMRON(タムロン) 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)
Photo & Text by フジヤカメラ 北原