FUJIFILM(富士フイルム) フジノンレンズ XF27mmF2.8 は、いわゆるパンケーキレンズと呼ばれる単焦点の薄型レンズです。新型のWRがありますが、今回レビューするのは光学設計が同じ旧型になります。
明るさこそ単焦点レンズとしては控えめなF2.8ですが、大きさに似合わない高い画質で、FUJIFILM(富士フイルム) Xマウントの創成期から隠れた人気レンズとなっています。
今回は、小粒でもピリリと辛い隠れた実力派レンズを、実写レビューを中心にご紹介します。
FUJIFILM(富士フイルム) フジノンレンズ XF27mmF2.8はAPS-Cサイズセンサーを採用したFUJIFILM Xマウントのレンズで、35mm判換算で41mmと非常に汎用性が高くスナップなどに好まれる、わずかに画角の広い標準レンズとなります。
特徴は見た目のとおり非常にコンパクトなレンズだという事で、併せてパンケーキレンズの常識を覆す高性能なレンズでもあります。
開放F値は2.8と控え目で、小型化優先の為か絞りリングは省略されており、少し残念です(新型のWRでは絞りリングが搭載されました!)。
レンズ本体の操作部はバイワイヤ式のMFリングのみと、余計な物が一切無くすっきりした外観で、レンズにより小型な印象を与えます。
今回テストボディに使ったX-S10のグリップの内側に収まるような薄さはまさにパンケーキレンズで、バックへの収まりも良さそうです。
汎用性の高い画角と併せて、普段から持ち歩く標準レンズとしてこのコンパクトさは大きなメリットと言えるでしょう。
フォーカス速度は速くもなく遅くもなく普通といったところです。
装着するボディに依存する部分が大きく、Xマウント初期のX-PRO1やX-E1で使うのと、X-S10等の最近のボディで使うのでは印象が大きく違うと思います。
フォーカス音はやや大きめで、その為にやや動きに滑らかさが無い印象を与えていると感じました。作動音の大きさから動画撮影には向いていないと言えますが、最近のFUJIFILM(富士フイルム)のカメラが他メーカーと比較しても高い動画性能を持っている事を考えると少々残念な部分です。
フィルター径 | 39mm | 最短撮影距離/最大撮影倍率 | 通常時0.6m/マクロ時0.34m |
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最小絞り | F16 | 絞り羽根 | 7枚(円形絞り) |
長さ | 23mm | 重量 | 約78g |
わたしがついつい撮ってしまう被写体の一つ、スーパーカブです。実にかっこいいですね(笑)。カブが停まっているだけで周囲の風景までレトロな、懐かしい感じがしてしまいます。
XF27mmF2.8の特徴や用途を考えるとボケ味云々言うようなレンズでもないような気がしますが、なかなかどうして綺麗なボケ味です。
ボケ味まで考慮して設計された大口径レンズと比べるのはさすがに酷ですが、この大きさを考えると大健闘していると思います。好印象です。
苔生した木を下からあおって撮り、存在感を強調してみました。標準レンズと比べてたったの9mmしか違わないのに、撮り方を少し変えるだけで、より広角っぽい撮り方ができます。
近づいて撮影すれば1カット目のようにある程度背景をボカす事もできるので、表現の幅が広くとても使いやすい焦点距離です。
上記カットは樹皮、表面の苔をしっかり見せたかったのでF8まで絞っています。APS-Cサイズセンサーカメラ用のレンズなので、実焦点距離が27mmと短くF8でも十分な被写界深度をかせぐ事が出来ました。又、絞り込んだ事でピント面のシャープさが更に増しています。
41mm(35mm判換算)は肉眼の遠近感にとても近いので、肉眼とファインダー像のイメージにあまり相違が無く、寄ったり引いたりして画角と構図を調整すれば感覚通りに撮りやすい焦点距離です。使ううちに、ファインダー上に広がる景色が構える前からイメージしやすいというのも性能の一つかもしれません。
XF27mmF2.8の小さな短所は最短撮影距離が比較的長い事で、上記カットでウインドウ内の招き猫を撮る際には最短撮影距離が気になりました。できればもう10cmくらい寄れたら、出先の飲食店でも便利なのになぁと感じます。
それ以外には今回の撮影でスペック的に不満を感じる部分は無く、とても楽しく撮影できました。色もフジらしく綺麗な色合いで、淡い色から濃い色どれも美しく、階調も滑らかで綺麗です。
どちらも光線状態の厳しい条件での撮影ですが、フレアなどは殆ど発生せず逆光への耐性の高さが伝わると思います。画面隅に太陽を入れてもフレアやゴーストの発生は無く、とても優秀です。
今回の撮影では二枚目の写真のような、フレームのすぐ外に太陽があるという条件でのみ、フレアが発生しました。この程度であれば手でハレ切りをしたり、フードを用意する等すれば簡単に対処できるでしょう。
なおXF27mmF2.8発売時には専用フードの用意はありませんでしたが、新型の発売に合わせて金属製のドーム型フードが発売されており、旧タイプにも装着出来るようなので、そちらを用意するのも良いでしょう。
F値を欲張っていないせいか開放でもフリンジは無く、抜けの良い写真が撮れました。
美しい色合いに魅かれて、ついついやってしまいがちな逆光、透過光という厳しい光線状態での撮影でも、安心してシャッターを切る事ができます。
画質についても定評のあるレンズです。作例1のカブの写真を拡大して解像感を見てみましょう。
ピントは手前のスーパーカブのエンブレム部分に合わせています。ピント面はとてもシャープで、開放で撮影している事を感じさせません。
エンブレム部分を拡大してみても表面の質感まで表現されていてシャープです。
Photo & Text by フジヤカメラ 田中