OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroの実写レビューです。
2016年11月に発売されたマイクロフォーサーズマウント用のマクロレンズは、OLYMPUS(オリンパス)らしいコンパクトなデザインで、普段から携行したくなるレンズです。等倍を超える近接能力や、焦点距離が短い事による被写界深度の深さなど、マイクロフォーズの特徴を活かした撮影が可能です。
今回はそんなM.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroについてマクロから一般撮影まで実写レビューを中心にご紹介したいと思います。
M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroの特徴は、最大撮影倍率1.25倍と、一般的なマクロレンズでは難しい等倍を超える撮影倍率を実現している事です。これは35mm判換算で2.5倍の撮影倍率に相当し、いつもとは違うミクロの世界を撮影する事が出来ます。
等倍を超えるマクロは一般的に難しい撮影と言えます。しかしM.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroはマクロレンズとしては焦点距離が短く被写界深度を稼ぎやすいので、近接撮影でも絞り込みが少なくてすみ、手ぶれを起こしずらい、初心者にも扱い易いレンズとなっています。
最短撮影距離は95mm、レンズ先端からのワーキングディスタンスは10mm程と非常に短いので、前玉保護の為にフィルターの装着は必須と言えるでしょう。
もう一つの特徴は非常にコンパクトに設計されている事です。
全長60mm、質量128gと非常に軽量コンパクトな事は、持ち歩きは勿論ローアングルなど無理な体制で撮影するケースが多いマクロ撮影のストレスを軽減してくれるでしょう。インナーフォーカスを採用しており、近接時でもレンズの全長が変わらず、被写体との距離感もつかみやすい事も、使い易さを感じる要因の一つです。
勿論、5軸手ぶれ補正にも対応しており、マクロ撮影で発生し易いシフトブレも強力に補正、手持ちでのマクロ撮影の成功率を大幅に高めてくれます。
操作関係はシンプルにフォーカスリングのみのシンプルなデザインとなっています。
フォーカスリングのトルクは適度な重さのある扱いやすいもので、マニュアルフォーカスには電気駆動によるバイワイヤ方式を採用していますが、クセのない自然な操作感です。
バイワイヤ方式にはフォーカスリングの操作に対してピントの移動が一定でなかったり、お世辞にも操作し易いとは言い難い癖のあるものもあるので、これには安心しました。さすがマクロに強いと言われるOLYMPUS(オリンパス)のレンズです。
フィルター径 | 46mm | 最短撮影距離/最大撮影倍率 | 0.095m/1.25倍(35mm判換算 2.5倍相当) |
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最小絞り | F22 | 絞り羽根 | 7枚(円形絞り) |
長さ | 60mm | 重量 | 128g |
テストボディには、作例1~3にはOM-D E-M1 Mark IIIを、それ以降はMark IIを使用しています。ピクチャーモードはナチュラル、ホワイトバランスはオート、各種補正はOFFに設定、記録形式はJPEGです。
生憎の雨模様の中での撮影でしたが、通常なら写真を撮るにはあまり好材料とはならない天候でも、楽しめる、むしろ向いていると言えるのがマクロ撮影の面白さです。
遠出する事無く、近所の公園でも十分に撮影を楽しめますし、いい写真をものに出来る事も少なくないので、雨のマクロ撮影はおすすめのシチュエーションと言えます。
例えば、濡れたタンポポの綿毛のようにただ撮るだけではあまり面白味のない被写体でもマクロレンズを使って撮れば神秘の世界が広がります。
OLYMPUS(オリンパス) M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroの等倍を超える近接能力が、月並みな被写体をグッと面白い写真に変えてくれました。
雨の中のマクロ撮影で一番困るのは、シャッタースピードが遅くなってしまう事です。曇り空で光が足りない上に、被写界深度を稼ぐ為に絞り込む必要があり、さらに露出倍数がかかる(近接になればなるほど実効F値は暗くなる)ので、ブレないように撮るのに苦労させられます。
そんな中、マイクロフォーサーズの広い被写界深度と、OLYMPUS(オリンパス)の強力な手振れ補正は強力な味方となってくれました。このカットでも、極端な高感度を使う事無くノイズの少ない滑らかな写真が撮れました。
水玉は雨の日のマクロ撮影では定番と言っていい被写体です。とは言え、等倍までのマクロレンズでも迫力ある画が撮れるような大きな水玉が都合よくあるのはまれで、いい水玉を探すのは結構大変なのではないでしょうか。
M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroの強力な接写能力は、普段なら見落とすような小さな水玉でも、大きく迫力のある画が撮れるのです。
このカットの水玉は、シロツメクサの小さな葉の上に乗ったもので、フルサイズセンサー用の等倍までのマクロレンズでは、ここまで大きく写すのは難しいと思います。やはりマイクロフォーサーズは、マクロ撮影に適したシステムと言えるでしょう。
ボケの大きな写真が多くなるマクロ撮影では、ボケの質が気になる所ですが、それについても心配なさそうです。
丸ボケが周辺まできれいな円形を保ってるのもこのレンズの特徴で、F3.5と開放F値が明るくはないものの、開放でも口径食が少ないのはマクロレンズとしては使い易い特性です。
さて、ここからは一般撮影をしていきたいと思います。M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroは、コンパクトな標準レンズとしても十分使えます。
F3.5の開放F値は明るくはありませんが、単焦点レンズらしく安定した描写のレンズで、開放から解像力は高く1~2段絞ったF5.6前後に性能のピークを迎え、以降F11くらいまで大きな変化無く高描写を維持してくれました。写真はF5.6まで絞っていますが、葉の一枚一枚まで分解しており、高い描写性能を持ったレンズである事が見て取れるでしょう。
絞り込んでいくとF16辺りで回折の影響を受けてやや解像力が低下するので、絞り込んでもF11前後までにするのがおすすめです。
前のカットととほぼ同じ構図の写真ですが、こちらはF22まで絞っています。ある一定の絞りを超えると光芒にゴーストが発生するクセがあるようです。
この構図では、開放からF5.6辺りまでは太陽等の強力な光源を直に入れてもコントラストの低下やゴーストはほぼ見られませんでしたが、F8以降は強い光源が入ると光芒にゴーストが発生してしまいました。
開放でも十分な解像力があるので、強い点光源が入るシチュエーションでは、大きく絞り込む事は避けて、F5.6前後の一番おいしいあたりで撮影した方がよさそうです。
中間距離(このカットでは樹の幹まで3m程度)の描写も近接・遠景と変わらず絞り全域でしっかりしています。
開放F値が控えめなのでこの距離だと大きなボケは望めませんが、距離や絞りによる画質の変化が少ないレンズは、描写に癖が無く被写体を選ばず撮影できそうです。
画角も60mm相当と少し画角の狭い標準レンズといったところで、主題を絞り易いことから、マクロ兼普段使いの標準レンズとしても活躍できるでしょう。
拡大して解像感を見てみます。
ここまで拡大するとさすがにマイクロフォーサーズの限界を多少感じますが、それでも葉の一枚一枚まで分解出来ているのは立派で、単焦点レンズらしい高い描写性能を持っていると言えます。
比較的シンプルな設計のレンズですが、明暗差のある場所にフリンジが出ていないのも秀逸です。
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Photo & Text by フジヤカメラ 田中