SIGMA(シグマ) 35mm F1.4 DG HSM|Art の実写レビューです。
2012年9月に発表された35mm F1.4 DG HSM|Artは、今ではすっかり定着した3つのプロダクトラインの名称を初めて冠したレンズで、圧倒的な描写性能と芸術的表現力に最大の力点をおいて開発されたArtラインに属します。
このレンズを皮切りに、SIGMA(シグマ)レンズに対する評価が大きく変わっただけでなく、競合他社の製品にも大きな影響を与えました。
発表から約9年(こんなに経過していた事に驚いています)を迎えるレンズの実力を改めて見てみようと思います。
サードパーティー製レンズは様々なマウントに対応している事が一般的ですが、SIGMA(シグマ) 35mm F1.4 DG HSM|Artは、販売終了した物も含めると7種類のマウントがラインナップされています。
一眼レフ用としてはキヤノンEF・ニコンF・シグマSA・ペンタックスK・ソニーA(販売終了)の5種類、光学系はそのままでマウント部分を延長したミラーレス用として、Lマウント・ソニーEの2種類があります。
ちなみにキヤノンRF・ニコンZマウントでも、各メーカーの純正マウントアダプターを介して使用する事ができます。
11群13枚というレンズ構成という事もあり、手に取るとずっしりと重量感が伝わってきます。とは言え、開放F1.4という明るさを考えれば、大き過ぎず重過ぎずといった所でしょうか。
以降の、SIGMA(シグマ)Artラインのレンズは、他メーカーと比較して大型になるケースが多かった事を考えると、むしろコンパクトにすら感じます。
ピントリングの動作もオートフォーカスのレンズとしては、非常に良好です。
シンプルながら高級感のあるデザインで、メーカー問わずどのボディに付けてもよく似合います。
以降続くSIGMA(シグマ)Artシリーズの基礎を作ったデザインは、凝縮間のあるしっかりとした作りで、現在でも同社の高いビルドクォリティに継承されています。
当時のレンズメーカー製レンズとしては高額だったと思いますが、品質により支持を得るよう製品開発の舵を切った事を象徴するレンズだったと言えるでしょう。
フィルター径 | 67mm | 最短撮影距離/最大撮影倍率 | 30cm/1:5.2 |
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最小絞り | F16 | 絞り羽根 | 9枚 (円形絞り) |
長さ | 94mm(シグマ SA マウント) | 重量 | 665g(シグマ SA マウント) |
今回のレビューはペンタックスKマウント用を使用した上、ボディをフルサイズのPENTAX(ペンタックス) K-1 Mark IIとAPS-CのPENTAX(ペンタックス) KPの2台を使用しました。ちなみにレンズとKPは普段から使い慣れている自身の機材です。
撮影日は残念ながらあいにくの雨模様で、写真を撮るのが少し億劫でしたが、雨の日の写真は雨の日にしか撮れない!と気を取り直してスナップ撮影に出かけました。
共通設定としてカスタムイメージは全てナチュラル、カメラメニュー内のレンズ補正はそもそも非対応で選択できないため、何も補正がかからないレンズ本来の状態となります。
まずはフルサイズのPENTAX(ペンタックス) K-1 Mark IIでの作例です。
銀座駅の出口を上がった所から撮影スタート。大きく絞り込まなくても画面の全域で高い解像感を得られています。
撮影データを見てお気づきの方もいるかもしれませんが、ここまで全て露出補正をわずかにマイナス方向にかけています。
個人的な感覚ですが、SIGMA(シグマ) 35mm F1.4 DG HSM|Artに限らず、シグマ製レンズは適正露出でも若干オーバー目に写る事があり、撮影状況にもよりますが-0.3が自分の中でデフォルト設定のようになっています。
ここはサードパーティー製ゆえの誤差の様な物なのかもしれません。
ビル最上階の展望デッキから。ガラス越しですがその影響を受けた感じはしません。
ここからは下町エリアへ場所を移動して撮影しました。雨に濡れた錆の質感が目を惹く一方で、なだらかなボケ感が心地良いです。
絞り開放、そして明暗差で四隅の周辺光量落ちが顕著に表れましたが、補正はせずにむしろこのままにしたいとも思えてきます。
ここからはAPS-CのPENTAX(ペンタックス)KPでの作例です。APS-Cセンサー搭載のボディで使用すると、焦点距離が約1.5倍のおよそ50mm相当、つまり標準レンズの画角となります。
コンパクトなボディに対してレンズがやや大柄に感じられますが、あえてこのような使い方を紹介するのにはもちろん理由があります。APS-Cサイズセンサーは、レンズが作り出すイメージサークルの真ん中部分だけを使う事になるため、周辺部分の画質は気にせず、特に性能が良い中心に近い部分だけを切り取る事が出来ます。
つまり、レンズの一番美味しい所だけを使った撮影が可能となるのです。
雨による影響が少ない作例8のコマを拡大して画質面を見ます。
絞り開放という事もありピントが合っている部分を境に、手前側と奥側に紫と緑のカラーフリンジが見受けられます。
しかし、程度としてはそれほど酷いものではなく、PC上でRAW現像を行う際に容易に除去できるでしょう。むしろ、カメラ側で電子的な補正が適用できない状況下としてはよく抑えられている方だと言えるでしょう。
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Photo & Text by フジヤカメラ 浅葉