SONY(ソニー)のフルサイズカメラ対応の大口径広角レンズ FE 35mm F1.4 GM の実写レビューです。
SONY(ソニー)には、Zeiss(ツァイス)ブランドの同スペックのレンズがありますが、かなり大柄なレンズで取り回しの悪さが少し気になるものでした。新たに発売されたFE 35mm F1.4 GMはコンパクトな設計で、それでいて高性能なレンズとなっています。
又、他のGM(Gマスター)レンズと操作性などが共通である事も、何本かのレンズを並行して使う際にはメリットと言えるでしょう。
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SONY(ソニー) FE 35mm F1.4 GM 特集
特徴/操作性
一番の特徴はトップレベルの描写性能です。
最近のGマスターレンズは非常に高性能なものが多く、Zeissネームのレンズに見劣りしないどころか凌駕しているものさえあり、国産のレンズ設計の底力を感じさせられます。
Gマスターは、デザインや使用感がシリーズで共通なのも、数本のレンズを並行して使うプロカメラマンやハイアマチュアには実用性の高い部分だと思います。
手前から絞りリング、フォーカスリングと配置するデザインは既にGマスターをお使いのユーザーにはお馴染みのもので、操作に戸惑う事は無いでしょう。
写真はテストボディに使ったα7RIVとの組み合わせですが、サイズ的なバランスも良く、見た目にも美しく見えます。
レンズの形で撮る訳ではありませんが、バランスのとれたデザインは大なり小なり写真を撮るモチベーションにつながると思います。
フードはシンプルなストレートタイプで、不用意な落下を防ぐ為のロックボタン付きです。
フレアやゴーストの発生を抑制する為なのは勿論、ぶつけるなどの衝撃からある程度レンズ本体を守るという意味でも、フードは装着しての使用が基本だと思います。
とは言え、レンズ単体でのコンパクトさも魅力なので、ユーザーによってはフード無しで使う方もいるんではないでしょうか。フレアやゴーストの発生にも強いレンズである点もポイントです。
フィルター径 |
67mm |
最短撮影距離 |
0.27m(AF時)/0.25m(MF時) |
最大撮影倍率 |
0.23倍(AF時)/0.26倍(MF時) |
最小絞り |
F16 |
絞り羽根 |
11枚(円形絞り) |
長さ |
96mm |
重量 |
524g |
実写レビュー
作例1:f1.4 1/5000 ISO100 露出補正+0.7
5つ並んだプラスチックのイスが、なんだか家族のように見えてシャッターを切りました。
スナップ写真用のレンズとして好まれる事が多い35mmという画角は、ちょっと気を許すと散漫な写真になってしまうので、独特の難しさがあると感じる事があります。
気軽に持ち歩ける、とは言い難いSONY(ソニー) FE 35mm F1.4 GM の重量感が、適度に緊張感を高めてくれました。
作例2:f1.4 1/640 ISO100 露出補正±0
広角レンズは思い切って被写体に近づいて撮りたくなる事が多くあります。放射状に伸びた葉の中にカメラを入れてシャッターを切りました。
少し誇張された遠近感と、F1.4の薄いピントのおかげで、どこか抽象的な模様のような写真になりました。FE 35mm F1.4 GMの最短撮影距離は0.27m(AF時)なので、被写体に十分近づく事が出来ます。
SONY(ソニー)α7RIVの高画素故の豊かな諧調と、レンズの持つシャープネス、抜けの良さがうまく写真に乗った気がします。
作例3:f1.4 1/1000 ISO100 露出補正+0.3
ショーウインドウの中のジッポーライターを撮りました。被写体にピントを合わせつつガラスに映った景色の色合いを画に被せる為には、ボケを大きくとれる大口径レンズが有利です。
特に35mmくらいの広角レンズは、背景があまり整理されず適度に広く入るので、使い易い画角です。
オートフォーカスが、ガラス面を拾ってしまう事が多々ありますが、FE 35mm F1.4 GMのマニュアルフォーカスは操作感も良好なのでストレスなくフォーカスに集中出来ます。
作例4:f1.4 1/4000 ISO100 露出補正±0
寒い時期の撮影では、無意識のうちに陽の光を撮っているような気がします。なんという事もない道端のベンチですが、背もたれの部分にだけあたった陽の光に、温もりを感じてシャッターを切りました。
陽のあたった部分だけにピントが合うようにしましたが、開放F1.4のレンズのおかげで十分なボケを出す事が出来ました。
例えば、手持ちのレンズが28mm F2.8だったら、この写真は撮らなかったと思います。こんな時、どんなレンズをセレクトするかの重要さと、表現力の幅が広いF値の明るいレンズはやはり魅力だと感じます。
作例5:f1.4 1/640 ISO100 露出補正+0.7
解像感を見るテスト用写真を意識して、日陰のコントラストの低い条件で、開放を使って撮影していますが、眠くなる事もなくさすがGマスターという高い描写力を見せてくれました。
このカットではボディ内レンズ補正をAUTOに設定しているので、周辺光量の低下はみとめられませんが、補正無しで撮ると周辺光量が自然に落ちて少しレトロな描写が楽しめます。
個人的には周辺光量落ちを表現として活かしたい時もあるので、好みの写りです。そういえば、名玉が多数あるヤシカコンタックス時代のZeissレンズも、周辺光量が落ちるものが多かったのを思い出します。
作例6:f1.4 1/3200 ISO100 露出補正±0
NO PARKINGの看板をシンプルに正面から撮影しました。だだ撮るだけだとシンプル過ぎるような気がしたので、敢えて周辺光量補正を切って、画面に変化をつけてみました。
賛否はさておき、こういった遊びが出来る方がレンズとしては面白いのではないでしょうか。
後から画像処理で付け加える事も出来ますが、レンズ本来の写りは自然で作りものっぽくならないのがいいところだと思います。
作例7:f1.4 1/5000 ISO100 露出補正±0
東京都福生市の横田基地周辺は、アメリカのような雑貨店やレストランが並びフォトジェニックで、被写体には困りません。こういったウインドウは日本ではあまり見かけませんね。
SONY(ソニー) FE 35mm F1.4 GMのボケ味は、個性的ではありませんが、素直で使い易い美しいボケだと思います。
テスト撮影という事で、開放で撮る事にこだわった訳ではないのですが、気付けばF1.4で撮っている事がほとんどでした。
作例8:f1.4 1/1250 ISO100 露出補正±0
カメラをしまおうと思ったところで発見した落書き(?)です。色といい、同じポーズで不気味に笑うキャラクターといい、ちょっとシュールな雰囲気で思わずレンズを向けました。
取り回しの悪いカメラ、レンズならそのままカメラバックにしまってしまったかもしれませんが、大口径レンズとしては大きく無いFE 35mm F1.4 GMだったからこそ、おもいとどまって撮った一枚と言えるかもしれません。
画質
ファインダーを覗いて、マニュアルフォーカスでピントを合わせていると、レンズの性能がわかる事があります。ピントが合った場所がシャープ過ぎて、ほんのちょっとのズレが確認出来るからです。
SONY(ソニー) FE 35mm F1.4 GM は、そういった事が感じられるレンズでした。論より証拠、拡大して解像感を見てみたいと思います。
枠内を拡大
非常にシャープで高い解像感を持っている事は勿論、空気感が凄いです。拡大して切り出した画像である事を殆ど感じさせないレベルです。又、広角の35mmとは言え、開放ではピントが狭く、このカットでも本来はあと2絞り以上は絞って撮るのが正解だったと思います。
これぞGマスターという、非常に高いレベルの描写性能です。
まとめ
SONY(ソニー) FE 35mm F1.4 GMは、6000万画素の超高画素機にも対応出来る非常に高い描写性能を持ちながら、コンパクトにまとまった使い易いレンズでした。あらゆる意味でほぼ欠点の無いハイレベルなレンズです。
敢えて欠点を挙げるなら、Gマスターシリーズの高性能さに少し慣れてしまって、驚きが薄れたという事くらいで、逆に言えば高性能なレンズが欲しければGマスターを選んでおけばいい、という安心感のあるシリーズと言えます。
システムとしての深化を続けるSONY(ソニー)の安定感を、改めて認識させられるレンズでした。
SONY(ソニー) FE 35mm F1.4 GM 特集
Photo & Text by フジヤカメラ 北原