SONY Eマウント用の標準レンズとして、驚くべき解像力で高い評価を得ていたVoigtlander(フォクトレンダー) APO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalが、より汎用性の高いライカMマウントのモデルとして発売されます。
今回はこのAPO-LANTHAR 50mm F2 AsphericalをLEICA(ライカ)M10に装着しての実写レビューです。
ライカに取り付けても違和感のないクラシックで質の高いデザインです。同設計を採用するSONY Eマウント用レンズとは大きく異なったデザインを採用するあたりはVoigtlander(フォクトレンダー)のこだわりと言えるでしょう。
メッキパーツを多く採用する事でクラシックな印象となり、取り付けるカメラの年代と違和感が出ないようにしてあります。
フィルター径 | 49mm | 最短撮影距離 | 0.7m |
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最小絞り | F16 | 絞り羽根 | 12枚(F2、2.8、5.6で円形絞り) |
マウント | Mマウント | 長さ | 53mm |
重量 | 288g |
今回は、フジヤカメラのブログでは珍しく、テスト撮影を別のスタッフにお願いしました。
理由は、テストボディをなんとしてもLEICAにしたかったからで、羨ましい事にLEICA(ライカ) M10を所有しているスタッフがいたので、撮影をお願いしました。
いつものフジヤカメラのブログとは違う、撮影者による撮り方の違いを合わせてお楽しみいただければと思います。
同レンズのSONY Eマウント用のテスト撮影を行ったのは、一昨年の10月だったので、約1年ちょっとぶりにAPO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalの描写を見ましたが、驚くべきシャープネスを持ったレンズという印象は一切変わらず、質の高さを再認識させられました。
併せてLEICAの作り出す写真哲学とも言える独特の美しさが加わり、レンズの良さを幾倍にもしている様に感じます。
デジタルカメラの時代になって、写真をカメラとレンズが共同で作っている事を再認識しました。
特に青の表現は素晴らしく綺麗で、この深みは国産のカメラにはなかなか無い味わいだなと、レンズのテストなのにカメラの良さに目を奪われます。
とは言え、この写真のようなボケ感は、Voigtlander(フォクトレンダー)のそれで、抜け目なくそれでいて出しゃばらずにレンズが個性を主張して来ます。周辺光量落ちは好みの分かれるところだと思いますが、個人的には写真に膨らみが出て嫌いではありません。
レンズの存在を感じさせない、素晴らしくシャープな描写はAPO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalの真骨頂です。
「リアリティこそが作品に命を吹き込むエネルギー・・・リアリティこそがエンターテイメント」は某漫画のキャラクターのセリフですが、元来リアリティーを追求して来た写真という世界において「ここまで来たか」と唸りたくなる程の高描写です。性能があまりにも高いレベルに達すると「好み」を超越するとさえ感じます。
大きくアンダーに寄せた露出に錆の浮いた鉄板と厚く積もった落ち葉がドイツのカメラらしい重々しさで描写されています。アンダー露出でも黒がつぶれないのは、カメラのせいか?レンズのせいか?おそらく両方なのでしょう。
自身ではこういう写真を撮ろうと思わないので、たまには別のスタッフに写真をお願いするのもいいなと思います。
鮮やかなモミジを前面に、紅葉した木々の重なりが綺麗で、奥行き感のある写真になっています。
細かな被写体を正確に分解して写しとる事は、APO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalの得意とするところで、他のレンズには無い詳細な描写を実現します。電気接点の無いレンズではしばしば問題となるフリンジの発生も少ないようです。
Voigtlander(フォクトレンダー)のMマウントレンズは電気接点を持たない為、カメラ側のレンズ補正を利用する事が出来ず、フリンジの発生が問題となる事が多いですが、APO-LANTHAR 50mm F2 AsphericalについてはAPOの名が示す通りフリンジの発生は少なく、今回のテストで気になるカットはありませんでした。
が、実際には細かい部分で多少発生しているので、状況を解説したいと思います。
モミジの葉の周りに紫色の偽色(フリンジ)が発生しているのがわかります。
カメラのレンズ補正を利用出来ない、レンズの素のままの性能だとフリンジが発生する事が多く、APO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalがこの程度しか発生していないのは優秀な部類に入ると思います。
ちなみにモノクロにすると・・・
当たり前ですが、このようにフリンジは全く気にならなくなるばかりか、微妙なにじみがレンズの味になったりするので、写真は面白いですね。
画質について、特にシャープネスについては、全てのフルサイズカメラ用標準レンズと比較してもトップクラスにあるレンズです。拡大して解像感を見てみます。
拡大した事を忘れてしまうくらいのシャープネスで、柿の実のしわまで描写されているのには脱帽です。開放F2でありながら非常にピントが薄く感じられるのは、それだけピント面がシャープだからです
LEICAの作り出す青と柿の実の色とのコントラストが綺麗です。
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Photo by フジヤカメラ 清野 Text by フジヤカメラ 北原